A runner drinking water during a marathon
© ©Virgin Money London Marathon
マラソン

マラソン:水分補給パーフェクトガイド

適度な水分補給はレースの勝利に不可欠だが、最低限の補給量は? 水分不足のまま走り続けるとどうなるのだろうか? 栄養学の専門家にアドバイスを求めた。
Written by Howard Calvert
読み終わるまで:7分最終更新日:
数カ月トレーニングを重ね、所定のプログラムを無我夢中でこなしてきた。
フルマラソンレースでベストパフォーマンスを発揮するために、ベッドでまだ寝ていたい早朝のランニングや毎週日曜日のロングランセッションにも取り組んできた。
厳格な食事計画もフォローし、自分に合ったシューズやウェアの選定も終え、さらにはレース前夜・レース中の栄養補給プランも万全に整えた。
それでもまだ考えが及んでいないことがひとつある。水分補給だ。
レース当日の朝まで水分補給について忘れているランナーは少なくない。成人の身体の60〜65%は水分が占めていることを考えると、水分補給に関する準備不足はランニングのパフォーマンスを大きく左右する可能性がある。
そこで、レース前夜・レース中・レース後のタイミングでどのように、そしてどれだけの水分を補給するべきなのかについて、スポーツ&パフォーマンス栄養士のウィル・ガーリングにアドバイスを求めてみることにした。

必要最低限の水分補給量を知る

デスクワーク中心の成人は体重1kgあたり0.033㎖の水分を補給すべき

デスクワーク中心の成人は体重1kgあたり0.033㎖の水分を補給すべき

© Steve Johnson / Unsplash

人間の身体がどれだけの水分を必要とし、1日にどれだけの水分を補給すべきかについては、矛盾するアドバイスが複数存在する。
しかし、ガーリングは大まかな目安として、デスクワーク中心の現代人は体重1kgあたり0.033㎖の水分を毎日補給すべきだとしている。たとえば、通常の気温で特に身体を動かしていないなら、体重70kgの成人男性1日に2.31ℓの水を飲む必要がある。
厄介なのは、フルマラソンに必要な水分補給量の算出だ。
「ランニングで必要とされる水分補給量は、個人の発汗率によって変動します」とガーリングは切り出す。
「また、暑さや湿度、運動強度などにも影響を受けます。ともあれ、大まかな指標としては、1時間で400〜800㎖の水分を補給すれば十分でしょう」

発汗率を測定する

発汗率テストを行い、自分に最適な水分補給ストラテジーを導き出そう

発汗率テストを行い、自分に最適な水分補給ストラテジーを導き出そう

© Guido Mieth / DigitalVision / Getty Images

自分に最適な水分補給量を算出するより正確な方法がある。ガーリングは、発汗率テストを受け、1時間のエクササイズで自分が流す汗の量を測定すれば、その分を補完するために必要な水分補給量が分かるとしている。
「自分の発汗率を測定するには、レースペースで60分ランニングします。ランの前に、何も身に着けていない状態で体重を測定してください。また一定量の水分(例:500㎖)を用意し、ランニング中に飲みきるようにしましょう」
「ランを終えたら、ウェアを全て脱ぎ、タオルで身体を乾かしてから再び体重を測定します。ラン前後の体重差が、レースペース1時間あたりの平均発汗率(所定の湿度と気温条件下)を示します」
このテストを行う理由は、レース中に体重を2%以上減らさないようにするためだ。
レース中の体重減少率が2%を上回ると、レースが辛くなったり、ペース維持に苦しんだりしてしまう可能性がある。この水分量は体重×0.02で導き出せる。つまり、体重70kgの成人男性なら水1.4ℓ以上を失わないようにする必要がある。
「水500㎖を飲んで走った体重70kgの成人男性の発汗率テスト後の体重が69.5kgなら、所定の湿度と気温条件下での1時間レースペースランで1ℓ分の水分を失うことが分かります」とガーリングは説明する。
「1時間で500㎖の水分補給しか行えば、体重減少率2%に相当する約1.5ℓの水分を約3時間のランで失う計算になります」

マラソンレース当日

尿の色から体内の水分量が分かる

尿の色から体内の水分量が分かる

© Richard Baker / Corbis Historical / Getty Images

ガーリングは、複数の研究からマラソン直前の過度な水分摂取には効果がないことが明らかになっており、マラソンレース当日も普段のラン前と同量の水分を摂取するのが最善策だとアドバイスを送る。
「レーススタート3時間前から、電解質タブレットを含んだ水600㎖を飲み始め、尿の色が透明になるまで飲み続けましょう。尿が透明にならないなら、さらに400㎖を追加します」
尿の色は、体内の水分量をチェックする優れた方法だ。尿の色が濃いようなら、体内の水分が不足していることを意味する。また尿の色が透明に近いなら、体内に水分が足りていることを意味する。

