Payton Ridenour at the Red Bull Pump Track World Championships in Bern, Switzerland.
© Dan Griffiths/Red Bull Content Pool

【パンプトラック】世界チャンピオンが教える上達テクニック

レッドブルUCIパンプトラック世界選手権でチャンピオンに輝いたプロライダー2人がパンプトラックのスキル上達のヒント&アドバイスを教えてくれた。
Written by Tom Ward and Aoife Glass
読み終わるまで:8分Published on
パンプトラックはコースが短く、テクニックもシンプルに見えるかもしれない。ところが、本気でこのカテゴリーをマスターしたいなら、ストレングスとスタミナ、磨き抜かれたスキルを高いレベルで組み合わせなければならない。
しかし、レッドブル UCI パンプトラック世界選手権でチャンピオンに輝いたプロライダー2人、ペイトン・リドノートミー・ズーラのヒントとアドバイスを参考にして練習を重ねていけば、たちまち自己ベストを更新できるはずだ。
レッドブルUCIパンプトラック世界選手権2019でチャンピオンに輝いたトミー・ズーラ(左)とペイトン・リドノー

レッドブルUCIパンプトラック世界選手権2019でチャンピオンに輝いたトミー・ズーラ(左)とペイトン・リドノー

© Dan Griffiths/Red Bull Content Pool

パンプトラックレースは、複数のターン、バーム、ローラー(起伏)で構成されるレーストラックをライダー2人が同時にライディングするカテゴリーで、レースではより速いタイムを記録した方が勝者として次のラウンドへ進出する。では、パンプトラックで勝利を手に入れるには何が必要なのだろう?
パンプトラックは世界各地で増加傾向にある

パンプトラックは世界各地で増加傾向にある

© Velosolutions

リドノーとズーラはレッドブル UCI パンプトラック世界選手権現チャンピオンで、26回もの予選に出場した経験を持つ。UCIは世界選手権の開催を2021年まで延期することを決定したため、ライダーたちにはスキルとフィットネスを一定レベルまで引き上げて予選イベントに挑戦できる準備を整える時間がもう1年与えられた。
タイムをギリギリまで削り、スムーズで高速で効率的にライディングするコツを学ぶのに、このチャンピオン2人以上の適任者はいないだろう。

1:基本スキルを確実にマスターする

パンプトラックでは、ストレングスやスタミナと同じくらいテクニックも重要だ。コーナーやローラーを流れるようにクリアしながらバイクをコントロールする能力はできるだけ速く前へ進むためには不可欠だ。
ペイトン・リドノーがコーナーリングのお手本を披露

ペイトン・リドノーがコーナーリングのお手本を披露

© Jan Cadosh/Red Bull Content Pool

リドノーは次のように説明する。
「パンプトラックで難しいポイントは3つある。まずコーナーへの進入。次にコーナーでのスピード維持、そして最後はタイトに連続するローラーでのバイクコントロールね」
では、この3ポイントについて詳しく解説してもらおう。
《コーナー進入》
「スピードが高くなるにつれてワイドにコーナーを回るのがセオリー。こうすればスピードを維持できる」とリドノーは語る。
「パンプトラック上にペイントされたラインは、コーナーでの便利な目印になってくれるわ」
《コーナーリングスピードの維持》
「スピードをキープしたり、スピードを高めたりしたい時はコーナーを信頼する必要がある。わたしは体重を少し後傾にして、足をコーナーに向けて押しつけて踏ん張るようにしてスピードを稼いでいる」
《連続ローラーでのバイクコントロール》
「最後になるけれど、ローラーの上でバイクコントロールは直線でのスピードアップに向けて非常に重要なの」とリドノーは説明し、さらに続ける。
「ローラーをクリアする時は、体重を均等に分散させ、なるべく全力でバイクを路面に押し付けられるようにしておく必要がある」
《練習あるのみ》
上達したいと考えているなら、パンプトラックの上で意義のある時間を数多く過ごすことが重要だ。
リドノーは次のように語る。
「疲れてくると各セクションで不安定になる人は少なくない。これを避けるためには練習を重ねるしかない」
ズーラも次のように説明する。
「練習を重ねるからレーストラックの全セクションでフルパフォーマンスを発揮できるんだ。まずトップスピードを伸ばし、次にジャンプや着地でのスピードの維持や全コーナーのパーフェクトクリアを目指していこう」

2:ライディングに向けて身体を整える

身体が冷えたままバイクに乗ったあとベストパフォーマンスを発揮できると考えるのは間違いだ。身体を動かす他のすべてのアクティビティと同様、ウォームアップして準備を整える時間を設ける必要がある。また、メンタルの調整も同じくらい重要だ。
アクティブな生活でストレングスを鍛えているトミー・ズーラ

