マッド・マイク・ウィデットは、ニュージーランドが生んだドリフトスターとして世界的な人気を誇っている。
そこで今回は、ハンプトン・ダウンズ・モータースポーツパーク内にあるマイクの本拠地『MADLAB』で生まれ、彼と一緒に世界を巡ってきた “荒ぶるドリフトマシン” たちの細部に迫っていこう!
01
BADBUL:Mazda RX-8
マッド・マイクが手がけた2台目の競技用プロスペックマシンは、オリジナルのレースエンジン(20Bトリプルローターエンジン+シングルターボ)が継続使用されている唯一のマシンだ。
これまでマイクが使用してきたマシンの中でも、最も大きな成功を収めたのがこのBADBULで、彼はこのマシンと共にニュージーランドのD1NZチャンピオンシップ(2009シーズン)の全ラウンドで表彰台を獲得し、同年のNZ Drift Seriesタイトル奪取にも成功した。
2010年、RX-8ベースのこのマシンを米国へ送ったマイクはフォーミュラドリフトのデビューシーズンを戦った。またそれ以降も、BADBULは、Conquer the Cape(南アフリカ)、Red Bull Drift Shifters(リバプール)、ダカールの覇者KAMAZトラックとのBADBUL vs. KAMAZ(ロシア)など世界中のイベントやデモで使用されてきた。
マイクはBADBULの性能と使い勝手の良さについて、次のように語っている。
「BADBULは一番頼りになるマシンだ。今の6代目は800馬力を超えるパワーを後輪に伝える。かなりのハイパワーだけど、ロングホイールベースのおかげでこれまでのマシンの中で最もドライブしやすいマシンになっていて、コンペでも活躍してくれる」
《エンジン》
- Mazda PPRE 20B 3ローター
- 大型ブリッジポート
- バランスを最適化した軽量ローター
- シャフトはクロスドリル加工済
- Bosch Motorsport 044フューエルポンプ(2個)
- 高流入タイプインジェクター
- Garrett GTX4508Rターボチャージャー
- Turbosmartウエイストゲート
- Turbosmartブローオフバルブ
- Turbosmart燃圧レギュレーター
- Turbosmartブーストコントローラー
- 3.5” ステンレスエキゾーストシステム
- Haltech Elite ECU
《駆動系》
- Holinger Engineering RD6SS 6速シーケンシャルギアボックス
- ASD / Winters Performanceクイックチャージ・リアエンド
- ASD LSD
- The Driveshaft Shopアクスル
《サスペンション&ブレーキ》
- KW Competition 3ウェイ・アジャスタブルコイルオーバー
- Wisefabステアリングアングルキット
- Megan Racingサスペンションアーム
- Wilwood Performance 6ポット・フロントブレーキ
- ASD 油圧式ハンドブレーキ
《ホイール&タイヤ》
- フロント:18インチx 9.5J Rotiform NUEホイール+Nitto NT05タイヤ
- リア:18インチx11J Rotiform USFカスタム3ピース(ビードロック仕様)+Nitto NT05タイヤ
《エクステリア》
- ベース車両:Mazda RX-8 R3
- Rocket Bunny x Mad Mike Motorsport Pandemワイドボディキット
- Seibonカーボンファイバー製ドア&ブートリッド
- Rocket Bunnyウイング
- Lexanウインドウ
- Mad Mike Motorsport仕様カラーリング
《インテリア》
- マルチポイント式ロールケージ
- Takata Racing x Mad Mike Motorsportシート
- Takata Racing 6点式シートベルト
- Haltech Racepakダッシュディスプレイ
02
RADBUL:Mazda MX-5(ロードスター)
マイクにとって5年ぶりの米国シリーズ復帰となった2015シーズンのフォーミュラドリフトProチャンピオンシップ参戦用マシンとして生み出されたのがRADBULだ。
このマシンはアイコニックなMazda MX-5(日本国内販売名:ロードスター)をネクストレベルへ引き上げている。カスタムメイドのツインターボ&4ローター仕様の26Bエンジンは1,200馬力オーバーを叩き出し、コンペでは投入直後から注目を浴びる存在となった。投入2年目となる2016シーズン、マイクはフォーミュラドリフト世界選手権で総合3 位を獲得した。
Red Bullとのコラボレーション10周年記念としてファンから募った新エンジンセットアップ案を取り入れてオーバーホールが行われた4代目RADBULは、先祖返り的な雰囲気を感じさせるエクステリアやメカニカル面の高い信頼性もあり、マイクにとって、これまでで最も満足できるアップグレードとなっている。
