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『Project CARS 2』:開発者インタビュー
Red Bull 5Gでも起用されたトップレーシングゲームの続編について開発側が語った。
Written by Adam Cook and Jon Partridge
読み終わるまで:13分Published on
Red Bull 5Gでも使用された
Red Bull 5Gでも使用された© Slightly Mad Studios
2017年最大の注目を集めているレーシングゲームの1本、『Project CARS 2』には大きな期待がかかっているが、有り難いことに、今のところ開発は順調に進んでいるようだ。今回はSlightly Mad Studiosのクリエイティブディレクター、Andy Tudorを捕まえ、この新作について語ってもらうと共に、PS4 Pro(及びProject Scorpio)、PSVR、そしてNintendo Switchなどへの対応予定についても説明してもらった。
『Project CARS 2』の開発はいつから?
Andy Tudor:第1作をリリースした直後に今作の開発を発表したんですが、それがちょっと問題になったんですよね。ファンは虚を突かれたと言いますか、僕たちが第1作をどうでも良い作品として扱っていると思ったんです。もちろん、そんなことはありませんでした。単純に新しいプロジェクトをスタートさせたかっただけなんですが、『Project CARS』シリーズはクラウドファンディングだったので、早めに発表する必要がありました。
ですので、『Project CARS』のリリース直後、つまり2015年5月頃に今作の開発をスタートさせました。当時はまだ開発チームの多くが第1作のサポートをしていましたが、その中で、テクノロジーやコンセプト、レファレンスなどの部分に取り組み始め、その作業を今も続けているという感じです。
『Project CARS』のアップデート版というよりは、続編と捉えた方が良いのでしょうか?
ええ、もちろん今作は『Project CARS 2017』ではありませんし、『Project CARS 2018』も開発しません。僕たちは他のスポーツゲームのような繰り返しをするつもりはありません。今作は、第1作と同様、野心に溢れたタイトルになります。
Kickstarterを利用したビデオゲームの開発に対する注目は徐々に弱まっています。今作もクラウドファンディングですが、世間のリアクションはどうですか? 前作よりも良いですか?
確かに『Project CARS 2』のコミュニティは前作よりも小規模ですが、非常に大きな意味を持っているグループです。前作のバッカー数は非常に大きく、その点は素晴らしかったのですが、その中にはゲームをプレイしているのにフィードバックを返してくれない人たちが数多くいました。彼らのような存在は僕たちにとってはあまり嬉しくないんです。僕たちはゲームをテストして、積極的にバグを見つけて報告してくれるような人たちを求めています。ゲームをプレイして、フィードバックを返さないことに別に文句があるわけではありませんが、それではゲームは改良されません。そういう人たちが抜けているので、今作のコミュニティは小規模なんですが、逆に彼らは非常に情熱的ですし、自分たちも開発に参加したいという熱い気持ちを持ってくれています。今作のコミュニティはそのような積極的なバッカーの比率が前作よりも大きいんです。
ダートの収録はかなりの作業が必要になる
ダートの収録はかなりの作業が必要になる© Slightly Mad Studios
前作のアップデートとして組み込みたい機能と、新作に組み込みたい機能はどういう基準で線引きしたのでしょう?
基本的には、ゲームエンジンを完全に変えなければならないような機能、または他の機能と繋がっていて、ひとつを変えたり、追加したりしたい時に、全体を直さなければならないような機能は、続編に回すという判断をしています。ゲーム全体に影響するので、修正パッチではなく、新作として開発する必要があるんです。このような基準で線引きしました。
たとえば、僕たちは『Project CARS』にラリーを収録する予定でしたが、このコンセプトをコミュニティに伝えると、デビュー作はターマックだけに拘って開発し、ラリーは次作に収録すべきだというアドバイスが返ってきました。僕たちがコミュニティにアドバイスを求めた理由は、ラリーを収録する場合は、ターマックだけではなく、ダートやグラベルのレーストラックが必要になりますし、更にはドリフトも組み込まなければならないので、結構な大仕事になるからです。ラリーとターマックではゲームプレイが大幅に異なるので、ゲームエンジンに別の指示を大量に与える必要があります。
ですので、そのような大量の作業が必要になる機能や、内部で使用する他の機能と密接に関係している機能については、続編に回すという判断をしています。
最高のグラフィックス
最高のグラフィックス© Slightly Mad Studios
言うまでもないですが、レーシングゲームにはマシンが必要です。『Project CARS 2』にはニューマシンが何台収録される予定ですか? マニュファクチャラーの追加はあるのでしょうか?
