The side view of the Mad Mike RADBUL in Project Cars 2
© Slightly Mad Studios
ゲーム

『Project CARS 2』:進化するレーシングシミュレーション

『Red Bull Air Race The Game』の開発でも知られるシミュレーションゲームの雄Slightly Mad Studiosが、Red Bull 5Gでも採用されたレーシングシミュレーションシリーズ最新作について語った。
Written by Adam Cook
読み終わるまで:13分Published on
ハードコアなレーシングシミュレーションゲームの中で、『Project CARS』シリーズはそのディテールの細かさとリアリズムの徹底的な追求で急速に評価を高めてきた。『Forza』シリーズがレーシングシミュレーション(Motorsport)とアーケード(Horizon)を毎年交互にリリースするというスタイルを採用し、『グランツーリスモ』シリーズが長い年月をかけて新作を用意してきた中で、Slightly Mad Studiosは素晴らしいマシンをドライブする喜びを誰もが楽しめる形で再現することだけを考えてきた。
幸運なことに、先日、我々はSlightly Mad StudiosのチーフコマーシャルオフィサーのRod Chongにインタビューする機会に恵まれた。Chongはこのスタジオの作品群を熟知している人物だ。そこで、彼らの最新作『Project CARS 2』に何を期待すれば良いのか、開発チームはサウンドとグラフィックスの再現、アクセシビリティ、難易度調整、そして “マッド・マイク”・ウィデットのマシン、RADBULの収録にどれだけの時間を割いたのかなどについて、細かく話を聞いてみることにした。

1分

On the track with Project Cars 2

A video showing gameplay footage of 'Mad' Mike Whiddett's RadBul drift racer in the forthcoming Project Cars 2 video game.

『Project CARS 2』でこのシリーズをどこまで先に進めようとしているのでしょうか? 収録台数を増やしただけではないですよね?
「収録台数の増加のみ」というのは、一番やってはいけないことだと考えていました。私たちが今作で追加した2つの大きな特長は、ラリークロス(自社の物理エンジンを使用して再現したいと思っていたカテゴリーです)、そして雪と氷の表現です。今作ではMercedes-Benzと組んで、スウェーデン北部アイストラックで物理データを集積するテストを重ねました。それらをゲーム内に組み込んで雪と氷を表現しました。
その他の新機能や特長について教えてください。
私たちが誇りに思っている部分のひとつが、新しくなったハンドリングとタイヤのモデリングです。今作では、マシンが限界点に達した瞬間と、限界点を超えたあとのハンドリングの表現に取り組んだので、ドライビング中にスライドしたり、コーナーに突っ込みすぎたりした時のマシンの挙動がリアルに感じられます。限界点を超えた瞬間が分かるので、マシンをすぐに元に戻せます。ハイエンドなステアリングコントローラーでも、ゲームパッドでも、よりリアルに各マシンの限界点が感じられるようになっています。
タイヤに関しては、3Dオブジェクトとして再現しようと長年取り組んできました。タイヤは多種多様な路面の上で常に動いていますし、タイヤと路面の接触方法も非常に複雑です。『Project CARS 2』は同ジャンルの他のゲームと比べ、このエリアでかなり先を行っていると言えますね。
各マシンのサウンドとルックスの再現にはどの程度時間をかけたのでしょうか?
サウンドは、レーストラックで実際にドライブして収録しています。ドライブすれば、ドライブトレインがしっかりと動き、マシンが何をしているのかも感じられますからね。ですので、マフラー、エンジンベイ内部、コックピット内部など、マシンのあらゆる部分にマイクを設置したあと、アップダウンを含むレイアウトのレーストラック上でドライブして、ドライバーが得られるあらゆるサウンドを正しく収録しています。
マシンの調達とドライブに過去数年費やしてサウンドを仕上げてきましたが、高価なワンオフマシンをよりリアルに収録する努力も継続的に続けています。このようなマシンの収録はチャレンジングですが、マニュファクチャラーからサポートを受けることができましたので、今回は数多くのマシンを収録できました。
ルックスの再現については、世間的に良く知られている方法で再現しています。マニュファクチャラーも理解を示してくれていますし、CADデータを渡してくれるなど、彼らの多くは積極的に助けてくれています。
マニュファクチャラーから許可を得たあとは、見学する日程をアレンジして、現地で2~3時間をかけて750枚~1,000枚程度の画像を撮影します。これだけ撮影すれば、テクスチャを正しく表現できますし、細かい部分まで正確に再現できます。
また、撮影時にはマシンを “オン” にすることもお願いしています。ヘッドライトが点灯している状態を撮影するのです。また、ダッシュボードの光り方や、ダッシュボードに表示されるあらゆるメニューやデータも撮影します。なぜなら、『Project CARS 2』は全天候・全時間帯に対応しているので、ナイトドライブでダッシュボードがオンになった時にどんな光り方をするのか、何色に光るのかなどを把握しておく必要があるからです。
Drift racer 'Mad' Mike Whiddett's RADBUL completely on the limit in the forthcoming Project Cars 2 video game by Slightly Mad Studios.