「僕たちはこのマシンに持てるもの全てを注いだし、おそらく宇宙一クレイジーなプロスペック・ドリフトマシンに仕上がったと言えるんじゃないかな。恐ろしく速くて危険なマシンだ」
「実は『RADBUL Conquers Highlands』の撮影中、こいつを200km/h近くのスピードでクラッシュさせてしまった。かなり早い段階でこのマシンのヤバさを学んだよ」
「現在は20B-PPエンジンを搭載していて、ドライブがすごく楽しいマシンになっている。パワーはかつての3分の1程度に過ぎないけれど、舵角とスロットルを繊細に入力しつつ、エンジンの回転数を高くキープする必要があるんだ」
「パワーを抑えたセッティングは、このマシンの超ショートホイールベースに相応しいと思うし、今後も活躍してもらうつもりだよ」
《エンジン》
- Mazda / PPRE 20B 3ローター
- ペリフェラルポート
- MoTeC 55mm スロットルボディ
- Aeroflowフューエルシステム(アルコール燃料仕様)
- Aeroflowライン&フィッティング
- Haltech Elite ECU
- 3 ½インチ ステンレスエキゾースト
《駆動系》
- Holinger Engineering RD6-SS 6速シーケンシャルギアボックス
- ASD / Winters Performanceクイックチャージ・リアエンド
- ASD LSC
- The Driveshaft Shopカーボンファイバー製プロペラシャフト&ドライブシャフト
《サスペンション&ブレーキ》
- KW Competition 3ウェイ・アジャスタブルコイルオーバー
- Wilwoodブレーキ
- Mad Mike Motorsportステアリングキット
- ASD油圧式ハンドブレーキ
《ホイール&タイヤ》
- フロント:17インチx10.5J Rotiform LHR 3ピース鍛造ホイール+Nitto NT05タイヤ
- リア:17インチx12J Rotiform 3ピースホイール+Nitto NT05タイヤ
《エクステリア》
- Rocket Bunny x Mad Mike Motorsportボディキット
- Rocket Bunny 3D GTウイング
- Mad Mike Motorsport仕様カラーリング
《インテリア》
- マルチポイント式ロールケージ
- Takata Racing x Mad Mike Motorsportシート
- Takata Racingシートベルト
- Haltech Racepakダッシュディスプレイ
03
MADBUL:Mazda RX-7
MADBULはマイクの “原点” だ。MADBULの歴史を紐解いてみると、本来FURSTYという名で呼ばれていたFD3S Mazda RX-7の姿が見えてくる。
マイクは2007年にこのFURSTYでキャリア初の国際イベント、米国アーウィンデール・スピードウェイで開催されたD1 Grand Prix World All-Starsにエントリーした。FURSTYはやがて4ローター仕様のMADBULへと進化し、マイクは2009シーズンのフォーミュラドリフト・アジアのタイトルを獲得した。
現在MADBULは7.3代目となっている(.3の由来は、Mazda RX-3にインスパイアされたRocket Bunny Pandem Bossフロントエンドカスタムにある)が、このマシンには、10年前と同一仕様のカスタムメイド自然吸気・4ローター26Bエンジンが搭載されている。また、オールドスクールな車高調&ステアリングシステムも10年前のままだ。
「MADBULは、普通の人よりもよっぽど多く海外へ行っていると思うよ。このマシンは、もはや僕が思い出せないくらい様々な国へ行った。今のところ、MADBULは所有しているマシンの中で一番のお気に入りだね」
「ロータリーの魅力に取り憑かれて以来、僕はル・マンを走ったMazdaの13Jや26Bエンジンを搭載したマシンたちに刺激を受けてきたし、自然吸気の4ローターエンジンを自分のマシンに搭載できたのは夢が叶った瞬間だった」
「どのマシンも個性があるけれど、MADBULこそ僕の個性を最も良く表している1台だね」
《エンジン》
- Mazda / PPRE自然吸気26B 4ローター
- PPREカスタムエンドプレート&センタープレート
- カスタムクロモリシャフト
- バランスを最適化し軽量化したハイコンプレッション仕様の13B-MSPローター
- ペリフェラルポート
- EFI Hardwareスロットルボディ
- 3.5インチ・ステンレスエキゾーストシステム
- Haltech Elite ECU
《駆動系》
- HKS 6速シーケンシャルギアボックス
- OS Giken 1.5ウェイLSD
《サスペンション&ブレーキ》
