ジョシュ・ブライスランドのバイクを整備するダグ・ハットフィールド
© Nathan Hughes
MTB

MTB:ホイールサイズ選択ガイド

MTBの新車選びの際、誰もが頭を悩ませるのがホイールサイズのチョイス。数多くあるサイズ選択肢の長所と短所を比較検証してみよう。
Written by Richard Bennett
読み終わるまで:6分公開日:
かつて、MTBを購入する際に頭を悩ませる必要はなかった。ゴツゴツしたタイヤと(予算に余裕がある人は)サスペンションを装備したバイクのホイールサイズは、過去には26インチの一択しかなかった。それが今では、多種多様なホイールサイズが市場に溢れ、我々はそのチョイスに頭を悩ませる事態となっている。トゥーナイナー(29er)と呼ばれる29インチ、27.5、27.5+、29+ファットバイク、それとも昔ながらの26インチ… ?
そのチョイスはひどく悩ましいもので、中には「できるだけ多くバイクを買わせるためのメーカー側の戦略だ!」という根拠のない意見まで出てくる始末だ。しかし、果たしてこれだけ種類が揃ったホイールサイズは単なるメーカーの販売戦略と片付けて良いものなのだろうか? 各ホイールサイズは、いったいどれだけの利点を持っているのだろう? 今回の記事を読んで、MTB選びに役立ててもらいたい。
Canondale F-SI ハードテイルの29er仕様
Canondale F-SI ハードテイルの29er仕様
29er (トゥーナイナー)
5年前、29インチホイールの登場が契機となってホイールサイズを巡る議論が巻き起こった。そしてそれは今も続いている。バイクメーカーの主張によると、29erでは設置面積が増加し、プロ/アマチュアを問わず転がり抵抗が増し、従来の26インチに比較するとより高いスピードを得られ、ハンドリング安定性も増しているらしい。
インターネット・フォーラムなどでは反対意見も散見できるが、29erをプッシュするバイクメーカーによるこれらの主張は概ね正しいと言えるだろう。クロスカントリーやロングトレイルを好むライダーたちの間では、いまや29erはほぼ標準的なホイールサイズのチョイスとなっている。
ロイク・ブルーニが駆るS-Worksテスト仕様車は27.5インチホイールを採用
ロイク・ブルーニが駆るS-Worksテスト仕様車は27.5インチホイールを採用
27.5インチの台頭
数年前のインターネット・フォーラムでは、29erはクロスカントリー向けで、26インチはより汎用性の高いサイズだとする意見が主流だった。しかし、2013年頃になるとバイクメーカーの一部は27.5インチという新しい中間サイズ(温故知新的とも言えるが)を提唱し始めた。29erが持つ転がり抵抗の良さと26インチの敏捷なハンドリング応答性を両立させたホイールサイズだと言われるこの27.5インチの登場によってインターネットでの意見交換は更に加熱し、ライダーたちはいよいよホイールサイズを巡る目まぐるしい議論へと巻き込まれることになった。
現代のエンデューロ、またはダウンヒルのプロライダーに「26インチ時代に戻りたいか?」と質問すれば、彼らのほとんどは「ノー」と答えるだろう
こうした議論には確かに真実が含まれており、近い未来に消滅し過去の物となってしまう26インチの愛車を所有している友人を気の毒に思うのも仕方ない。しかし、こうした変化の連続こそが人生であり、あらゆる物事は常に進化する。人はその変化を受け入れながら生きていくのだ。バイク技術に進化がなかったとしたら、我々は今でもサスペンションを持たないリジッドフレームに乗り、旧態依然のカンチレバー式ブレーキを使っていたかもしれない。
現代のエンデューロ、またはダウンヒルのプロライダーに「26インチ時代に戻りたいか?」と質問すれば、彼らのほとんどは「ノー」と答えるだろう。27.5インチというホイールサイズが、トレイル/エンデューロ/ダウンヒルなどすべての用途において素晴らしい性能を発揮しているのは事実なのだ。
ファットバイクは比類の無いグリップ感をもたらす
ファットバイクは比類の無いグリップ感をもたらす
ファットバイク
しかし、バイクメーカーたちは更に多くの選択肢を生み出して我々の頭を悩ませている。そのひとつが、ファットバイクの存在だ。これは、主に汎用性の高さを求めるライダーたちに向けて提供されているカテゴリーだ。大型のタイヤはスピード性能こそ落ちるものの、素晴らしいグリップとハンドリングにおける予測性の高さをライダーたちにもたらす。ただし、タイヤの空気圧においては常に適切な設定を心がけなければならない。
進化を続ける27.5インチ
そして、現在の選択肢において最も興味深い存在が27.5+と呼ばれるホイールサイズだ。これは幅を広くした27.5インチのリムに約3インチの大型タイヤを装着したもので、ファットバイク用のタイヤほど大きくはないものの、通常の2.4インチタイヤに比較するとライディング時のフィーリングはかなり異なり、トレイルライダー専用に作られている。メーカーのプレス資料などをそのまま信用すれば、27.5+のホイールサイズは設置面積の拡大によりグリップを高め、旧来の26インチとほぼ同等の転がり抵抗の少なさを実現し、ビギナーからエキスパートまで幅広い層にメリットをもたらすことになる。
27.5+は現代のMTBライダーたちを悩ませるホイールサイズ問題を解決する決定的な存在になるかもしれない
27.5+におけるもうひとつの魅力は、29インチタイヤとほぼ同じ直径という点だ。つまり、フレームのクリアランスさえ確保できていれば、ライダーは同じフレームで27.5+と29erの両方のホイールサイズを使い分けることができる。その好例がScottのクロスカントリーバイクSparkの2017年モデルで、このフレームは、ある時は29erでレースを走り、またある時は27.5+で曲がりくねったトレイルを走るというライディングスタイルを可能にしている。
27.5+はまだ実用化されて間もない規格で、タイヤにはまだ改善すべき領域もある。とはいえ、27.5+は現代のMTBライダーたちを悩ませるホイールサイズ問題を解決する決定的な存在となるかもしれない。今後新たなスタンダードが登場しなければの話だが…
最高のバイクでトレイルを攻めたいなら、ホイールサイズは27.5か29erの二択に絞られる
では、実際のところホイールサイズのチョイスは自分のライディングにどのような違いをもたらすのだろう? これはロケーションやライディングスタイルによって決まってくる。複数のカテゴリーを1台のバイクでこなしたいと考えているのなら、ファットバイクのような汎用性の高いホイールサイズを選ぶと良いだろう。最高のバイクでトレイルを攻めたいなら、ホイールサイズは27.5か29erの二択に絞られる。今話題になっているのは27.5+のバイク群だが、このホイールサイズが完全に定着するにはまだしばらく時間がかかるだろう。
ひとつ覚えておくべきことは、テクノロジーの進化に取り残されているかどうかに気を病むことなく、昔ながらの26インチバイクに乗ってライディングを楽しんでいる人がどこかにいるということだ。どのホイールサイズだろうと、外で出て思いきりライディングを楽しもう!