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林修先生が明かす、受験で結果を出す人の“切り替え力”とは!?
大学受験を控えた学生には不安がいっぱい。でも安心してほしい。大学受験のプロフェッショナル林修先生の言葉が悩みを吹き飛ばしてくれる! 過去を振り返るな。目を向けるのは...そう、今でしょ!
01
そろそろ近づく、大学入学共通テストに向けて!
将来叶えたい夢のために。やりたいことを探すために。大学受験を控えた学生ひとりひとりは進学の動機を抱いている。だから、大学合格はゴールじゃなくてあくまでも通過点。そうわかっていても、一度決めた道に迷ったり悩むことがあるはず。そんな受験生が抱える悩みのタネを、林先生の言葉がまとめて解決!
ーー今回、林先生はレッドブルの受験キャンペーン特別アンバサダーに就任されました。
林修先生(以下、林) レッドブル・エナジードリンク好きの私にとって、大変光栄です。やっぱりシャキッとしたいときにはカフェインが一番効く気がします。そして、集中したい時にはブドウ糖の摂取も大事。受験生の皆さんも、レッドブルを飲んで体も心もキリッとさせて、残り時間を有意義に使いながら志望を実現してほしいですね。
ーーありがとうございます。ではさっそく質問なんですが、そもそも高校生はなぜ「大学受験」をするのでしょうか? 大学受験の必要性や、本気で勉強に取り組む意味について、林先生の考えを聞かせてください。
林 「情報は欲望の母である」。これはいつも僕が生徒たちに伝えている言葉です。高校生活というのはとても小さなコミュニティで、学生たちが見える範囲が非常に狭い状態です。大学に行けば、一気に視野が広がります。ですから大学受験とは、今まで以上に大量で良質な情報を手に入れることができる選択肢のひとつだと考えています。
また、一般的に“良い大学”と言われている大学に行くほど、高いレベルの情報を得る機会は増します。最新技術などを当たり前のように駆使するメンバーと出会う確率も上がり、自分のスキルが上がりやすい環境を整えることができると思うんです。さらには、本気で勉強に取り組むことで、自分の得意不得意が明らかになります。中途半端な勉強では、「やればできるんだ」という無意味な期待を抱き続けることになりかねませんからね。
ーー受験はどうしても結果を出すことに意識が集中すると思いますが、受験を経験することで合否以外に得られるものもありますよね。
林 僕は大学受験の意義を「5S」の実践だと考えています。5Sというのは<Study(勉強)>を通じて、自分の<Skill(技能)>を客観的に捉え、自分に合う<Style(型)>を見つける。そして、それに基づいて<Strategy(戦略)>を決めて、<Success(成功)>を得ることです。
努力や工夫をどのように積み重ねれば結果につながるのか、大学受験を通じて自分なりに挑んでいく経験は、たとえ受験の結果が実らなかったとしても将来的に大きな武器になると思います。
ーーこういう「5S」を意識することで、学生たちは大学受験に対してさらに前向きな気持ちで挑めそうです! とはいっても、いざ受験シーズンになると悩んでいる学生の姿は多い気も......。
林 受験で悩む生徒の一つのパターンは、やりたいことがはっきりしていないというケースです。逆に、早い段階でやりたいことを見つけられた子は、受験そのものには悩みません。例えば、医者を目指すなら医学部を卒業して国家試験に受かる必要があるので、やるべきことは決まっていますよね。あるいは、レッドブル・アスリートの中には大学受験を通らずに世界で活躍している選手もいるはずです。大切なのは大学に行くかどうかではなく、自分で決めた覚悟を実行に移せるかどうかなんですよ。
ーーたしかに! 何事にも覚悟は必要ですね。林先生の元には受験生たちの声がたくさん届くと思います。その中にはどんな不安がありますか?