- KW Competition 3ウェイ・アジャスタブルコイルオーバー
- Megan Racingサスペンションアーム
- ASD油圧式ハンドブレーキ
《ホイール&タイヤ》
- フロント:17インチx10J Rotiform LHR 3ピース鍛造ホイール+Nitto NT05タイヤ
- リア:17インチx12J Rotiform LHR 3ピース鍛造ホイール+Nitto NT05タイヤ
《エクステリア》
- Rocket Bunny x Mad Mike Motorsport Bossボディキット
- Lexanウインドウ
- Mad Mike Motorsport仕様カラーリング
《インテリア》
- マルチポイント式ロールケージ
- Takata Racingシート
- Takata Racingシートベルト
- Sparcoステアリングホイール
- Haltech Racepakダッシュディスプレイ
04
RUMBUL:Mazda REPU B2000 スタジアムトラック
元々、このマシンは米国のLOORRS(Lucas Oil Off Road Racing Series)で使用されていたが、現在はマイクがドリフトから離れる時の遊び相手になっている。
かつてはMazda RX-8 Renesisのエンジンが搭載されていたが、現在このオフロードマシンにはMADBULと同じく4ローターとなるペリフェラルポート仕様のPPRE 13Bエンジンに換装されている(ただし、エンジンサイズはMADBULの2倍)。
RUMBULは英国屈指の著名モータースポーツイベント、グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードやニュージーランドのリードフット・フェスティバルなどにも登場しているが、このマシンの目的は遊びだけではない。
マイクがステアリングを握ったこの怪物トラックは、パワーで上回るベイ・オフローダーズ(編注:ニュージーランドで開催されているオフロードトラックレース)のProクラスマシンたちを負かしてみせた。
「RUMBULを乗り回すのは最高に楽しくて、ドリフトコンペみたいにラインやアングルのジャッジを気にする必要がない。ひたすら右足をアクセルペダルに乗せて、コーナーをかっ飛ばすんだ」
「10歳になる息子のリンクはモッドカート(Mod Kart:小型ダートトラックレース)に参戦しているから、親子一緒にレースを楽しめてすごくクールさ。RUMBULは息子にとってパーフェクトなネクストステップになると思うけれど、ペダルに足が届くまでにはもう少し背が伸びないとね(笑)」
「このトラックは今の状態のままでもエンジンはかなり強力だし、おそらく自然吸気の13Bならではのワイルドさがある。エンジンサウンドが最高なんだ。また今年の夏にダートでこいつを乗り回すのが待ちきれないよ」
《エンジン》
- Mazda / PPRE 13B
- ペリフェラルポート
- 軽量ローター
- EFI Hardwareスロットルボディ
- Aeroflowフューエルシステム(アルコール燃料仕様)
- Aeroflowライン&フィッティング
- Haltech Elite ECU
《駆動系》
- Mendeola MD4S-2D 4速トランスアクスル
《サスペンション》
- Kingオフロード・レーシングショック
《ホイール》
- ビードロックホイール+Toyo M/Tタイヤ
《シャシー&エクステリア》
- 鋼管フレームMazda REPU B2000+Hybrid Lab FRPボディ
《インテリア》
- Haltech Racepakダッシュディスプレイ
- ASD油圧式ハンドブレーキ
05
HUMBUL:Mazda RX-7
マイクはHUMBULと共に2018シーズンのフォーミュラドリフトジャパンの王者を獲得した。
兵庫県にファクトリーを構えるTotal Car Produce Magicの川戸泰介が手がけたこのMazda RX-7は、2010年に制作されたマイクの映像プロジェクト『Red Bull Drift-n-Ice』に使用されていたマシンだが、その後数々の主要アップグレードを経てプロスペックのドリフトウェポンへと成長した。
HUMBUL(この名称は川戸の謙虚 “humble” な人柄にちなんでいる)の心臓部には、1,000馬力を超えるパワーを後輪に伝えるカスタムビルトの4ローター・ツインターボエンジンが搭載されている。
「HUMBULは僕が手がけたマシンの中で一番速くて、一番ワイルドだ。そして、競争力もナンバーワンだ。『米国のフォーミュラドリフトに参戦するマシンを選べ』と言われたら、おそらくこれを選ぶだろう。その理由は、驚くほど強大なパワーさ」
「スロットルのレスポンスはショットガンのトリガー並みに敏感で、パワーとグリップの絶妙なコンビネーションによるシャシーバランスのおかげで、派手なドライビングスタイルを保ちながら思い通りのポジションに持っていける。日本語で言うところの “カンペキ” なマシンさ」
