入念なクリーニングはコンポーネントの寿命を延ばしてくれる
© Denis Klero/Red Bull Content Pool
MTB

MTBチェーン基本講座 − 選び方からメンテナンスまで −

愛車に合ったチェーンの選び方からメンテナンス方法まで、MTBドライブトレインの最重要パーツを長持ちさせるための基礎知識とヒントを紹介!
Written by James McKnight
読み終わるまで:7分Published on
どんなMTBライダーにも愛車のチェーンを交換するタイミングは必ず訪れる。では、どのようなMTB用チェーンを購入すれば良いのだろう? また、正しいチェーンを選んだあとはどのように交換とメンテナンスを行えば良いのだろう?
様々なチェーンメーカーやドライブトレインブランドが存在する上に、バイクによってギアの枚数も異なるので、愛車に合った正しいチェーン選びは厄介なものに思えるかもしれない。しかし、幸いなことにMTBのチェーン選びは思っているほど複雑ではない。
今回のMTBチェーン用ガイドは新しいチェーンの購入時だけでなく、チェーンを交換してメンテナンスを行う際にも役立つはずだ。

チェーンの交換時期は?

破損する前にチェーンの交換時期を判断する方法はある

破損する前にチェーンの交換時期を判断する方法はある

© Tom Webster/Creative Commons

チェーンが岩にヒットしたり、チェーンリングが変形したりして完全に破断してしまったなら新品に交換する必要がある。壊れた部分だけを取り外して再装着するのも可能だが、新品チェーンに交換するのが最善だ。
しかし、MTBのチェーンとドライブトレインは使用し続ければ摩耗するので、使っているだけでも交換する必要が生じる。
チェーンの寿命はライディングコンディション、ドライブトレインのメンテナンス頻度、ドライブトレインにかかる負荷の大小によって変わるので、具体的な限界走行距離は設定されていない。
ギアが頻繁に滑ったりギア抜けしたりするようになったら、チェーン交換のサイン
とはいえ、MTBのチェーン交換時期を判断するための簡単な方法がいくつか存在する。ギアが頻繁に滑ったりギア抜けしたりするようになったら、チェーン交換のサインと言えるだろう。
ツールを使わなくても、リアディレーラーの下部とフロントチェーンリングの間を通っているチェーンの下側を引っ張ってみればチェーンの状態がチェックできる。
リンクが緩くなっていて異音がしていたり、チェーンが明らかに伸びていたりするようなら、チェーンが摩耗している可能性は高い。
リンク間の隙間を計測してチェーンの磨耗度を確認できる専用ツールもある。これらのツールは比較的安価で購入できるが、使用頻度は高くないので、御用達のバイクショップに愛車を持ち込んでチェックを依頼するのがベストだろう。

愛車に適したチェーンの選び方は?

昨今のMTBはフロント1X仕様が主流で、ギア枚数は10S / 11S / 12Sのいずれかとなる

昨今のMTBはフロント1X仕様が主流で、ギア枚数は10S / 11S / 12Sのいずれかとなる

© Jannik Wüster/Unsplash

昨今のMTBの大半は1X(ワンバイ)ドライブトレインが採用されており、フロントはチェーンリング1枚だけになっている(かつては2枚または3枚のフロントチェーンリングが一般的だった)。その一方、リアカセットワイドレンジに設定されている。
一部のメーカーはありとあらゆる魅力的な製品名と共に様々な価格帯のチェーンを用意しているが、愛車に合った正しいチェーンを選ぶのは思ったほど難しくはない。最も重要なのは、愛車のギア枚数に適合しているチェーンを選ぶことだ。
MTBは10速 / 11速 / 12速がほとんどで、チェーンには対応するギア数が明記されている。愛車のギア枚数を把握し(リアカセットのギア枚数を数え、その数をフロントチェーンリングの枚数と掛け算すれば導き出せる)、その数に適合しているチェーンを選ぼう。

オススメのチェーンブランドは?

ベストパフォーマンスを求めるなら、ドライブトレイン全体を同じブランドで揃えよう

ベストパフォーマンスを求めるなら、ドライブトレイン全体を同じブランドで揃えよう

© Kakadu / Flickr

最高の性能を得たいのなら、愛車のドライブトレインのメーカー(一般的にはSRAMまたはShimano)と合わせるのがオススメだ。とはいえ、これは必須ではない。チェーンがギア枚数に適合している限り、どのメーカーの製品でも問題なく機能する。

異なるメーカーのドライブトレインのコンポーネントを組み合わせても問題ない?

異なるブランドのチェーンやチェーンリング、クランク、カセット、ディレーラーなどを組み合わせても問題ない。とはいえ、ベストパフォーマンスが得たいなら、すべてのコンポーネントを同一ブランドで揃えるのがオススメだ。

MTB用チェーンを発売している代表的なメーカーは?

