An image of a PUBG character
© Bluehole
ゲーム
生みの親が語る『PlayerUnknown’s Battlegrounds』
早期アクセスでリリースされたシューティングゲームが2017年最優秀ゲーム候補にまで急成長した理由は? このゲームを生み出した “ミスター・ドン勝” ことBrendan “PlayerUnknown” Greeneに話を聞いた。
Written by Mike Stubbs
読み終わるまで:8分Published on
PlayerUnknown’s Battlegrounds』(以下『PUBG』)の成功は、『Minecraft』を除いて(このゲームはSteamのベータセクションより前に存在していたが)、早期アクセスゲームの中でこれまで一度も見られなかったレベルのものだ。一時はSteamの「現在最もプレイヤー数が多いゲーム」でeSportsのビッグタイトル『Dota 2』にわずかに及ばない2位にまで浮上した。現在数百万人が “ドン勝” を目指してこの狂騒に参加しており、今も売上を順調に伸ばしているこのゲームの勢いはしばらく止まりそうにない。
PUBG』は画期的なゲームではない。これはキルされたら復活できないサバイバル・バトルロイヤルゲームであり、同様のゲームで開発がさらに進んでいるゲームは他にも存在する。しかし、このゲームが一番人気なことに疑いの余地はない。その大きな理由のひとつは、そのクリエイターとして知られる、“旅するアイルランド人” ことBrendan “PlayerUnknown” Greeneが、このゲームのライバルとされるほとんど全てのビッグタイトルの開発に関わった経験を持っており、その経験の全てをこのタイトルに注ぎ込んでいるからだ。そして、2016年にパブリッシャーのBlueholeと組んで以来、Greeneは一度も振り返らずに前を向いて進んでいる。
「2016年3月から開発を続けているよ。早期アクセスでリリースするまでは、開発チームは約40人だった」と現在41歳のGreeneはRed Bull Gamesとのインタビューを切り出し、次のように続ける。「リリース後は規模を拡大していて、今は100人強が開発に関わっているよ」
早期アクセスリリース後に大きな注目を集めたため、開発チームはプレイヤーの要望やニーズに応えるべく、チームを拡大する必要があった。プレイヤーたちは開発チームにかなり多くのことを求めている。最大で数万人が同時プレイするこのゲームを楽しむ全てのプレイヤーが自分の望み通りになることを期待している。よって、開発チームはハードワークを重ねて全てを安定させ、ゲームが狙い通りに機能するようにする必要がある。一時停止状態が数回起きるなど、全てが順調でスムーズとは言えないが、開発チームはかなり良くやっていると言えるだろう。
「早期アクセスのリリースはかなりスムーズだった。Steamの早期アクセスでのリリース前に複数のアルファテストとベータテストを実施していたから、サーバーのプラットフォームシステムが大量のプレイヤーをホストできるように調整する時間が十分にあった。でも、この成功を踏まえて、プラットフォームをアップグレードする努力をしているところさ。元々は今確認されているようなCCUが扱えるデザインじゃなかったからね」
もちろん、これだけ多くのプレイヤーが同時にプレイしているので、その中には非常に興味深い戦略を考案しているプレイヤーがいる。ひたすら同じ場所に隠れ続けるプレイヤーがいれば、着地した瞬間にとにかく武器を拾って他のプレイヤーを狙い始めるプレイヤーもいる。このような戦略を疑問に思っているプレイヤーもいるが、開発チームとして推奨できないものはあるのだろうか? ドン勝(最後のひとりになること)にチートは存在するのだろうか?
