Phoenix1 take a breather backstage.
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フィットネス

eSports:フィジカル&メンタルケアの重要性

eSportsがプレイヤーに求めるものは大きいが、疲労疲弊を防ぐための方法が存在する。
Written by Cass Marshall
読み終わるまで:12分公開日:
2017年はベテランの1年になりそうだ。North American LCSとOverwatch Leagueのフランチャイズ展開が決定した中、プレイヤーの平均年齢が上がっており、本気でゲームに取り組んでゲームプレイをキャリアにするための制限は一切存在しないように思える。しかし、様々な要素がサステイナブルになっているように見受けられるものの、プロプレイヤーが長期に渡って活躍するために必要なひとつの領域が存在する。自分自身の肉体だ。プレイを長年続けることで彼らの肉体は驚くほどボロボロになってしまう可能性がある。
今回、Red Bull eSportsは、ストレングス・コンディショニング・アシスタントコーチとして大学生アスリートやサンフランシスコ・49ersをはじめとする数々のプロスポーツチームと仕事をした経験を持つTaylor Johnsonを招いた。彼はeSportsチームとプレイヤーのコンサルタントとしても働いており、ハイパフォーマンスモデルを構築して、ゲームプレイ、ヘルス、ウェルネスを全体的に向上させる方法を教えている。我々は、プロゲーミング特有の問題、そしてeSportsチームに不足している部分などについて、Johnsonに訊ねてみることにした。

まずは基礎

eSportsはここ数年で大きく成長しており、現在はチーム内に健康関係のインフラも用意されるようになっている。最近もLOL Esportsのサイト内で、North America LCSの多忙なスケジュールと、コンピューターの他には電子レンジとインスタントラーメンしかないプレイヤーの食生活の改善に向けた各チームの取り組みについての記事が掲載された。また、プレイヤーがジムワークに取り組む様子のセルフィーや動画をソーシャルメディア上に投稿するチームも増えてきている。これは彼らがフィットネスを真剣に捉え始めている証拠だ。
しかし、これで十分なのだろうか? Johnsonは素晴らしいスタートだとしているが、彼が目指しているのは北米の平均値ではない。彼が目指しているのは、伝統的なスポーツのトップレベルだ。「プロアスリートなら、他のエリートチームが実現しているハイパフォーマンスモデルを目指すべきです。世の中には、栄養、ヘルス、ウェルネス、心理的準備、睡眠、回復などのプログラムが存在しますが、このような全てがエリートチームには組み込まれています」
The support staff can outnumber the players.

