Playing VIRTUAL BOY

22年前に発売されていた元祖VRゲーム機(!?)を楽しむ

© Maruo Kono

1995年に任天堂から発売されたゲーム機「バーチャルボーイ」を覚えているだろうか。ゴーグル型ディスプレイに表現された3Dのゲーム体験は、今で言う"VR"だ(!?)VRが注目を集める今だからこそ、この元祖VRマシンをプレイし、語ってみたい。

Playing VIRTUAL BOY
Playing VIRTUAL BOY
6月13日~15日の3日間、太平洋の向こう側アメリカはロサンゼルスのL.Aコンベンションセンターで、世界最大のゲームイベント「E3」が開催された。XBOXの最新機の発表を目玉に2017年後半から2018年に発売が予定されるゲームタイトルも数々が発表され、今後のTVゲームは「4K対応」が主流になっていくことが予想される。そしてもう1つが「VR」だ。プレイステーションVRが発売され、「VR元年」と言われた2016年から継続して注目度の高まるVR(バーチャルリアリティ)だが、こちらも多くの新作タイトルが各メーカーから発表。今後はよりコンテンツが充実していくことになるだろう。
日本では6月24日に、「シブヤVRランド  BY ハウステンボス」が渋谷にオープン。名前の通り、これは長崎のハウステンボス内にある「VRの館」のコンテンツを、渋谷で楽しめるというものだ。「VRの館」の熱烈な人気にあやかり、そのコンテンツを若者の街・渋谷に展開することでハウステンボスの認知・集客アップを図るものだが、それだけ今VRへの注目度が高いと言うことでもある。「シブヤVRランド BY ハウステンボス」では国内外で人気の5つVRコンテンツを楽しむことができるそうだ。筆者も近いうちに足を運びたいと思っている。ちなみに渋谷には「VR PARK TOKYO」いうアミューズメント施設もあるので、一緒に足を運んでVR1Dayツアーを楽しんでみるのもいいだろう。
とにもかくにも、今、VRはアツい。
Playing VIRTUAL BOY
Playing VIRTUAL BOY
さて、本題に戻ろう。今でこそ最先端の映像体験として注目を集めるVRだが、実は22年目に任天堂よりゲーム機として市販化されていた事実は知っているだろうか? それは「バーチャルボーイ」である。現在25歳以上な方なら、若かりし頃に聞いたことのある懐かしい響きだろう。もちろんその技術は現在と違い、左右の目の視差を利用し、ゴーグルに内蔵された2つのディスプレイに異なる映像を表示させることで、3D体験を実現した。現在のCG技術によって再現されるリアルな映像によるそれとは異なるが、約20年も前に既にこのゴーグルディスプレイによる3D体験を提案していたと言うのは、さすが任天堂だ。素直に頭下がる。
Playing VIRTUAL BOY
Playing VIRTUAL BOY
しかし、この時代をあまりにも先取りした画期的なゲーム機は、セールス的に残念な結果になったと言わざるを得ないだろう。1995年7月に発売されたバーチャルボーイだが、その約半年前には初代プレイステーション、その1ヶ月前にはセガサターンが発売されており、さらに1996年には同じ任天堂からNINTENDO64が発売されるなどゲーム第5世代機戦線の真っ只中。他のゲーム機が高画質の新たなゲーム体験が楽しめることを謳いながら登場してきたことに対し、このバーチャルボーイは
  • ゴーグルディスプレイに表示されるのは赤と黒だけで表現されるモノトーン映像。
  • ゴーグルディスプレイは現在のVRディスプレイのようはヘッドセットタイプではなく、専用スタンドへの固定式タイプなので、ゲーム中に自由に身動きが取れず目に負担がかかる設計だった。
  • 友人や仲間と同じ画面を共有できない。それゆえ対戦プレイに向いてない。
と言う点が、多くの人に受け入れてもらえなかったのだ。皆の資料室「ウィキペディア」によると、国内の売り上げ台数は約15万台、世界累計では約77万台だということだ。同世代機の初代プレイステーションが国内で約1740万台(世界累計約1億200万台)、サガサターンが国内で約580万台(世界累計約926万台)、NINTENDO64が国内で約554万台(世界累計約3290万台)売れたことに比べると、バーチャルボーイの結果がどんなものだったか想像できるだろう。国内で公式に販売されたソフトは19タイトルにとどまり、発売から数ヶ月で市場から姿を消す形となった。
Plyaing VIRTUAL BOY
Plyaing VIRTUAL BOY
ちなみにだが、発売当時の価格は希望小売価格で1万5000円だった。そして今このバーチャルボーイをオークション等で買おうとするなら、この金額以上用意することが必要だ。もちろんターゲットとなるバーチャルボーイの状態によってはこの金額以下でも十分だが、某人気オークションサイトでは、新品未使用品の即決落札価格は4万円前後に設定されていた。参考までに、筆者もこのオークションサイトから中古品を購入したのだが、箱付き、作動保証の他、ゲームタイトル3本、オプションパーツのAC電源コード付きで約1万8000円での落札となった。ただ現在のVRゲーム機、例えばをプレイステーションVRを一から備えるとなると最低でもPS4本体(2万9980円)、にVRヘッドセット(4万4980円)が必要だ。これにソフト代がかかることを考えれば、かなり低コストでVRを楽しめると言えるのかもしれない。ただ満足度に関しては、個人差があるので、購入は自己責任でお願いしたい。
【バーチャルボーイ プレイングPHOTOギャラリー ver.01】
※右にスクロールすると360度画像が楽しめます。

