MotoGP™は世界最長のモータースポーツ世界選手権だ。1949年の第1回開催以来、正式名称FIMロードーレース世界選手権ことMotoGP™はスリリングな2輪レースを世界各地で展開しており、近年そのスケールは過去最高規模に達している。
3月から11月まで開催される2025シーズンは全22戦が5大陸で開催される予定で、スペイン・バレンシアが最終戦の舞台に設定されている。
2024シーズンはホルヘ・マルティンがワールドチャンピオンに輝き、プライベーターからワールドチャンピオンに輝いた史上初のライダーとなったが、5マニュファクチャラー(アプリリア / ドゥカティ / ホンダ / KTM / ヤマハ)・11チーム・ライダー22名が参戦している2025シーズンは誰が頂点に立つのだろうか?
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最も大きな成功を収めているライダーは?
1949年からこれまでに31名がワールドチャンピオンの称号を手にしてきた。
2025シーズンは、過去6回(2013年・2014年・2016年・2017年・2018年)ワールドチャンピオンに輝いているマルク・マルケスが、近年最強のライダーであるバレンティーノ・ロッシの7回に並べるかどうかに注目が集まっているが、マルケスは第13戦終了時点で単独首位に立っており、その可能性は極めて高い。
しかしながら、MotoGP™史上最多タイトル数はジャコモ・アゴスチーニの8回で、アゴスチーニは350ccクラスを含めると合計15回もタイトルを手にしている。では、どうやってこの偉業を達成できたのだろうか? 実は彼が活躍していた当時は同一レースの複数のクラスに同時出場できたのだ。
MotoGP™の主な記録
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MotoGP™最僅差レース
MotoGP™最大の魅力はスタートからフィニッシュまで続く接戦だ。たとえば、2016シーズンのイタリアGPは3クラスの1位と2位の合計タイム差がわずか0.087秒しかなかった歴史的なレースとなり、Moto3ではトップ5が0.077秒差に収まるという超僅差のレースが展開された。
MotoGP™最僅差レースは2006シーズンのポルトガルGPで、トニ・エリアスが0.002秒差でバレンティーノ・ロッシを制して優勝した。
このレースのエリアスは3位でファイナルラップに突入したあと、第1コーナーでロッシとケニー・ロバーツ・Jrをアウトブレーキングでかわして首位に立った。その後、ロッシがエリアスの前に出たが、最終コーナーでエリアスが再び前に出てそのまま逃げ切った。尚、エリアスにとってこの勝利はMotoGP時代初・唯一のものとなった。
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MotoGP™用バイクのスピードとパワー
MotoGP™用バイクは最大250〜300馬力を出力できる。車重は157kgで最高時速は350kmに達する。パワーウェイトレシオは1:1なので、1kgごとに1馬力出力する。加速力はサーキットごとに異なるが、基本的に超高速だ。
ちなみにMotoGP™用バイクは私たちが購入できるときがある。たとえば、KTMは、2019シーズンにポル・エスパルガロが駆った2台のRC16をレーシングスーツとサイン入りヘルメットを付きで販売した。エスパルガロはこのシーズンで100ポイントを稼ぎ出す活躍(総合11位)を見せたため、このマシンには購入価値が十分にあったと言えるだろう。
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MotoGP™史上最高速度
MotoGP™最高速が記録されるのはムジェロ・サーキットのストレートだが、2023シーズンにブラッド・ビンダーがこのサーキットで開催されたイタリアGPでMotoGP™史上最高速度記録366.1km/hを叩き出した。また、2024シーズンのプラクティスでポル・エスパルガロが同速度を記録した。
では、なぜムジェロでこのような好記録が出たのだろうか? その理由はムジェロのストレートがMotoGP最長(1.14km)であることと、ブラッド・ビンダーが遅めのブレーキングから急加速するスタイルのライダーのため、このストレートと相性が良かったことにある。
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MotoGP™最速サーキット
MotoGP™では、アッセンがスピードの殿堂と呼ばれている一方、高速記録が出やすいのはムジェロとされている。では、平均速度が高いのはどのサーキットなのだろうか? そのトップ3はいずれもヘアピンが存在しない代わりに、ブレーキングがほとんど必要ない高速コーナーを擁している。
トップ3の内訳を見ていこう。3位は平均時速181km・最高時速340.6kmのシルバーストン(英国)、2位は平均時速183.5km・最高時速356.4kmのフィリップ・アイランド(オーストラリア)、そして1位は平均時速194.8km・最高時速337.5kmのチャーン・インターナショナル・サーキット(タイ)だ。
レッドブル・リンクと同じく、チャーン・インターナショナル・サーキットも複数のストレートとテクニカルセクションを擁しているが、ストレートの距離が長めでコーナー群はスピードを落とさず旋回できる。また平坦で、レッドブル・リンクのようなアップダウン(と美しい景観)もない。
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MotoGP™用バイクが速い理由
平均時速183 kmのMotoGP™用バイクには選手権最大となる1000ccのエンジンが積まれており、250〜300馬力を出力できる。しかし、このような馬力は全体のパフォーマンスの一部を担っているに過ぎない。パワーよりもバランスが重視されているバイクならコーナーリングスピードが高まり、ラップタイムが短縮できるようになる。
まず、エンジンマネージメントシステム(EMS)が重要だ。EMSはエンジン出力をスムーズにしてくれるため、ライダーたちはバイクのバランスを取りやすくなる。また、タイヤによるメカニカルグリップと空力性能によるグリップも全体のスピードに大きく関係してくる。タイヤの空気圧やコンパウンド、エアロパーツの角度やサスペンションのセッティングなどの細部の調整も同じく重要だ。
しかし、何よりも重要なのは各ライダーのパフォーマンスだ。バイクをどのようにコントロールして、自分の体重をどのように分配・移動するのかが勝敗を分ける。そのようなパフォーマンス項目の中で最も目を引くものがコーナーでバイクを倒す角度(リーンアングル)だろう。
最大リーンアングル記録は2019年のフィリップ・アイランドでのタイヤテスト中にマルク・マルケスが記録した70.8度だ。MotoGP™クラスのライダーはレース中に約66度までバイクを傾けてコーナーリングしている。
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高温・大音量
MotoGP™用バイクは最大128dBの轟音でサーキットを周回する。これに比べれば最大104dBの削岩機は静かなものだ。また、調理用グリルの250℃に対してMotoGP™用バイクのブレーキディスクは最高750℃に達する。MotoGP™用マシンはエンジンの回転数も高く、一般的な洗濯機の1000rpmに対して最高19,000rpmに達する。
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