Six-time premier-class champion Marc Márquez
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MotoGP
【遂に復活!】マルク・マルケス:MotoGP完全復帰までの道のり
ワールドチャンピオンに8回も輝いた経験を持つスペイン人トップライダーがついにMotoGPの舞台へ帰ってきた。複数回の手術と長期のリハビリを経て復帰した絶対王者の舞台裏の戦いを振り返る。
Written by Ildefonso García
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マルク・マルケス

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2020年7月、マルク・マルケスはキャリア最悪の怪我を負い、それから9ヶ月後のMotoGP 2021シーズン第3戦ポルトガルGPで復帰した。スペインが世界に誇るライダーは、復帰が大幅に遅れたのは100%の状態で戻りたかったからだと説明した。
偉大なる王者と優れた競技者の違いは、前者が怪我からより強くなり、より熟成し、より大きな野望を持って復帰しようとするところにある。我々ファンにとって今回の復帰は最高のニュースになったが、ライバルたちにとっては恐ろしいニュースとなった。
125ccで1回、Moto2で1回、MotoGPで6回、計8回のワールドタイトルを手にするためには、類い稀なライダーになる必要があるが、マルク・マルケスはひとりの人間が同時に持ち合わせるには相当な苦労を伴う要素 – 才能努力知性攻撃性経験勇気、そしてほんの少しの童心 − をすべて揃えている。
マルケスはより強くなって戻ってくる
マルケスはより強くなって戻ってくる

怪我をバネに成長

レプソル・ホンダに所属するマルケスのキャリアを振り返ると、相当数の怪我を負ってきたことが明確に理解できる。マルケスは肋骨骨折視界不良両肩の脱臼などを経験してきた。しかし、2020年、それらすべての怪我を上回る怪我を負ってしまった。それがモーターサイクル・レーシングシーンでは滅多に見られない “上腕骨骨折” とこれに起因する複数の合併症だった。
しかし、マルケスはこのような怪我を重ねてきたにもかかわらず、彼特有のスピードと攻撃性を顕示し続けてきた。たとえば、2019シーズンのマルケスの “最低成績” は、アメリカGPのリタイアを除けば “2位” だった。このようなリザルトによって、マルケスはモーターサイクルシーンで神格化されている。
レースはいくつもあるけれど身体はひとつしかないことを学んだ
マルケスはトレーニングで落車するまで自分を限界をプッシュし、そこから学習することで勝利を掴んでいるが、ライバルたちが持ち合わせていない資質がもうひとつある。それは、並のMotoGPライダーならまずクラッシュするはずの姿勢から持ち直せる異常なセーブ能力だ。
ホンダマシンのフロントエンドは制御が難しいとされているが、このバイクを彼ほどマスターしているライダーはいない。ゆえに、マルケスのセーブ能力は “神レベル” と評価されており、彼のバイクコントロールは物理法則を無視しているように思える時さえある。
2019シーズン・カタルーニャGPを戦うマルケス
2019シーズン・カタルーニャGPを戦うマルケス
今振り返ると、人体で4番目に長い骨である上腕骨の手術からたった4日後にMotoGPに復帰するというのは無謀なアイディアだった。そしてマルケスは長期離脱を活かして人間として、そしてライダーとしてさらに成長した。今後もマルケスは経験を活かしながらさらに強いライダーへ成長し続けるだろう。
怪我から学んだこと? まったく予想していない瞬間にすべてが終わる可能性があるってことさ。でも、僕のスタイルは変わらないよ
今回は9ヶ月ぶりのマルケスMotoGP復帰を記念して、マルケスのキャリア最大の危機となった今回の長期離脱のすべてを振り返ると同時に、Moto2時代に経験したもうひとつの "怪我からの復活" も紹介しよう。
01

右上腕骨折

2020年7月19日、スペインGPのヘレス・サーキットでマルケスは転倒リタイアを喫した。レースをリードしていたマルケスはオーバーランで順位を大幅に下げたあとそこから一気に3番手まで追い上げたが、ここで長期離脱に繋がる転倒リタイアを喫した。そしてこの転倒でマルケスの腕がバイクに直撃して右上腕を骨折。マルケスは苦しい1年を送ることになった。
ヘレス・サーキットを攻めるマルケス
ヘレス・サーキットを攻めるマルケス
02

最初の手術

2020年7月21日、マルケスは最初の手術を受けた。プレートで骨折部分が補強され、橈骨(とうこつ)神経に影響はないという診断だった。バルセロナのデシェウス大学病院で行われた手術は、ハビエル・ミル医師が率いるチームとバレラ医師によって進められた。
03

