ドイツ・ライプツィヒではヴェルナーという苗字は成功とゴールを意味する。しかし、今回スポットライトを当てるのはFWティモ・ヴェルナーではない。今年、ライプツィヒに新しいヴェルナーがやってきた。元ヴェルダー・ブレーメン監督で、2027年までRBライプツィヒと契約を結んだ新監督オーレ・ヴェルナー(37)だ。
オーレ・ヴェルナー監督は明確な目標を設定している。それは、ゴールを量産できる攻撃的なサッカーをRBライプツィヒに浸透させて、昨シーズンのリーグ7位からヨーロッパ圏内へ復帰することだ。
監督としては比較的若いヴェルナー監督だが、25歳だった2013年からコーチを務めてきたため、指導歴は十分長い。ドイツ北部キール近郊の小さな町、プレエッツで生まれたヴェルナー監督は、ホルシュタイン・キールのユースレベルからコーチングキャリアをスタートさせた。そしてこのクラブでの仕事ぶりが評価され、彼のキャリアは順調に成長していくことになった。
尚、学業を終えたあと、オーストラリアで庭師(ディテールに拘る彼には適職だった)として働いた経験を持つヴェルナー監督は今もその経験をたまに活かしており、実家の庭の手入れをして母親を喜ばせている。また、ヴェルナー監督は職業訓練学校で銀行員になる教育を受けた経験も持ち合わせている。
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ヴェルナー監督のキャリア
ホルシュタイン・キールのリザーブチーム監督を担ったあと、ヴェルナー監督は2019年にファーストチームのヘッドコーチに就任し、暫定監督として2試合の指揮を執った。ホルシュタイン・キールでのヘッドコーチ時代、ヴェルナー監督は同クラブをブンデスリーガ昇格目前まで引き上げ、クラブに史上最高成績のひとつをもたらした。
結果、ヴェルナー監督の闘争心と規律を備えたチームを作り上げる能力が様々な方面から評価されるようになり、2021年にホルシュタイン・キールを去ると、同年11月にヴェルダー・ブレーメン監督に就任した。
2025年5月までヴェルダー・ブレーメンを率いたヴェルナー監督はここで大きなインパクトを残しており、わずか数シーズンの間に、彼はブレーメンをブンデスリーガへ復帰させるとそのまま残留した。
落ち着いていて感情的にならないヴェルナー監督はこのクラブが必要としていた安定をもたらしたが、これは彼の功績の一部でしかない。ヴェルナー監督の大きな功績は、ブレーメンに持ち込んだ勇敢で攻撃的なサッカースタイルだった。そして今、彼は同じスタイルをRBライプツィヒに持ち込もうとしている。
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ヴェルナー監督の真実
ヴェルナー監督の指導者としての才能はこれまでの成績を見れば明らかだが、RBライプツィヒのヴェルナー監督就任発表はサポーター全員からの賛成は得られなかった。
この発表に対する反応はまちまちで、ヴェルナー監督の物静かな性格を知らないサポーターたちの間では特に悪かった。要するに、ヴェルナーの性格は世間から常に注目されるブンデスリーガの監督の一般的なイメージと異なっていたのだ。
彼が生まれ育ったドイツ北部は “静かで感情に乏しい” という先入観で語られるときが少なくなく、確かにヴェルナー監督は目立つタイプではないかもしれない。しかし、彼がその先入観に完全に当てはまっているわけでもない。
ヴェルナー監督は大胆不敵な発言でメディアに取り上げられるタイプではなく、サイドラインから叫んだり、両腕を振り回したりすることも滅多にない。オフには古典文学やマイナーなコメディシリーズを楽しんでいる。しかし、サイドラインから叫んでいないからといって、重要なタイミングで黙っているわけではない。むしろ、その逆だ。
ヴェルダー・ブレーメンで一緒だったFWニクラス・フュルクルクは「オーレ・ヴェルナーの指導を受けて成長しなかった選手はひとりもいない」と語っているが、この発言はヴェルナー監督を雄弁に語っている。
ヴェルナー監督は静かな自信と技術的な知識、細部への拘りで選手を成長させることで知られているが、チームを規則でがんじがらめに縛るわけではなく、豪快で攻撃的なサッカーをプレーする自由を選手たちに与えている。
