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はじめに
MTBクロスカントリーの元U-23ワールドチャンピオンで、シクロクロスとロードバイクでも活躍してきたトム・ピドコックは、シクロクロスではすでにエリートクラスで勝利を手にしている。では、MTBクロスカントリーマウンテンバイクのエリートクラスでも勝利を手にすることができるのだろうか?
答えは「まだ」だが、より正確に答えるなら「もうすぐ」だろう。先日ドイツ・アルプシュタットで開催されたUCIワールドカップに出場したピドコックは76番手からのスタートとなり、さらには途中でパンクに見舞われたものの、見事5位でフィニッシュした。ピドコックはこのレースでトップ16に入り、次戦ノヴェー・ムニェストのショートトラック出場権とメインレースのフロントロースタートを手にすることを狙っていた。
では、スタートループの混雑とオーバーテイクポイントの少なさで知られるアルプシュタットで、若き英国人ライダーはどのようにして順位を5位まで上げたのだろうか? 本人に解説してもらった。
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レースプランを細かく決めすぎない
76番手からの5位フィニッシュを細部まで決められていたレースプランが導き出した結果と考える人もいるかもしれないが、ピドコックは、レースに向けた細かいチェックリストは特に用意していなかったとし、シンプルかつ冷静に走り続けることだけを意識していたと振り返っている。
「レースプランは特にありませんでした。意識していたのは “ストレスを感じ過ぎず、我慢強くチャンスを待つ” くらいでしたね。頑張り過ぎず、できるだけ首位に近づいてフィニッシュすることが目標でした」
このような意識がレースでのピドコックをリラックスさせた。目標が具体的ではなかったため、ピドコックは「目標を達成できなかったら?」というストレスを抱えずに走ることができた。
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後方からでも冷静かつポジティブにスタート
レースで成功を収めるためにはスタートを成功させる必要があると言われている。実際、金曜日に開催されるショートトラック(XCC)はこのアイディアを重視しており、このレースのトップ24には日曜日のメインレースでフロントローからスタートする権利が与えられる。
では、メインレースをかなり後方からスタートさせたピドコックは、自分の不利な状況をどのように捉えていたのだろうか? 本人は、まずポジティブな部分を見つけようとした。
「後方からのスタートにストレスを感じることはありません。あとは順位を上げていくだけだからです」
また、ピドコックは、コールアップ・ボックス(Call-Up Box:ライダーの出走確認が取られるエリア)へ向かってから指定されたローに並ぶというレーススタート前の一連のプロセスに振り回される代わりに、自分が良く知っていること、つまりシクロクロスでのスタート前のルーティンを繰り返した。
シクロクロスではコールアップ・ボックスが存在しないため、ピドコックは他のライダーと同じようにボックス内でターボトレーナーに乗ってスタートを待つことを回避し、レーススタート前に余計なことを加えないようにしたのだ。
ピドコックはすべてをシンプルに保つことを好んでいる。
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スタート直後にスペースを作る
ここまでは冷静さがカギだったが、レーススタート直後のポジション争いでも冷静さが重要になってくるのだろうか? ピドコックは次のように説明している。
「まずはトラブルなしでスタートを切ることが重要です。それから自分のスペースを確保してください。少し肘を張り、身体を左右に振りながらライディングするんです。そして前方にスペースを見つけたら、誰よりも先にハンドルバーをそのスペースへ突っ込みましょう。そのスペースに飛び込んでからファーストコーナーへ進入します。スタート直後は他のライダーたちが強引に突っ込んでくるので、まずは自分のスペースを確保しましょう」
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レーストラックに合わせてオーバーテイクする
素晴らしいスタートを切ったピドコックは、パワーとレースクラフトを活かして20位前後まで順位を上げてスタートループを終えた。しかし、その力強いライディングの裏には我慢があった。ピドコックは、無理矢理前に出ようとしてクラッシュやスタミナの浪費を招く代わりに、レーストラックのレイアウトを良く見てオーバーテイクしていくことが大事だとしている。
「レーストラックを走りながらスペースが生まれるタイミングを待つ必要があります。大きくゲインできるチャンスを待つんです」
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無理をしない
ピドコックはファステストラップに近いタイムを刻みながら順調に順位を上げていったが、残りのスタミナを意識しておく必要もあった。彼は自分のエフォートレベルをどのようにコントロールしていたのだろうか? 無理をしないで順位を上げていくことは可能なのだろうか?
「スピードとスタミナのバランスを取るのは難しいですね。アルプシュタットでは前半にかなり飛ばしました。それが後半に活きてくることが分かっていたので。ですが、少し飛ばしすぎてしまい、上位に追いついたあとが苦しくなりました。調子を取り戻すまでに1ラップかかりましたね」
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栄養・水分補給は集中が大事
レース中に調子を取り戻すのは簡単ではない。また、順位を上げ続けるためには、栄養・水分補給でエフォートを維持することが重要になってくる。アルプシュタットでは、メインレース当日の気温が高かったため、栄養・水分補給が特に重要になった。ピドコックは冷静にタイミング良くピットインして走り続ける必要があった。
「補給は非常に重要ですね。ピットに入ったら順位を上げることは一旦忘れます。自分に必要な栄養と水分を補給することだけを考えるんです」
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スタミナを管理する
ピドコックは上位に近づくほどオーバーテイクが難しくなるとしているが、パンクを乗り越え、表彰台が見えてきたアルプシュタットでは、その難しさを楽しんでいた。
レースでは最終盤のためにスタミナを残しておくことが重要だ。なぜなら、ファイナルラップでは残りのスタミナを上手く使ってできるだけ前に出ることが必要になってくるからだ。ピドコックは、そのようなレースプランを身体に覚えさせることが重要だとしているが、どうしてもスタート直後の集団からの抜け出しにスタミナをある程度消費してしまうと続けている。
そのため、このようなチャレンジに対応しながらの5位フィニッシュはファンとライダーに大きなインパクトを与えることになった。事実、表彰式ではあのニノ・シューターから「本当に素晴らしいライディングだった」と直接称賛された。
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シンプルなレースプランと冷静なライディングがポイント
ピドコックは、後方からのスタートを強いられたシクロクロス・ジュニアクラスのデビューシーズンの経験がアルプシュタットでの自分を助けたと振り返り、おかげでアルプシュタットでのレースは特別な経験になったと続けている。
「良いレースでしたね。パーフェクトなレースができていたら優勝できていたかもしれません。内容には満足していますが、パンクがなければもう少し良い結果に終わっていたでしょう」
シンプルなレースプラン、リラックスしたメンタル、冷静なライディング、そして唯一無二の才能を備えているピドコックは、ワールドカップ・エリートクラスの後方から表彰台だけではなく、条件さえ揃えば優勝も狙えるライダーだ。
2021シーズンのピドコックに注目したい。
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