A source of carbohydrate, bananas are a great marathon training snack
© Sandra Mu / Stringer / Getty Images
マラソン

【マラソン&ランニング】栄養管理・補給の基本を学ぶ

カロリー消費量から必須栄養素、レース前後の食事メニューから本番の補給方法まで、マラソンランナーが知っておくべき栄養にまつわる基本を学ぼう!
Written by Katie Campbell Spyrka
読み終わるまで:12分Updated on
経験豊富なマラソンランナーなら嫌というほど知っていることだが、最高のフィットネスと能力を持っていても、栄養管理が適切でなければベストパフォーマンスは発揮できない。
トレーニングのロングランは、方程式の一部でしかない。トレーニングでも、レースでも、ランナーのエンジンには燃料が必要だ。
マラソンランナーが知っておくべき栄養管理の基礎知識を紹介しよう。
01

カロリー摂取

毎回の食事でプロテインと炭水化物、そして多くの野菜を摂るようにしよう

毎回の食事でプロテインと炭水化物、そして多くの野菜を摂るようにしよう

© Getty Images

マラソントレーニングを始めたばかりなら、トレーニング量に合わせて日々のカロリー摂取量を調整していこう。
「エナジー摂取量を考慮せずにトレーニング量を増やせば、伸びが停滞し、健康全体に悪影響が出る可能性があります」と語るのは、The Sports Dietitianアレクサンドラ・クックだ。トップマラソンランナーたちの栄養管理を指導している彼女は、20回以上のフルマラソン完走実績を持つ。
ランニング1マイル(約1.6km)あたりのカロリー消費量は100〜120kcal程度で、長距離を走るのなら、これをベースにしたエナジー量を摂取する必要があるが、休息日にも摂取する必要がある。
「休息日はトレーニングをしませんが、体内はリカバリー最適化に取り組んでいます」とクックは語り、さらに説明を続ける。
「ですので、毎回の食事に必ずプロテイン炭水化物、そしてたっぷりのフルーツと野菜を組み合わせるように心がけましょう。フルーツと野菜は抗酸化物質(長時間のエクササイズが生み出す活性酸素から身体を守る物質)を豊富に含んでいます」
02

カロリー摂取量の目安

エナジーレベルを保つのに適切な栄養管理に取り組もう

エナジーレベルを保つのに適切な栄養管理に取り組もう

© Getty Images / Jordan Siemens

年齢性別で、適切なカロリー摂取量は異なってくる。自分に合ったカロリー摂取量を判断するための方法として、クックはスコフィールド方程式を用いたBMR算出法(Basal Metabolic Rate:基礎代謝量 / 何もしない状態で身体が必要とするカロリー量)を推奨している。
  • 男性(18歳〜29歳):15.1 x 体重(kg)+ 692 = BMR
  • 男性(30歳〜58歳):11.5 x 体重(kg)+ 873 = BMR
  • 女性(18歳〜29歳):14.8 x 体重(kg)+ 692 = BMR
  • 女性(30歳〜58歳):8.3 x 体重(kg)+ 692 = BMR
自分のBMR値を把握したら、次はその数値を以下のいずれかのアクティブレベルにあてはめて計算してみよう。
  • アクティブではない男性・女性:1.4 x 自分のBMR値
  • 適度にアクティブな女性:1.6 x 自分のBMR値
  • 適度にアクティブな男性:1.7 x 自分のBMR値
  • 非常にアクティブな女性:1.8 x 自分のBMR値
  • 非常にアクティブな男性:1.8 x 自分のBMR値
自分のアクティブレベルがどこにあてはまるか分からない場合、以下の目安を参考にしてもらいたい:
アクティブではない:ほとんど身体を動かさない仕事(例:デスクワーク)をしている人・計画立てられたエクササイズ習慣を持たない人
適度にアクティブ:身体を動かす機会がより多い仕事をしている人・平均週3回は適度な負荷でのエクササイズを行なっている人
非常にアクティブ:高負荷のエクササイズを1日に1時間以上行なっている人・肉体労働を仕事とし、尚且つ日常的なエクササイズを行なっている人
1週間で最長1時間のセッションを3〜5回行なうマラソントレーニング初期段階は、“適度にアクティブ” となる(ただし、トレーニングの頻度と量が同一でも、肉体労働を仕事としている人なら、“非常にアクティブ” となる)。
トレーニング量が増加し、高負荷・長時間のセッションに取り組むようになれば、カテゴリー区分は “非常にアクティブ” へ引き上げられることになるだろう。
“適度にアクティブ” な女性ランナーを上記の計算式にあてはめると、BMR値は1,385となり、この数値を1.6倍した数字、2,216kcalが1日に必要なカロリー摂取量となる。
03