林 受験生のほとんどは、本番までの時間が足りないことを不安に感じています。でも、なぜ時間が足りないのか? その答えは明白で、今までの勉強が足りないからで、勉強してこなかった過去の自分の責任を、未来の自分に背負わせているだけなんです。
高2の段階ですでに受験勉強を終えている生徒だっている中で、自分には時間がないと悩んだり迷ったりするのは本当に時間の無駄です。ですから、「ダメなら過去の自分が悪かっただけで、受験を決意してからの自分の責任じゃない」と頭の中を切り替えて、そこからの過ごし方は、後からあれでよかったと言えるように、ひたむきに励んでほしいですね。
ーー受験を迎える学生の胸の中にはさまざまな感情が入り乱れています。そんな時期に、親は我が子とどんな距離感を保つのが適切だと思いますか?
林 過干渉はかえってマイナスに働くケースが多いですし、特に入試直前は親が関わって状況が好転することなんて、まずありません。勉強面は本人に任せて、生活面のサポートに徹するのがいいと思います。洗濯をしてあげて、美味しいご飯を作ってあげて、お風呂の準備をしてあげること。そして、子どもから相談にきたらちゃんと話を聞いてあげること。それだけでいいんではないでしょうかね。
受験後の生徒と話すと、「口を出さずにちゃんと見守ってくれたから安心して勉強に専念できた」という言葉を、毎年耳にするんです。彼らは親に支えられてきたことをちゃんと理解し、感謝しているんですよ。
02
プロが見る、結果を出す受験生の特徴は?
せっかく始めた受験対策。やるからには志望校合格が多くの受験生の本音なはず。でも、どうやったらテストで高い点が取れるんだろう......。林先生! 良い結果の出し方を教えてくれませんか!?
ーー受験生にはさまざまなタイプがいると思いますが、成績が伸びやすい生徒の傾向はありますか?
林 逆説的になりますが、完璧主義の生徒の成績は伸びないんです。受験対策において、全科目の成績が伸びることはまずないと言えるでしょう。成績が伸びるのは可能性がある科目だけ。そのことを自分で理解して重点的に時間を使える生徒が伸びる傾向にあります。
ーーということは、成績が伸びない科目は諦めたほうがいい?
林 極論で言えばそうなります。もちろんその子が受験勉強に真剣に取り組んでいることが前提ですけどね。科目に対する適性が高いかどうかは、真剣に取り組まなければわからないことなので。
ーー真剣にやれば、おのずと見極めもつくはずだと。
林 はい。ただ残念ながら、一生懸命やっているのに全科目が伸びない生徒もたまにいます。それでも「どうしたら東大に受かりますか?」と相談されたら、全科目の成績が芳しくないのに、東大に合格する可能性は極めて低いと正直に伝えます。
ーー林先生節が炸裂していますね(笑)。
林 僕の授業を受けて現代文の成績が伸びなければ、どこで授業を受けても伸びる確率は非常に低いと伝えることもありますよ(笑)。
ーー生徒たちにしてみたら、かなりキツい言葉に聞こえてしまうんじゃ......?
林 どうなんでしょうかね? 究極の現実主義者であり合理主義者の僕の元に来るからには、それなりの言葉をぶつけられるだろうと生徒自身が覚悟しているようにも見えるんですよ。それに相談に来る生徒本人も、本当は無理だということに気づいていることが多いんです。なんとか必死にごまかそうと自らに嘘をつき続けている状態なので、無理なものは無理とはっきり伝えてあげることも時に必要だとも考えています。
もちろん生徒の中にはメンタル面が強い子も弱い子もいますから、言っている内容は同じでも伝え方には気を配ります。我々予備校の役割というのは、本人の現時点での実力と努力の度合いや、適性と目標設定のバランスを見ることですから。
ーーそこまで伝えても出願先を変えない生徒はいますか?
林 いますよ。本人が納得できないなら、我々がどうこうできるものではありません。ただ、例えば今まで普通の高校生ピッチャーだったのに、いきなりMAX160キロを超えるピッチャーにはなれませんよね。それと同じようなことなんですが、我々に諦めろという権利も資格もありませんから、最後は本人の判断に委ねます。
ーー現役合格を目指したいなら、なおさら自分の今の学力を把握しておく必要がありますね。
林 そうですね。たまたま勉強したところが試験に出て、運良く志望校に受かる生徒は毎年のようにいますが、しっかり勉強したのに運が悪くて落ちる生徒はいません。よほどの体調不良でも起こさない限り、大学受験は実に公平な、実力勝負の場です。失敗の原因は単純に勉強不足なので、そうならないために早めの準備を心がけましょう。
03
林修流、上手な切り替え力をアドバイス
レッドブルの独自調査で、受験生や受験を経験した大学生の約7割が“切り替え”に重要さを感じていることがわかった。学校生活と受験対策はどちらも受験生の日常。どう切り替えればうまく乗り越えられるのか、林先生がアドバイスする。
ーー思うように勉強がはかどらない受験生は、なにから切り替えたらいいと思いますか?
