Mad Mike hits Kyotos Rocket Bunny 1
© Graeme Murray
ドリフト

ドリフトマスター、京都のエアロマスターを訪ねる

ニュージーランド出身のドリフトマスター “マッド・マイク” が、Rocket Bunnyを主宰する京都のエアロデザイナー三浦慶の元を訪ねた。
Written by Binoy Parikh
読み終わるまで:5分Published on
三浦慶は世界でただひとつの才能を持つ人物だ。彼が京都で主宰するエアロボディキットブランドRocket Bunnyは今や世界でその名を轟かせる存在となっている。
マッド・マイクことマイク・ウィデットと三浦は長年の友人であり、マイクのドリームカー製作においても2人はたびたび作業を共にしている。
「ベビーブーム世代の僕たちの若い頃は携帯電話がありませんでしたので、車が遊び道具でした。昔はみんながドライビングや車に夢中だったんです」と語る三浦は、マッド・マイクとの初対面の様子を次のように回想する。
「マイクと初めて会った時は、ロータリーエンジンにかける彼の情熱に驚かされましたね。当時は、日本でもロータリー好きはかなり少数派でしたから。また、ニュージーランド流のロータリーエンジンのチューニング方法にも刺激を受けました」
マイクと三浦の邂逅は、数多くのクリエイティブなデザインやコラボレーションに発展していった。その成果は、マイクが過去に渡って製作してきたマシン群にも見ることができる。
2017シーズンのフォーミュラ・ドリフト開幕戦を前にしたマイクが三浦の元を訪ねた際のベストショットの数々をチェックしよう。
京都にあるRocket Bunnyのファクトリー

京都にあるRocket Bunnyのファクトリー

© Graeme Murray

「エアロパーツの分野に関して、Rocket Bunnyは世界をリードするブランドのひとつなんだ。だから、大きなファクトリーやショウルームを想像する人がいるかもしれないけれど、実際に慶のワークショップを訪ねてみると、いかにも日本らしい地味で控え目な佇まいなんだ。でも、そこから生み出される作品はワールドクラスなのさ」とマイクは語る。
三浦自らCADデザインを手がける

三浦自らCADデザインを手がける

© Graeme Murray

「慶のスペシャルツールは、頭の中にあるアイディア、ラップトップPC、そしてCNC工作機械さ」とマイクは説明し、更に続ける。「このシンプルな3つのツールで、彼は驚くほど先進的なスタイルを生み出しているんだ」
「慶が40以上のブランドのためにエアロパーツのデザインを引き受けているという事実を知っている人は少ない。そんな凄い人物と一緒に仕事ができて光栄だし、今も新世代のBADBUL Mazda RX8の製作のためにまたコラボレーションをしているんだ」
「一新されたデザインはワイルドなルックスになるはずだし、公開する日が待ち遠しいよ!」
「慶の事務所には、最高にクールな記念品の数々が並んでいる。慶も僕と同じようなものに影響を受けてきたってことが分かるし、とてもクールだよね。オールドスクールな日本製ホイール、古いラジコンカー、Atari製のアーケードゲーム、クラシックなMacintosh、それに彼のデザインワークを特集した素晴らしい書籍もあるんだ」
三浦が所有するシミュレーターをテストするマイク

三浦が所有するシミュレーターをテストするマイク

© Graeme Murray

マイクが続ける。「慶が個人所有しているドライビングシミュレーターもクールだった。彼はニュージーランドに実在するサーキットもインストールしていたから、アイコニックなMazda 787B(1991年ル・マン24時間優勝車)で数ラップしてみた。サウンドエフェクトやゲームの再現度はパーフェクトだった」
「慶のCNC工作機械は魔法を生み出すツールさ」とマイクは説明する。「巨大なポリスチレンブロックから、文字通りノンストップでモールド(パーツの元となる型)を削り出すんだ」
「Liberty Walk(編注:愛知県に本拠を構えるLamborghiniやFerrariのエアロパーツブランド)のために制作した未公開のパーツの制作過程も見せてもらったよ」
「3D CADの初期描画データからモールドを切削すると、これらのモールドを使ってファイバーグラスのパネルが作られ、ペイント工程を経て世界中に発送されるんだ」
三浦慶

三浦慶

© Graeme Murray

マイクは三浦についてこう語る。「世界を旅する中で、彼のようなクールな人に出会えることは喜びだよ。慶はドリフトシーンにおける最高にクールな人物のひとりだし、彼と再びこうして一緒の時間を過ごせて凄く嬉しい。慶は凄まじい才能を持っているのに謙虚なんだ。こんな素晴らしい人物と一緒にプロジェクトを手がけられることに興奮している」
三浦のBMW E30で京都をクルーズ

三浦のBMW E30で京都をクルーズ

© Graeme Murray

「ノルウェーのゲートビルというドリフトイベントで彼と初めて出会った時、僕のマシンに同乗してもらったことがあるんだ」とマイクは語る。「今回、彼はそのお返しとして、最近手がけたBMW E30に僕を乗せて京都市内をクルーズしてくれたんだ」
「そのあとで慶はVolkswagenも持ち出してくれて、この “小型ロケット” で彼のE30と一緒にコンボイ形式でドライブしようって提案してくれた。京都の人たちをびっくりさせることができたと思うし、彼のユーロ風のチューニングスタイルを見て楽しんでくれたんじゃないかな。最高にクールなストリートクルージングだったね」
三浦慶&マッド・マイク

三浦慶&マッド・マイク

© Graeme Murray

「僕にとって、マシン製作はドライビングと同じくらいにエキサイティングな仕事だよ。ひたすらドリームカーを追い求めていくのさ」とマイクは語り、以下のように言葉を結ぶ。
「僕たちの目の前にあるタスクは、Mazda RX8をフレッシュなルックスを持つクレイジーで強烈なドリフトマシンに変貌させること。慶とのデザインワークから全てが始まるんだ」