スイミング

世界で最も危険な7つの海峡

Written by Emma Sheppard
世界で最もタフな遠泳スポットとして知られる7つの海峡を一気に紹介!
世界で最もタフな7つの海峡の横断を目指す
世界で最もタフな7つの海峡の横断を目指す
World Open Water Swimming Association(世界オープンウォーター・スイミング協会)の創立者として知られるスティーブン・ミュナトネスは、2008年に「オーシャンズセブン(Ocean’s Seven)」を制定した。いわば、山岳界における世界7大陸の最高峰登頂チャレンジ「セブンサミッツ(Seven Summits)」のオープンウォーター・スイミング版というべきもので、これは各大陸に点在する7つの海峡をすべて遠泳によって横断しようという壮大なアドベンチャーだ。これまでにセブンサミッツすべての登頂に成功した登山家は少なくとも350名存在するが、オーシャンズセブンをすべて達成したスイマーはわずか6名に留まっている。どの順番で各地の海峡にチャレンジするかはスイマーが自由に決めることができるが、統一レギュレーションとして英仏海峡の遠泳ルールが適用される。スイマーは標準的なスイムスーツとキャップ、ゴーグル、耳栓の着用以外は認められていない。
1. ノース海峡
遠泳に挑むキム・チェンバース
遠泳に挑むキム・チェンバース
北アイルランドとスコットランドの間にまたがるノース海峡は荒海と低い海水温、クラゲ、強い海流を誇る難所だ。オーシャンズセブンをすべて制覇した経験を持つ唯一の女性スイマー、キム・チェンバースはこのノース海峡に挑む6ヶ月前からお湯のシャワーは一切浴びないようにし、低温環境へ適応する準備を進めてきた。2014年に彼女がこの海峡の遠泳横断を試みた際には、実に200回以上もクラゲに刺され、フィニッシュ後には解毒処置のためにそのまま入院しなければいけないほどだった。この海峡は21マイル(約33.8km)もの距離を持ち、遠泳での横断が最も難しい海峡と言われている。
2. クック海峡
ニュージーランド北島と南島の間にまたがるクック海峡。その距離は約23kmと、このリストの中では比較的短いものだが、海水は非常に冷たく、海域には普段からクラゲやサメがうようよ生息している。英国出身スイマーのアダム・ウォーカーは、イルカの群れと泳げばサメからの攻撃を防げるとしているが、その真偽のほどは確かではない。周辺の天候は変わりやすく、低体温症に万全の注意を払う必要がある。
3. モロカイ海峡
カイウイ海峡という名でも知られるこの海峡は、モロカイ島の西岸からオアフ島の東岸の間にまたがっている。強い海流と水深(最も深い部分で701m)に注意しなければならないのはもちろんだが、長距離遠泳の大会などを運営統括しているWorld Professional Marathon Swimming Federation(世界プロフェッショナルマラソンスイミング連盟)はこの海域に生息する「非常に攻撃的な海洋生物」についても注意を促している。前出のアダム・ウォーカーがここを泳いだ際にはカツオノエボシ(編注:英名Portuguese man o’war。非常に強い猛毒を持ち、電気クラゲとの別名を持つ)に刺されてしまい、彼は脊椎の感覚を麻痺させてしまった。
4. 英仏海峡
本稿執筆時点では、英国とフランスの間に約34kmに渡って跨がる英仏海峡の単独遠泳横断に成功したスイマーは1,619名にも上る。最年少での横断達成者は11歳、最年長は73歳だ。尚、英国のChannel Swimming Association(海峡スイミング協会)が認定する定員7名という遠泳パイロット(編注:横断挑戦者のガイドや安全確保を目的とするエスコートスイマー)になるためには、ゆうに2年間はかかる。キム・チェンバースは同地でのリレーレースへの参加後、ほとんど何の準備もなしに単独横断に挑んだが、7時間半が経過した時点で断念せざるをえなかった。彼女は「準備無しでもいけると思ったのが大きな間違いね。あれは経験の少なさと若さゆえの過ちだったわ」と振り返っている。
5. カタリナ海峡
サンタカタリナ島とカリフォルニア州ロサンゼルスの間にまたがるカタリナ海峡の距離は約33.7kmで、距離や海流などの条件は先に紹介した英仏海峡と似ているが、こちらのほうが水温は高い。2013年にこの海峡の遠泳横断を成功させた米国人スイマーのスティーブ・ロブルスはこの海を「ラフ」と簡潔に表現している。彼は「どうすればビーチにたどり着けるかも分からなかった。というのも、僕は完全に疲労困憊の状態だったからね」と振り返っている。横断達成直後、低体温症のために病院へ搬送され医師の診察を受けた彼は、軽度の心臓麻痺さえ起こしていた。
6. 津軽海峡
日本の本州と北海道の間にまたがる津軽海峡は、その予測不可能なコンディションで恐れられている。キム・チェンバースが津軽海峡の横断に挑んだ際、監督を務めた人物はこの海に吹く強風と荒れた波を指して「まるで竜のようだ」と評した。幸いにも、チェンバースがこの海峡に挑んだ2014年は穏やかなものに終わり、本人は「おそらく、竜は眠っていたのね」と挑戦後に振り返っている。アダム・ウォーカーが津軽海峡に挑戦した際は、顔を何度もクラゲに刺され、大きな波にさらわれるなどの困難を経験しており、本人は「あんなにハードな遠泳はこれまでの人生で経験したことがなかった」と振り返っている。津軽海峡は最狭部で18.7kmだが、小泊岬(青森県側)と白神岬(北海道側)を結ぶ約28kmのルートが選ばれることが多い。
7. ジブラルタル海峡
スペインとモロッコの間にまたがり、ヨーロッパとアフリカが出会うこの海峡では船舶の往来が多いばかりか、サメも生息し、更にはコンディションの予測も難しいため、挑戦者たちは緊張感に満ちたスイムを迫られる。ここでの遠泳チャレンジはタリファ島をスタート地点に設定することが多く、総距離は16km~19km程度になる。ほとんどのスイマーは4時間前後で横断を達成するが、海流のコンディションによっては8時間かかる場合もある。2008年にSports Reliefの募金活動のために、オリンピックのボート選手ジェームズ・クラックネルと共にジブラルタル横断に挑んだデビッド・ウィリアムズは、4時間半で横断に成功した。このリストの中では最も距離が短い部類に入るが、ヨーロッパからアフリカへの遠泳は、低い水温に耐えながら、前述のように航行する多数の船に細心の注意を払わなければならない。英仏海峡では「最悪の事態に備えながら、ベストを目指せ」というモットーが頻繁に叫ばれているが、その言葉はこのジブラルタル海峡にもそのまま当てはまる。