炭水化物について

マラソンランナーにとってバナナは強い味方

マラソンランナーにとってバナナは強い味方

© Unsplash / Mike Dorner

炭水化物は、血糖として血流中を循環するグルコースと、体内に貯蔵される “最寄り” エナジー源グリコーゲンの2種類に分けられる。
では、トレーニング中のランナーは1日にどれほどの炭水化物を摂取すれば良いのだろう?
「トレーニング量が増加するに従って、炭水化物量も増加します」とするクックは、下のような、エクササイズ時間に応じた大まかなガイドを用意して、プロではない平均的なランナーに必要な炭水化物の必要摂取量を説明している。
  • 負荷の軽いエクササイズ(1日あたり1時間以内のエクササイズ):体重1kgあたり3〜5gの炭水化物
  • 適度な負荷のエクササイズ(1日あたり1時間以上のエクササイズ):体重1kgあたり5〜7gの炭水化物
  • 負荷の高いエクササイズ(1日あたり1〜3時間の適度〜高負荷のエクササイズ):体重1kgあたり6〜10gの炭水化物
  • 極めて負荷の高いエクササイズ(1日あたり4時間以上の高負荷エクササイズ):体重1kgあたり8〜12gの炭水化物
例として、1日約3時間のエクササイズを行なっているなら、下の公式で必要な炭水化物量が導き出せる:
[体重(kg)] x 6 = 推奨される炭水化物摂取量(g)
炭水化物はオーツ・ポテト・米・パン・バナナなどで摂取できる。
04

プロテインについて

大玉の卵1個は約6gのプロテインを含有

大玉の卵1個は約6gのプロテインを含有

© Unsplash / Erol Ahmed

マラソンの栄養学では、単に身体へ燃料を補給するだけでなく、筋肉の修復についても考慮する必要もある。そこで重要となるのがプロテインの存在だ。
「マラソントレーニングでは、筋肉がかなり痛めつけられますので、必ずプロテイン摂取量を増やすようにアドバイスしたいですね」と語るのは、オリンピック・アスリートなどの栄養指導を手がけるレネ・マクレガーだ(彼女自身もウルトラランナー)。
マクレガーは、体重1kgあたり1日1.4〜1.8gのプロテイン摂取を推奨している。
言い換えるなら、[自分の体重(kg)] x 1.4 = 推奨される1日あたりのプロテイン摂取量となるのだ。
プロテインは卵・ギリシャヨーグルト・魚・鶏肉・レンズ豆をはじめとした豆類から摂取できる。
05

ランニングセッション前の栄養補給

ロングラン前の朝食は炭水化物を豊富に含んだ内容にしよう

ロングラン前の朝食は炭水化物を豊富に含んだ内容にしよう

© Getty Images/Arx0nt

ロングラン前のパーフェクトな朝食メニューを見出すまでに試行錯誤が必要になる場合は少なくないが、基本的にはマラソン当日の食事に倣うようにしたい。
「こうすることで胃腸を慣れさせることができますし、それが自分に合っているという自信も得られます」としているマクレガーは、エナジーレベル持続のためにロングラン前は複合糖質を摂取するようにアドバイスしている。
「ポリッジにフルーツやナッツ、はちみつなどを加えたもの、あるいは全粒粉ベーグルにナッツバターやバナナを添えたものなどが良いでしょう」と彼女は語っている。
06

