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30歳になったマリオ:15の功績

任天堂のスターが30年間で成し遂げた功績を振り返る。
Written by Damien McFerran
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30歳になったマリオ:15の功績

30歳になったマリオ:15の功績

© Nintendo

2015年9月、ビデオゲームにおいて間違いなく最も有名なキャラクターが30歳を迎え、任天堂もその素晴らしい瞬間を、『マリオ』シリーズにおける最も革新的なタイトルのひとつ、 『スーパーマリオメーカー』のリリースで祝った。このタイトルは自分だけの『マリオ』のステージを作成できるというWii U専用タイトルで、任天堂の2015年最大のリリースのひとつだが、言うまでもなく、イタリア人の配管工が世間を驚かしたのはこれが初めてのことではない。
ゲーマーたちは『スーパーマリオブラザーズ3』や『マリオカート』、そして新しい次元に勇敢にジャンプした『スーパーマリオ64』などを憶えているはずだが、任天堂のマスコットである彼は、ゲーム業界にそれよりも大きなインパクトを与えており、PlayStationやPCなどに対する我々の期待を変えてきた。今回はそのマリオの15の偉大な功績を振り返っていく。

誰もがヒーローになれることを証明した

マリオはスーパーマンではなく、彼には数々の秘密兵器を擁する バットケーブもない。また、トニー・スタークや彼のアイアンマンスーツと張り合える存在でもない。マリオとは、別世界に放り込まれた普通の男だ。そして配管工としての技術がその世界で偶然役立ったことで、さらわれた姫を何度も助けることになっただけだ。彼の登場以来、『Heavy Rain 心の軋むとき』や、『Dead Space』など「普通の男」が主人公の作品が数多く生まれたが、そのすべての主人公は特殊な環境に置かれているだけのただの一般人だ。

2D横スクロールアクションを主流にした

もちろん、『マリオ』シリーズが登場する前から横スクロールアクションゲームは存在していたが、そこまで圧倒的な強さを誇るジャンルではなかった。しかし、『スーパーマリオブラザーズ』がリリースされた直後、その状況は一変し、その後10年間に渡り、2D横スクロールアクションはゲーマーを自負する層における主要ジャンルとなった。『ソニック』シリーズ、『スーパードンキーコング』、『Zool』、『Superfrog』、『Gex』、『Bubsy the Bobcat』、『ロックマン』シリーズなど、マリオに続いた横スクロールアクションの秀作の数は数え切れない。そして、その歴史は任天堂がニンテンドーDSで『New スーパーマリオブラザーズ』をリリースした時にもある程度繰り返された。横スクロールアクションリバイバルは今でも続いており、Kickstarter上では数多くの新しいクラシックが生み出されている。

過去は過去でしかないことを示した

マリオが我々の知っている、そして我々が愛している今のマリオになる前、この任天堂のマスコットは「ジャンプマン」という名前で親しまれていた。1981年のスマッシュヒットで、任天堂のビデオゲームで初めて成功を収めた『ドンキーコング』のプレイヤーキャラクターが彼だ。しかし、頑固な猿と熾烈なライバル関係にあるマリオだが、近年はその態度をある程度軟化させており、『マリオ vs. ドンキーコング』シリーズで敵対関係が依然として続いていることを示してはいるものの、自分のデビュー作の共演者である猿とは友好関係を築いている。

パワーアップを紹介した

『スーパーマリオブラザーズ』は、プレイ自体を変えるパワーアップアイテムを初めて起用した横スクロールアクションのひとつだった。そしてその長い歴史を誇るアイテム群は、マリオがキノコを取って巨大化する姿を見た時のあの素晴らしい気持ちを思い出させてくれる。もうひとつのハイライトと言えるアイテムがファイヤーフラワーで、これを取ると向かってくる敵に対して火の玉を吹けるようになった。

完全に新しい敵の倒し方を生み出した

敵の頭を踏みつけて倒すというアイディアは、今では常識に思えるかも知れないが、この敵を確実に倒せるテクニックを生み出したのがマリオだ。これは宮本茂のゲームデザインの典型であり、シリーズを代表する要素のひとつだが、のちに無数のゲームがこのシステムを恥じることなく流用した。SEGAの『カメレオンキッド』やSonyの『ジャンピングフラッシュ!』シリーズなどがこのシステムを真似ているが、あまりにも数多くのゲームが使用しているため、もはやこれが『スーパーマリオブラザーズ』というたったひとつのゲームから始まったという事実を忘れてしまいがちだ。

裏技を一般的なものにした

『スーパーマリオブラザーズ』は裏技やイースターエッグを生み出した史上初のゲームではないが、これらをゲームプレイの核となる部分に盛り込んだという意味では史上初と言ってしまって良いだろう。あのワープゾーンは『マリオ』シリーズを代表する特徴となり、『スーパーマリオブラザーズ3』ではこのコンセプトがひとつ上のレベルへ進化し、プレイヤーは特定のアイテムでゲームを一気に先へ進められるようになった。アイテムや機能をゲーム内に隠すというアイディアは非常に秀逸で、ファンはすべての裏技を見つけ出そうとゲームの細部までチェックすることになり、多くのプレイヤーがすべてのスターを集めうと躍起になった。現在はほとんどすべてのビデオゲームに、このようなアイテム収集要素や隠し機能が組み込まれているが、それらはすべて『マリオ』にヒントを得たものだ。

