——ラップをはじめたきっかけを教えてください。
Leon Fanourakisと地元がいっしょで、自分の家の近くに遊びに来たことがあったんですよ。おれは当時スケボーをやってたんですけど、彼が来たときにモバイルのスピーカーを持ってきていて、インストを流してラップをはじめて。
それに食らって、おれも混ざっていったらどんどんヒップホップにハマっていったって感じです。その出会いがなかったらラップはやってなかったでしょうね。
——これまで発表した楽曲で、自身の代表曲を挙げるなら?
代表曲というか、おれがいちばん好きな曲は"WhatfuckJapane"ですね。
それまでYamieZimmerたちと作っていた作品は、リリックの内容が“おれたちヤバいよ”くらいで。ヘイターからは “内容がないよね”って言われるけど、その作品たちはあくまで言葉遊び。それも自分にとってはラップの醍醐味なんですけどね。
ただ、そういう作品からスタートして、いろんな人が注目をしてくれて、そこからちゃんと自分の言いたいことをカッコよくスピットできた曲が"WhatfuckJapane"なんです。
意味がない曲より言葉ひとつひとつに意味があって、言葉遊びもできてて、なおかつフロウ、トラックもフレッシュなものができたので、受け継がれるものになるかなという自信はありますね。これからももっと深いラップをやっていきたいと"Whatfuckjapane"は思わせてくれました。
自分はリリシストっていうわけじゃないんですけど、ただ単純に“おれはカッコいい、おれはドープ”って歌詞だとつまらないし。別に自分をドープだとも思っていないし、どちらかというと気になったことを自分の意見として歌詞で言って、めちゃくちゃカッコよく音楽として見せつけられるかっていうことをずっと考えてます。
——自身のラップスタイルの特徴はどんなところですか?
リスナー目線でよく言われるのは“早口なのに聴き取りやすい”というところで、そこは気をつけてますね。おれがいちばん見てほしいのはリリックかな。音で聴いて、そのあとでリリックを見るとまた全然違った楽しみ方ができる作品作りを心がけてきたので。
あとおれたちのファストフロウはレゲエとかほかのジャンルや、自分たちが聴いてきた音楽を独自に解釈して生まれたものなんですよね。それを追求していって生まれたフロウのグルーヴなので、あれは経験を積んでいかないと絶対に得られないものだなと思います。それが自分たちのまわりの横浜勢の強みになってる。
Leonと出会って以後は1年くらい毎日延々とフリースタイルしていて。山下公園に集まって10円、20円くらいしか持たずにひたすらスピットしまくって、公園の噴水の水を飲むっていうバカなことばっかりやってたんですよ。そういうことをやっていくうちに、小学校、中学校で身についた“こうでなきゃいけない”って常識から解放されていった。そしたら一気に脳みその言語野がめちゃくちゃ働くようになって、そこからおもしろいことが言えるようになったりして。なにかしらのリミットを外してみると、新しいものが生まれるんじゃないですかね。
おれはフリースタイルをずっとやっていて、Flatbush ZombiesやThe UnderachieversとかUSのカッコいいラップをずっと聴いてたことで、独自のフロウが生まれたんだと思います。1年やり続けてやっと手に入れたものですね。
——楽曲制作の工程について教えてください。
これまでのやり方だと、LeonのスタジオにYamieZimmerがPCを持ち込んでビートを作る。1〜2時間くらいで完成するんですけど、そのあいだに制作途中のビートを聴きながら、おれとLeonはひたすらリリックを書いて、できたらレコーディングするっていう、それの繰り返しでしたね。あとは先輩の家でやったりとか、ちゃんとしたスタジオに入ったりしなかったんですけど、今後はいろんなやり方でやっていきたいですね。
書けないときは本当に書けないので、心機一転して違う環境で書いたりもします。びっくりするくらいおもしろいこと言えないこともあるんですよ。YamieZimmerとかLeonにも“これでよくない?”って言われるんですけど、自分的には納得できないこともあって。
自分の作品は、自画自賛になっちゃうんですけど、全曲素晴らしいなと思っていて。いろんなところにおれのチェケラッチョが詰め込まれてるから。今後それ以下のものを作るつもりなんてないですよ。他人の目線ではよくても、自分的には満足していないってことが増えましたね。そういうときはむしゃくしゃします、マジで。
——影響を受けた人物は?
映画監督の押井守さんとか今敏さんの思想や表現力は本当に群を抜いていると思うし、クエンティン・タランティーノも尊敬していますね。
スタンリー・キューブリックの『アイズ・ワイド・シャット』も意味がわからなくて、考察を読むとキューブリックはラストの部分だけ伝えたかったっていうことらしくって、そういった構築の仕方というか独自性にはやられました。
タランティーノだと『イングロリアス・バスターズ』が好きで、YamieZimmerにすすめられたんですよ。すべてが詰まっている感じで本当におもしろかった。あれは本当にマジでおもしろい(笑)。頭の皮を剥ぐって、そこまでやる? っていう。グロい表現をするときに規制とかに動じないっていうのはキューブリックもタランティーノも素晴らしいなと思いますね。
俳優だとトム・クルーズ、キアヌ・リーヴスはなんでもできるので好きだし、ジム・キャリーのポジティヴなバイブスもいいなって思います。
——今回のマイクリレーを振り返ってみていかがでしたか?
すごい緊張したし新鮮な体験でしたね。自分的には思い通りいかなかったけど、ボロが出てもみんなでカバーしあいながらやって、その0.2秒くらいのあいだで次の単語を考えるっていう、それが楽しかったです。ぐちゃぐちゃにならないようにできたときの達成感はあったかな。
おれは日本語ラップ全然聴いてなかったんで、ほかのみんなもラップ上手いなと思ったし。今回のメンツはすごかったんじゃないですか? みんな、なにもかぶってない。
——今後の予定と、将来の展望について教えてください。
まったく考えてなかった……。とりあえずまだまだなんで、2作品くらい個人名義の作品を出したいですよね。まず個人の力を認めさせて、そしたらいろいろなひとから声がかかるようになると思うので。
それで最終地点として狙っているのはアメリカ。自分が憧れているのはアメリカのラッパーが多いので。そういう人たちに近づきたいというよりは超えたいんですよね。超えるためにはどうしたらいいかっていうと、接するしかないなって。経験を積んで、いずれは海外で活躍する日本人アーティストになりたいです。