MTB用チェーンを製造している代表的なメーカーとしては、SRAMShimanoをはじめKMCWippermannSunRaceなどが挙げられる。

チェーン交換と同時にカセットも交換するべき?

摩耗して汚れたカセット

摩耗して汚れたカセット

© Ben Wightman / Flickr

チェーンを交換するたびにリアカセット(ギアスプロケット)も交換する必要はない。歯が削れていたり、カセットが大幅に摩耗にしたりしているならチェーンと合わせて交換すべきだ。

eバイク専用チェーンは存在する?

答は「イエス」だ。eバイクのペダリングアシスト機能はドライブトレインへの負荷を増やすため、高負荷に対応できるeバイク専用チェーンが発売されている。

古いチェーンの取り外し方法は?

専用のチェーンツールを使えば、チェーンリングを繋げているピンを抜いてチェーンを分解できる。しかし、ツールを使わずに取り外しできるチェーンもある。「クイックリンク」を採用しているチェーンなら素手だけでチェーンを分解できる。
クイックリンクの取り外しは実に単純明快で、大きい穴の方にピンをスライドさせればチェーンが外れる仕組みになっている。ところが、この作業は常時簡単ではない。
そこで、プライヤーを使えばクイックリンクの両端をスライドしやすくできる。チェーンリングの歯がチェーンと噛み合った状態でプライヤーの先端をチェーンに差し込んだとプライヤーを締めれば、クイックリンクを解放ポジションへスライドさせやすくなる。
正式なマルチツールにはチェーンツールも備わっている

正式なマルチツールにはチェーンツールも備わっている

© Dieter Laskowski / Flickr

ピンを一気にチェーンから抜いてしまうのはNGだ。再装着が必要になった時のためにピンは外側のプレートに残しておこう
正式なマルチツールにはチェーンツールも含まれている。チェーンツールはチェーンのコネクトピンを抜く際に使用する。チェーンツールのガイド(チェーンを定位置に保持するのに役立つ)に合わせ、ピンがまっすぐに抜けるようにしよう。
ピンを一気にチェーンから抜いてしまうのはNGだ。再装着が必要になった時のためにピンは外側のプレートに残しておこう。

正しいチェーン長の設定方法は?

クイックリンクはメンテナンスが楽だが、チェーン交換時にツールを用意する必要がなくなるわけではない。市販されているチェーンは様々なバイクサイズやギアのセットアップに合わせられる長さなので、チェーンツールでカットする必要がある。
新品チェーンの長さを決める最も簡単な方法は、交換前のチェーンの長さを測っておくことだ。
チェーンの長さが適正ならディレーラーがロックされていなくてもテンションがかかる
ディレーラーはロックされていない状態でも一定のテンションがかかっているべき

ディレーラーはロックされていない状態でも一定のテンションがかかっているべき

© Marv Watson/Red Bull

トレイルライディング中にチェーンが切れてどこかに落としてしまったなら、フロントチェーンリングとリアカセットの最も外側のスプロケットに新しいチェーンを掛ける必要が出てくる。ディレーラーにチェーンを通したら、ディレーラーとチェーンリング下側でチェーン両端を引っ張ろう。
チェーンの長さが適正ならディレーラーがロックされていなくてもテンションがかかるので、慎重にチェーンリンクを外しながら必要なテンションを得ていこう。あとでリンクを追加するのは難しいので、チェーンを短くし過ぎないように注意したい。
チェーンの交換が完了したら、バイク(フルサスの場合)のリアサスペンションが完全に圧縮された時にチェーンリングとリアカセットの距離が最長になっていることと、チェーンが短すぎないことを確認しよう。
チェーンが短すぎるとサスペンションの完全な圧縮を妨げてしまい、最終的にはチェーンが破断するおそれがある。

チェーンの正しいメンテナンス方法は?

MTBのチェーンをできるだけ長く使えるようにするには、正しいメンテナンスを施すのが一番だ。
クリーンで十分に潤滑油が浸透したチェーンは寿命が延びるだけでなく、ドライブトレインのパフォーマンスに明確な違いを生み、静粛でスムーズなペダリングとギアシフトや摩擦の低減をもたらしてくれる。
入念なクリーニングはコンポーネントの寿命を延ばしてくれる

入念なクリーニングはコンポーネントの寿命を延ばしてくれる

© Denis Klero/Red Bull Content Pool

泥や古くなったオイル、砂粒などをブラシやディグリーザー液を使って綺麗に落とせる専用のチェーンクリーニング用ツールも売られている。Muc-Offが発売しているX-3 Dirty Chain Machineがそのようなチェーンクリーニングシステムの代表格だ。
専用クリーナーを購入する予算がなくても、チェーンにこびりついた汚れは使い古しの歯ブラシやごくベーシックなディグリーザーで落とせる。
チェーンが新品同様の輝きを取り戻したら、忘れずに注油しよう。良質なチェーンオイルは高価ではなく、環境に優しい生分解性オイルを含めた様々な選択肢が存在する。