どのチームにもサポートスタッフが必要

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健康な肉体と精神

これらはやや高すぎる目標に思えるが、プレイヤーが楽しんでキャリアを終えるためには必要なことなのかもしれない。Cloud9時代に大活躍し、現在はFlyQuestに所属する『League of Legends』のプロプレイヤーHai “Hai” Du Lamは、手首に痛みを抱えながらミッドレーンに求められるトップレベルのメカニカルを維持しなければならない時期があったと公に発言しており、先日も、Cloud9のJeon “Ray” Ji-wonが、2017シーズンのSummer Split中にうつを患ったことを素直に発言している。また、他のプレイヤーもフィジカルとメンタルの両方に問題を抱えた経験を持っている。
Johnsonの業務は、基本的にはプレイヤーの成長に必要なあらゆる部分に好影響を与えるためのものだ。Johnsonは「まず、チームの構造とスケジュールを再編します。これは伝統的なスポーツで成功を収めているチームで良く見かけられるものですね」と説明している。これはeSportsのファンに馴染みがあるものだ。ゲーミングハウスで生活しているプロプレイヤーたちは厳しいスケジュールに沿いながらコーチやスタッフと一緒にトレーニングし、そのスケジュールで許される範囲で食事と睡眠をとっている。Johnsonが続ける。「再編したあとは、eSportsのトレーニングとリカバリーにこれを当てはめていきます」
そのトレーニングの一部は、ワークアウトのルーティンや人間工学を含むフィジカルなもので、これはJohnsonの業務の柱と言える部分だ。彼らはプレイヤーをビッグゲームに向けて快適かつ健康な状態に仕上げながら、この先何年もトーナメントに参加することができる状態にしていく。Johnsonは「私たちの第一目的は、プレイヤーのパフォーマンス、ヘルス、ウェルネスを総合的に高めて怪我のリスクを減らし、プレイの寿命を伸ばすことにあります」と説明している。
このようなベーシックな部分が整えば、次は難しくもあり簡単でもある部分へ移行していく。Johnsonは「あとは、ゲーミングコミュニティ全体にヘルスとウェルネスの重要性をプロモーションしていきます」とコメントしている。彼が現在直面している最大の問題のひとつは、eSportsには、伝統的なスポーツのようなフィジカルにおける耐久力やチャレンジが存在しないという固定観念だ。このような考えが、彼のような存在は不必要、または余剰だという誤解を生み出す。そして、この誤解はプレイヤーの怪我や早期引退に繋がる可能性がある。Johnsonが続ける。「eSportsとビデオゲームに関しては、プレイヤーはただコンピューターやTVの前に座って酷い食生活を送っているだけで、きちんとしたモデルも存在しないという間違った評価が存在しますが、私は、実際はその真逆に近いと思っています。伝統的なスポーツと比べると、相違点よりも共通点の方が多いと感じています」
このモデル構築に関して、eSportsはすでに大きく踏み出しており、North American LCS初期の頃からはかなり違う姿になっている。小規模なチームは、若いプレイヤーたちの共同生活が生み出す悩みに振り回される時もあるが(現実世界における経験値が低いプレイヤーもしばしば見られるため)、大規模なチームは、健康面と安全面に関するインフラ設備へ積極的な投資を始めている。そして当然ながら、この行動には道徳的な考えも含まれている。自分たちが抱えているプレイヤーのためだと考えているのだ。
このモデルを自分の生活に応用する重要性を理解していないプレイヤーもしばしば見られるが、理解している必要はない。だからこそ、Johnsonのようなエキスパートが存在するのだ。きちんと組まれたモデルが存在しない中でゲーミングハウスに入れられたプレイヤーたちは、ハイレベルなプレイを求められる立場にいるため、自分たちを激しくプッシュすることになる。このような状況下で、手の酷使や乱れた姿勢からくる多少の痛みにプレイヤーたちが目をつむるのはごく自然なことだ。しかし、そのダメージは蓄積されていく。
現在、このようなプレイヤーをケアすることが急務になっている。そのソリューションは、正しいインフラの構築とエキスパートの存在だ。そして、このようなソリューションが用意できれば、事前準備とゲームプレイに関してボーナスが付与されることになる。Johnsonが説明する。「フィジカルとメンタルの健康面を非常に真剣に捉えている人たちは、ヘルスとウェルネスがゲームプレイに与える影響について勉強しています。最近は、対戦に向けた調整方法にパラダイムシフトが起きつつあります」

パフォーマンスの4本柱

プレイヤーのケアは簡単なものではない。フィジカルヘルスやフィットネスに関する知識がない人たちにとっては特にそうだ。しかし、Johnsonはこれを上手くまとめる便利な表現を用意している。「パフォーマンスには4本の大きな柱が存在すると言えます。栄養・リカバリー・メンタル・フィジカルです。この4つは最も簡単に大きな変化を加えられる要素だと思います」
eSportsはフィジカルなスポーツに見えないかもしれないが、ビデオゲームに全身全霊を注いでいるプレイヤーたちが、自分たちの肉体が被るダメージの大きさに驚かされることは少なくない。1日の大半を座って過ごすというだけで、身体へのリスクが発生する。そして、トップレベルで成功するためには、俊敏な筋肉運動も必要とされる。たとえば、『スマブラDX』のプレイヤーたちは両手にダメージを受けてしまっている。最初、そのようなダメージはプレイヤーが対処できるもののように見えるが、すぐに状態は悪化していく。
Johnsonは「問題のあるエリアを修正するための特定のトレーニングと矯正エクササイズを用意する必要があります。また、各プレイヤーのニーズだけではなく、チーム全体のニーズを把握する必要もあります」とコメントしている。そして、どのeSportsタイトルにも固有の問題が存在する。Johnsonが続ける。「たとえば『Dota 2』ですが、3先(5戦中3戦先取したチームが勝利するルール)では、ひとつの対戦が1時間を超える時があります。この事実を理解していれば、ハイレベルなトーナメントで確認されているストレス要因や運動を考慮したトレーニングとシナリオを用意することが可能になります」
対戦について理解する必要があるのはチームとコーチだけではない。フィジカル&ヘルススタッフも各対戦とその対戦に含まれている問題を理解する必要がある。「ゲームに合わせて複数のシナリオを用意し、トレーニングをピリオダイズ(時間・期間で分けること)すれば、高額の賞金が用意されているトーナメントへの準備を有利に進めることができるようになります」とJohnsonは説明している。たとえば、『League of Legends』、『スマブラDX』、『StarCraft』のプレイヤーにはそれぞれ異なる問題が存在する。
CLG come together for a huddle after a match.

