海外ラウドロックバンド10選
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海外ラウドロックバンド10選

今回のコラムでは「これぞ海外を代表するラウドロックバンド」と感じている10組を紹介する。<2020年4月 改訂>
Written by 西廣智一
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ラウドロックというジャンル分け/呼称は日本固有のもの、つまり和製英語だという事実に驚く音楽ファンが多いという。「だって、海外にもああいう音はあるじゃないですか! それらはラウドロックとは呼ばないんですか?」というのが、彼らの言い分だ。もちろん、日本のラウドロックは国内の先輩アーティストからの影響に加え、海外のメタルやパンク、ハードコアなどの影響も強い。そういう意味では、先の音楽ファンが指す「ああいう音」は、現在国内ラウドロックシーンで活躍するバンドたちのルーツと言えるのではないだろうか。
これを受けて、今回のコラムでは2000年以降の海外シーンに目を向け、国内ラウドロックファンにオススメしたい「海外のラウドロックバンド」10組をピックアップ。あくまで筆者自身が「まだ洋楽にあまり触れたことがないリスナー」を想定して、独断と偏見で選んだ10組だ。知ってる人はニヤニヤしつつ、または「なんであれが入ってないんだよ!」とツッコミを入れつつ、そして初めて触れる方々には「こんなにカッコいいバンドがまだまだたくさんいるんだ」ということ知っていただけたら幸いだ。
(2020年4月 改訂)
2016年の記事初出から4年経過したことを受け、2020年の視点で「筆者個人が考えるラウドロック感」に基づき、一部内容を改訂した。このコラムをきっかけに、国内のバンドのみならず海外の音楽シーンにも目を向けてもらえるようになることを願っている。
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① SLIPKNOT
お揃いのツナギに各々不気味なマスクを付けた、猟奇的な雰囲気を漂わせる9人組バンド。登場時こそイロモノ的な目で見られたが、1999年発売のデビューアルバム『SLIPKNOT』で示したブルータルなハードコアサウンドで一世を風靡した。彼らの登場がその後の国内外メタルシーンに大きな影響を与えたことは間違いない事実。メンバーの急逝や脱退、不仲などで活動が停滞していた時期もあるが、現在でもここ日本でも主催フェス『KNOTFEST』を開催するなど、安定した人気を誇る。2021年1月には2016年11月以来となる『KNOTFEST JAPAN』も実施予定だ。
② DISTURBED
2000年のデビューから長きにわたりアメリカのメタル/ラウドシーンを牽引し続ける、SLIPKNOT同様に重要な存在として高く評価される4人組バンド。2020年までに7枚のオリジナルアルバムを発表しており、本国ではそのうち5作がチャート1位を獲得する人気ぶりで、かのオジー・オズボーンは彼らに対して「メタルの未来」と称賛を送ったほど。ラップにも通ずるリズミカルなボーカルと、ヘヴィながらもメロディアスで親しみやすい楽曲スタイルは、一度耳にしたら離れない中毒性を持つ。そのキャリアに対して来日は過去3度(2002年の『SUMMER SONIC』、2003年の単独ツアー、2016年の『KNOTFEST JAPAN』)しか実現しておらず、海外での人気ぶりと比べると日本では過小評価気味。
③ LINKIN PARK
LINKIN PARKがデビューしたのはまさに21世紀に突入した2000年のこと。ミディアムテンポのヘヴィな楽曲にメロデイアスなクリーンボイスと激しいスクリーム、ラップを乗せたスタイルは当時「ニューメタル」と、一部から揶揄されたことも。しかしデビュー作『HYBRID THEORY』は全世界で2000万枚を超える大ヒットを記録。その後もヒット作を連発すると同時に、エレクトロニカやR&Bの要素を取り入れるなどして進化を続けていた。2016年5月にはさらなる新境地を見せる7thアルバム『ONE MORE LIGHT』をリリースしたが、その2ヶ月後の7月20日にフロントマンのチェスター・ベニントンが急逝。2020年4月現在、バンドとしての活動は停止しており、もうひとりのフロントマンであるマイク・シノダはソロ活動を続けている。
④ KILLSWITCH ENGAGE
先のLINKIN PARKをはじめ、EVANESCENCEなどニューメタルバンドがヒットを飛ばす中、2000年代半ばに向かうにつれてデスメタルからの影響を感じさせつつ、ニューメタルよりもさらにヘヴィメタル的なサウンドの「メタルコア」が台頭し始める。KILLSWITCH ENGAGEはその代表格バンドのひとつで、当時は彼らやSHADOWS FALLを指し、出身地マサチューセッツ州にちなんで「MAメタル」と呼ぶことも。そのスタイルは今や、完全にヘヴィメタルそのもの。メタル色の強いラウドロックバンドの中には、彼らを崇拝する者も少なくない。
⑤ FUNERAL FOR A FRIEND
