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『リュック・アッカーマン ~FMX のすべて~』の舞台裏:スーパートリックのプロセスを学ぶ
"世界初" を次々と成功させたFMXワールドチャンピオンの最新エディットはどのように制作されたのだろうか? 超絶トリックの裏側を覗く。
Written by Paul Keith
読み終わるまで:5分Published on
FIM FMX現ワールドチャンピオンでX Gamesゴールドメダルウィナーのリュック・アッカーマンは、度胸と身体能力、そしてパーフェクトなバイクコントロールを駆使し、最新の映像プロジェクト『リュック・アッカーマン ~FMX のすべて~』3つの “世界初” を達成した。
アッカーマンは世界最大の内陸港として知られるデュースブルク(ドイツ)にFMX用トラックを造成し、レーヌス・ロジスティックス・ストックヤードをコンテナやクレーン、フォークリフトトラック、大量の鉄骨材で満たした自分専用FMXプレイグラウンドに変貌させると、驚異的なスタントライディングと既存FMXトリックの新解釈を組み込んで、世界初メイクのトリックに挑んだ。
ケルン大聖堂をバックにプロジェクトの成功を祝うリュック・アッカーマン© Joerg Mitter/Red Bull Content Pool
動画には壮麗なゴシック建築を持つケルン大聖堂をバックにしたツナミ・バックフリップをはじめとするアッカーマンのシグネチャースタントが盛り込まれている他、ライン川に浮かぶ2隻のバージ船(はしけ船)を渡るビッグジャンプや息を呑むようなコンテナ内部からバージ船へのビッグドロップも確認できる。これらのスタントを組み合わせながら、FMXの基準を引き上げるスムーズで勇気溢れるラインが描かれていった。
アッカーマンの夢を具現化するには、18カ月に及ぶハードワークと献身が必要だった。その結果が、ベテランFMXライダーでスタントコーディネーターのバスティ・ヴォルターとエキスパートFPVドローン・パイロットのポール・キューン率いるエキスパートチームが捉えた衝撃的なスタントとトリックの連続だ。
今回は、アッカーマン、バスティ、ポールたちがどのようにして【リュック・アッカーマン ~FMX のすべて~】を実現したのかを、動画とテキストで学んでいこう。
ページ最上部の動画をチェックしたあとは、『Rhine Line』で披露された5つのベストトリックについて詳しく見ていこう。
01

【バックフリップ・ボンク】バックフリップ中にリアホイールでコンテナにタッチ

世界初となった【バックフリップ・ボンク】では、上下逆さまになった状態で空中を飛びながらリアホイールをコンテナに接触させている。
トリック名が示唆する通り、このムーブは2パートで構成されており、重さ100kgのバイクをランプから高さ10mまで飛び出させる【バックフリップ】から、上下逆さまの状態でクレーンに吊られたコンテナ底面にリアホイールを擦り付ける【ボンク】をメイクする。
このムーブでは極めて高度なバイクコントロールが必要になる。コンテナに強く接触しすぎると、アッカーマンはバックフリップを終えるための勢いを失ってしまう。そうなれば、彼はかなりラフな着地を強いられることになっていたはずだ。
02

【フレームド・ウィップ】コンテナの隙間をウィップで通過

空中に飛び出しながらバイクを横向きにする【ウィップ】は、優れたFMXライダーなら誰もがレパートリーに加えている定番のモトクロスムーブだ。しかし、アッカーマンはこの定番トリックにさらなるひねりを加え、積込クレーンに吊るされたコンテナ2個の間をウィップで抜けている。
ジャンプ距離と安全な着地を確保するために、アッカーマンはジャンプ距離をパーフェクトに見極める必要があったが、コンテナ2個が着地エリアの見通しを悪くしていた。そのため、アッカーマンは驚異的な精度でトリックをメイクしながらブラインドの着地エリアへ飛び込んだ。
03

【サンド・カーテン】砂が降り注ぐ中での360

巨大クレーンとコンテナに取り囲まれたアッカーマンは、もうひとつの世界初トリック【サンド・カーテン】をメイクしている。これは、降り注ぐ砂の中で360をメイクするムーブだ。地面と平行にバイクを1回転させる360をマスターしているFMXライダーは世界を見回してみても少数しかいない。
アッカーマンはその360の達人だが、今回は砂がひねりを加えていた。アッカーマンはパワーショベルのショベル部分(高さ15m)から落ちてくる砂のカーテンを抜けながら360をメイクしなければならなかったのだ。撮影後、アッカーマンは次のように振り返った。
「身体中が砂だらけになってしまったよ。パンツの後ろ側をすり抜けて、下着の中まで入り込んでしまったほどさ!」
04

【ザ・ドロップ】バージ船の船底目がけて10mの高さから落下

FMXプロライダーが着地をしなければならないシーンは多いが、今回のドロップからの着地はひときわ高難度だった。アッカーマンはコンテナの内部からスタートしたあと、そのままバージ船の船底部分までほぼ垂直に10mをドロップしたのだ。
コンテナ内部でKTMのエンジンサウンドを深く響かせるアッカーマンの視界は非常に限られており、着地エリアは目視できなかった。いわゆる「自分を信じた賭け」だ。
アッカーマンは高所恐怖症ではないが、メイキング映像では表情に緊張感が滲んでいる様子が確認できる。しかし、彼はまたも度肝を抜くようなトリックをメイクしてみせた。
05

【ザ・トランスファー】2隻のバージ船を渡る特大ジャンプ

今回のエディット最後の目玉は、ケルン大聖堂をバックに航行する巨大なバージ船を越えるビッグジャンプだ。このパートでのアッカーマンはKTMをフルスロットルで25m走らせてから飛び出したあと、上下逆さまでハンドルバーからぶら下がる高難度トリック、ツナミ・バックフリップをメイクした。
ライン川に浮かぶバージ船2隻は上下に揺れていて安定とは程遠かったため、このトリックはいつもよりさらに高難度だった。また、アッカーマンが正しい位置に着地できるように、バージ船も一定距離を保って航行しなければならなかった。
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Luc Ackermann

A rising superstar of freestyle motocross, Luc Ackermann collects world records for fun and scored a big X Games title in 2021.

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