Gaming
洋書の良い所でまず浮かぶのは、そのデザインの良さだろう。だから英語が疎くても、写真が豊富だったりビジュアルデザインが良いと、思わず所有したくなる魅力を持っている。 以前のコラムではそうした見て楽しめるのが前提の、写真が豊富なアーカイブ系書籍を紹介したが、今回のテーマはずばり"マニアック"だ。
洋書(特にアメリカ製)の世界では、日本だったら実現しないようなニッチな企画の本が作られ、きちんと流通している。「この本を求めている人は果たして何人いるのか?」というようなレベルの本が、大型書店に平然と並んでいたりするのだ。とはいえ日本で出版するのとは違い、どんなにニッチな内容でも全英語圏の人が対象と考えれば、それなりにビジネスとして成立するのだろう。例え1パーセントの人が対象でも、全日本と全英語圏ではその分母が違うからだ。
そんなわけで、今回は洋書だからこそ出版できたのでは無いかと思われる、マニアックなビデオゲーム系書籍をご紹介。前回紹介した物より新しい出版物なので、amazon等で入手もしやすいはずだ。
『ART OF ATARI』
作者:TIM LAPETINO 出版社:DYNAMAITE
ページ数:352ページ 価格:$39.99
昨年出版されたばかりの本で、ハードカバーで判型も大きく、ページ数もたっぷり。持ったときズッシリと来る重さはまるで美術目録を思わせるが、この本はまさにアートに着目した一冊だ。その書名はズバリ『アート・オブ・アタリ』。
アメリカのゲームメーカー、アタリ社のアートワークを詳細に解説している本だ。しかもこの本が注目しているアートとは、いわゆるドット絵にフィーチャーした8BIT的なものではなく、ゲームソフトのボックスアートというから面白い。ゲームのグラフィックが貧弱だった時代、ゲームのパッケージやイラストは、そのゲーム内容からイメージを膨らませたイラストやグラフィックデザインが担っていた。この本はその手描きイラストやグラフィックデザインに注目しているのだ。
プラモデルの世界等では既にボックスアートがジャンルとして注目されているが、遂にゲームソフトの世界でもボックスアートがこうして一冊にまとめられる時代が来たのかと思うとなかなか感慨深い。とはいえこの本はボックスアートを並べてお終いの本ではなく、アタリ社の歴史、歴代ハードの紹介、デザイナーの紹介と読み物パートも充実。
『ATARI GAME OVER アタリ ゲーム オーバー』という映像作品にもなった、ゴミ捨て場のゲーム発掘プロジェクトも記事としてフォローしている。ちなみにこの本の作者は、現在続編となる『ART OF ATARI POSTER COLLECTION』を製作中。本当ならこの2冊が揃った時に紹介したかったのだが、発売が順調に遅れているようなので、それはまたの機会にさせていただく。
『THE 100TH GREATEST CONSOLE VIDEO GAMES 1977-1987』
作者:BRETT WEISS 出版社:Schiffer
ページ数:240ページ 価格:$34.99
NESカートリッジ風に仕上げた表紙ビジュアルが特徴の、2014年刊行の一冊。1977年から1987年にリリースされた、100本の8BIT家庭用ゲーム機のソフトを紹介する本なのだが、面白いのはこの本は"ベスト100"や"トップ100"といった基準ではなく、"グレイテスト100"という独自の物差しで100本のゲームを選出しているところだ。
筆者は他にも数多くのゲーム系書籍の執筆を手掛けていて、この世界に長年精通していることからその審美眼は確かなわけだが、あくまでそのパーソナルな視点での100本チョイスというのが、日本とは違うノリとも言えるだろう。とはいえ誌面上では"なぜこのゲームを選んだか"の理由を明確に記入しているほか、"惜しくも掲載に至らなかった次点100本"もリスト化しており、読者からの「あのゲーム入ってないじゃん!」というクレームに対する予防線もバッチリ張ってある。
掲載ゲームはアタリ2600、アタリ5200、アタリ7800、コレコビジョン、インテレビジョン、ベクトレックス、オデッセイ、そしてNESと8BIT戦国時代のマシンが揃い踏み。基本はテキストベースの読み物だが、パッケージやマニュアル、画面写真などビジュアルも多めに挿入されており、軽くだがプライスガイドとしての情報もフォローしているので、なかなか手間暇の掛かった本になっている。そして何より、筆者のブレットさんのゲーム愛の結実を感じる一冊だ。
『I AM 8-BIT』
作者:JON M.GIBSON 出版社:CHRONICLE BOOKS
ページ数:156ページ 価格:$22.95
今回紹介する本の中で、最も変わり種なのがコレ。サブタイトルは『ART INSPIRED BY CLASSIC VIDEOGAMES OF THE '80S』となっていて、'80年代ビデオゲームからインスパイアされて作られた、アート作品の写真集となっている。
というわけで表紙がいきなり手榴弾をベースにしたミズ・パックマン! その他にもハンター・S・トンプソンが『ダックハント』を遊んでいるものや、『アステロイド』のベクターグラフィックをわざわざ手描きペイントで再現したものなど、この時代のビデオゲームが好きならニヤケが止まらない傑作揃い。
中には立体作品もあり、この本には実に70名ものアーティストの作品が収録されている。刊行は2006年とやや古いが、現在もネット上で購入可能。このアートブックには2010年刊行の続編、『SUPER I AM 8-BIT』も存在するのだが、こちらは部数が少ないのか流通量が少なく、筆者もまだ未入手。これが手に入ったら是非また紹介させていただきたい。
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