林 うまくいかないときこそ、<When・Where・Who・What・Why・How>の5W1Hを思い出してみてください。
例えば<Where>。家だと集中できないなら、図書館に行ってみる。もしくは<How>。問題集に書き込むと頭に入らないなら、自分でノートにまとめてみる。あるいは<What>。いまいち気分が上がらないなら、レッドブルを飲んでから取り組んでみるといいかもしれません。勉強時のパフォーマンスの向上をサポートしてくれますし、「これを飲んだからには」と気力の面も後押ししてくれるはずです。とにかく、うまくいかない理由を一度書き出して、別の環境や要素に切り替えてみてはどうでしょう。
ちなみにこういう5W1Hを意識した切り替えは、社会に出てからも使えますよね。仕事ができる人は5W1Hをうまくアジャストできている人が多いですね。
ーー自分がやりやすい環境に切り替えられれば意欲も増しそうです! ちなみに林先生は5W1Hを使ってなにか環境を切り替えた経験はありますか?
林 僕の場合はWhenでした。受験勉強のタイミングで、自分は夜に勉強していると眠くなってしまうことがわかったので、夜早めに寝る分、朝早くから勉強することにしたんです。大人になった今でも朝に仕事の準備や勉強をする習慣は変わりません。夜遅くまで勉強を頑張る受験生は多いですが、眠いのに我慢して勉強しても効率は上がりません。時間を変えるという発想も時に役立つと思いますよ。
ーー受験生にとって学校生活と試験対策はどちらも大切な時間になります。受験生に役立つ上手な時間の作り方があれば教えてください。
林 受験本番まで、やらなければいけないことを足し算方式で考えると必ずパンクします。生徒たちには「本番までの全ての時間を逆算しなさい」と引き算方式に頭を切り替えるようアドバイスします。自分が受けたい大学の試験日程は決まっていますから、通学や食事、入浴、睡眠など、費やすことがわかっている時間を全て引けば、勉強のために使える時間がどれくらいなのか算出できますよね。
そうやってスケジュールを組むことで、受験生たちは時間が本当に足りないことを改めて自覚します。限られた時間の中でなにを優先し、いかにうまく時間を配分するか。これができるかどうかで差が大きく開くんです。
ーー逆算への切り替えがいかに大切か理解できました! もし逆算して勉強に励んでも、まだ悩む学生がいたらどんなアドバイスをしますか?
林 いくらやっても完璧に仕上がらないのが受験勉強。一部例外的な子もいますが、ほとんどの受験生は未完成のまま試験を受けています。自分にできることを全部やり尽くしたと思える状況を作りましょう。「完成」は無理でも、納得は可能です。
もし各科目に費やす時間配分がうまくつかめないのなら、自分が目指す大学の配点バランスを参考に組み立てるのもひとつの手です。「このバランスで点が取れれば勝負できる」と、目標を明確化すると努力の方向を決め易いですよね。
その上でどうしても受かりそうにないなら、志望そのものが無理な場合もあります。進路を変更してもいいし、極端な場合受験そのものをやめたいならやめればいい。決めるのは本人ですから。ただ、少子化の進む今の日本で、どうしても大学に行けないというケースは非常に少ないとは思いますが。少なくとも「頑張ればこの先きっとできるようになる」なんて、甘く無責任な言葉は絶対に言いません。
ーー厳しいようで寄り添ってくれる林先生らしい言葉ですね。
林 悩みを抱える受験生は多いとは思いますが、勉強できない理由は、努力が足りないか適性が低いかの2つしかないんです。努力が足りないなら努力すればいいだけですが、そもそもの適性が低い場合は努力でカバーしきれません。受験で大事なのは「ここまでは頑張る。でもこの先は諦める」という判断です。自らの適性を素直に受け入れた上で、より適性が高い方へと切り替えることも必要なのではないでしょうか。
ーー先ほど現実主義で合理主義と言っていましたし、もしかして林先生って悩み知らずの人なんじゃ......?
