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起死回生の一滴。“最強”性能のBORED(ボアード)オイル|自転車パーツ連載Vol.3
第3回目には、競技用自転車のオリジナルオイルを製造するBORED(ボアード)の内藤 健一氏が登場。 ようこそ、バイシクルシーンに精通する重要人物が、今も手放せない“とっておきの日本製プロダクト”の魅力を紐解く連載【Made In Japan】の世界へ!
※本稿は2018年3月にインタビュー&執筆されたものです
第三回目で探訪したのは、高品質ケミカルプロダクトメーカーとしてバイシクルシーンを支えてきたBORED。
BMXのストリートライダーであった内藤氏は、2000年初頭に新宿ローカルと呼ばれるチームを立ち上げた。鉄工場で働いていた経験があった彼は、仲間内の故障の修理を請け負うようになると、当時の日本には、しっかりとしたメンテナンスができるショップがないという事実に気がつき、自ら修理・カスタム・チューニングを専門とした店をアパートの1室を借りてスタートさせる。
程なくして、市販のオイルやグリスに満足いく物がなかったことから、自らオリジナルオイルを開発し、これが一世を風靡。いまなお、ライダーや販売店からの人気は高く信頼も厚い。現在は、ガレージメーカーとして、物作りへのこだわりを追求している。
BORED内藤が選ぶマスターピース
《モデル名:BSLR》
BOREDの代名詞である万能型高性能ケミカルオイル。開業当初からつくり続けながらも、アップデートを繰り返してきた傑作。組み付け、チェーン潤滑、ベアリング潤滑、防錆、全てにおいてバランスが取れている。
この1品に宿る、
5つの匠
から、BOAREDの魅力を紐解いていく。
01
BOREDのの匠・その1
【 一切の妥協を許さぬ 100% 化学合成 】
実は 1%でも化学合成油が入っていれば、表記上は、化学合成油とすることができる。つまり、極端な話、仮に鉱物油99%でも化学合成油と認められることになる。しかし、その妥協でクオリティに雲泥の差が生まれることを内藤は知っている。
「100%化学合成で検索すると、基本的には100℃近いエンジンで潤滑させる車やバイク用のエンジンオイルが出てくるんですよ。人力用の自転車のオイルで100%化学合成は有り得ないことだったんです。なぜなら、コストが跳ね上がってしまうから。誰もやらないなら自分で作るしかないってことでオリジナルで開発をはじめました」
溶剤等を混ぜ、価格を抑えた製品しか市場になかった時代、他とは比べ物にならない程に高価で高性能なBOREDオイルは、マーケットに衝撃を与え、大きな話題を呼ぶこととなった。
02
BOREDのの匠・その2
【 日本人としてのプライドを示す100% メイドインジャパン 】
「中身のオイルは当然なんだけど、容器も、デカールも全て日本製です。日本人であることに誇りを持って、日本製にこだわった物作りをしています」
中でもブラッディーシリーズと呼ばれるこの赤いオイルには、文字通り心血を注ぎ込んでいる。その証拠に、パッケージデザインには内藤氏本人の指紋を使用。まさに血の一滴の如く、脈々と受け継がれ、命を削って絞り出された日本人の知恵と努力の結晶がDNAとして詰まっている。
03
BOREDのの匠・その3
【 “早さ”を生み出す、強靭な油膜の“強さ” 】
内藤氏の物作りに関心を寄せる自転車乗りの間では、BORED=“早い”が定説のようだ。しかし、本来は“強い”が正しい。その理由は、BOREDの製品の最大の特徴である油膜の強さにある。
「強い油膜が金属と化学吸着して、プラスマイナスの電気を帯びているんです。だから物理的に拭いても取れないぐらい強いんですよ。分かりやすく言うと、いつまでも油っこい。少量でも油膜がずっと残るから、オイル自体が抵抗にならずに結果、早くなるんです」
油膜は潤滑油の機能で最も重要視される要素であり、その“強さ”においてBOREDは、他社の製品を圧倒している。こちらのBSLRは中粘度ながら、600~700キロの圧力にも耐えることができる優れものだ。
04
BOREDのの匠・その4
【 進化を続けるマルチパーパス 】
海水の数十倍の塩分濃度水溶液中に100時間放置しても錆が発生しない、真夏の高温・高湿度下でもオイルが垂れない、真冬の零下でも粘度変化が少ないなど……ブランド史上最高スペックであるBSLRの機能性は枚挙に暇がない。あらゆる状況下に対応可能なマルチパーパスな一本だが、現在進行形で進化を続けている。
「もう10回以上は改良してると思います。化学製品なので、研究の発展ともに、毎年いい製品になっていくんですよ。もちろん100年後は更によくなりますからね。その都度アップデートしています」
今では、創業当初に門前払いされていた化学メーカーからも、最先端素材のサンプルが送られてくるそうだ。内藤の技術に対するストイックな姿勢によって、このマスターピースはこれからも洗練を極めていく。
05
BOREDのの匠・その5
【 ノウハウを応用させた次なるマスターピース 】
マルチパーパスのBSLR以外にも用途別の逸品がラインナップしているのだが、内藤は常に新たな可能性を模索し、ニュープロダクトを生み出している。その中で現在、爆発的な人気を誇る撥水スプレーがある。
「これまで培って来た油性のケミカル用品の技術を活用して、何かやりたいと思った時に、撥水スプレーで強力なものってないなと思ったんです。これは、強力“耐久”撥水。水を弾くだけじゃなくて、その効果の持続力と復元力を最大限に高めました。テストの結果、世界で一番強いと思ってます」
例えば、ティッシュペーパーにミストして、くぼみに水を入れると2ヶ月以上ティッシュが浸水しない。さらに、メッシュ状のものにミストすると撥水成分が隙間に強く吸着し、本当に水を通さないのだから驚きだ。(写真参照)
2015年に発売され、すでに4万本以上を売り上げているそうだ。生産が追いつかず、量を倍にしても、毎月完売してしまうという。ガレージメーカーとしては異例の快挙である。
▼まとめ
世界一とうたえるクオリティはもちろんだが、BOREDの魅力は、内藤健一という男の心意気である。
「しょうがねぇな」と言いながら、修理代の払えない仲間の面倒を見始め、独学で化学を極めながら試行錯誤の末に、オリジナルオイルを開発した。「めんどくせぇな」と言いながらも、彼を慕う自転車乗り達に最高のチューンナップを行ってきた。整備業務を終了した現在も、「何年後でもいいから、気が向いたらお願いします」と、愛車を預けて行く客が後を絶たないそうだ。
「ひねくれてるから、皆があまり気にしないけど、実は重要な"間接"。そこを突き詰めたいんですよ。自分が死んだ後に、あの人のオイルすごかったねって思われるような物作りをしたい。要は褒められたいだけです」しかし、義理堅い彼の人柄を知れば、それだけではないと思えてくるはず。
口癖は、「舐められるぐらいキレイにしろ」。物が溢れすぎて、一つのプロダクトを大事にする気持ちが希薄になってしまう現代にこそ、オーバーホールという行為が重要だと語る。日本では古来より、万物に魂が宿ると考えられ、物を大切にすることが美徳とされてきた。音鳴りがなくなるチェーン、回転が止まらなくなるベアリング、サビなくなる金属。面白いほどパフォーマンスが向上しメンテナンスが楽しくなるツールを生み出すことで、内藤はユーザーの"物を大切にする心"をも育んでいる。
そんな、日本人らしいマインドが宿ったBORED製品は、まさに世界に誇るべきメイドインジャパンと言えるだろう。
◆Information
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