状況に応じたコスチュームを導入した

マリオはパワーアップだけではなく、衣装も着替えて特殊能力を得る。『スーパーマリオブラザーズ3』ではタヌキスーツが導入された他、最近の作品『スーパーマリオ3Dワールド』では猫にもなれる。

16ビットの世界を永遠に変えた

1991年にリリースされた 『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』は、マリオにとって初の本格的なライバルとなり、実際、グラフィックは『マリオ』シリーズよりも美しかったとも言えるが、ゲームプレイそのもので言えば、スーパーファミコンの『スーパーマリオワールド』が間違いなく勝者だろう。広大な世界と、他の大半のゲームよりも豊富なバラエティを誇ったこのゲームは、今でも史上最高のゲームのひとつとされており、しかも素晴らしいことに16ビット機スーパーファミコンのローンチタイトルだった。

別のゲームに挑み、新たなジャンルを生み出した

マスコットキャラクターが自分のジャンル以外のゲームに登場することを一般的にしたのもマリオが初めてだった。 『スーパーマリオカート』はその素晴らしい伝統が始まった作品であり、キノコ王国の住民たちに小さくて素早いゴーカートのハンドルを握らせた。この16ビットのクラシックゲームは今でも続くこのシリーズを確立させた存在で、容赦ない時間の流れにも負けず、今でも非常にプレイしやすいゲームとして残っている。一方、『クラッシュ・バンディクー レーシング』や『ソニック&セガ オールスターズ レーシング』シリーズなどは年々縮小している。

サブキャラにスポットライトを当てた

『スーパーマリオワールド』は任天堂の誇る功績のひとつであり、それゆえに、続編の制作を難しくしていた。しかし例のごとく既存のルールが取り壊され、『スーパーマリオ ヨッシーアイランド』ではかつて相棒だった ヨッシーに主役の座が与えられた。この作品におけるマリオは端役 − この作品では赤ちゃん − だったが、幼い姿で一応登場はしていたにせよ、変化のためにスポットライトを他に譲る姿は勇敢だった。そして彼がスポットライトを譲ったのはこの作品だけではなかった。マリオは、ワリオ(『ワリオランド』、『メイド イン ワリオ』)やルイージ(『ルイージマンション』)、ピーチ姫(『スーパープリンセスピーチ』)、キノピオ(『進め!キノピオ隊長』)などシリーズの他のキャラクターにも道を譲っている。バラエティの豊富さにおいて、キノコ王国に叶う世界は存在しないに等しい。

3Dアクションを先導した

2D時代の多くのマスコットたちは3Dの世界への移行に失敗しており、実際、ソニックもまだ正式な3D作品がないとする人たちも多いが、マリオはこの細心の注意が求められる新世界への移行に予想通り見事に対応した。『スーパーマリオ64』は、それまでの他のマリオシリーズと同様、ビデオゲーム史のゴールデンクラシックとして考えられている作品で、任天堂はここでも、何がゲームを楽しくしているのかについて自分たちが一番良く理解しているということを示した。真の2Dアクションゲームを登場させた時と同様、マリオは3Dアクションゲームの革命にも貢献した。

スポーツゲームに貢献した

マリオのスポーツにおける才能はゴーカートだけではない。ここ数十年に渡り、彼はゴルフ、テニス、サッカー、そしてほぼすべてのオリンピック種目に参加してきた。任天堂はスポーツゲームのジャンルに数々の『マリオ』シリーズを投下し、マリオの知名度を使うことで、彼がいなければスポーツゲームをプレイしないようなプレイヤーたちをこのジャンルに引き込んできた。SEGAやUbisoft、そして『Angry Bird』のRovioまでもがこのスタイルを真似ている。

『スマブラ』を生み出した

『大乱闘スマッシュブラザーズ』はマリオにおいてはやや珍しいスピンオフシリーズと言えるが、最も高い人気を誇るシリーズのひとつでもあり、世界最大級の格闘ゲームイベントやeSportsのトーナメントの主力にもなっている。まさに「大乱闘」なカオス感を擁するこの格闘ゲームには、近年こそソニックやロックマン、そしてパックマンなども登場するようになっているが、タイトルの通り、当初はマリオを前面に押し出した作品としてリリースされた。

3Dアクションに革命を起こした

名作『スーパーマリオ64』の続編の開発は簡単ではなく、その最初の挑戦となったゲームキューブ用『スーパーマリオサンシャイン』は『64』を上回るインパクトは残せなかった。しかし、Wiiの『スーパーマリオギャラクシー』、『スーパーマリオギャラクシー2』では、任天堂は同じ轍を踏むことなく、我らがヒーローに星(星ごとに重力が異なる)を飛び回れる能力を与えることで、彼を新しい次元へと連れ出した。「古きしきたりへ挑戦し、世間を驚かせる」という任天堂の特徴を示すもうひとつのクラシックだ。

プレイヤーに自分の世界を委ねた

『スーパーマリオメーカー』は、誇り高いマリオの長い歴史における最新作で、プレイヤーたちにステージを作成し、他のプレイヤーとシェアできる機会を初めて与えるタイトルになった。自然に感じられるタッチスクリーンによるステージ作成は、Wii U GamePadの紹介としては完ぺきで、また、ゲーム内は様々な仕掛けや挑戦に溢れている。更に重要なのは、この作品が非常にフレッシュでエキサイティングに感じられるという点で、ゲーマーの平均年齢よりも年上のキャラクターの作品としては上出来だ。マリオの次の30周年が楽しみだ。