《エンジン》
- Mazda / TCP-Magic 26B 4ローター
- ブリッジポート
- カスタムエンドプレート&センタープレート
- カスタムクロモリシャフト
- TCP-Magicエイペックスシール
- Garrett GTX3582Rターボチャージャー(2基)
- Turbosmartウエイストゲート
- Turbosmartブローオフバルブ
- Turbosmart燃圧レギュレーター
- Q16レーシングフューエル
- Haltech Elite ECU
《駆動系》
- Holinger Engineering RD6-SS 6速シーケンシャルギアボックス
- ASD / Winters Performanceクイックチャージリアエンド
- The Driveshaft Shopカーボンプロペラシャフト&ドライブシャフト
《サスペンション&ブレーキ》
- KW Competition 3ウェイ・アジャスタブルコイルオーバー
- Project Muブレーキ
- TCP Magic油圧ハンドブレーキ
《ホイール&タイヤ》
- RAYS Gram Lights 57Xtreme SP Specホイール+Nitto NT05タイヤ
《エクステリア》
- Total Car Produce Magic G-Faceボディキット
- Rocket Bunny 3D GTウイング
- Mad Mike Motorsport仕様カラーリング
《インテリア》
- マルチポイント式ロールケージ
- Bride Low Maxシート
- Takata Racingシートベルト
- ATC Key’s Racingステアリングホイール
- Haltech Racepakダッシュディスプレイ
06
MADCAB:1987年式Mazda Luce
“ドリフトタクシー” というアイディアは斬新ではないが、マイクがサポーターやスポンサーと一緒にドリフトの興奮をシェアできるマシンを作れば、それは最高にクールなものになる。
『1980年代の日本で走っていたタクシー』というテーマのもと、マイクは1987年式のMazda Luceセダン(日本名:ルーチェ)をベースに、デフォルトの重いV6エンジンを軽量な13Bエンジン(大型ブリッジポート&Garrett製大型ターボチャージャー付き)に換装。
仕上げとして日本のタクシーそのままのカラーリングを施し、さらには “暴走交通” と書かれた行灯をルーフに設置してパーフェクトなルックスを実現した。
「僕がドリフトで愛してやまないことのひとつに、みんなを同乗させてドリフトの感覚を味わってもらうというのがあるんだけど、MADCABなら一度に3人が同乗できるから、いつだって最高に楽しいんだ」
「ステアリングのナックルをカットしたり、車高を極端に低くしたり、ワイドタイヤを履かせたりと、どちらかというと街道レーサーっぽい雰囲気をキープしているけど、ターボ付きの13Bエンジンが発生する500馬力のパワーは本当に強烈だよ」
《エンジン》
- Mazda / Advanced Tuning JC Cosmo 13B ツインローター
- Garrett GTX4088Rターボ
- 大型ブリッジポート
- Turbosmartウエイストゲート
- Turbosmartブローオフバルブ
- Turbosmart燃圧レギュレーター
- 3.5インチ・カスタムステンレスエキゾーストシステム
- Aeroflowフューエルシステム(アルコール燃料仕様)
- Aeroflowライン&フィッティング
- Haltech Elite ECU
《駆動系》
- HGT Precision 6速シーケンシャルギアボックス
《サスペンション&ブレーキ》
- BC Racingアジャスタブルコイルオーバー
- ASD油圧式ハンドブレーキ
《ホイール&タイヤ》
- Rotiform IDKホイール(タイヤは特定のスペック指定なし)
《エクステリア》
- ボルトオン式オーバーフェンダー
- Mad Mike Motorsport仕様カラーリング
《インテリア》
- マルチポイント式ロールケージ
- Takata x Mad Mike Motorsportシート(4名分)
- Takata Racingシートベルト
- OMPステアリングホイール
マッド・マイク・ウィデットがロータリーエンジンの魅力に取り憑かれた10年間のキャリアを振り返るスペシャル映像をチェックしよう!
6分
Mad Mike 10 Year Red Bull Anniversary Documentary.
Mad Mike Whiddett looks back on his drifting career and celebrates the ten year Red Bull anniversary.