探検
Make & Play Yuki-Ita【前編】: 遊び道具を自分で作るということ
2月某日。北海道で開催された『Red Bull Yuki-Ita』に、約30名の参加者が集まっていた。板を自らの手でシェイプし、そしてその板で雪に乗る。小さく、静かで、でも奥が深い。そんな雪板の世界。
Written by 尾日向梨沙
読み終わるまで:3分Published on
Red Bull Yuki-Ita
Red Bull Yuki-Ita© Jason Halayko
朝8時。男たちは真剣な眼差しで、木材を選び、アウトラインを描き、
木を削り、思い思いの形にシェイプする。
スノーボードのような形をしているが、その形に決まりはない。
子供たちの自由研究のように、時には頭を悩ませ、
時には隣の人の作品を覗き込みながら、
自分のイメージを形にしてゆく。
彼らが作っているのは「雪板(ゆきいた)」というもの。
スノーボードに似ているけれど、
ビンディングはついてなく、エッジもない。
サーフボードやスケートボードのように、
足が固定されない状態で板に乗り、雪の上を滑るのだ。
スノーボードの原点とも言えるこの遊びは、
12~13年前から世界各地で静かに広まってきている。
どこの国の誰が火付け役ということもない。
それぞれの場所で、それぞれのスタイルで
木を削っては滑る。ごくシンプルな遊び方だ。
「雪板」の名付け親であり、長野をベースに
“MAKE雪板”の製作やワークショップを行っている
五明淳がその魅力を語る。
「これまで100台くらいの雪板を作ってきました。こんな風に滑れる板がいいなと思って作っても、滑ってみたら全然違ったり、トライアンドエラーが魅力の一つ。
ワークショップでは細かいことは教えません。自分のイメージを形にするのが雪板のおもしろいところ。木だから、滑ってみてからまた削ったり調整することもできるんです」
使用する木材や、形状、加工によって
当然、乗り味は変わる。
リーズナブルな材料で、1日で作る気軽な方法もあれば、
国産材を使い、何日もかけてシェイプする本格派もいる。
長野県小谷村をベースに活動する松浦将は、
林業に携わり、自分で切った無垢材を使って雪板を作っている。
「自分の暮らす地域で余った木材を活用して雪板を作り、その森で滑る。地産地消が理想です。最初の5枚くらいは大失敗だったけれど、1回うまく作れるとハマりますね。雪板はとにかく自由。何の決まりも制約もない、それが魅力です」
雪板は、既製品を購入して楽しむこともできる。
しかし、誰でもハンドメイドできる という部分に
この遊びの魅力が詰まっている。
Red Bull Yuki-Ita
Red Bull Yuki-Ita© Jason Halayko
Red Bull Yuki-Ita
Red Bull Yuki-Ita© Jason Halayko
朝早くから、黙々と雪板作りを進めていた男たちは、
午後にはデッキや滑走面に色をつけ、ニスを塗っている。
最初はただの木の合板だったものが、1日足らずで創り手の想いが宿り、
芸術品のような装いに仕上がった。
出来上がった雪板は十人十色。
どんな乗り味になるかは、作った本人もまだわからない。
明日、さっそく雪山で自作の板を使うのだ。
Red Bull Yuki-Ita
Red Bull Yuki-Ita© Jason Halayko
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