ウィップやスクラブ、ジャンプなどスピード感のあるMTBスキルと比べると、ブレーキングはおそらく派手さに欠けるスキルだ。しかし、限界領域でのライディングでは、まず完璧な制動を身につける必要がある。
効率的なブレーキングはコーナーリングスピードの向上にも繋がり、あらゆる種類のトレイルでのコントロール能力が上達する。今回はMTBのブレーキングスキルを極めるための5つのヒントを紹介しよう。
1. フロントブレーキは制動・リアブレーキはスピードコントロール
この原則はあらゆる乗り物の減速の基本だ。フロントブレーキは制動の大部分を担っている。その理由とは? 物体のスピードを低下させれば、荷重は前方に移動し、リアのグリップが抜ける代わりにフロントホイールのグリップが増加するのだ。
もちろん、リアホイールも重要な役割を担っているが、より効率的なブレーキングを実現するにはまずフロントブレーキを使った制動に慣れておくことが必須だ。
2. 一気ではなくゆっくりと
銃のトリガーの引き方ではないが、ブレーキレバーで素早く正確にブレーキ入力を調節する方法を学ぶことは非常に重要だ。
フロント・リアを問わず、ディスクブレーキに全力で急激に入力してしまえば、ホイールが簡単にロックしてしまう。
特にフロントブレーキのロックアップは転倒などのリスクを招きやすい。
減速する際、レバーをゆっくりと絞りながらブレーキ圧をかけるよう練習してみよう。こうすれば減速の度合いを掴みやすくなり、仮にホイールがロックしても直感的にブレーキを弱めてロックを回避できる。
3. 減速はコーナー進入前に完了させる
フロントホイールは減速と方向転換という2つの役割を持っている。そのため、ブレーキングと方向転換を同時に行うことは非常に困難だ。コーナーはスピードを落とすための場所ではなく、あくまでもスピードを乗せていくための場所と考えたい。したがって、コーナーリング時にタイヤとサスペンションが最大限のグリップを得られるようにすべく、減速はバイクをターンインさせる前に完了するべきだ。
練習方法としては、まずトレイルの中で一番好きなセクションにある低速コーナーを見つけよう。バックパックやボトルを置いてブレーキングポイントの目印として使い、その位置をコーナーに対して近づけたり遠ざけたりしながら最適なブレーキングポイントを探ってみよう。最初は低速から始め、徐々にスピードと自信を得ていこう。コーナーリング中に微妙な調整のためにブレーキを使うのは構わないが、スピードを犠牲にしないように心がけたい。慌てずじっくり取り組むことこそ、スピードアップへの近道だ。
4. リアブレーキをロックさせるスライドはクールではない
リアブレーキを一気にかけて、リアをスライドさせながらコーナーリングすることがクールだと思い込んではいないだろうか? これは大きな間違いだ。このようなスライドはタイヤばかりかトレイルも傷つける。また、減速方法としてそこまで効率的でもない。一方、高い速度域でグリップ限界をコントロールするドリフトはクールなスキルで、単なるスライドとは断じて異なる。稚拙なスライドではなく、本格的なドリフトを学ぼう。
レバー操作に対してリアブレーキの効きがリニアではなく、突然ロックしてしまうようなら、ブレーキ調整もしくはパッド交換が必要かもしれない。
5. タイヤとフォークの空気圧を調整する
タイヤの空気圧はブレーキング時の減速性能に大きな違いを与える。内圧が高すぎるとロックしやすくなり、低すぎれば荷重を支える力が不足してしまう。エアスプリングフォークを使用している場合も、これと同じことが言える。
トレイルの同じセクションを何度も走り込みながらタイヤとサスペンションの空気圧を微調整し、その挙動の変化を感じ取るようにしよう。
ブレーキング豆知識:
- 現在のハイエンドなトレイル / エンデューロ系バイクでは4ピストンブレーキが主流だ。長く急傾斜なダウンヒルで走る機会が多い場合はこれにアップグレードしても良いだろう。
- ブレーキパッド交換は、最も費用対効果の高いアップグレードのひとつと言える。寒冷地でライディングする時はメタル製パッドに交換してみよう。メタル製パッドは速やかに熱が入るので、初期制動時の食いつきも良好だ。
- ブレーキレバーのリーチ量が調整可能な場合は、数クリックずつ回転させて調整してみよう。リーチを長くしすぎるとアームパンプ(腕上がり)を誘発してしまう恐れがあるが、近すぎるれば指を挟んでしまう恐れがある。
- 泥などで路面がぬかるんでいる場合、ブレーキング時にかかとを下げるようにするとリアホイールの食いつきの助けになる。