プレイヤーがヘルシーならビッグマッチも楽になる

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ロングゲームの問題

健康面と安全面はプレイヤーがプレイを続けるために重要だが、競争がこれまで以上に激しくなっている今、Johnsonのようなプロフェッショナルの存在はプレイヤーを優位に立たせる助けにもなれる。Johnsonは「フィジカルトレーニングと栄養が血流を促進し、スピードと反応時間を向上させて認知機能を高めるということを示しているリサーチや研究が存在します」と説明している。優れたルーティンとプロフェッショナルなアドバイスが、何も手にすることなく会場を去るのか、トロフィーを持って会場を去るのかを決める可能性があるのだ。
メンタルヘルスもeSportsの諸団体が早急に取り組むべき必要がある。Johnsonたちが手を貸しているプレイヤーたちの中には、精神疾患を煩う年齢、またはその年齢に近づいているプレイヤーが少なくない。若年層の鬱やその他の精神疾患に詳しいエキスパートをチーム内に用意することは非常に重要だ。
メンタルヘルスへの取り組みの効果は、若年層の鬱やその他の精神疾患のような問題の回避だけに留まらない。ヘルシーなルーティンは、プレイヤーが小さな問題や日々の生活をよりスマートに対処する助けにもなる。これはスポットライトに晒されているプレイヤーには特に重要だ。「心理面についての話をすれば、プレイ中にメンタルが振り回される傾向があるプレイヤーがいますので、複数のメンタルトレーニングプログラムを用意しています。これらも非常に重要です。プレイヤーのメンタルバランスを整えながら、自己回復力を高めていきます」とJohnsonは説明している。
2017年はベテランプレイヤーにとって素晴らしい1年になりそうだが、このようなメンタルの問題が修正されなければ、彼ら全員が一気にゲームからはじき出される可能性がある。
「プレイヤーたちの寿命に目を向けてみると、バーンアウト(燃え尽き)の可能性が急速に高まっているように思えます」とJohnsonはコメントしている。年齢と共に反射神経が衰えたプレイヤーが引退するというのはこの世界の共通理解だ。しかし、Johnsonは引退を促す主犯はバーンアウトとメンタルの疲労ではないかと考えている。Johnsonは「心理的な視点からプレイヤーたちを見てみると、感情を落ち着いてコントロールできているプレイヤーの方がミスをする回数が減り、勝利数が増えます」と続けている。
これら全てはひとつのパッケージに綺麗にまとめられる。フィジカルヘルスとメンタルヘルスは繋がっているのだ。「正しい食事とリカバリー、トレーニングから得られるメンタルの安定性に注目することは、プレイヤーたちが毎日上手く機能するという、より大きな目標達成のために必ず役立ちます」
eSportsのフランチャイズ化が始まろうとしている中、各チームや団体がインフラやコーチング、スタッフに関してレベルアップを目指していることに期待したい。しかし、正しいヘルスプロフェッショナルを仲間に加えることも重要だ。North American LCSとOverwatch Leagueは、優秀なロースターとキープレイヤーを維持できるチームが結果を得られるリーグになるだろう。よって、バーンアウトや怪我による戦列離脱が起きてしまえば、その結果を得ることは非常に難しくなる。Johnsonのようなプロフェッショナルがそれを回避する助けになるわけだが、究極を言えば、全ては、彼らを雇い入れるチーム、彼らの導入を推奨するリーグ、そして彼らのアドバイスを継続的かつ積極的に取り入れるプレイヤーの責任だ。結局は、危機に瀕しているのは彼らのキャリアなのだから。
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