リアルに再現されるRADBULのドリフト

© Slightly Mad Studios

今作に収録できなかったマシンで、今後収録したいマシンはありますか?
超高価なワンオフマシンを数台、DLCでリリースする予定です。この世に3台しか存在しないマシン群ですね。具体的な名前はまだ明かせませんが、その中の数台に関しては、ドライブを許可してくれるプライベートオーナを探すためにハードワークを重ねる必要がありました。
古いマシンは、キャプチャー作業がやや複雑になる時があります。CADデータが存在しない古いマシンはスキャンする必要があります。スキャン方法はいくつか存在します。そのひとつがレーザースキャンですが、できる限りこの方法は避けています。なぜなら、表面をマットフィニッシュにするために特殊なパウダースプレーを塗布する必要があるからです。1,500万ドル(約16億5,000万円)もする1970年代に製造されたワンオフのFerrariなら、まずパウダーの許可は得られません。ですので、基本的にはポイントスキャンと呼ばれる方法を採用しています。これはテープをグリッドパターンで貼ったあと、スキャンアームで各ポイントのスキャンデータを集めて3Dモデルを組み上げるという方法です。
また、写真撮影しか許可されないケースもあります。このようなケースでは、社内のスペシャリストに500枚ほど撮影してもらったあと、スキャンデータなしでいちから3Dモデルを組み上げてもらいます。この作業は非常に難しく、3Dモデリングのスペシャリストも必要になりますが、実車にアクセスする方法が他にない場合は、この方法を採用するしかありません。この方法を採用した場合、1台の3Dモデルが完成するまで約4ヶ月かかります。
『Project CARS 2』は新規プレイヤーも簡単に楽しめるゲームなのでしょうか? それとも、リアルなので慣れるまで時間がかかるのでしょうか?
ゲームパッドで操作できるゲームにすることを目指していちから作り直したので、リビングに置かれている家庭用ゲーム機でも楽しむことができます。彼らにもマシンの挙動を味わってもらいたいですからね。
興味深いことに、『Project CARS』のプレイヤー層の大半は、家庭用ゲーム機とゲームパッドの組み合わせでドライブを楽しんでいるプレイヤーなのです。ですので、彼らのことをしっかりと考える必要があります。彼らのようなプレイヤーでもレーシングドライバー気分が味わえるように配慮しています。言い換えれば、彼らも自分たちがドライブしているマシンやレーストラックについてしっかりと考える必要があるということです。また、パワフルなレーシングマシンのドライブとはどんなものなのかをプレイヤーに教えたいとも思っていますので、最初は10分ほどレーストラックを学ぶ必要があります。学んだあとは、トップスピードでドライブできるようになるでしょう。
『Project CARS 2』はアクセシビリティの高いゲームですが、AIと同レベルでドライブできるようになるまで、またはトラクションコントロールやスタビリティコントロールなどの最適なアシストレベルを見極められるようになるまでは、最低でも15分から20分の練習が必要になるでしょう。レーシングマシンや一般モデルの多くにはこのようなアシストが全て揃っていますので、ひと通り試せば、あとは楽しい時間が過ごせるはずです。
開発で最大の難関になった部分は?
私たちが直面する問題のひとつは、シミュレーション時のムービングターゲットの数が多いという点です。このゲームで動いているのはマシンだけではありません。周囲の環境も常に変化しています。たとえば、晴れた日なら、レーストラックの路面温度が高くなり、タイヤと路面の接触の仕方が変わってきます。霧や低温時とは異なるコンディションになるわけです。また、雨が降ればハンドリングが変わってきますし、泥やダート、グラベルなど、路面によってもマシンの挙動は変わってきます。このように、ムービングターゲットの数が実に多いのです。
たとえば、テストドライバーが特定のマシンのハンドリングを気に入っていたとしても、雨が降ればハンドリングが一気に変わり、彼らが納得できないレベルまでクオリティが下がることがあります。このようなケースでは、あらゆる部分を作り直す必要があります。そしてウェットに合わせて作り直しても、ドライに戻すとまたおかしくなる場合もあります。タイヤのパラメータを少し変えるだけで、全体を修正する必要が出てくるのです。テストドライバー全員からOKをもらえるレベルに全てをまとめ上げるのは、本当にハードなチャレンジでした。現段階では自信を持てていますが、ここまでの道のりは大変でしたね。
今作では180台以上が追加収録されています。フィーリングの再現、またはライセンスの取得で一番苦労したマシンはどれですか?
前作『Project CARS』の収録マシンには、自分たちが納得できていない部分があります。たとえば、FerrariやLamborghiniのようなメジャーブランドが収録されていませんでしたし、NissanやHondaのような日本のブランドさえも収録されていませんでした。
A side shot of 'Mad' Mike Whiddetts' RADBUL car in the new Project Has 2 video game by Slightly Mad Studios

1,000馬力超のモンスターマシン!