間違ったプレイ方法は存在しないよ。最後にドン勝があるだけさ
Brendan “PlayerUnknown” Greene
好ましくないと思われる戦術は存在するのかどうかという質問に対し、Greeneは「ひとつもないね! どうやって勝つかは個人の自由さ」と回答し、次のように続ける。「間違ったプレイ方法は存在しないよ。最後にドン勝があるだけさ。もちろん、数多くのバランス修正をする必要がある。武器も追加する予定だし、マップ上のアイテム出現率のバランスも修正する必要があるけれど、Steamの早期アクセスでリリースするメリットのひとつは、本物のプレイヤーからの大量のフィードバックを元にゲームを修正できる点だ」
A player walks across the PUBG map
変化を迎えつつある『PUBG』© Bluehole
プレイヤーからのフィードバックはすでにこのゲームを大きく変えている。コミュニティは何か自分たちが気にくわないことがあれば、恐れずに開発チームに伝えており、これがプレイヤーと開発チームの間に摩擦を生み出す時もある。しかし、『PUBG』がリリースされてからほとんど何も変わっていない部分がひとつある。それがマップだ。特定のエリアを修正すべきだという意見も出ているが、Greeneはまだ変える必要はないと感じている。
「アートチームは、戦闘が楽しめる多種多様なエリアを含むマップの開発において素晴らしい仕事をしてくれたと思う。これは開発チームが手がけた初めてのリアリスティックなマップだったし、僕たちはここ数年の開発でこのマップから多くを学んできた。だから、今手がけている新しいマップは、僕たちが何を学んだのかが確認できると思う。将来的には現行マップに立ち返って、リフレッシュできればと思っているよ」
幸運なことに、『PUBG』の早期アクセスバージョンは、プレイヤーがいくつか問題があること、そして数週間後、数ヶ月後に新たなコンテンツが追加されることに気づける形でリリースされていた。Blueholeが『PUBG』をXbox Oneでリリースすることを発表した時、この早期アクセスモデルがどのように機能するのかを不思議に思った人がいるが、幸運なことに、Xbox One Insider Program(前Preview Program)があるため、開発チームは家庭用ゲーム機でも同様の開発を続けることができる。
One of the towns in PUBG
世界的大ヒットとなった『PUBG』© Bluehole
「僕たちは、Xbox Insider Programは『PUBG』にピッタリだと判断したんだ」とGreeneが説明する。「Steamの早期アクセスと同じで、実際のプレイヤーからのフィードバックを元に家庭用ゲーム機版タイトルの開発を続けることができるからね。現バージョンと家庭ゲーム機バージョンの機能を同じにしたいと思っている。Unreal Engineを使用しているおかげで、ゲーム自体は社内にある開発キットですでに機能しているし、僕たちは最適化に力を入れることができている。とはいえ、まだ開発中だし、何がどうなるのかについて約束するには早すぎるけどね」
2017年8月末現在、『PUBG』がリリースされる家庭用ゲーム機はXbox Oneだけだ。また、Microsoftが自社プラットフォームでリリースする独占タイトルになるということは、少なくとも数年はその状態が続くことを示唆している。しかし、この世の中には他の家庭用ゲーム機も存在する。そしてその中の興味深いオプションのひとつが、Nintendo Switchだ。現状では『PUBG』はNintendo Switchでは機能しないが、数年後にはこのゲーム機でもリリースされるのだろうか?
「正直に言って、『PUBG』のNintendo Switch版については考えたことさえなかったよ! 今はとにかくPCとXbox Oneでゲームを機能させることに集中したいんだ」とGreeneは回答し、次のように続ける。「僕はそこまで先のことは考えていない。それを考えるのは僕のボスの仕事さ。でも、『Arma 2』で初めてバトルロイヤルモードを手がけた時から、バトルロイヤルタイプのeSportsが欲しいと思っていた。だから、個人的には『PUBG』のメジャータイトルが開催される日が来るのを望んでいるんだ。それがいつになるかは様子を見ないと分からないね!」
Greeneがこの先数ヶ月に向けて大量のプランを用意しているのは明らかだ。彼のチームはESLとパートナーシップを組んでeSports化に向けての準備を進めており、彼自身もMicrosoftと共に、Xbox One版とPC版の開発を急速に進めている。彼とBlueholeは、『PUBG』をSteam最大のゲームにするために全力を尽くしているように見える。しかし、しばらく前から我々の頭にこびりついているひとつの疑問がある。なぜ、GreeneはPlayerUnknownと名乗っているのだろうか?
「『Arma 2』のデフォルトプレイヤー名はPLAYER 1だったんだけど、僕が手を貸していたサーバー用のキャラクターを作る時に、それをPLAYERUNKNOWNに変えたんだ。それ以来使っているんだよ」とGreeneは回答している。
重要なのは名前ではなく実体だという意見もあるだろう。しかし、異論を挟む余地をなくすにはドン勝が必要だ。果たしてこのゲームの生みの親である実体のGreeneは何回ドン勝をいただいた経験があるのだろうか?
「1回しかない。でもドン勝したことに変わりはないよね!」
『PUBG』初心者にもまだ望みはあるということだろう。
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