実践 バーチャルボーイ

筆者は現在33歳で、バーチャルボーイ発売当初11歳。バーチャルボーイのマーケティングターゲット世代に当たるわけだが、発売当時にプレイしたことは一切ない。ただ近所のゲームショップに飾られていた実機を見た記憶はある。もちろんプレステは自宅にあったし、サターン、64は友人宅でガッツリ楽しんでいた。
22年の時を経てバーチャルボーイをプレイしたわけだが、ソフトはオークションで落札した本体と一緒に付いてきた3タイトルであることは言うまでもないだろう。
Playing VIRTUAL BOY
Playing VIRTUAL BOY
1.レッドアラーム(T&Eソフト/1995年)
RED ALARM
RED ALARM
前述通り、発売当時のバーチャルボーイにあまり興味を持ってなかったので調べてみると、この「レッドアラーム」は20に満たないバーチャルボーイのソフトの中でも、名作に数えられる作品だったらしい。ジャンルはシューティングだ。ストーリーの概要は以下の通り。
20世紀末から70年も続いた世界大戦も「地球連邦」の設立によって終わった。人類は平和のために、残された軍事兵器を廃棄していった。しかし悪夢が再び訪れる。大戦末期に開発された自動戦闘システム「カオス」が外部からの指令を拒絶し、自らのプログラムで兵器を量産。そして人類を滅ぼす警告(レッドアラーム)を発したのだ。人類に残されたのは最後の高性能戦闘機「レッドシェイフィス」のみ。レッドシェイフィスは人類を救えるのか!?
Playing VIRTUAL BOY
Playing VIRTUAL BOY
このストーリー設定が現実だとしたら、現在地球は大戦の真っ只中ということになるが、それはさて置き。カートリッジ(ソフト)を差し込むとタイトル画面の前に「AUTO POUSE」を設定する画面が現れる。これはゲームを15分プレイするごとに自動でPOUSE状態になり、休憩がとれるというバーチャルボーイの独自の機能(タイトルによっては30分ごとの場合もあり)。この設定を終えるとオープニングが始まり、いざタイトル画面へ。16ビットのステレオサンドが奏でるいわゆるピコピコ音が世紀末の人類滅亡直前の悲壮感を伝える。
とりあえずオプション画面を開くと、難易度とコントローラーのボタン配置の変更ができるようだ。タイトル画面に戻り、ゲームスタートを選ぶとゲーム画面に突入。グラフィックは赤色のワイヤーフレームによる構成で、古き近未来表現の空間が広がる。そして我がレッドシェイフィスが登場。ゲームシステムは3Dらしい画面奥に進んでいくシステムで、驚いたのがFPS(一人称)視点とTPS(三人称)視点、好みに合わせて選べると言う点だ。TPS派な筆者はもちろんTPS視点に設定。1ステージの構成は、まずは雑魚敵駆逐フェーズがあり、これをクリアするとボス戦フェーズになる。そしてボスを倒すとステージクリアとなる。
Playing VIRTUAL BOY
Playing VIRTUAL BOY
レッドシェイフィスの性能について紹介しよう。レッドシェイフィスの敵機駆逐方法は機体の左右から発射される砲弾のみだ。この砲弾にはホーミング機能があり、敵機を多く駆逐して多くのポイントを得ると、ホーミング性能が高まる。そしてレッドシェイフィスの飛行スピードは3段階でシフトチェンジが可能だ。しかし、最速時は敵を無視して、ステージをどんどん進んでいってしまうので、確実に敵機を駆逐するなら最低速でのプレイをオススメする。また、この手のシューティングには珍しく、レッドシェイフィスは停止(ホバリング)と、バック(後退)機能を有しているのだ。これは、旋回することで、いつでもステージを逆に進むことを意味するので、まさに3D空間を自由に飛びながら、敵機を駆逐できるのだ。
しかし、前方に画面が進むシステムの中、バックしたり、後ろに戻ったりするのはストレスだったりするのは否めない。また、各ステージのボスは平気で視界から姿を消すので、何度も急旋回が求められる。しかもその旋回速度は決して満足にボスの移動速度を捉えられる速さでなかったりする。現在のゲームでは視点感度を自分好みに設定できるのが当たり前だが、残念ながらレッドシェイフィスにその機能は搭載されていなかった。
Playing VIRTUAL BOY
Playing VIRTUAL BOY
そこで筆者なりの攻略法を生み出した。まず雑魚敵駆逐フェーズでは、ミサイル打ちっ放し状態で最低速をキープ。そして右十字キーによるスライド移動のみで敵機の砲弾や障害物を避けると言う方法だ。左の十字キーによる旋回は完全に無視する。レッドシェイフィスは敵機の砲弾を10発まで被弾しても大丈夫なので、雑魚敵駆逐フェーズはこれでなんとかなる。
逆にボス戦フェーズでは、ある程度ボスに近づたら、その場に停止。右十キーの旋回のみでボスの位置を把握しながら、砲弾を打ちっ放す。あとは砲弾のホーミング機能でなんとかするという戦い方だ。
Playing VIRTUAL BOY
Playing VIRTUAL BOY
しかし、ボス戦の攻略方法は必ずしも有効であるとは言えない。正直に言おう、我がレッドシェイフィスは、まだ人類滅亡の危機を脱していない。プレイ時間はそこそこだが、ステージ3のボスが倒せないのだ。何度も倒そうと試みているが、ボスを倒す前にバーチャルボーイをプレイすることにお腹いっぱいになってしまう。皆さんは是非レッドシェイフィスで、人類滅亡のレッドアラームから脱していただきたい。
