Tom Pidcock as seen on the sidelines of the UCI Albstadt XCO World Cup on May 8th, 2021.
© Bartek Wolinski
MTB

【MTBクロスカントリー】トム・ピドコックが教える中団から上位を狙うレーステクニック

MTBクロスカントリーエリートクラスデビューを5位で終えた若き英国人ライダーが、後方スタートから上位フィニッシュするための方法を教えてくれた。
Written by Anna Buick
読み終わるまで:7分Published on
01

はじめに

MTBクロスカントリーの元U-23ワールドチャンピオンで、シクロクロスロードバイクでも活躍してきたトム・ピドコックは、シクロクロスではすでにエリートクラスで勝利を手にしている。では、MTBクロスカントリーマウンテンバイクのエリートクラスでも勝利を手にすることができるのだろうか?
答えは「まだ」だが、より正確に答えるなら「もうすぐ」だろう。先日ドイツ・アルプシュタットで開催されたUCIワールドカップに出場したピドコックは76番手からのスタートとなり、さらには途中でパンクに見舞われたものの、見事5位でフィニッシュした。ピドコックはこのレースでトップ16に入り、次戦ノヴェー・ムニェストのショートトラック出場権とメインレースのフロントロースタートを手にすることを狙っていた。

オリジナル缶

レッドブル エナジードリンク

Red Bull Energy Drink
では、スタートループの混雑オーバーテイクポイントの少なさで知られるアルプシュタットで、若き英国人ライダーはどのようにして順位を5位まで上げたのだろうか? 本人に解説してもらった。
アルプシュタットを5位で終えたピドコック(右端)

アルプシュタットを5位で終えたピドコック(右端)

© Bartek Wolinski

02

レースプランを細かく決めすぎない

76番手からの5位フィニッシュを細部まで決められていたレースプランが導き出した結果と考える人もいるかもしれないが、ピドコックは、レースに向けた細かいチェックリストは特に用意していなかったとし、シンプルかつ冷静に走り続けることだけを意識していたと振り返っている。
「レースプランは特にありませんでした。意識していたのは “ストレスを感じ過ぎず、我慢強くチャンスを待つ” くらいでしたね。頑張り過ぎず、できるだけ首位に近づいてフィニッシュすることが目標でした」
このような意識がレースでのピドコックをリラックスさせた。目標が具体的ではなかったため、ピドコックは「目標を達成できなかったら?」というストレスを抱えずに走ることができた。
レース前に集中するピドコック

レース前に集中するピドコック

© Bartek Wolinski

03

後方からでも冷静かつポジティブにスタート

レースで成功を収めるためにはスタートを成功させる必要があると言われている。実際、金曜日に開催されるショートトラック(XCC)はこのアイディアを重視しており、このレースのトップ24には日曜日のメインレースでフロントローからスタートする権利が与えられる。
では、メインレースをかなり後方からスタートさせたピドコックは、自分の不利な状況をどのように捉えていたのだろうか? 本人は、まずポジティブな部分を見つけようとした。
「後方からのスタートにストレスを感じることはありません。あとは順位を上げていくだけだからです」
また、ピドコックは、コールアップ・ボックス(Call-Up Box:ライダーの出走確認が取られるエリア)へ向かってから指定されたローに並ぶというレーススタート前の一連のプロセスに振り回される代わりに、自分が良く知っていること、つまりシクロクロスでのスタート前のルーティンを繰り返した。
シクロクロスではコールアップ・ボックスが存在しないため、ピドコックは他のライダーと同じようにボックス内でターボトレーナーに乗ってスタートを待つことを回避し、レーススタート前に余計なことを加えないようにしたのだ。
ピドコックはすべてをシンプルに保つことを好んでいる。
アルプシュタットは11列目からのスタートとなった

アルプシュタットは11列目からのスタートとなった

© Bartek Wolinski

04

スタート直後にスペースを作る

ここまでは冷静さがカギだったが、レーススタート直後のポジション争いでも冷静さが重要になってくるのだろうか? ピドコックは次のように説明している。
「まずはトラブルなしでスタートを切ることが重要です。それから自分のスペースを確保してください。少し肘を張り、身体を左右に振りながらライディングするんです。そして前方にスペースを見つけたら、誰よりも先にハンドルバーをそのスペースへ突っ込みましょう。そのスペースに飛び込んでからファーストコーナーへ進入します。スタート直後は他のライダーたちが強引に突っ込んでくるので、まずは自分のスペースを確保しましょう」
クロスカントリーのスタート直後は混雑するためクラッシュ率が高い

