Ken Roczen races at Round 5 of the AMA Pro Motocross Championships at Muddy Creek Raceway in Blountsville, Tennessee, USA on June 23,  2018.
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モトクロス

モトクロスライダー用ストレングストレーニングガイド

バイクを自在に操るためには、高いフィットネスが必要だ。モトクロスライダーに求められる4つの重要筋群とその強化方法を紹介しよう。
Written by Alan Milway
読み終わるまで:6分Published on
モトクロスバイクを前に進めるのはエンジンだが、バイクの挙動とスピードを制御するのはライダーの筋力とフィットネスだ。高いフィットネス強靭な筋力を備えれば、モトクロスを乗りこなす能力は大いに向上するのだ。
フィットネスコーチのアラン・ミルウェイは、MTBやモトクロスで活躍する若手アスリートたちのフィットネスとストレングスをピークへ導くことにキャリアを捧げており、13年の指導経験を通じてワールドチャンピオン6人を輩出している。
フィットネステスト / プラン / トレーニングの豊富な経験を持つミルウェイは、トレーニングアドバイスを求める人物として適任だ。
そのミルウェイが、モトクロスライダーにとって重要な4つの筋群を、重要とされる理由や最適なエクササイズ方法と共に紹介してくれた。

脚:バイクとのコンタクトポイントを強化する

下半身はバイクとの重要なコンタクトポイントだ。
ライダーは下半身を使って衝撃を吸収し、下半身経由でその反動をバイクに返すことで乗車姿勢を維持する。また、コースを走行するライダーは立つ・座るを繰り返すことになるため、脚が疲れてしまうとテクニックの精度に大きな影響を及ぼすことになる。
【脚の筋力アップに最適なエクササイズ】
脚の筋力を高めるには、スクワットの様々なバリエーションの組み合わせが効果的だ。
スプリット・スクワットは、重いウエイトを持ち上げることなく脚の筋力とその持久力を高める効果的なエクササイズだ。また、肩の前でダンベルもしくはバーベルを抱えて腰背部と体幹の筋力を高めよう。
【脚の筋力をテストする方法】
カーフレイズで脚の筋力レベルを確認する

カーフレイズで脚の筋力レベルを確認する

© Alan Milway

下半身では、ふくらはぎの筋力と持久力も重要だ。片脚25回ずつのカーフレイズにトライしてみよう。
まず、壁に向かって両手をついてバランスをとる。台の上に立ち、かかとを上げて爪先立ちの姿勢を取る。そしてかかとを台のエッジより下げる。25回終わったら足を替えて繰り返す。

体幹安定性:体幹の強さがテクニック向上に繋がる

胴体、あるいは “体幹” は、ライダーがバイクに力を伝える基盤になる。
疲れてくると乗車姿勢が変わってくる。体幹が弱いと腕だけで支えるようになってしまい、結果的にさらなる疲労とテクニックの精度低下を招く。また、体幹が弱いとライディング時に腰痛を誘発してしまう。腰痛はライダーにとって最も避けたいものだ。
【体幹強化に最適なエクササイズ】
パロフプレスを説明するアラン・ミルウェイ(中央)

パロフプレスを説明するアラン・ミルウェイ(中央)

© Alan Milway

一定の姿勢を維持するエクササイズや、様々な姿勢を維持しつつそこからパワーを生み出すエクササイズにチャレンジしてみよう。
プランク / パロフプレス / デッドバグは体幹を強化しつつ良好な姿勢を維持するための優れたエクササイズだ。
【体幹の強さをテストする方法】
サイドプランク

サイドプランク

© Alan Milway

左右15回ずつのサイドプランクにトライしてみよう。
まず、左肘を床につけたサイドプランクの姿勢を取り、右手は腰に添え、右肘は天井を向くようにする。尻を持ち上げてしばらくその姿勢を維持し、ゆっくりと腰を落として元の姿勢に戻す。これを左右15回ずつトライして比較してみよう。

腕:筋力と持久性を高める

アームパンプ腕上がり)はライダーが最も恐れる言葉だ。アームパンプになると握力が弱まり、コントロールも低下し、ペースはみるみるうちに崩壊する。
これまでは、腕の強化はアームパンプを誘発するので好ましくないとされてきたが、これは誤った認識だった。前腕部に大きな筋肉をつけてしまうと虚血状態になり、早い段階でアームパンプになるのは確かなのだが、握力や筋持久力を含めた腕 "全体" を鍛えれば、コントロールが向上し、アームパンプも回避できる。
【腕の筋力アップに最適なエクササイズ】
Supine Pulls

Supine Pulls

© Alan Milway

自重エクササイズは上半身を鍛えるのに優れている。
チンアップ(逆手懸垂)、ディップススーパイン・プル(仰向けの姿勢からバーを両手で握り、腕を使って身体を引き上げる)などは握力と腕の筋力を高めるのに効果的で、ウエイトプレートの追加やウエイトベストの着用で負荷を高めることもできる。
【腕の筋力をテストする方法】
10分間でチンアップを50回こなせるかトライしてみよう。簡単そうに聞こえるかもしれないが、実際に試してみれば楽ではないことが分かるはずだ。
ここでのチンアップは、肩幅より少し広い幅でバーを順手で掴み、ぶら下がった状態から身体を引き上げることだ(編注:順手での懸垂は通常プルアップと呼ばれ、本来のチンアップは逆手で行う)。必要を感じたら休みつつ、10分間でどれくらいの回数をこなせるかチャレンジしてみよう。ストップウォッチを用意しよう。

背中:正しい姿勢がパーフェクトなライディングを実現する

腰は多くの人が日常生活で悩みを抱えている部分だが、モトクロスライディングでは腰をかなり酷使することになる。
姿勢が悪い背中の筋力低下に繋がり、バイクに乗っている時に背中が丸くなっていると、良好な乗車姿勢を維持する能力が限られてしまう。またハンドルバーを押し引きする力の限界も低くなってしまう。
【背中の筋力アップに最適なエクササイズ】
Alan Milway coaching Hip bridge

Alan Milway coaching Hip bridge

© Alan Milway

デッドリフトヒップブリッジグルートハムレイズはポステリオール筋肉群(身体の後ろ側にある筋肉群)の筋力を高めるのに優れており、姿勢向上効果も絶大だ。先述した体幹エクササイズも、背筋強化に役立つ。
【背中の筋力をテストする方法】
モトクロスライディングでは背中に大きな負荷がかかるため、背中の筋力の確認は重要だ。仰向けになり、片脚をまっすぐ上げて、ハムストリングスの硬さをチェックしてみよう。硬いと背中に悪影響を与えるので、左右の脚を比較しながら、ストレッチを加えていこう。
また、“バードドッグ” と呼ばれる片手・片膝で自重を支えるムーブメントにもトライしてみよう。両膝をついて床に四つん這いになり、左手を前方に伸ばすと同時に、右脚を後方に伸ばす。背中は水平を保つように心がけよう。実際にやってみると難しいのが分かるはずだ!
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