2.バーティカルフォース(HUDSON SOFT/1995年)
VERTICAL FORCE
VERTICAL FORCE
続いて紹介するこちらもシューティングゲームだ。メーカーは当時のHUDSON SOFTということもあり、期待に胸を膨らませゲームスタート。ゲームシステムは縦スクロールタイプだった。そこで思った。なぜだ? なぜ縦スクロールなのだ? バーチャルボーイといえば3Dゲーム機ではなかったのか? なぜいかにも2Dな縦スクロールなのだ? しかし、そんな疑問は一発で吹き飛んだ。この縦スクロールには上空と低空という2つのラインがあり、(一見平面にしか見えないが)この立体空間を行き来することで、敵機の砲弾を回避したりするシステムなのだ。
Playing VIRTUAL BOY
Playing VIRTUAL BOY
さてゲーム自体はさすが有名メーカーが作った作品だけに普通に面白い。スピーディなゲーム展開に、独自の思考で敵機駆逐をサポートしてくれるAIキャラも登場で激しいシューティングバトルが繰り広げられる。しかし、不意に思ってしまったのが、”これはハードがバーチャルボーイじゃなければ、もっと面白いタイトルだったのでは?”と、いうこと。縦スクロールシューティングの場合、横長画面でも画面の左右を暗転させ縦長のゲーム画面になるのが一般的、でもこのバーティカルフォースは横長画面まま展開されるので、向かってくる敵機の砲弾の射角がワイド過ぎるのだ。そのための敵機の砲弾を避けきるために上空と低空という立体空間を設けたのだろう。とはいえ、ゲームの難易度をEASYにしても、筆者にとってはHARDなままに感じた。また勝手に敵機を駆逐してくれるAIキャラだか、小さいうえに、画面が赤と黒のモノトーン画面のため、敵機の砲弾と間違えて混乱するなど、”バーチャルボーイじゃなかったら”っと思わずにはいられなかった。バーチャルボーイと縦スクロールシューティングの相性は決していいものではなかったと言えるだろう。
3.T&E バーチャルゴルフ(T&Eソフト/1995年)
T&E VIRTUAL GOLF
T&E VIRTUAL GOLF
こちらは「レッドアラーム」と同じメーカー、T&Eソフトによるゴルフゲーム。同社が独自開発したバーチャルボーイ専用の3Dプロセッサーよって設計されたそうだ。ゲームプレイは確かに(それなりに)美しい立体空間が広がる。ここで思うのは”赤黒のモノトーンではなくフルカラー画面だったらなぁ"ということ。
ゲームのキモとなるスイングの強さとインパクトの精度を決定する画面では、プレイヤー(人物)が画面から消えてしまうのがちょっと寂しい。インパクトの精度を決定する画面に至っては、画面中央にゴルフボールがデカデカと表示され、そのゴルフボールの中をカーソルが移動。インパクトさせたいところにカーソルが来たタイミングでスイングボタンを押すという方法は、現実のゴルフとは全く違う感性が必要だ。
Playing VIRTUAL BOY
Playing VIRTUAL BOY
しかし、いざスイング画面に切り替わると、プレイヤーによって打たれたボールが前方に飛んでいく表現は「みんゴル」シリーズに遜色のないものだ。ゴルフゲーム好きなら素直に楽しめるだろう。あと今回プレイした3タイトルのなかで、唯一プレイヤー登録とコースレコードを記録できるセーブ機能を有していたことは強調してお伝えしたい。
筆者はゲーム評論家でも、ゲームに深い知識あるわけでもなんでもない。ただの一人のゲーム好きだ。そんな筆者が実際にバーチャルボーイを現在プレイして思ったことを正直言おう。バーチャルボーイで遊ぶなら、懐かしんでプレイするだけで十分だ。当時のことを思いながら手に取り遊んで見れば、感慨深いものがあるのは確か。でもいざゲームが始まれば、面白いかつまらないかが重要なこと。バーチャルボーイが登場した1995年からの22年、様々な技術が進化し、多くのゲーム機が登場しては、アップグレードを繰り返してきた。あまりに一般的な発言になるが、今のゲームの方が何倍楽しい。もしこの記事を読んでバーチャルボーイを買って楽しんでみようと思った方がいたなら、止めはしないが、最新のVR機を買ったほうが、数倍の満足度を得ることができるだろう。
Playing VIRTUAL BOY
Playing VIRTUAL BOY
ただし、最後に付け足しておきたい。セールス的には失敗に終わったのかもしれないが、バーチャルボーイそのモノはゲーム機として、失敗でも駄作でもないと思う。何よりも早くVR(バーチャルリアリティー)体験を広く一般に届けてくれた意義はとてつもなく大きいはずだ。約20年と長い時間はかかったが、現に今、VR時代を迎えた。結果論になってしまうかもしれないが、バーチャルボーイは迎えるべくVR時代のために任天堂が発信した、早すぎる布石だったのだ。
もし自分をゲーム好きと思うのであれば記憶の片隅に留めておいて欲しい。今のVRムーブメントよりも約20年も先駆けて、世の中にVRゲーム機「バーチャルボーイ」が存在していたと言う事実を。
(原稿執筆:髙岸 剛/写真撮影:河野マルオ)
【バーチャルボーイ実機解説】