ランニングセッション後の栄養補給

アフターランのグリコーゲン回復にミルクは優れた効果をもたらす

アフターランのグリコーゲン回復にミルクは優れた効果をもたらす

© Getty Images / PeopleImages

当然だが、マラソントレーニングでは連日ランニングに取り組むので、迅速なリカバリーが最優先事項だ。マクレガーが説明する。
「1日90分以上ランニングすると、体内のグリコーゲン貯蔵量が激減するので、できるだけ早く補給することが重要です」
「エンデュランストレーニングではプロテインより炭水化物が重要ですので、炭水化物とプロテインの比率が3:1程度の食事が適切です」
ランニング後のリカバリーには牛乳が良い。マクレガーは「牛乳は吸収が早く、速やかにグリコーゲン貯蔵量を回復します」と説明している。
牛乳以外では、ミルクスムージーヨーグルトバナナ卵をのせたトーストなども優れている。またマクレガーは、主食にはベイクドポテトツナサラダを推奨している。
07

レース当日とその前後の栄養補給

レース前までに補給ストラテジーに習熟しておくべき

レース前までに補給ストラテジーに習熟しておくべき

© Alfred Jürgen Westermeyer/Red Bull Content Pool

今手にしているエナジージェルがレース24km地点でちゃんと機能するかどうかを知るには、事前に試すしかない。マクレガーが説明する。
「補給ストラテジーについて習熟を重ねておくことは、間違いなく最も重要な作業のひとつです。ランニング中に食べ物を摂取するのは自然な行為ではありませんが、胃腸を慣れさせることはできます」
最高の結果を得るためには、あらかじめレース前の食事内容に身体を慣れさせておき、レースの栄養摂取プランをトレーニングで再現しておくのが良い。
「身体が慣れていなければ、炭水化物を効率的に酸化させてエナジーに変えることが難しくなります」とマクレガーは説明する。
血糖はエナジー源になりやすいが、体内にはエクササイズ1時間半〜2時間分のエナジーしか貯蔵できないので、ランニング中の補充が不可欠だ。
トレーニング中やレース本番中にエナジー不足を感じているようなら、そのランナーにはハンガーノックの危険性が生まれる。
「人間の体内で極度に血糖値が低下すると、ハンガーノック現象が起きます」とクックが説明する。
「血糖値の低下はランニングのパフォーマンス低下をもたらし、極度の疲労感とモチベーション低下を伴います」
ハンガーノック予防策として、クックはマラソン開始20分前の栄養補給を推奨しており、レース中は1時間に30〜60gの炭水化物を補給するべきだと続ける(平均タイムが2時間〜3時間なら60gが推奨値)。
エナジードリンクエナジージェルエナジーバーなどは消化しやすい炭水化物補給源だが、胃腸が1時間以内に消化可能な炭水化物の量は60gなので、「多い方がベター」と考えるのは間違いだ。吐き気を感じてしまうケースもある。
「ランニング中に炭水化物を多く消化できないなら、自分が消化しやすい炭水化物を用意しましょう。パフォーマンス向上効果が確認できる最小量でもOKです」とクックは語る。
「エナジードリンクが好みなら、15分毎に6〜8回は口に含ませるようにしましょう」
最後になるが、水分補給も忘れてはならない。
マラソンレースは毎回コンディションが異なり、ランナーの発汗量にも個人差があるが、基本ルールとして15分毎に150mlの水分を補給することをクックは推奨している。3kmでコップ1杯の水分を摂るように努めよう。
主なスポーツ用補給食の炭水化物含有量:
  • エナジージェル:約22〜27g
  • エナジードリンク:約28g(250mlあたり)
  • エナジーバー:約42g(1パックあたり)
  • バナナ:約25g(1本あたり)
《レース3日前》
トレーニング中の軽食は「自分へのご褒美」も考えて