林 悩むことって世の中にそれほど多くないと思っています。僕は勉強には適性がありましたけど、体育も音楽も美術もダメで、番組出演時に字を書けば汚くて読めないと指摘されるときもあったり、本当にダメなところだらけ。でも、適性が低い分野を努力で何とかしようとは思いません。できないことを諦める能力が高いんですよ(笑)。
それに現代は、僕が無意味な努力をするくらいならAIに任せたほうがよっぽど合理的に進むことだってあるわけです。極端な例かもしれませんが、それもひとつの切り替えなんだと思います。
04
全ての受験生へ、本気のメッセージ
今が苦しい時期かもしれないけど、もうひとふんばり。これまで積み重ねてきた努力は決して無駄にならない! これからも自信を持って挑んでほしい受験生に、林先生からの熱いメッセージ。
ーー受験を通じて学生たちが得る学びは、今後の人生にどう影響しますか?
林 大学受験を通じて得る学びとして「5S」があるとお伝えしましたが、受験で養った自分のスタイルは社会に出てからいろいろな場面で役立つと思います。例えば重要なプレゼンでは、どうしたら良い結果につながるか戦略を練ることになります。これって実は、解答があるテストの問題を解く受験に通じると思うんです。受験を機に自分の5Sを認識できた人は、この先さまざまな課題に遭遇したときにも、その応用で課題に対応できる可能性が高いのではないでしょうかね。
ーー多くの学生が受験を通じて素敵な大人に成長してほしいですね! ところで林先生のような大人の世代から見て、今の若い世代にどんなエネルギーを感じますか?
林 今の若い世代には優秀な子が本当に多いですよね。しかももともと優秀であることに加え、自分のスキルを何倍にもする能力にも長けていて、一層素晴らしいんです。自分の生徒たちを見ていても、AIをはじめテクノロジーの発達に対して非常に柔軟。何をどう使えば自分のスキルを上げることができるかを見極めて、適材適所で駆使しているから感心します。
そもそも人間には、能力の外部化で進歩してきた歴史があります。計算機は脳での計算を外部化したものですし、車は歩く能力を外部化したものです。それがAIの登場で外部化が一気に進み、人間ひとりの能力はさらに拡張されています。そういう技術を自分の一部であるかのように使いこなす若い世代には、僕ら大人には到底敵わない力が備わっているように感じています。
ーーでは逆の質問で、大人たちのここは若い世代に負けないと感じる部分はありますか?
林 うーん、ないでしょうね(笑)。過去の社会においては、長く生きている分の知識や経験が生かせましたが、現代のように変化し続ける社会ではこれまで得たものが逆にマイナスに作用する場面も増えていますから。
我々大人は時代の変化をキャッチアップしながら、研鑽を続けていく必要があります。そうでなければ「昔はよかった」と嘆くだけの、迷惑な存在になってしまいます。今を生きる若者たちは、そんな時代に取り残された大人の声なんかに耳を傾けず、自信を持って自らの道を突き進んでいってください。
ーーたくさんのお話をありがとうございました。最後に、これから受験勉強に励む学生たちに向けてエールをお願いします!
林 しっかりとした逆算に基づいて、受験本番までの日々をとことん頑張り抜いてください。それで良い結果につながればいいし、もしつながらなかったとしても最後まで頑張り抜いた自信はあなたの一生の財産です!
林修(はやし・おさむ)profile
1965年愛知県名古屋市生まれ。東京大学法学部卒業後、日本長期信用銀行(長銀)に入行。しかし「漠然とした危機感」を抱き約半年で退職。その後予備校講師となる。現在は東進ハイスクール・東進衛星予備校の現代文講師として、東大・京大コースなどの難関コースを中心に授業を行い、抜群の東大合格実績を誇る同予備校の躍進に貢献。また、豊富な知識とキレのあるトーク力を武器に、さまざまなテレビ番組でMCやコメンテーターを務めるなどタレントとしてマルチな才能を発揮している。