実は"クールな"バーチャルボーイ

VIRTUAL BOY
VIRTUAL BOY
セールス的なネガィブ要素から「赤い眼鏡」と揶揄されたバーチャルボーイ(VIRTUAL BOY)。だが、そのデザインは秀逸と言えるだろう。斬新なスタンドによる据え置きタイプで、ディスプレイに表示されるカラーと同じ赤と黒を基調としたゴーグル型の筐体は、メカニカルでスタリッシュ。もしその正体を知らずに、初見したら間違いなく男心をくすぐるデザインだ。これは筆者だけの感想かもしれないが、その単純なカッコ良さは部屋のインテリアとして飾りたいくらいだ。
コントローラーは本体下面に差し込み接続するというシンプルな構成で、完全なるパーソナル空間でゲームに打ち込むことができる仕様。ソフトはカートリッジ差し込みタイプ。スタンドを使用することから据え置き型ゲーム機として認知されているかもしれないが、テレビ画面を使用せず、電池駆動(単3×6本)も可能であることから携帯ゲーム機としても扱える点は、他のゲーム機、そして今のVRゲーム機にもない特徴と言えるだろう。
ゴーグル型ボディは赤い本体カバーが印象的。シンプルなロゴデザインもいたってクールだ。
ゴーグル型ボディは赤い本体カバーが印象的。シンプルなロゴデザインもいたってクールだ。
視差を利用して立体感を生み出す2つのディスプレイ。縁には交換可能なシェードが付いている。
視差を利用して立体感を生み出す2つのディスプレイ。縁には交換可能なシェードが付いている。
専用スタンドに高さ調節機能は無い。開脚具合で僅かな調整は可能だが安定性が著しく低下する。
専用スタンドに高さ調節機能は無い。開脚具合で僅かな調整は可能だが安定性が著しく低下する。
高さ調整はできない分、スタンドのネック部分で本体の角度調整が可能だ。
高さ調整はできない分、スタンドのネック部分で本体の角度調整が可能だ。
第5世代機らしく、人間工学に基づいた立体的デザインのコントローラー。背面にトリガーボタンも備える。
第5世代機らしく、人間工学に基づいた立体的デザインのコントローラー。背面にトリガーボタンも備える。
コントローラー背面中央に電源用の電池ボックス。単3電池6本で約7時間のゲームプレイが可能だ。
コントローラー背面中央に電源用の電池ボックス。単3電池6本で約7時間のゲームプレイが可能だ。
【バーチャルボーイ プレイングPHOTOギャラリー ver.02】