現時点では公式ライセンス取得済みのマシンが170台以上収録される予定で、これは前作を大幅に上回っている数字です。前作が成功したことで、他の多くのマシンやマニュファクチャラーからライセンスを獲得することができました。前作で受けた批判の中で最も多かったもののひとつが、有名なマシンやマニュファクチャラーの未収録でしたが、今作ではそのようなマシンやマニュファクチャラーがちゃんと収録されています。それらが何なのか、また誰なのかについてはリリース時に確認して頂きたいと思いますが、ファンならすでに予想はついていると思います。
是非ファンに楽しんでもらいたいオススメの機能やマシンはありますか?
まず、今作には日本車を収録しています。その中で僕のお気に入りはHonda NSXですね。本当に素晴らしいマシンですよ。公道仕様だけではなく、レース仕様も収録しています。NSXは公道仕様も非常に美しいですが、レース仕様は更に美しいですね。まるでスーパーヒーローのようなルックスです。このマシンが僕の一番のお気に入りです。最高に美しいマシンですよ。
美しいコクピットカメラ
美しいコクピットカメラ© Slightly Mad Studios
レース中の天候変化はいかがでしょう?
もちろんダイナミックに変化しますよ! 『Project CARS 2』は家庭用ゲーム機でリリースされている他のどのレーシングゲームよりも数多くのレーストラックを収録しています。実際の数については伏せておきますが、最大とだけは言っておきましょう。重要なのは、どのレーストラックにもダイナミックな時間変化と天候変化、季節変化が備わっているという点です。ですので、たとえば、ブランズ・ハッチの夏と冬を楽しめますし、季節特有の全体の雰囲気の変化も楽しめます。
また、Live Track 3.0の最新版を組み込むアップデート作業も行いましたので、たとえば、雨が降り始めれば、時間の経過と共にレーストラック上にパドルが生まれるようになります。液体のダイナミックな変化も起きるようになっているので、現実世界と同じように、雨がレーストラック上に染みこみ、染みこま切らなかった部分にパドルができるという表現ができるようになりました。ラグナ・セカで雨が降れば、“コークスクリュー” セクションの雨が低地に向かって流れ、このセクションの最下部にパドルができるというわけです。
いつでもどこでもレースを楽しめるというのが今作のコンセプトです。どのレーストラックも、冬、夏、夜、昼、霧、雷雨とレース中にコンディションがダイナミックに変化しますので、プレイヤーは使用するタイヤセットなど、様々な部分でしっかりと戦術を用意する必要があります。ドライコンディションでスタートしても、レーストラックの後半にパドルができている可能性もあります。あらゆる部分がより複雑になっています。他のゲームでは、ナイトレースを楽しめるレーストラックや、天候変化が楽しめるレーストラックが限定されている場合がありますが、『Project CARS 2』ではどのレーストラックでもあらゆる変化がダイナミックに起きるようになっていますので、プレイヤーは豊富なバラエティが楽しめます。
天候に合わせたタイヤ選びが重要
天候に合わせたタイヤ選びが重要© Slightly Mad Studios
DLCの予定は?
前作『Project CARS』ではリリースされたあらゆる周辺機器やハードウェアに対応してきました。Oculus Riftはもちろん、Logitechの新しいステアリングコントローラーなどにも対応してきました。また、アップデートでマシンやレースコースを追加し、バグも修正してきました。これらの対応やアップデートはコミュニティに非常に好意的に受け止められたので、僕たちも満足しています。今作についてはまだ詳しく話せませんが、前作と同様、リリース後も様々な対応やアップデートをしていく予定です。
家庭用ゲーム機版ですが、PS4 ProやXboxのProject Scorpioにも対応するグラフィックスになるのでしょうか?
もちろんです。開発チームはガジェットフリークなので、最新テクノロジーに目がありません。ステアリングコントローラー、ペダル、VRヘッドセット、マルチスクリーン、21:9モニターなどの新機種、そしてPSVR、PS4 Pro、Project Scorpioなどの活用方法を常に探っています。PS4 ProとProject Scorpioに対応するグラフィックスになることは確実ですが、Scorpioに関してはまだ詳細が明らかになっていないので、僕たちも多くは話せません。Microsoftからの発表を待ちたいですね。
デイトナも楽しめる
デイトナも楽しめる© Slightly Mad Studios
PSVRに関する機能について教えてください。
PSVRに対応するかどうかはまだ約束できませんが、開発チームは日々努力を重ねています。約束できない理由は、VRでのゲームプレイを僕たちが設定している基準に届かせるためには、かなりのハードワークが必要だからです。2画面が必要になりますし、快適なゲームエクスペリエンスを提供するためのフレームレートも必要になります。また、僕たちが用意している機能を全て楽しめるように配慮する必要もあります。たとえば、大量のライバルマシンと同時にレースを楽しめる、Live Trackを使用したダイナミックな天候や環境の変化がある、などはゲームプレイを素晴らしいものにしてくれますからね。ヴィジュアル的な素晴らしさが逆にゲームプレイの邪魔になる場合もありますので、微妙なバランス調整が必要なんです。僕たちはその部分をもう少ししっかりと調査して、ヴィジュアルもゲームプレイも犠牲にならないようにしたいと思っています。もちろん、ある程度犠牲になる部分はどうしても出てくると思いますが、それが何になるのか、バランスをどこで取るのかを見極めている段階です。それが分かった段階で、PSVR対応にするかどうかを判断する予定です。
当初、前作『Project CARS』はWii Uでのリリースも予定していましたが、結果的にリリースされませんでした。『Project CARS 2』のNintendo Switch版のリリースは予定していますか?