© Slightly Mad Studios

ですので、モータースポーツの長い歴史を誇るマニュファクチャラー、現時点でもレーシングマシン、ロードマシンを問わず素晴らしいマシン群を生み出しているマニュファクチャラーを見直しました。イタリアのマニュファクチャラーに関しては、自分たちが何者なのか、自分たちが何をしようとしているのかを時間をかけて説明する必要があります。そこに少し時間を取られましたね。
アーケード的なフィーリングを持ち込む予定はありませんか?
『Project CARS』シリーズはリアリズムの追求で知られていますので、現実世界の再現を目指しています。現実世界をビデオゲームに置き換えて表現しなければならない時もありますが、基本的には現実世界で起きていることを、インタラクティブなゲーミングエクスペリエンスにそのまま持ち込もうとしています。プロ仕様のシミュレーターでも家庭用ゲーム機でも、私たちが目指しているものは変わりません。
私たちは60fpsを基本としています。どのマシンでもこのラインを実現する必要があります
Rod Chong
Xbox One Xへの理解はどの程度深まっているのでしょうか? Xbox One X版のグラフィックスはXbox Oneよりもどの程度アップグレードされるのでしょうか? また、PS4 Pro版とPS4版の違いについても教えてください。
私たちは60fpsを基本としています。どのマシンでもこのラインを実現する必要があります。60fpsではマシンの挙動がしっかりと感じられますので、この数字はマストですね。今は、実数値の分析をしながら、どんなアップグレードが実現できるのかを判断しています。モニターの解像度やライティングの向上、マシンやレーストラックなど特定の領域の解像度などを色々と調べているところです。
私たちのゲームエンジンはハイエンドなグラフィックスに対応しています。PC版は、3台の4Kモニターに接続可能で、グラフィックスの設定が高めでも問題ありません。ハイエンドなPCでのゲームプレイは信じられないほどリアルです。あとはどれを優先して他のプラットフォームに持ち込むのかを決めるだけですね。
1,000馬力超のMazda MX-5 Miataは誰もがドライブしたいはずです
Rod Chong
『Project CARS 2』に収録されている “マッド・マイク”・ウィデットのマシン、RADBULについて教えてください。
前作『Project CARS』でマッド・マイクのマシンをDLCとして収録しましたが、今作で素晴らしいのは、彼のマシンに新しいタイヤの物理演算を組み込めたことです。非常に素晴らしいですよ。彼のRADBULは、1,000馬力超のMazda MX-5 Miata(日本名:ロードスター)ですが、このゲームではこのモンスターマシンを限界までドライブして、ドリフトをしたり、タイヤを溶かしたりできます。このマシンを世間に発表できるのは本当に楽しみですね。1,000馬力超のMazda MX-5 Miataは誰もがドライブしたいはずです。
時速60mph(約96km/h)までたった3.9秒で加速し、最高時速280km/hを誇るRADBULは強烈なマシンですが、このマシンの収録プロセスについて教えてください。マッド・マイク本人はテストしたのでしょうか?
ええ。彼がロサンゼルスを訪れた時はシミュレーターでテストしてもらっています。ロサンゼルスで何回かテストしてもらいました。
また、私たちは彼のタイヤスポンサー、ニットージャパン株式会社とも密接に仕事をしていますので、タイヤエンジニアの皆さんと話をしながら、通常のタイヤとはやや異なる特製ドリフトタイヤについて理解を深めてきました。
RADBULにいつでもアクセスできる強みもありましたね。RADBULのベースはMazda MX-5 Miataですので、シャシーについてはMazda MX-5 MiataのCADデータを使いましたが、RADBULは、シャシー以外はフルチューンアップされているマシンなので、いつでも実車にアクセスできるのは助かりました。また、サウンドもレコーディングしたのでゲーム内のRADBULのサウンドは実車と同じです。
このマシンの最大の魅力は、ドリフトが楽しめるという点です。誰でもドリフトをとことん楽しめると思います。ドリフトは簡単ではありませんが、練習を重ねればできるようになるはずです。
RADBULはリリース時に収録されますか? それともDLCですか?
リリース時に収録されますよ。
『Project CARS 2』日本版はPS4版が9月21日、PC版が9月22日にリリース予定(海外版はPC・PS4・Xbox One共に9月22日リリース予定)。
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