レース当日の天候に対応できるようにしておく

天候への順応は難しいが、レースペースでのトレーニングが役立つ

天候への順応は難しいが、レースペースでのトレーニングが役立つ

© ©Virgin Money London Marathon

ロンドンマラソンが同マラソン史上最高気温を記録した2018年からも分かる通り、レース当日の天候がどうなるのかは予想しにくい。
「普段のセッションからレースペースでランニングしておくと、身体を順応させやすくなります」とガーリングは語る。
「とはいえ、レース当日の気温が高いなら発汗率も上昇するので、必要な水分補給量も変化することを意識してください」

喉の渇きを感じてからの水分補給は手遅れ

少量の水分をこまめに補給し続けることで脱水症状を未然に防げる

少量の水分をこまめに補給し続けることで脱水症状を未然に防げる

© ©Virgin Money London Marathon

「喉が渇いてから水分を補給している状態はすでに軽度の脱水症状に陥っている可能性があります」とガーリングは説明する。
「発汗率テストに基づく適量の水分を一定ペースで摂取し、体重減少率が2%を上回らないように注意すべきです」
250㎖ボトルで統一されているロンドンマラソンのように給水所の水が同じサイズなら、水分補給量を正確に把握する目安として利用できる。自分が走るマラソンで用意される水のサイズや量をチェックしておくのはグッドアイディアだろう。

電解質バランスの重要性

電解質の不足は疲労やめまい、またはそれ以上の最悪の結果を招きかねない

電解質の不足は疲労やめまい、またはそれ以上の最悪の結果を招きかねない

© ©Virgin Money London Marathon

脱水症状水分過多を示す兆候は無数に存在する。また、血清ナトリウム濃度が低下してしまう低ナトリウム血症は、水分過多・不足の両方で発症する。
ガーリングが説明する。
「ここで主な問題となるのは、電解質バランスです。電解質バランスが崩れると体液が脳へ向かい、感覚異常や精神錯乱、全身の脱力感、衰弱、脳卒中、昏睡、さらには死に繋がる浮腫を引き起こします」
水分を1%失うごとに心拍数が5〜8BPM上昇している場合は要注意だ。
ランニング中の電解質摂取は極めて重要だ。ガーリングが説明を続ける。
「普通の水では、電解質を含む飲料ほど効率的な水分補給ができません。また、低ナトリウム血症は、電解質を摂取しない水を過剰摂取すると発症します。体内の電解質バランスが崩れ、体液中の電解質濃度が低下してしまうのです」
血清ナトリウム濃度の低下率は事前に測定できますが、顔やウェアの表面が塩をふいているなら、汗で失われる塩分が多いということになります」
ガーリングは3時間以内のエクササイズなら水1ℓあたり0.5g〜0.7gのナトリウムを含ませ、3時間以上のエクササイズなら、ナトリウム摂取量を追加すべきだとしている。一般的な電解質タブレットは約0.4gのナトリウムを含有している。

エナジードリンクは頼れる味方

IRONMANなどの長距離レースではエナジードリンクが配給される機会も多い

IRONMANなどの長距離レースではエナジードリンクが配給される機会も多い

© [unknown]

エナジードリンクには電解質が含まれているだけでなく、炭水化物も含まれているので、体内のグリコーゲン貯蔵量(通常2時間のエクササイズで枯渇する)の補給をアシストする。血中のグルコース濃度が保たれれば、ハンガーノックを防げる。
1時間あたり20gのエナジードリンク(または炭水化物)を摂取するだけでもパフォーマンスが向上します」とガーリングはアドバイスする。
「個人的には1時間あたり40〜60gのエナジードリンク摂取を推奨します。さらに高強度のランニングなら摂取量を増やしましょう」
「グルコースとフルクトース(果糖)の割合を2:1にしたものを摂取すれば消化力が高まり、胃腸障害の確率も下がります」

レース後の水分補給も重要

レースを終えたあとも電解質を含んだ水を飲むようにしよう

レースを終えたあとも電解質を含んだ水を飲むようにしよう

© RICOWde / Moment / Getty Images

フィニッシュラインを越えればレースは終わる。しかし、水分補給は終わらない。
ガーリングは「フィニッシュ後も、失われた分を補うことが極めて重要です。ですので、電解質を含んだ水をしばらく飲み続けましょう」とアドバイスしている。
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─[Information]─
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