Mark Webber takes a dip

レーシングドライバー:リカバリー術

© Getty Images/Red Bull Content Pool

レース後のストレッチはなぜ重要なのか? 赤ワインやスイムが筋肉の炎症にもたらす意外な効果とは? レーシングドライバーがレース後に行うべきリカバリーを学ぼう。

   

ラリーにしろ、カートにしろ、シングルシーターにしろ、レーシングドライバーの仕事はマシンを降りても終わらない。

レース後のルーティンを怠ってしまえば、持続性が失われ、生活の質や次のレースに向けたモチベーションが低下し、結果的にレーシングドライバーとしてのキャリアを短くしてしまう。

リカバリーで心がけるべき点は、いかにハードに取り組むかではなく、いかにスマートに取り組むかだ。

F1ドライバーのパーソナルトレーナーも務めるパフォーマンスコーチ、アレックス・ストットにレース後のアフターケアの秘訣を訊ねた。

食事制限

F1をはじめとするシングルシータードライバーたちは、スポーツの性質上、厳しい食事制限を強いられているが、修行僧のような生活をしているわけではない。レース後の「チートミール」(基礎代謝向上のために10日〜2週間に1度だけ食べる好物)をいつどのタイミングで楽しんでいるのだろうか?

「チートミールのために栄養管理の長期計画組んでいるんです」とストットは語り、次のように続ける。「長期計画なら、所定のカロリーと必要な栄養素を摂取できている限り、時々好きな食事を楽しむ余裕が持てます」

レースでは1,500kcalを消費するため、炭水化物の補給は必須
レースでは1,500kcalを消費するため、炭水化物の補給は必須

重要なのはバランスだ。ストットによれば、ドライバーは1レースで最大1,500kcalを消費するという。The Journal of Consumer Psychologyの研究は、柔軟な食事制限で必要な栄養素を摂取していくアプローチでは、チートミールが体脂肪の燃焼を阻害することはなく、それどころか食事制限の継続を助けるとしている。

筋肉の疲労回復に関しては、さらに良いニュースがある。ニューヨーク大学の研究者によれば、グラス2杯分の赤ワインには抗炎症作用があり、レース後の筋肉疲労と関節痛を和らげるらしい。乾杯!

ストレッチ

F1ドライバーはアフターケアに投資しており、フィジオセラピストやスポーツマッサージ師を雇ってドライバーズシートで生じる凝りや痛みを解消している。

もちろん、アマチュアドライバーもスポーツマッサージ師から施術を受けられる。体のケアを他人に任せて厳しかったレースから気持ちを完全に切り離すのは、ドライバーにとってアドバンテージになる。

ストレッチに取り組むマックス・フェルスタッペン
ストレッチに取り組むマックス・フェルスタッペン

専属のフィジオがいなくても、自宅でのストレッチで重点的に取り組むべきいくつかのエリアがあるとストットは指摘する。

ストレッチで重点的に取り組むべきエリアは以下の3つだ:

胸椎

ドライバーズシートでは窮屈で不自由な姿勢を強いられるため、脊椎を伸ばすのは必須だ。ストットが薦めるのは、適度な高さの台や椅子を両手で掴みながら胸部を床に向けて下げ、そのまま20〜30秒キープする「ボックスストレッチ」だ。

ドライビング中は肩甲骨が引き伸ばされ、肩が硬直するので、ドライバーの胸筋はレースを通して収縮している。床に横になって行う胸筋ストレッチで両側の筋群を伸ばそう。胸を床につけたまま身体を片側にひねって腕を広げ、そのまま10〜20秒キープして反対側もストレッチしよう。

大臀筋

着座姿勢では、大臀筋で窮屈な下半身を操作してペダルにパワーを伝えなければならない。床に横になり、左足のかかとを右膝の上のあたりまで持っていき、そのまま右膝を胸に向かって引き寄せて20秒間キープし、反対側も同じ動作を繰り返そう。

以上の3種類のストレッチをマスターし、ソフトフォームローラーでふくらはぎや広背筋など硬くなった筋群を5分間ケアして凝りを解消してやれば、すぐにでもドライビングシートに戻りたい気持ちになるはずだ。

水分補給

「肉体的負荷が大きいF1レースや耐久レースのスティントでは、体内から1〜4ℓもの水分が失われます」とストットは語る。

この分を補給しなければ、体調不良や筋肉量の減少、疲労、筋肉協調性の低下など様々なトラブルを招きかねない。24時間耐久シリーズなど長いスティントを走るレースの場合、水分補給は十分に行うべきだ。

レース後の水分補給に適したものとしては、電解質を加えた水、またはココナッツウォーターなどが良いだろう。これらは水分の浸透を助ける塩分やミネラルを含んでおり、胃にも優しい。

1999年マレーシアGP:表彰台で脱水症状寸前となったミカ・ハッキネン
1999年マレーシアGP:表彰台で脱水症状寸前となったミカ・ハッキネン

筋肉

ストレッチと水分補給は筋肉のリカバリーに大きな効果があるが、レース翌日に身体を労われば、サーキットで負った身体ダメージを最小化できる。

ストットが薦めるのは、筋肉の炎症を和らげるアイスバス(氷浴)だが、近所にプールがないなら、冷水シャワーでも代用できる。

バスルームにグラス1杯の赤ワインを持ち込めば、筋肉の炎症にはワンツーパンチで効き目を発揮するはずだ。また、寒さへの対処メカニズムを身につけることもできる。

また、レース翌々日にも水がリカバリーに役立つ。とはいえ、プールでのスイミングはあくまでもアクティブリカバリーの一環として行いたい。

「スイミングのような低負荷エクササイズは身体に負担をかけずに筋肉を動かして血流を促進させるので、リカバリーの迅速化に効果絶大です」とストットは語る。また、バイクライドも同様の効果がある。