RBライプツィヒ監督就任直後から、ヴェルナー監督は自分のスキルがこのクラブが求めているものと一致していることと、このクラブでは自分がそれまで経験したことがない経験が得られることを理解していた。ヴェルナー監督は次のように語っている。
「私がRBライプツィヒに興味を持った理由は、選手とサッカーの両方が成長できる環境があると思えたからです。このクラブは他とは違うアイディアで革新的な仕事をしています。独特のアプローチで課題に取り組んでいるのです。この点が魅力的に思えました」
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ヴェルナー監督のサッカースタイル
戦術面について見ていくと、オーレ・ヴェルナー監督は非常に緻密で柔軟性の高さを重視している。特定のフォーメーションに拘り続ける代わりに、対戦相手に合わせてフォーメーションを柔軟に変化させるのが彼の戦い方だ。キール時代とブレーメン時代では3-5-2または3-4-3を基本にしていたが、RBライプツィヒでは4-3-3を基本にしている。
前述した通り、ヴェルナー監督の目標は “RBライプツィヒをヨーロッパレベルへ復帰させる” だが、彼が拘っているのは結果だけではない。「結果やリーグ順位は関係なく、自分たちらしいサッカーを突き詰めていきたいです」とヴェルナー監督は語っている。
ヴェルナー監督がチームに求めているのは、ファンや対戦相手が “これがライプツィヒのサッカーだ” とすぐに理解できる特徴的かつ攻撃的なサッカーをプレーすることだ。彼は「野心的・攻撃的なサッカーを打ち出したいです。RBライプツィヒと対戦することが何を意味するのかを対戦相手に教えられるようになりたいですね」
ヴェルナー監督のRBライプツィヒのサッカースタイルへのビジョンは明確かつ積極的だ。彼が求めているのは自主性・勇気・柔軟性のあるプレーであり、消極的・受け身のプレーはNGだ。対戦相手がミスをしたり、ポゼッションを失ったりするのを待つ代わりに、ヴェルナー監督のRBライプツィヒはハイプレスをかけて高い位置でポゼッションを奪うことを目指す。
「対戦相手がボールを渡してくれるのを待つようなチームにはなりたくありません」とヴェルナー監督は語っている。「ボールを奪うために高い位置から攻撃的にプレスしていきます」
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プレシーズン
RBライプツィヒの新監督に就任したヴェルナー監督はひとりで新しい仕事に取り組んでいるわけではない。
ヴェルナー監督は、ヴェルダー・ブレーメン時代の自分を支えてくれたアシスタントコーチ2名(トム・チチョン / パトリック・コールマン)を連れてきている。また、ヴェルナー監督は2025年1月からレッドブル・グローバルサッカー部門責任者に就任している元リヴァプール監督のユルゲン・クロップから助言を受けることもできる。
「ユルゲンとは会話を数多く重ねています」とヴェルナーは語っている。「クラブとして自分たちをどう表現するのか、どういうサッカーをプレーしたいのかという点において彼と合意できています。何回もアイディアを交換しましたし、これからもそうしていくつもりです」
新シーズン開幕を前にファンたちが話題にしているのは、RBライプツィヒがどれだけ早くヴェルナー監督に適応できるかについてだ。
ファーストチームはプレシーズン初戦のドイツ4部ZFCモイゼルヴィッツ戦を3-0で勝利したあと、フランス・リーグアンのトゥールーズFC戦を7-0で勝利した。これらの結果は、ヴェルナーのサッカーが浸透しつつあり、新加入選手たちも順応できていることを意味している。トゥールーズFC戦では新加入のヨハン・バカヤコ、ヤン・ディオマンデ、エゼキエル・バンズジがゴールを決めている。
また、8月2日には2024年のヨーロッパリーグを制したセリエAアタランタ戦を迎えた。この試合は2-1で敗れたものの内容は充実していた。8月9日には2024-25シーズンのリーグアンを8位でフィニッシュしたRCランス戦が用意されている。
オーレ・ヴェルナー監督のRBライプツィヒ公式デビュー戦は8月16日のDFBポカール1回戦ザントハウゼン戦で、ブンデスリーガ開幕戦は8月22日のFCバイエルン・ミュンヘン戦となる。新監督が率いる2025-26シーズンのRBライプツィヒに期待したい。
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