クロスカントリーのスタート直後は混雑するためクラッシュ率が高い

© Bartek Wolinski

05

レーストラックに合わせてオーバーテイクする

素晴らしいスタートを切ったピドコックは、パワーとレースクラフトを活かして20位前後まで順位を上げてスタートループを終えた。しかし、その力強いライディングの裏には我慢があった。ピドコックは、無理矢理前に出ようとしてクラッシュやスタミナの浪費を招く代わりに、レーストラックのレイアウトを良く見てオーバーテイクしていくことが大事だとしている。
「レーストラックを走りながらスペースが生まれるタイミングを待つ必要があります。大きくゲインできるチャンスを待つんです」
前に出るピドコック

前に出るピドコック

© Bartek Wolinski

06

無理をしない

ピドコックはファステストラップに近いタイムを刻みながら順調に順位を上げていったが、残りのスタミナを意識しておく必要もあった。彼は自分のエフォートレベルをどのようにコントロールしていたのだろうか? 無理をしないで順位を上げていくことは可能なのだろうか?
「スピードとスタミナのバランスを取るのは難しいですね。アルプシュタットでは前半にかなり飛ばしました。それが後半に活きてくることが分かっていたので。ですが、少し飛ばしすぎてしまい、上位に追いついたあとが苦しくなりました。調子を取り戻すまでに1ラップかかりましたね」
前半に飛ばし、中盤でリカバリーを試みたピドコック

前半に飛ばし、中盤でリカバリーを試みたピドコック

© Bartek Wolinski

07

栄養・水分補給は集中が大事

レース中に調子を取り戻すのは簡単ではない。また、順位を上げ続けるためには、栄養・水分補給でエフォートを維持することが重要になってくる。アルプシュタットでは、メインレース当日の気温が高かったため、栄養・水分補給が特に重要になった。ピドコックは冷静にタイミング良くピットインして走り続ける必要があった。
「補給は非常に重要ですね。ピットに入ったら順位を上げることは一旦忘れます。自分に必要な栄養と水分を補給することだけを考えるんです」
08

スタミナを管理する

ピドコックは上位に近づくほどオーバーテイクが難しくなるとしているが、パンクを乗り越え、表彰台が見えてきたアルプシュタットでは、その難しさを楽しんでいた。
レースでは最終盤のためにスタミナを残しておくことが重要だ。なぜなら、ファイナルラップでは残りのスタミナを上手く使ってできるだけ前に出ることが必要になってくるからだ。ピドコックは、そのようなレースプランを身体に覚えさせることが重要だとしているが、どうしてもスタート直後の集団からの抜け出しにスタミナをある程度消費してしまうと続けている。
そのため、このようなチャレンジに対応しながらの5位フィニッシュはファンとライダーに大きなインパクトを与えることになった。事実、表彰式ではあのニノ・シューターから「本当に素晴らしいライディングだった」と直接称賛された。
ベストを尽くしたピドコック

ベストを尽くしたピドコック

© Bartek Wolinski

09

シンプルなレースプランと冷静なライディングがポイント

ピドコックは、後方からのスタートを強いられたシクロクロス・ジュニアクラスのデビューシーズンの経験がアルプシュタットでの自分を助けたと振り返り、おかげでアルプシュタットでのレースは特別な経験になったと続けている。
「良いレースでしたね。パーフェクトなレースができていたら優勝できていたかもしれません。内容には満足していますが、パンクがなければもう少し良い結果に終わっていたでしょう」
レースを振り返るピドコック

レースを振り返るピドコック

© Bartek Wolinski

シンプルなレースプランリラックスしたメンタル、冷静なライディング、そして唯一無二の才能を備えているピドコックは、ワールドカップ・エリートクラスの後方から表彰台だけではなく、条件さえ揃えば優勝も狙えるライダーだ。
2021シーズンのピドコックに注目したい。
▶︎世界中から発信される記事を毎週更新中! 『新着』記事はこちら>>

関連コンテンツ

Mercedes-Benz UCI …

MTB(マウンテンバイク)の世界大会が今年も遂に幕を開けた。世界各地のオフロードを舞台に、トップライダーたちによるダイナミックなダウンヒル&クロスカントリーが続々と繰り広げられる。※UCIについての基本情報や、もっと深く知りたい人は配信カレンダー直下にある『UCIとは』『UCI関連記事』のタブをクリック!!

20 Tour Stops

UCI MTBワールドカップ2021

マウンテンバイク界最高峰の世界大会『UCI MTBワールドカップ2021』。今回の舞台は四季折々のイベントが開催されるチェコの小さな町、ノヴェー・ムニェスト。心臓破りの上り坂と、岩や木の根が広がる急な下り坂を兼ね備えた最高難易度のコースを制するライダーは一体誰だ!

チェコ共和国

トム・ピドコック

マウンテンバイク・ロード・シクロクロスで等しく才能を発揮する孤高の英国人マルチサイクリスト

イギリスイギリス