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荘子it(Dos Monos)インタビュー『言葉遊びと切実さの中間がおもしろい』

© Yusuke Kashiwazaki
Written by Keita Takahashi
Red Bullがキュレートする“その場限り”のマイクリレー《RASEN》。参加ラッパーたちのプロファイル|#3
荘子it
荘子it
——ラップをはじめたきっかけを教えてください。
中学、高校とバンドをやってたんですけど、大学受験のタイミングでそれが解散して。それでひとりになったのでトラックメイクでもはじめるかと。
大学時代に趣味で作ってたビートが卒業のころにはだいぶ溜まってたので、それを世に出すためにラップを乗せることにしたんです。ラッパーの知り合いもいなかったので自分で乗せるしかないなと。そのなかで、ひとりでやるのも心細いんで誘った同級生たちとDos Monosを結成するって流れでしたね。全員ズブの素人ではじめた感じです。
——これまで発表した楽曲で、自身の代表曲を挙げるなら?
いちばん最初にMVを上げた“in 20XX”かな。この曲に関しては、明確に世間にDos Monosを紹介しようって意図で作った曲なんで。
この曲を作る以前って、だいぶフリーキーにラップを書いてたと思うんです。そこで掴んだ全員のキャラクターをもとに、最初のフックまでのヴァースは全部自分が書いていて。だからある意味で3人のキャラ立ちをコンパクトにパッケージングして伝えられた曲かなと思ってます。
『RASEN』
『RASEN』
——自身のラップスタイルの特徴はどんなところですか?
固有名詞が多いというのはよく言われますね。ヴァースのなかで縦に論理が立ってるとするなら、固有名詞だったりから連想した言葉をつなげることで横に広がっていくというか。
リアルタイムに伝わるコミュニケーションというよりは、時間差で伝わるもののほうが自分は好きで。ラップってマンツーマンというか、フェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーションになりがちだけど、自分たちはもうすこし違う時間軸での表現をやろうとしてるんですよね。
あと、ラップの書き方は映画に影響を受けてるところは大きいかもしれないです。映画って脚本はあるけど、撮影の段階で演技や風景によって最初の筋立てからズレてくることがあるんです。自分はそのズレって大事だと思ってて。映画でいうその筋書きとの齟齬みたいなものと自分のラップの作り方は近いと思ってますね。
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——楽曲制作の工程について教えてください。
まずはビートありき。そこから単語レベルでテーマを決めて、各々で作ってくるという感じですかね。そこから16小節を全員が録って、それを乗せたあともトラックの展開も編集し直したりという。連想ゲームに近いですよ。
ビートに関しても、レコードとかシンセの音をザッピング的に流しておいて、そこで引っかかる音が見つかったら掘り下げていく。言葉も音の感じから連想される単語からどんどん発想していくんです。
そして最後に、アルバムだったらアルバムのテーマに回収されるよう編集していくって感じですかね。
『RASEN』
『RASEN』
——影響を受けた人物は?
ジャン=リュック・ゴダールですかね。勇気をもらえるっていうか。彼の映画を観るとインスピレーションが湧きますね。“こんなことやっていいんだ”ってなる。
しかも自分が“おおっ”と高まった次のシーンにはまた延々、ワケのわからないシーンが続くっていう。でもそれでいいと思うんですよね。人間関係も自分はそういう感じが好きなので。全部が全部理解されなくてもいい。
ヒップホップだとAesop Rockですね。A$AP RockyではなくAesop Rock。フロウも好きだし、言ってることも相当ワケわかんない感じで。それこそゴダールみたいな。
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彼の曲で“Daylight”と“Night Light”って曲があって、この2曲は同じリリックでビートが違うっていうコンセプチュアルな試みなんですけど。一見遊びのように感じられるけど、自分はそこからシリアスなものを感じ取れるなと。
単なるレトリックの遊戯にも陥らないし、ベタに人生の意義を熱く語るってことでもないというか。その中間に興味があるんですよね。だって言ってしまったらラップだって言葉遊びの側面もあるじゃないですか。でも反面、一生を賭ける切実なものでもあると思うし。その中間が自分にとっていちばんおもしろいんですよね。
——今回のマイクリレーを振り返ってみていかがでしたか?
かなりはじめてづくしというか。完全に即興というわけじゃなくて、ある程度の決め事は考えて臨んだんですけど、マイクリレーしているうちにテンション上がってきちゃって、結局、テイクごとに違う感じになってたっすね。
ヴァースの最初でルイス・ブニュエルって映画監督の名前を出したんですけど、そこから話を広げようと思ったんだけど、あんまり続かなかったから別の方向に進んでいくっていう感じになったり。そういうのも含めて楽しかったです。
こういった企画で自分のビート以外でラップするっていうのも新鮮だったし、トラップのビートというのもはじめてだったので、だいぶ挑戦でしたね。
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——今後の予定と、将来の展望について教えてください。
Dos Monosでアルバムを出した直後なので、いまはライブですかね。あとは自分のソロアルバムを出したいなとは思っていますが、別になにが決まってるってわけでもないので地道に制作していこうかと。
自分はなし崩し的にラッパーになったところもあるので、5年後、10年後になにをしてるかっていうのはまだ見えてない部分もありますね。もしかしたら全然別のことをしているかもしれないし。
映画を撮ってみたいとも思ってます。自分にとってトラックメイクはガチで音楽なんですよ。でもラップはいい意味で遊びの部分も含まれてるっていうか、音楽を逸脱しているなにかがあるなって思うんです。それが単純にお遊びの域を出ないのか、人生に深く関わることかはわからないですけど。そこが自分にとってラップの醍醐味でもあるんで、それを足掛かりにいろんなことに挑戦していきたいですね。