MTBを初体験すれば、いくつかのポイントに気づくはずだ。MTBは楽しく、その快感はやみつきで、コーナーを攻める感覚やジャンプを飛び越える感覚は何物にも代えがたい。そして、トレイルは固い…。
経験豊富なライダーは身につけるプロテクター類を最小限に抑えることを好んでいるが、トレイルに出れば、大半がライディング用ウェアにシンプルなニーパッドとグローブ、頑丈なヘルメットを装備してトレイルを駆け巡っているのが分かるはずだ。これらのギアを身につければ、安全かつスムーズにライディングが学べる上に、頭からつま先までが守られる。
では、プロテクションギアにはどのような選択肢が存在するのだろう? 身軽さを犠牲にせず、怪我しやすい部分を全てカバーするのは可能なのだろうか? 答は限りなく "イエス" に近い。
予算的には必ずしもベストな選択ではないが、心身の健康を第一に考え、落車後すぐにライディングを続行したいのなら、以下に紹介するトップブランドのプロテクションギアがオススメだ。
頭から足先まで守ってくれる最高のMTBプロテクションギアを紹介しよう。
足首
661がリリースしている足首用サポーターRace Brace Proは足首のしびれに悩まされているライダーにとっては実にありがたい製品だ。
古傷を抱えているライダーにパーフェクトなこのサポーターは、トップクラスのフリーライダーたちの足元でも良く見かける。慢性的な怪我やビッグジャンプの衝撃に対応してくれる優れものだ。
同様の機能を持つアンクルサポーターは他にもあるが、軽量性を重視するならG-Form Pro Ankle Guardが飛び石から足を守ってくれるだろう。
膝
ScottからリリースされているニーパッドGrenadeは、他を寄せ付けないプロテクション機能と快適性を誇る製品だ。このニーパッドは最大のカバー範囲と衝撃吸収性を実現しながら、柔軟性も維持している。一方、柔軟性に劣る多くのハードシェルタイプのニーパッドは、衝撃を吸収した際に膝から外れてしまい、肌がそのまま地面と接してしまう。
フルレングスのニー&シンガードは、ペダリングの邪魔になるので最近はやや時代遅れとされているが、グラビティ系のライディングを志すなら、LeattからリリースされているHybrid EXTのプロテクション機能には注目しておきたい。
また、駐車場でスキルを競い合うライダーなら、G-Formの柔軟性の高い軽量パッドPro-Xをジーンズの下に装着するのが良いだろう。
ヒップ&太もも
市場には快適性とプロテクション機能を両立した優れたアンダーショーツが数多く並んでいるが、スリムさと柔軟性を犠牲にすることなく広いカバー範囲を実現しているAlpinestars Sequence Pro Shortは、アンダーショーツに求められる全ての条件を満たしている製品と言える。
太ももやヒップ、尾てい骨が全てカバーされるが装着感は極めて軽いこのアンダーショーツを着ていることに気づくのは、意図せずにバックフリップをメイクした時くらいだ。
背中&胴体
胴体全体を覆うアッパーボディアーマーは体を締めつけるのでロングライドには向いていないが、トレイルを思い切り攻める時は、胸・脊椎・肩を守るパッドを備えたベストを絶対に身につけよう。
Bliss ProductionからリリースされているARG Compは、柔軟性とスリムな形状、胸・脊椎・肩のプロテクション機能を実現している最高の製品だ。
やや重いが、装着感に慣れれば、肩から地面に落ちるクラッシュをした時に感謝するはずだ。
より軽量の製品を求めるなら、脊椎と肩を守るパッドを備えたベースレイヤー、Dainese Trailknit Pro-Armor Teeを選びたい。暑い時期のトレイルライドに最適だ。
肘
肘は守るのが難しいエリアだ。肘の保護は必須だが、ずれずに肘をカバーするパッドを開発できているブランドは少ない。
固定性能に優れている製品はなくもないが、前腕部の動きを制限してしまうので長い下りで腕が痛くなってしまう時がある。
その中で、Alpinestars Sequence Padsは絶妙なバランスを備えている製品のように思える。カバー範囲が広くプロテクション性能も高いこの製品は上腕部までカバーするデザインになっているため、他製品に比べてずれが少ない。
グローブ
ワイドなハンドルバーはバイクのコントロール性を高めるが、両手を怪我する可能性が高い。ほぼ全てのMTBライダーが経験する怪我、つまり、両手の小指の怪我を回避したいなら、661 EVO IIグローブを選ぼう。この製品は両手の外側をしなやかなプロテクション素材D30で守ってくれる。怪我をするのは木の方かもしれない。
頸部
ネックブレースは、フルフェイスヘルメットを着用しない限り機能しない。ネックブレースは、頭から落ちるようなアクシデントで首にかかる負荷を軽減し、深刻な頸部の怪我のリスクを減らすためのギアだ。
Leattはネックブレースを市販化したパイオニアブランドで、現在もMTB用ネックブレースのエキスパートであり続けている。DBX 6.5 Carbonは、600gという超軽量がセールスポイントだ。
「便座を首にかけて何してるの?」というジョークは聞き流しておこう。
頭部
ここまで様々な種類の製品を紹介してきたが、最も重要なプロテクションギアは良質なヘルメットだ。
MTBライドにヘルメットはマストだ。また、1度でも大きな衝撃を受けたらすぐに買い換えよう。最近は優秀なMTB用ヘルメットが数多く存在するが、自分の頭に合った形状で、必要な安全機能を全て備えている製品を選ぼう。
安全基準(ヨーロッパはCE / 日本はJCF / 米国はCPSC)をクリアしているかチェックし、多少予算が増えるがMIPSを備えたヘルメットの購入も考慮しよう。MIPSとは、多くのヘルメットブランドが採用している特許システムで、彼らが積極的に採用しているのには正当な理由がある。
MIPSシステムとは、ヘルメットのシェルとパッドの間の薄いレイヤーのことで、多方向からの衝撃が加わった際にヘルメット本体がわずかに回転して衝撃スピードを緩和して、頭部へのダメージを軽減してくれるのだ。
661 EVO AMはMIPSと共にBOAも採用しているので、防護性だけではなくパーフェクトなフィット感も実現している製品だ。また、フルフェイスタイプのヘルメットを求めているなら、同じくMIPSを採用しているGiro Switchbladeが良いだろう。この製品はリムーバブル・チンガードも装備している。