世界屈指の過酷なレースシリーズのひとつに数えられている4 Deserts / Racing the Planetシリーズは、世界中の様々な僻地で行われる6日間・250kmのマルチステージ・ウルトラマラソンだ。参加者はレース全体を通して自分で全てのギアと食料を持ち運ばなければならない。
2017年11月に開催されたRacing the Planetのパタゴニア・ラウンドでは、総勢291人の勇敢な男女がおそらく彼らの人生で最もタフな旅に出た。スタートラインには全ランナーが一斉に並び、未知のテリトリーを開拓しつつ、自分たちの精神と肉体を新たなレベルに引き上げようという意欲に燃えていた。しかし、彼らが何よりも求めていたのは、克己心の獲得だった。
「わたしがこのレースに参加した理由のひとつは、『子供を産んだばかりの母親は冒険できない』というステレオタイプな考えを打破したかったからです」と参加理由を語るのは、チリ出身のアンドレア・アンドリューズ。彼女は「自分自身をプッシュして、どこまでできるか試してみるのが好きなんです」と続ける。
レース初日、参加者たちは鬱蒼とした松林のシングルトラックやパンパの大草原、アイコニックな国立公園など、パタゴニアのあらゆる困難な地形を駆け巡る総距離250kmの未知なるテリトリーに向けて出発した。
参加者たちは氷河を越え、100年前に作られた鉄道や木製の橋に沿って走っていく。山を駆け上がり、虹の下をくぐり抜け、雨や日光、熱、雪、身を切るように冷たい風などを浴びながら走る彼らは、時として野生馬の群れや天の川がはっきりと見える透き通った夜空に出会う。彼らが求めているのは、この濃密な体験の中で肉体と精神の限界を超えた時に感じられる、言葉に尽くすことができない喜びだ。
各ステージのゴール地点で、参加者たちはキャンプサイトで休息をとる。このレースでは様々な僻地に設営されたテントを7人でシェアする。キャンプの設営地は日によって様々で、氷河の真横に設営される日があれば、トロナドール山やブラック・グレイシャーなどの壮大な山岳の麓に設営される日もある。
午後や夜にはキャンプファイヤーが焚かれ、参加者たちが身を寄せ合いながら凍えた身体を暖める。彼らは焚き火を使って湯を沸かし、カロリーを多く含んだフリーズドライの食事を用意する。
6日間の中で最も過酷な1日は "ロングマーチ" と呼ばれる、寒冷で極めてタフな80kmのロングステージだ。土砂降りの雨と厳しい寒さの中、参加者たちは24時間以上に渡りこのレースで最も過酷な天候と地形、標高との戦いを強いられる。
足は常に濡れ、さらにはシューズに硬い砂が入り込むため、ランナーたちは水ぶくれや様々な身体の痛みに対処しなければならない。当然ながら、キャンプサイトに設置された医療テントは人で溢れかえることになる。
参加者の中には、ロングマーチでかなりタフなレースを強いられ、一晩中雪に晒されずぶ濡れになりながら疲労に耐えて走り続けた者もいた。ロングマーチは非常に困難なステージだったが、全参加者が完走し、さらには最終日の15kmステージも脱落者は出なかった。壮大なトロナドール山の麓にある最終ゴール地点で、彼らは一生忘れない達成感を味わった。
彼らに与えられる報酬 、それは価値観の変化と謙虚であることの大切さだ。彼らは生涯最高のアドベンチャーをやり遂げた実感を胸に刻み、さらなるアドベンチャーを求めていく。
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