アクティブな生活でストレングスを鍛えているトミー・ズーラ

© Mark Schwartz/Red Bull Content Pool

《メンタルの準備》
「レースでは準備がすべてだ」とズーラは切り出す。「すべてが調和した状態であるべきだ。でも、レースデイの朝に “今日はいけるぞ!”と思える時もあれば、自分に疑いを感じる時もある。何かについてくよくよ考えてしまうと少し調子が落ちてしまうので切り替えが重要だ」
《ウォームアップ》
リドノーのウォームアップ・ルーティンは、レースに向けて筋肉 / 関節 / 心肺系を整えるための様々なムーブメントで構成されている。
「レースの前は、バイクをペダリングして身体を温めるところから始めるわ」とリドノーは語り、次のように解説する。
《ストレッチ》
「ペダリングで身体を温めたあとは、数種類のストレッチをしたあと、ダイナミックウォームアップで心拍数を少し上げる。バイクでショートスプリントを数回こなして、スタート前に電解質ドリンクを飲んでおく。レースデイを通じて水分補給レベルを保ち、正しいウォームアップを続けることが成功に向けた第一歩と言えるわ」

3:リカバリーのための時間を設ける

リカバリーはパフォーマンスで見過ごされがちな部分だが、身体を効率的に機能させたいなら休息とリカバリーはトレーニングと同じくらい重要だ。
ヒートの合間を利用して休息と栄養補給をしよう

ヒートの合間を利用して休息と栄養補給をしよう

© Graeme Murray/Red Bull Content Pool

「私は自分のバイクかターボトレーナーでクールダウンしたあと、エナジーを再補給するためにたとえ少量でも何か食べておく」とリドノーは説明する。
「リカバリー用ドリンクの味が好みじゃないから、レースのあとはチョコレートミルクを飲むのが好き。あとは結局、質の高い睡眠が翌日に向けて身体をリカバリーするにはベストね」

4:身体を鍛える

パンプトラックのレースでは、短くて激しい爆発的パフォーマンスを丸1日、または複数日繰り返さなければならない。そのため、すべてでベストパフォーマンスを発揮したいのなら、強靭な筋肉と心肺機能が極めて重要になる。
ハイスピード&ハイテンションがパンプトラックレースの魅力

ハイスピード&ハイテンションがパンプトラックレースの魅力

© Sven Martin

ダンベルやバーベルなどのフリーウエイトを使ったストレングストレーニングに取り組みつつ、ラン / スイム / サイクリングで心肺機能を高めたい。また、当然の話だが、パンプトラックでの練習時間も十分取るべきだ。
とはいえ、ジムが絶対に必要なわけではない。驚くかもしれないが、ズーラはレースに向けたフィジカルトレーニングに伝統的なアプローチを採用していない。
「以前はジムでフィジカルレベルを維持していたんだけど、最近は常にアクティブでいることを意識しているだけだ。だから、普段は愛犬のリリーとランニングして、友人たちとトレイルライドに出かけたあと、BMXトラックかパンプトラックで締め括るって感じだね」

5:リドノー&ズーラからのメッセージ

これからパンプトラックのレースを目指す初心者に向けたとっておきのアドバイスを求められたリドノーは、次のように回答している。
スイス・ベルンで開催されたレッドブルUCIパンプトラック世界選手権2019で優勝したトミー・ズーラ

スイス・ベルンで開催されたレッドブルUCIパンプトラック世界選手権2019で優勝したトミー・ズーラ

© Dan Griffiths/Red Bull Content Pool

「パンプトラックでは熱中し過ぎてしまって早々に燃え尽きてしまう若いライダーが多い。キッズたちはもっと速くなれ、レースで勝てとプレッシャーをかけられているけれど、私はマニュアルやジャンプなどの基礎を学ぶ方が大事だと思う。もちろん、フラットペダルでね」
「キッズたちにはバイクのライディングそのものを楽しんでほしい。私はライディングを楽しんでいるし、だからこそここまで辿り着くことができた」
勝利の秘訣の “楽しさ” の側面にはズーラも大いに同意している。
「とにかく楽しむことだよ。楽しくないなら続ける必要はない。自分が楽しいと思えることををやればいいんだ」

レッドブル UCI パンプトラック世界選手権2020の現状

10月9日にオーストリア・レオガングでの開催が予定されていた2020年のレッドブル UCI パンプトラック世界選手権はすでに中止が決定しているが、暗いトンネルの先に光明が見え始めている。
2021シーズンを見据えた戦いはすでに始まっている

2021シーズンを見据えた戦いはすでに始まっている

© Dan Griffiths/Red Bull Content Pool

2020シーズンと2021シーズンが併合され、2020シーズンの予選を通過していたライダーは2021シーズンの世界選手権への参加資格が与えられる。2021シーズンの予選で別の勝者が生まれても、両ライダーに世界選手権への参加資格を得ることになる。
レソトやアルゼンチン、ニュージーランド、オーストラリアなどではすでに予選が開催されており、オランダやフランスでも数ヶ月以内に予選が開催される予定だ。まだあらゆる可能性が残されており、レッドブルUCIパンプトラック世界選手権はこの先も続いていく。
(了)
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