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変わりつつある任天堂とesportsの関係

© Nintendo
任天堂がついにトーナメントコミュニティへの愛を示し始めたが、『スマブラ』と『スプラトゥーン』のコミュニティは必要なサポートを受けているのだろうか?
Written by Aron Garst公開日:
スマブラ』シリーズのプレイヤーの大半、少なくともこのシリーズを数年間プレイしてきたプレイヤーは、“自立” の意味をある程度理解しているはずだ。
永遠と思えるほどの長い時間、任天堂は自分たちのゲームを心底愛してくれていたトーナメントコミュニティの正当性を認めることさえしなかった。彼らは単純にその存在を無視していた。
しかし、『スマブラ』シリーズのトーナメントが世界中で開催され、オフライントーナメントを開催する『スプラトゥーン2』のコミュニティが育ってきている今、任天堂は生活の多くの時間を自分たちの生み出した作品に捧げているプレイヤーたちへのサポートを厚くし始めている。
米国ミシガン州で『スマブラ』シリーズと格闘ゲームのトーナメントShowdown: Battle RoyaleをオーガナイズしているKevandre “AmiiboKing313” Thompsonは次のように語る。
サポートは長年の懸案事項だった。プレイヤーたちは随分前から求めていたんだ。でも、どんなサポートが必要なのかを判断できていない。コミュニティ内で意見が分かれているからね」
任天堂からのサポートは、『スプラトゥーン2』と『スマブラ』シリーズのコミュニティ内部を分ける境界線となっている。
BlizzardRiot Gamesが『オーバーウォッチ』と『League of Legends』に提供しているようなサポートを求めているプレイヤーがいる一方で、マーケティングと機材の提供という最低限のサポートで十分だと考えているプレイヤーがいる。
Thompsonが続ける。
「トッププレイヤーはトーナメントサーキットの設立を望んでいる。高額賞金を求めているのさ。彼らはちゃんとしたキャリアを築きたいんだ」
「でも、他の多くのプレイヤー、たとえば、トーナメントの大半で優勝できる可能性がない17歳のプレイヤーにとっては、そこは大した問題じゃない」
任天堂の最新タイトルはesportsを視野に入れているのか?
任天堂の最新タイトルはesportsを視野に入れているのか?

時として大は小を兼ねない

多くのプレイヤーが、任天堂がオーバーウォッチリーグRocket League Championship Seriesのようなトーナメントサーキットを設立することはないと考えている。
彼らは、esportsシーンで良く見かけるパブリッシャーがスポンサーについているビッグトーナメントを自分たちが手にすることはないと考えているのだ。
Thompsonは「任天堂は保守的な企業だから、esportsへのアプローチも保守的になると思う。数千ドルの賞金総額が用意されたビッグトーナメントに価値を見出さない可能性があるね」としている。
任天堂がそのような規模のトーナメントを用意するかどうかについては誰も正確な予想はできないが、『スプラトゥーン2』や『ARMS』のようなタイトルでこれまでの流れに変化を加えようという若いプレイヤーたちも出てきている。
トーナメントシーンにより先進的なアイディアが盛り込まれる可能性はあるのだ。しかし、現状に満足しているコミュニティメンバーもいる。
『スプラトゥーン2』のプレイヤー兼コメンテーターのNick Hitzelは次のように語っている。
「自分たちを高めていくこと、昔も今もこれが僕たちの目標であることに変わりはない。でも実は、僕たちは任天堂のサポートを少し怖いと思っている。なぜなら、それが何を意味するのかがいまいちクリアになっていないからさ」
「彼らがサポートを提供している時はいつも、彼らがマーケティングのチャンスとして利用しているように感じるんだ」
任天堂の『スプラトゥーン』と『スマブラ』へのサポートは比較的最近始まったものだ。
彼らがEVOのようなトーナメントのスポンサーになり始めたのは2014年のことで、この年以降も、サポートを提供するトーナメントやイベントの数を増やしているだけだ。
通常、そのサポートには、公式ソーシャルメディアアカウントへの情報投稿記念品の提供、そして会場で使用するためのNintendo Switch本体の貸し出しなどが含まれている。
『スプラトゥーン』コミュニティの主要メンバーでトーナメントオーガナイザーとしても活躍しているA.C. Williamsは次のように語っている。
「任天堂が僕たちに提供してくれているサポートは素晴らしいよ。多くのプレイヤーがもっと分厚いサポートを望んでいるけれど、今までのサポートには本当に感謝しているんだ」
Smash N’ Splash 4には56台のNintendo Switchを貸し出してくれたから、自分たちで用意する必要がなかった。もちろん、彼らのサポートがなくてもイベントは開催していたけれど、大きな助けになったのは確かだよ」
EVO 2013から『スマブラDX』が外れる可能性があった
EVO 2013から『スマブラDX』が外れる可能性があった