先ほど説明したPSVRの話は、このWii U版の話に似ています。ですので、できない約束はしたくないんです。Wii U版についてですが、Wii U自体は素晴らしいゲーム機なんです。僕も自分の子供たちといつも一緒にプレイしています。ですが、技術面に限って言えば、僕たちの設定している基準まで調整するのが本当に大変なゲーム機で、結局、僕たちが望んでいるような内容にはなりませんでした。ですので、Wii U版を強引に進めて、自分たちが納得できないバージョンを世に出してしまえば、世間から高く評価されているゲームの名を貶めてしまうと考え、最終的にWii U版の開発を中止する判断を下しました。
Nintendo Switchに関しても、現時点では『Project CARS』シリーズはリリースしない予定です。
雨の富士スピードウェイ
雨の富士スピードウェイ© Slightly Mad Studios
それは残念ですね。移動中に楽しめれば最高なんですが。
Wii Uと同じで、Nintendo Switchも素晴らしいゲーム機です。僕も実機に触れましたし、移動中もプレイできるというコンセプトも最高です。また、先ほどもお話した通り、僕たちはガジェットフリークなので、是非とも対応したいと考えています。ですが、技術的に不可能だと感じています。
『Project CARS 2』のeSports参入の可能性は?
過去数年に渡り、様々な関係企業と連携をしてきた結果、『Project CARS』はレーシングゲームのeSportsタイトルとしてはナンバーワンという評価を得ることができました。ですので、『Project CARS 2』は最初からeSports対応になります。今作では対戦用のライセンスを用意しているので、eSportsを好むプレイヤーはオンラインランキングを競えますし、eSportsに興味がない人にとってもマッチメイクのフィルターとして使用することができます。
1コーナーでクラッシュしてしまう、または他のプレイヤーのマシンに突っ込んでしまうような初心者のプレイヤーも、同レベルのプレイヤーとの対戦が楽しめます。また、ベテランプレイヤーなら、ベテランプレイヤーとの対戦が楽しめます。ですので、誰もが他のプレイヤーと競い合うことができます。ゲーム内のランキングシステムで上位に残るプレイヤーが、eSportsイベントで活躍することになるでしょう。
今作のeSportsに関するもうひとつの特徴は、ライブブロードキャストとディレクター機能を全プラットフォームに組み込んでいるという点です。新しいゲームモード、「Online Championships」では、どのレースにもカメラアングルを担当するディレクターと、Twitchの視聴者に向けた実況を担当するコメンテーターを用意し、音声と映像を楽しむことができます。
Honda NSX
Honda NSX© Slightly Mad Studios
僕たちはeSportsの楽しさを全員に提供したいと思っているんです。誰もがオンライン上にチャンピオンシップ、オンラインリーグ、トーナメントなどを作成できます。そして、2人以上(ひとりがディレクターとなりカメラアングルを担当し、コンテンツのクオリティを高め、もうひとりが視聴者に向けた実況を担当する)いれば、オンラインで視聴が楽しめる素晴らしいレースイベントを作り出せます。この機能は、プレイヤーはもちろん、ブランドや企業、マニュファクチャラーなども活用できるものです。また、僕たちもリリースと同時に提供できるように、eSports業界で活躍するコメンテーターや関係者に積極的に声を掛けています。レーシングゲームというジャンルの中で、『Project CARS 2』は大きなゲームチェンジャーになると思いますよ。
各レースにつき、ディレクターはひとりですか?
現時点では1レース・1ディレクターのシステムですが、eSports関連企業から最大2人にして欲しいとリクエストが届いているので、現在取り組んでいるところです。今はまだひとりですね。
『Project CARS 2』は2017年後半にPS4・Xbox One・PCでリリース予定。
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