トレーニング中の軽食は「自分へのご褒美」も考えて

© Getty Images / Trudie Davidson

炭水化物を補給しようとするとパスタの大食いに頼りがちだが、グリコーゲン貯蔵量を増やしつつ膨満感を避けるためのベストソリューションは、レース3日前から食事に含まれる炭水化物の割合変化させることだ。
「実は『レース前は炭水化物をドカ食いすべき』というのは迷信です。それどころか、ランナーの胃にとっては最悪なことのひとつでもあるのです」とマクレガーは語る。
マクレガーは、日曜日がレース本番なら、木曜日・金曜日から炭水化物補給源を変えるのが良いとしている。
「普段はフルーツやプロテインバーを炭水化物の補給源にしているなら、モルトローフ2切れやレーズンパンなどに変えてみましょう。また、朝食メニューがナッツ&はちみつ入りのポリッジなら、ナッツの代わりにバナナを添えてみましょう」とマクレガーはアドバイスする。
マクレガーは、固形炭水化物を摂取したくないなら、フルーツジュースをミネラルウォーターで割ったものを飲むようにすれば膨満感に悩まされずに炭水化物が補給できると続けている。
《レース前日》
レース前日の夕食はボリュームを控えた内容にしよう

レース前日の夕食はボリュームを控えた内容にしよう

© Getty Images / kirin_photo

マラソンレース前日は昼食をメインに捉え、夕食はスイートポテトとスープ、パン少量など、量を減らして消化しやすい内容にすべきだとマクレガーは語る。
「多くの人々がレース前夜に食べ過ぎてしまい、全ての食べ物を消化しきれていない不快な状態で日曜日の朝を迎えています」
また、マクレガーは、レース48時間前には食物繊維と乳製品の摂取量を減らすことを推奨している。
《レース当日朝》
レース当日朝に緊張するのは当然 — リラックスして朝食を摂ろう

レース当日朝に緊張するのは当然 — リラックスして朝食を摂ろう

© Getty Images / Halfpoint Images

レース当日の朝に緊張するのは自然なことだ。リラックスして、消化しやすいものを食べるよう心がけよう。
「レースまでの数日間でグリコーゲン貯蔵量が十分に満たされているのなら、レース当日朝のメニューがそこに与える影響はほとんどありません」とマクレガーは語る。
とはいえ、普段から食べ慣れたメニューにしておくべきなのは言うまでもない。
マクレガーは「普段の朝食がトースト&ピーナッツバターなら、それでOKです。 “管理できる部分は管理しておく” が重要です。普段通りの食事で栄養を補いましょう」と語る。
食べ慣れている朝食を、レーススタートの1時間〜4時間前には食べておこう。
「車での移動中に食べるのなら、その状況で食べやすいものを用意してください」とマクレガーは付け加えている。
《レース後》
レース後の食事内容は自分へのご褒美を最優先に

レース後の食事内容は自分へのご褒美を最優先に

© Caiaimage/Sam Edwards/Getty Images

フィニッシュラインを超えたら、あとはお祝いの時間だ。レース直後の夕食は、リカバリーに向けた厳密な栄養管理について考え過ぎず、シンプルにレースが終わったことを祝おう。
「トレーニング中は、翌日のトレーニングのためにリカバリーを最大限まで高める必要がありますが、通常、フルマラソン完走後は数日の休息日を設けますので、リカバリーを意識した食事内容にしなくてもOKです」
「いずれにせよレース終了後数時間以内に食事を摂ると思いますので、それでリカバリーに必要な栄養をカバーできます」とマクレガーは説明している。
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─[Information]─
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