Yannick Granieri works on the spokes of his MTB wheel in his bike shed.
© Stephane Candé/Red Bull Content Pool
MTB

MTB:ケミカルの基本を学ぼう!

あらゆるコンポーネント類をクリーン&スムーズに保つ各種ケミカルの基礎知識を身につけて、愛車を最高のコンディションに保とう!
Written by Ric McLaughlin
読み終わるまで:6分Published on
自転車は慎ましい存在だ。大きな自由とアドベンチャーを与えてくれるにも関わらず、複雑なメンテナンスを求めてこない。
また、数世紀に渡り、自転車は人間の移動を変容させてきたが、MTBは、友人たちと一緒にダウンヒルを高速で駆け下りるという移動を実現した。
MTBは主に金属・カーボンファイバー・ラバーなどで構成されているが、コンポーネント同士が接する部分には様々なケミカル(オイル)が存在し、全てが滑らかに機能する助けとなっている。これらが異音を断ち、パーツのガタつきを軽減し、効率性を高めているのだ。
今回は、愛車のメンテナンスに欠かせないケミカルについての基礎知識を解説しよう。

チェーンオイル

正しいツールは必携アイテム

正しいツールは必携アイテム

© Bartek Woliński/Red Bull Content Pool

多くのライダーにとって、チェーンオイルとは「チェーンが少し錆びついてきたかな」と思ってから使うアイテムだ。
しかし、定期的にチェーンをクリーニングして注油すれば、ペダリングの効率と楽しさに驚くほど大きな違いが生まれる。また、ドライブトレインの寿命も延ばしてくれる。
ショップには様々なタイプのチェーンオイルが並んでいるが、ここでは主要3タイプを紹介しよう:
《ドライ》:ドライタイプのチェーンオイルは、特定の天候下(晴天時)での使用を想定している。ドライタイプは非常に粘性が低くさらさらとしており、ピンやローラーなど、チェーンの隅々まで浸透する。しかし、雨によって簡単に流れ落ちてしまう性質があり、ウェットコンディションでのライディングには適さない。
《ウェット》:ウェットタイプはドライタイプより粘性が高いため、チェーンの表面に留まりやすい。そのため、頻繁に再注油してやる必要がなく、雨の日のライディングにも適している。ただし、糊のような働きをしてゴミや埃をチェーンに付着させるので、ドライブトレインの磨耗を早めてしまう。
《ワックス(セラミック)》:ワックスタイプはドライタイプよりもわずかながら食いつきが良く、同時にウェットタイプのように深く浸透してチェーンを保護する。ワックス、またはセラミックタイプのチェーンオイルは高価だが、ライダー間での支持率は高い。
チェーンオイルで重要なのは、オイルを塗布する前に必ずチェーンを隅々までクリーニング(脱脂)したあと乾燥させておき、浸透率を高めておくことだ。
塗布後は、チェーンオイルが浸透するまで数分間待ってから、余剰なオイルを拭き取ってあげよう。一部のセラミック系オイルは拭き取りが不要だ。

グリース

入念なクリーニングは愛車の寿命を延ばしてくれる

入念なクリーニングは愛車の寿命を延ばしてくれる

© Zach Faulkner

バイクを静かに、そしてスムーズに機能させるグリースには多種多様な製品が存在する。また、グリースは、最高クラスでもインナーチューブ1組より安価で、適切にバイクをケアすれば、数年は再塗布する必要もない。
優れたマルチパーパス系グリースには疎水性(そすいせい)物質が含まれており、たとえ水に濡れてもパーツ表面にとどまってくれる。
スムーズな回転を確保するためには、ボールベアリングが使用されている部分へのグリース塗布が欠かせない。
バイクの使用頻度が高く、定期的なクリーニングを行っていると、グリースが徐々に落ちるので、最低でも1年に1回はバイクを完全分解してクリーニングしたあと、グリースを塗布しよう。
特定のコンポーネントへの使用を想定した専用グリースも多数存在するが、ひとまずはマルチパーパスタイプのグリースを工具箱に1本備えておくことをオススメする。

パーツクリーナー

Muc-OffがリリースしているUltimate Bicycle Kit

Muc-OffがリリースしているUltimate Bicycle Kit

© Muc-Off

パーツクリーナーは、誰もが「常備する必要はない。泥まみれのライディングになった時だけ、友人の家で借りればいい」と考えたことがあるアイテムのひとつだ。
バイクにパーツクリーナーを吹き付けて数分間放置したあと、ホースで流せば、雨の中でのMTBライドの耐久時間が長くなる。長い冬はその重要度はさらに高まる。
当然だが、ブレーキローターパッドにパーツクリーナーを吹き付けるのは厳禁だ。ブレーキパーツの劣化を招き、バイクの制動効率を大幅に下げてしまう。
パーツクリーナーを使用する際は、グリースやチェーンオイルを塗布する時よりも注意が必要なことも付記しておきたい。なぜなら、パーツクリーナーは泥や汚れを落とすと同時に潤滑に必要な成分も落としてしまうからだ。
また、予算が許す範囲で最高のパーツクリーナーを購入するようにしよう。フロンガス、有機溶剤、酸などが含まれない地球に優しい製品を選びたい。

フォークオイル

定期的なフォークオイル補充は必須

定期的なフォークオイル補充は必須

© Ric McLaughlin

その名の通り、フォークオイルはサスペンションフォーク内部に封入されている。フォークオイルのボトルは、本格的なMTB工具箱に欠かせないアイテムだ。
駆動と回転をスムーズにするチェーンオイルやグリースと同じで、トレイルライドや、バイクの定期クリーニングを繰り返していくうちにサスペンションユニット内のシールも乾いていく。これは、内部のスムーズな上下動を助けるために封入されたオイルが抜けてしまうのが原因だ。
ライディングする場所のコンディションにもよるが、折を見てスタンシオンのボトム周辺にフォークオイルをたっぷり塗って、シールに油膜を補ってやるのはグッドアイディアだ。
フォークオイル塗布後、トラベルを数回往復させてオイルをなじませてから余剰分を拭き取ってあげよう。このメンテナンスはエアーショックドロッパーシートポストでも効果的だ。
メカニカルな知識に自信のある人は、フォークやショックを分解した上でシールに注油(あるいはオイルを総交換)すれば、大幅なパフォーマンスアップが期待できるだろう。
また、定期的にライディングしているなら、サスペンションの効率が低下すればすぐに気づくはずだ。とりあえず、フォークオイルは用意しておこう。

ポリッシュ剤

フィン・アイレスのSpecialized S-Works Demo

フィン・アイレスのSpecialized S-Works Demo

© Bartek Woliński

愛車を磨き上げるのは、目立ちたがりの行為なのだろうか? 表面的にはそうなのかもしれないが、自分のバイクを誇りに思っていないMTBライダーはいないはずだ。
ともあれ、バイク磨きにはいくつかの実用的な理由がある。シリコンスプレーを使ったクリーニングは新車の輝きを取り戻せるだけではなく、汚れを寄せ付けない皮膜を作ることもできるのだ。