アンダルシアGP

火曜日に手術を受けたマルケスは、その週末のアンダルシアGPの決勝レースを欠場したが、この決断をしたのは土曜日のフリープラクティス2本を終えたあとだった…。ギリギリまで欠場を決めなかった本人は次のようにコメントを発表した。
「ここまでの間に医師団の意見と自分の身体の声に耳を傾けてきた。今朝は体調が良く、怪我の治り具合に満足できたが、攻めるタイミング、つまり、一貫性を犠牲にしてアグレッシブなライディングをしようとすると、腕に力が入らないことが分かった。炎症なのか、暑さなのか、原因は分からないが、身体の声を優先しなければならないことは理解できた」
04

2回目の手術

2020年8月3日、マルケスは埋め込んであるチタン製プレートが負荷の蓄積で痛んでしまったため2回目の手術を受けることになった。
ミル医師は「マルク・マルケス氏は13日前に手術を受けましたが、本日再手術を受けました。手術部位付近への負荷の蓄積でインプラントが傷み、インプラント周囲破砕が起きてしまいました。そのため、チタン製プレートを除去し、新しいプレートで置換しました」とコメントを発表した。
05

3回目の手術

2020年12月初頭、マドリッドのルーベン・インターナシオナル病院でマルケスは3回目の手術を受けた。今回の手術は右上腕の技関節症を治療するためだった。この手術で埋め込まれていたプレートが除去され、腸骨稜の移植片で置換された。手術は8時間に及んだ。
06

ようやく快方へ

2021年3月22日、3回目の手術から15週間後、マルケスはトレーニングを再開し、怪我も快方へ向かっていった。しかし、レーシングアクションからの長期離脱と完治までに必要な時間を考慮した医師団は、腕を過酷なレース環境のリスクからなるべく遠ざけるために、段階的な復帰を進言した。
07

オールクリア

2021年4月9日、医師団はついに手綱を緩め、マルケスに4月18日に開催される第3戦ポルトガルGPへの出場を許可した。
モーターサイクルのコンペティティブシーンで怪我は不可避だ。そして、レプソル・ホンダが世界に誇るマルケスも例外ではない。
しかし、彼のキャリアを振り返ってみれば、大きな後退を強いられても、マルケスは必ずさらに強く、さらに速くなって戻ってくるということが理解できる。
08

左目のトラブル

右上腕骨折はマルケスにとって過去最大の負傷となったが、2011年にも同レベルの怪我を負って数ヶ月間医師団の世話になった経験がある。長期離脱は2011年10月21日に始まった。ステファン・ブラドルとMoto2タイトルを争っていたマルケスは、次の瞬間までそのタイトルを手中にしているかのように見えた。
マレーシアGPのマーシャルたちがコース上のパドルについての情報をライダーたちに提供するのを怠ってしまったことが遠因となり、プラクティス中にスリックタイヤで走行していたライダー数人がパドルでスリップし、転倒してしまったのだ。マルケスはその中のひとりだった…。
視力トラブルについて記者会見をするマルケス(2011年)
視力トラブルについて記者会見をするマルケス(2011年)
転倒後、マルケスは目まいを憶えるようになったため、医師団からホテルで休息するように指示された。しかし、決勝日を迎えてもマルケスの視力は元に戻らず、欠場が決まった。本人は「100%の視力に戻る必要がある。時速200km超で走るんだからね。自分の安全だけではなく、他のライダーの安全についても考えなければならない」とコメントを発表した。
この視力トラブルはさらに長引き、マルケスは最終戦バレンシアGPを含む残り2戦を欠場して、Moto2タイトルをブラドルへ譲った。タイトルは逃したが最優秀新人賞(ルーキー・オブ・ザ・イヤー)を獲得したマルケスは「総合2位で終わったけれど、素晴らしいシーズンだった」と振り返った。しかし、視力は快方へ向かわなかった。
09

左目の手術

2012年1月16日、マルケスは3ヶ月間悩まされた視力トラブルを解決するためにオスピタル・クリニック・デ・バルセロナで手術を受けると、それから3ヶ月も経たない4月8日、Moto2 2012シーズンがカタールで開幕するやいなや、マルケスは優勝して復帰を自ら祝った。
結果、2012シーズンは上出来以上となった。マルケスは9勝を挙げ、チームメイトの2位ポル・エスパルガロに59ポイント差を付けてMoto2タイトルを獲得した。
バレンシアGPでMoto2タイトル獲得を祝うマルケス(2012年)
バレンシアGPでMoto2タイトル獲得を祝うマルケス(2012年)
スペイン・サルベーラ出身の偉大なるチャンピオン、マルケスはキャリアを通じて複数の大怪我を負ってきたが、いつも必ずより強くなって復帰する。英国人ジャーナリストはマルケスの復帰を次のように表現している。
「ネコが戻ればネズミたちは踊りを止める」
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