苦悩への気付き

任天堂のサポートへの意見はコミュニティ内で分かれているが、任天堂がプレイヤーに役立つ方向へ舵を切ろうとしているのは確かだ。
EVO 2013で、任天堂はストリーミングしてもらいたくないという理由から、『スマブラDX』をラインアップから外すようにオーガナイザー側に申し出た。
最終的に『スマブラDX』のトーナメントは開催されたのだが、これはコミュニティ内にストレスを溜まることになり、この経緯が自分たちの正当性に疑問符を付けてしまうことになった。
Thompsonが続ける。
「コミュニティは何よりも “存在を認めてもらうこと” を望んでいる。でも、以前のコミュニティは、スポンサーを獲得できないんじゃないかと心配していたんだ」
「任天堂が認めていないコミュニティには力を貸したくないという企業が出てくるのは当然だと思っていたのさ。でも、今はグローバルレベルで存在を認めてもらっている」
グローバルレベルというのは、任天堂がカリフォルニア州ロサンゼルスのE3 2018で開催した『スプラトゥーン2』と『スマブラ』シリーズ最新作『スマブラSPECIAL』のトーナメントのことだ。
E3 2018は、任天堂が自社タイトルを紹介しつつ、そのコミュニティメンバーにスポットライトを当てるチャンスとなった(彼らはまだサポートを本格化するつもりはないが)。
しかし、このように任天堂がトーナメントシーンに進出し始めている一方、多くのコミュニティメンバーが、任天堂の力を借りずに自分たちの力でシーンを作り上げたいと考えるようになっている。
Thompsonが説明する。
「私をはじめ『スマブラ』コミュニティはグラスルーツの活動を大切にしているんだ。全員が今のesportsタイトルのようなシーンに惹かれているわけではないのさ」
『スマブラ』と『スプラトゥーン』のコミュニティメンバーは、自分たちのイベントを通じて築いてきた人間関係と積み上げてきた経験が非常に重要だと考えている。
彼らはこのような人間関係と経験を失いたくないが、金銭面をメインに据えて考えるようになれば、新規プレイヤーたちがそのような人間関係や経験を得られるチャンスがなくなってしまうと思っているのだ。
グラスルーツ感覚が失われる可能性を危惧しているコミュニティメンバーは少数派だが、『スマブラ』シリーズの最新作『スマブラSPECIAL』が、これまでになかった動きを生み出すのは確かだ。
この新作がNintendo Switch本体と同レベルの成功を収め、その成功と共にトーナメントシーンが成長していけば、任天堂はコミュニティに何かしらのアプローチを取るはずだ。
任天堂のトーナメントプレイへの新たなサポートは、『スマブラSPECIAL』のリリースと共に高額の賞金総額が用意された公式トーナメントの開催に繋がるかもしれない。
Thompsonは最後にこうコメントしている。
「一歩ずつ進むしかないよね。任天堂からのサポートはどんなものであっても成長に繋がるはずさ」
「彼らがどんな形でサポートするつもりなのかはまだ分からない。でも、彼らがサポートしたいというのであれば、僕たちにはそれを受け容れる用意があるよ」
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