アメリカからの新たな波に対して、イギリスをはじめとするヨーロッパ圏からも新興勢力が登場したのが2000年代前半。ヘヴィメタル色の強いBULLET FOR MY VALENTINEはアメリカでもチャート的な成功を収めたが、エモやポストハードコアからの影響が色濃いFUNERAL FOR A FRIENDも登場時は大きな反響を呼んだものだ。彼らがほかの同系統アーティストと異なった点は、ハードコアの流れにあるバンドたちと対バンするだけでなく、IRON MAIDENといったメタル界の大御所とも共演できたことだろう。作品を重ねるごとにそのサウンドを変化させていき、徐々にソフトな面も打ち出したが、2015年9月に突如解散を発表。2016年5月のライブをもって、その活動に終止符を打つ。再結成を望む声も少なくなく、その甲斐あってか2019年秋、イギリスにて3公演のベネフィットライブのために限定再結成が実現した。
⑥ BRING ME THE HORIZON
メタルコアをより残虐にしたサウンドの「デスコア」が認知されるようになったのが、2000年代後半のこと。イギリス・ヨークシャー州出身のBRING ME THE HORIZONは結成当初、そのデスコアサウンドで注目を集めた。血まみれの臓器を手にした少女の姿がジャケットに使用された日本デビュー作(通算2枚目)『SUICIDE SEASON』(2008年)のインパクトは、今でも記憶に新しい。彼らもアルバムごとにサウンドを変化させていき、キーボーディストを迎えた新編成で制作された4thアルバム『SEMPITERNAL』(2013年)ではデジタル色とゴシックテイストが濃厚に。続く5thアルバム『THAT'S THE SPIRIT』(2015年)ではそのスタイルをさらに深化させ、全米&全英チャート2位という快挙を成し遂げた。そして、2019年発売の6thアルバム『amo』ではついに初の全英1位を獲得。同年夏には『SUMMER SONIC』出演、秋にはBABYMETALジャパンツアー参加と、短期間に二度来日。テレビCMへの出演も果たし、日本での知名度が急激も高まり始めている。彼らの成功は、現在のヘヴィロック/ラウドロックにおける新たな進化の形を示したのではないだろうか。
⑦ PERIPHERY
これまでのメタルコアとは異なり、曲調がよりプログレッシブで複雑な展開を持ち、変拍子なども多用するバンドが2000年代後半に急増。特にポリリズムやシンコペーションを前面に打ち出したスタイルを「ジェント(Djent)」と呼ぶようになり、そのスタイルの代表格として名前が挙がる機会が多いのがPERIPHERYだ。どこかDREAM THEATERといったプログレッシブメタルにも通ずる世界観があるものの、ボーカルのグロウルや通常よりも低音弦の数が多い多弦ギター&ベースを用いた楽器隊によるブレイクダウンの要素が、プログレメタル勢とは一線を画す要因となっている。
⑧ ASKING ALEXANDRIA
2000年代後半にイギリス・ノッティンガムで結成された5人組バンド。初期こそメタルコアの要素が強いものの、現在ではそのサウンド、ボーカルの歌唱スタイル的には典型的なハードロックやヘヴィメタルに近く、実は2011年発売の2ndアルバム『RECKLESS & RELENTLESS』はビルボード9位、2013年発売の3rdアルバム『FROM DEATH TO DESTINY』はビルボード5位と、すでにアメリカでも成功を収めている。2015年にはダニー・ワースノップ(Vo)が新バンドWE ARE HARLOTに専任するために脱退し、新たにデニス・シャフォロストーブが加入。しかし2016年3月に4thアルバム『THE BLACK』をリリースするも、その数ヶ月後にはダニーがバンドに復帰している。
⑨ DEAFHEAVEN
ブラックメタルやハードコアの影響下にあるサウンドを軸に、2010年から活動を開始したアメリカの5人組バンド。グロウルやスクリームを多用したボーカルスタイルは昨今のメタル/ラウドロックそのものだが、サウンド面ではシューゲイザーとブラックメタルをかけあわせた「ブラックゲイズ」と呼ばれるジャンルを確立。また、MOGWAIなどのポストロック勢にも通ずる、強弱を強調させたインスト重視の長尺ナンバーを武器に、ジャンルを超えてファンベースを拡大させていった。日本にも複数回の来日を果たしており、2016年には『FUJI ROCK FESTIVAL』に出演。2019年11月には北欧ブラックメタルシーンの伝説的バンド、EMPERORのジャパンツアーに帯同したことも記憶に新しい。
⑩ CODE ORANGE
2008年の結成当時はまだ中高生だったという、アメリカ出身の新世代バンド。初期3作はCONVERGEのカート・バルーをプロデューサーに迎え制作してきたが、そのサウンドは作品を重ねるごとにカオティックハードコア路線から徐々に進化。2020年3月リリースの4thアルバム『UNDERNEATH』では新たな制作陣を迎え、デジタル/インダストリアルサウンドやオルタナティブロック、ダブステップ以降のヒップホップなどをも飲み込んだ、いびつで暴力的な世界観が展開されている。ほかの何者とも比較しようのないその姿勢は、(サウンドこそまったく異なるものの)意外とBRING ME THE HORIZONと共鳴するものもあるのでは。そういった意味でも、実はもっとも現代的で最新型のラウドロックバンドはこのCODE ORANGEなのかもしれない。
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