ニルマル・プルジャ
登山

【インタビュー】ニルマル・プルジャ:世界記録更新を続けるネパール人登山家

© Sandro Gromen-Hayes/Nimsdai
2021年1月にK2冬季登頂を達成した元グルカ兵が、登山界に唯一残っていた偉業への挑戦を振り返った。
Written by Matt Ogborn公開日:
登山において、“ニムズ” ことニルマル・プルジャ(MBE受章)に不可能はないように思える。元グルカ兵元英国特殊舟艇部隊(SBS)隊員の彼は、2012年に初の高所登山となったロブチェピーク東の登頂に成功して以来、複数の世界記録を更新しながらありとあらゆる登山チャレンジをクリアしてきた。
2019年、プルジャは8,000m級14座を7ヶ月で完全制覇するという大記録に挑んだ。それまでの8,000m級14座最速登頂記録は8年弱だったが、彼はなんと6ヶ月と6日で達成した。
そして2021年、プルジャは登山界に残されていた唯一のビッグチャレンジ、“K2の冬季登頂” に挑んだ。標高8,611m・世界2位の高さを誇るこの山の頂点に立った登山家はそれまで僅か280人しかおらず、しかも全員が比較的楽な春季に登頂していた。しかし、2021年1月16日現地時間午後5時、プルジャ率いるチームはこのチャレンジをクリアし、K2冬季登頂に成功した世界初の登山隊となった。
世界中でニュースとなったこの偉業を達成したプルジャに歴史を塗りかえたK2冬季登頂や次のチャレンジなどについて話を聞いた。
− 冬の登山と夏の登山の大きな違いを3つ挙げてもらえますか?
極寒の気温、厳しい天候、これらのコンディションに順応できる登山家の能力、これが冬山登山の大きな違いだ。
これまで不可能と考えられてきたK2の冬季登頂を達成したニルマル・プルジャ
これまで不可能と考えられてきたK2の冬季登頂を達成したニルマル・プルジャ
− あなたたちの記録達成は、難しい時代に届けられたひとつの希望として世界中の人たちに喜ばれましたが、ネパール出身の登山家のみで構成されていた今回の登山隊が世界に希望と喜びを与えられたことをどう感じていますか?
今回の記録は、私の人生の特別な1ページとして永遠に残ることになるだろう。私たちが達成した記録、手にした功績は自分たちだけのものではない。世界中の人々が困難に立ち向かうの最中にこの記録を共有し、世界各地のコミュニティに手を差し伸べられたことを光栄に思っている。
非常にポジティブなメッセージを世界へ伝えることができた。チーム一丸となって人間の限界をプッシュし、不可能を可能にしたことで、団結と調和があれば何が達成できるのかを世界に示せた。心、精神、魂を注げば、何でも実現できる。
− K2の冬季登頂で一番恐れていたことは何ですか? 何が一番難しかったですか?
手の指が軽い凍傷になってしまい、さらには第2キャンプ(標高6,600m)より上のアクリマゼーション(気候順応)が正しくできていなかったので、サミットプッシュは非常に難しい決断になった。しかし、“一番難しかった” は存在しない。なぜなら、今回の挑戦全体が難しかったからだ。
これまで不可能と考えられてきたK2の冬季登頂を達成したニルマル・プルジャ
これまで不可能と考えられてきたK2の冬季登頂を達成したニルマル・プルジャ
− 冬季のK2がエベレストよりも特別に扱われている理由はどこにあるのでしょう?
登山界に残されていた唯一の高難度チャレンジだったからだ。エベレスト冬季登頂はすでに達成されていた。
− 凄まじい挑戦を終えた今、メンタルとフィジカルの状態はどうですか?
素晴らしい気分だ。チームメンバー全員が無事に帰宅できたのが何よりも重要だ。
自分の限界をプッシュするのが好きだ
ニルマル・プルジャ
− 今回の挑戦に同行したネパール出身の登山家たちについて教えてください。どのようにチームを組んでいったのでしょうか? 彼らはどの意味で重要だったのでしょうか?
冬のK2は異常だ(笑)! それゆえに、フィジカルが優れているだけではなく、メンタルも優れているメンバーを集めなければならなかった。
人類のために、そして長年に渡り8,000m級登山の最前線に立ってきたにもかかわらず、相応しい評価を得られていなかったネパールの登山コミュニティのために不可能を可能にしたいという強い情熱と意志をメンバー全員が備えている必要があった。
チームを誇りに思っている。今回の成功はチーム一丸の努力、苦労、無私無欲、連帯の結果だ。
Nirmal Purja at the top of Mount Everest in 2019.
Nims summits Everest in 2019
− 8,000m級14座最速登頂記録に挑んだ “Project Possible” は今回の挑戦でどのように活きたのでしょうか?
半年強で8,000m級14座を完全制覇するのはもちろん大変だった。まさに山あり谷ありだった。あの経験から多くを学び、知識として蓄えることができていた。
− 英国特殊舟艇部隊(SBS)で得たスキルの中で最も役に立ったものを教えてください。
一番役に立ったのは、ストレスがかかる状況で判断を下せるスキルだろう。どのような状況でも自分を冷静に保ち、集中を維持し、ポジティブなイメージを持つ必要がある。
− あなたは見事なペースで世界記録を連続更新してきましたが、このあとは少し休む予定なのでしょうか? それともすでに新しいチャレンジに向けて準備を進めているのでしょうか?
私は自分の限界をプッシュするのが好きだし、“ニルマル・プルジャは必ずサプライズを提供してくれる” と噂されているのも知っている。なので、今のところは、次がどうなるかはまだ分からないと答えておこう(笑)。
− あなたは挑戦終了後に必ずパーティを開くらしいですね。今回はかなり長いパーティになるのでは?
今回のような挑戦を終えたあとはちゃんと祝う必要がある。療養のようなものだ。チームメンバー全員がハッピーな様子を見れば、私もとてもハッピーになれるので、今回のパーティは数週間続くかもしれないな(笑)。