Awich
© Suguru Saito
ミュージック

Awichインタビュー『“成功”の反対は“失敗”ではなく、“なにもやらないこと”』

Red Bullがキュレートするマイクリレー《RASEN》EP20 参加ラッパーたちのプロファイル ①
Written by Keita Takahashi
読み終わるまで:6分公開日:
今回のサイファーを振り返ってみていかがでしたか?
沖縄のみんなとできたのが単純にめちゃくちゃ嬉しかったですね。すでに交流の深い4人だけど、みんなで曲を作ったことはなかったので。自分としてはこういったサイファーでのリリックは日記みたいにして書くことが多いんです。スキルを見せつけるということも大事だけど、それよりも言葉でわたしたちの日常を切り取る、この曲にまつわるストーリーを書く、というのが自分としてはしっくりくるかなって。
Red Bull RASEN EP20

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自分としては“失敗は成功の元/成功の反対にあるのはなんにもやらないこと”って部分がこの曲自体を表してると思って。というのも今回ビートはLAのプロデューサーのDiego Aveにお願いしたんですけど、わたしがLAで彼と会ったときにこのビートのサンプリングネタを聴いてもらったんですよ。そしたら“いいね!”ってなって、そこからビートができて、それを日本に持ち帰ってみんなに送って。世界中に行けるっていうポジションでありながら、沖縄を忘れないというか。全然ちがう地域や国のひとに沖縄の民謡や島唄を聴いてもらって、そこから生まれるものってあると思う。それが成立するかしないかは別の問題で、“成功の元”なんじゃないかなって。失敗と成功は対極にあるものじゃなくて、成功の真逆は“やらないこと”なんです。今回のわたしのヴァース、それに今回のサイファー全体がそういったトライの賜物だと思ってますね。
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ほかの出演者との関係性を教えてください。
OZ(world)はめっちゃ似てると思います。神秘を信じるというか、神秘とともに生きてるって感じとかもすごい共感できるし、弟みたいな存在。
CHICOは頼れる存在ですね。沖縄の男で頼れるヤツはわたしにとって珍しいから。地に足着いててずっしりしてるんですよ。沖縄のみんなにとっても礎というか、杭みたいな存在だと思います。
で、唾奇は真逆の存在ですごいふわふわしてるんだけど、それも魅力ですよね。今回もまず唾奇が出てくれたことにアガったもん。彼がいちばん気まぐれだし、つかまんないから。だから今回のRASENが実現するのはギリギリまで唾奇に委ねられてたっていう。なにが基準だったかはわからないけど彼がオファーを受けてくれて、OZもびっくりしてた、“ほんとに唾奇さん出るんですか?”って。
Red Bull RASEN EP20

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自身にとって沖縄とはどんな場所ですか?
沖縄はわたしのコアな部分であり、ルーツ。それをいまいろんな国へ行ける状況でより意識するようになりましたね。
自分のルーツを知らないと世界で勝負できないんですよ。海外で“おまえのルーツはどんなものなんだ?”って言われたときに答えられないと“はい、次”ってなる。ここは『THE KARATE KID』のMr. MIYAGIが生まれた場所だとか、第2次世界大戦で地上戦が行われた場所だとか、世界一健康な島だっていわれてるよって言うと、興味を持ってくれるんですよ。だからルーツを知るっていうことはすごく大事だと思う。先人のアーティストがそれを大事にしてきてくれたからこそ、いまのわたしがあるんじゃないかな。
今日参加してくれたほかの3人もずっとそうしてきているし、それはよりよい環境作りになって、若いアーティストのヴィジョンがさらに広がると思います。
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現在の日本のヒップホップシーンについてどのように考えていますか?
わたしのカムバックは2016年だったんだけど、そのあたりからの日本のヒップホップシーンの成長は客観的に見ても急激なものでしたよね。世界全体の傾向としてヒップホップの盛り上がりがあって、日本もそこからすこし遅れてはいるけど連動してる。そういった拡大はいい側面と悪い側面があって。ヒップホップが当初持ってた理念が、シーンが大きくなっていくことで薄まっていくことはネガティブな側面ではあると思うけど、それはだれにも止められないと思ってて。わたしたちができることはそういった理念を後世にもしっかりと伝承することじゃないかな。
自身の現在のアーティストとしてのモードを自己分析するなら?
たぶん客観的には姉御とか姉さんみたいなキャラだと思われてるだろうなって。なんでも知ってそう、ハッキリ言ってくれそう、みたいな。実際に自分もそういうひとを目指してますね。自分のことを知っていて、自分の気持ちを吐き出せるひとでありたい。そのために日々自己分析してるし、世界の情報も処理しているつもり。長い時間かけてそういう自分にたどり着いたと思っているので、この先もその部分は変わらないと思いますね。
Red Bull RASEN EP20

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影響を受けた人物は?
亡くなってしまったわたしの旦那ですね。彼が亡くなってわたしの時間は止まったんです。当時は生きる目的すら失ってしまったと思ってました。でも、いま思えばその時間は自分自身と向き合う、自分自身のことを理解する時間だったんじゃないかな。その時間があったおかげで、自分が本当になにをしたいのかということにも気づけた。そのあいだ変わらず支えてくれた家族……父や母、娘にも感謝しかないです。
今後の予定と将来の展望について教えてください。
2023年はアリーナ公演を予定していて。それまでに全国5カ所のZeppツアーもありますね。で、来年は世界に向けたアルバムを出そうと思っています。そのためにいまはいろいろな準備をしている最中。
Red Bull RASEN EP20

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その先の将来は……わたし、村を作りたいと思ってて。最先端の技術と自然が共存する村を作る。村には学校もあって、子供たちが生まれてから一般教養を学ぶまでに、より自分のことを理解できるようなカリキュラムを組む。そこから自分がなにをやりたいかを自分で選べるようになっていて。そしてそのシステムが全国に広がって一般化すればいいなと思ってます。そのためにもっとわたしは世界を知らなきゃいけないし、富と名声を得ないといけないと思ってて。プロジェクトを進めるためにはお金も必要だし、有名になることでそれを円滑に進めることができる。そのためにいまは動いてます。
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👉Awichインタビュー『“成功”の反対は“失敗”ではなく、“なにもやらないこと”』