田我流
© Suguru Saito
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田我流インタビュー『今の自分が言えることをシンプルに伝える。韻を踏むのもより楽しくなった』
Red Bullがキュレートするマイクリレー《RASEN》EP15 参加ラッパーたちのプロファイル ③
Written by Keita Takahashi
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今回のサイファーを振り返ってみていかがでしたか?
今年に入ってから足のボルトを抜く手術をしてて、入院してた病院でビートをもらったんですよね。なかなか入院中は手をつけられないからけっこうギリギリでした。“オレ、いけんのか?”みたいな。そういう焦りも全部リリックに入ってますね。結果、自分らしいものになってるんじゃないかな。
でも今回の自分のリリックで言ってるような焦りって、RASENにこれまで出たラッパーはみんな感じてることでしょ(笑)。でもラッパーじゃなくてもみんな社会のなかでそういう焦りって感じてると思うんですよ。それをいい感じでまとめられたんじゃないかなっていう。
RASEN EP15
RASEN EP15© Suguru Saito
あとはこれまでやってない新しいことをやろうっていうマインドもあったっすね。今回のtofubeatsのビートのトランシーな感じも自分ではこれまでやってこなかったタイプのものだし。だからガチガチに畳み掛ける形もできるけど、24小節のなかでテンションを抜いてから上げていくって流れにトライしてみようと。フロウは詰め込みすぎず、気づいたら上がっていってるイメージで。展開が2回あるからそのタイミングで微妙にペースチェンジしていってる。
自分で気にいってるラインは最後の“手なんて抜けねえよ/やる必死に/この脳裏にあの日のECD”ってとこっすね。リリック考えてて、最後がバシッと決まらないなと思ってたときにフッと石田さんのこと思い出して。そしたら今回の撮影の前の週が命日だって気づいて。そういうこともあるんだなぁって。
田我流
田我流© Suguru Saito
現在の日本のヒップホップ・シーンについてはどう考えていますか?
若いアーティストは昔と比べたら格段に増えたけど、いろんなひとたちを見てるぶん長続きするアーティストとそうじゃないひとはわかるようになってきたかな。だからあんまり流行とはちがう目線で自分は見てるんだと思います。言葉に込められてるバイブスとかそういったところが大事っすよね。
自分たちの世代はDJやブレイキング、グラフィティなんかも込みでヒップホップをカルチャーとして教え込まれてた世代。いまはそうではなくなったと思うけど、その代わり、いまはYouTubeでいくらでも情報は得られるし、海外のビートメイカーからすぐビートが買えたりする。コネクトしやすい時代だからこそ生まれるおもしろいアーティストもいるんじゃないかなって思います。
RASEN EP15
RASEN EP15© Suguru Saito
自身の現在のアーティストとしてのモードを自己分析するなら?
自分もいまや中堅ですからね。だからこそ最近は“来るもの拒まず”って意識でやってますね。タイミングが来たらいかにそのとき思ってることを詩にするかっていうことしか考えてない。父親としての目線もできたし、社会にもたくさん言いたいことがあるんで、変に若ぶらず、いまの自分の年齢で言えることを言う。
自分の『Ride On Time』ってアルバムからそのあたりの意識は変わったんじゃないかな。むずかしいことは言わない、聴けばわかるってことをより意識したのもそのころ。“賢者はなるべくシンプルに話す”って言うじゃないですか。自分が賢者とは思ってないけど、ここ最近は自分の思考をシンプルに伝えるっていうゲームにハマってますね。
RASEN EP15
RASEN EP15© Suguru Saito
それに比例して韻を踏むのがより楽しくなってきたっすね。Kダブシャインさんが“16小節を4分割してそこに起承転結を。で4分割したひとつのなかにもさらに起承転結を作れ”って昔言ってて。起承転結を16小節のなかで4回繰り返せってことで。これはいまだにすげえ話だなって思う。
自分のリリックだと最近C.O.S.A.とやった“5PM”での“いまのオレは野原ひろし/家族持てばおなじ気持ち”っていうラインは一発でわかる歌詞っすよね。でもちゃんとその裏に父親が葛藤してる情景も浮かぶっていう。短くても深みのある歌詞を最近は目指してるかな。今日いっしょだったBoseさんなんてそういうことをずっとやってきたひとっすもんね。
影響を受けた人物は?
まずはstillichimiyaのメンバー。みんながいなかったらここまで来れなかったと思うっすね。あとは自分がラップするきっかけになったYOU THE ROCK☆さんかな。あのひとはほんと人生がドラマみたいなひと。カッコいいっすよね。
前に一度、YOUさんが知らないこどもに自分の“ヘビの学校”って曲を朗読してるところを見たことがあって。そのときに“オレがラップはじめるきっかけのひとが目の前ですげえことやってる!”って興奮した記憶がありますね。YOUさんがこどもにいきなり“ヨー! オレがいまからきみにこの物語を読んであげよう! よく聴いてくれ”って言って朗読しだして。あれはオレとそのこどもしかいないめちゃくちゃエクスクルーシブなライブだったっすね。これぞ“PERSONAL EFFECTS ONLY”だなと。
田我流
田我流© Suguru Saito
今後の予定と将来の展望について教えてください。
今年上半期に集中して制作してEPを出したいなと思ってます。作ってまだリリースされてない曲とかもあるから楽しみにしてもらえればって感じっす。
これから先は……とにかくずっとラップしてたいっすね。それをしながら世界のまだ行ったことのない場所に行ってみたい。ピラミッドとかナスカの地上絵とかいろいろあるじゃないっすか。アメリカとかイギリスに行って音楽修行だってしたいし。この2年くらいでたくさんそういうことしたかったけどコロナでダメになっちゃったから。もうすこし落ち着いたらそういうことにも挑戦していきたいなぁ。
RASEN EP15
RASEN EP15© Suguru Saito
👉田我流インタビュー『今の自分が言えることをシンプルに伝える。韻を踏むのもより楽しくなった』
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