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© Suguru Saito
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OZworldインタビュー『カッコいいひとがカッコいいことをできる未来をつくっておきたい』

Red Bullがキュレートするマイクリレー《RASEN》EP20 参加ラッパーたちのプロファイル ③
Written by namahoge
読み終わるまで:7分公開日:
今回のサイファーを振り返ってみていかがでしたか?
RASENがはじまったころから“うわ、これめっちゃおもしろい!”って、自分も参加してみたいと何年も思っていたんですけど、オファーいただいても何回かお断りさせてもらっていて。もしミスったら……ってプレッシャーで集中できなくなるんじゃないかって。今回、姉さんから話を聞いて、参加するアーティストみんな自分にとって音楽をはじめたときからの兄さん姉さんって感じなので、この機会を逃したらダメだろうなと思って参加しました。もしミスっても“なんや、大丈夫よR’kuma!”みたいなノリが今日のスタジオでもあったからめっちゃやりやすかったし、参加できてよかったです。
Red Bull RASEN EP20

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ほかの出演者との関係性を教えてください。
いちばん最初に出会ったのが唾奇さんです。16歳のときの夏休みぐらいにL-LINE(現・EQ)っていう廃墟みたいなビルのなかにあるちいさな箱に通っていて。L-LINEは沖縄の若い子たちの登竜門みたいな感じで、そこに唾奇さんも遊びに来ることがあって。そのときの唾奇さんはもうマジで目が見えないくらい髪長くて、ザ・闇の住人っていうか、ディメンターみたいな人だなっていうのが最初の印象(笑)。でも、それがスタイルになっていてめちゃくちゃカッコいいなって。沖縄の陰の部分を背負って音楽をやっているひとだなって思ってリスペクトしています。
それから唾奇さんが住んでた那覇の家でレコーディングさせてもらったときに、たまたまCHICOさんがいて。内地で戦っているひとってことでもちろん知っていて、そのときのCHICOさんは沖縄と行ったり来たりしていたからめっちゃ接点があったわけじゃないですけど、おたがいやることやってるからわかり合っている感じがしました。
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Awichさんに関しては、自分が音楽はじめてすぐのころに、ある動画で一方的に知ったんです。いまはもう消えちゃってるんですけど、沖縄の3組のラッパーのマイクリレーの動画に登場していて、これまで感じたことないくらい衝撃を食らっちゃって。まずスキルが超あるし、英語できるから倍強いし、女性で戦ってるっていうのもすごいし、トリニティ揃っちゃってるヤバいひといるじゃんって。見た目もウチナーンチュですし、アイデンティティの強烈さを感じて、もうめっちゃドツボで。そこからはじめて会ったのは、オレが17歳のころに先輩のスタジオに遊びに行ったときですね。でもオレはぶっ倒れるくらい遊んじゃって、ほぼ気絶していたから最初の印象としては最悪ですよね(笑)。で、次に会ったときに、覚えていないことを願って“はじめまして”って言ったら“はじめましてじゃないさ、R’kumaでしょ”って言われて、うわーって(笑)。3人ともラップはじめてすぐのころから憧れていて、ずっとそうだし、いまもやっぱそうだっていうひとたち。
Red Bull RASEN EP20

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自身にとって沖縄とはどんな場所ですか?
自分の視点で思うことですけど、沖縄って本当にコンプレックスまみれで、最低賃金だったり、母子家庭が多かったり、基地問題とか、いろんな課題が詰め込まれている島だと思っていて。そのぶん、このちっちゃい島の問題を解決できれば、成功事例として世界のいろんな場所に持っていって解決の糸口にできるんじゃないかと思っているんですよね。今日の出演者は全員が沖縄のなにかしらの問題を抱えていて。それはオレらだけじゃなくて、何万人、何十万人が抱えている問題で。たまたま音楽やヒップホップという形で表現しているのが自分たちだと思います。沖縄のラッパーはセックス、ドラッグ、マネーみたいなことを超えた、本質的で社会的なメッセージを自然と歌える環境にあるというか。もちろん本土のほかの地域のひとたちの抱えている悩みとどこか通じるところがあるはずだから、それで救われているひとたちもたくさんいるんだろうなって。
それに音楽性っていう意味でも、琉球音階があるように、昔は別の国でぜんぜん違う文化だったし、いまの時代のオレたちであっても、ほかの地域とは聴いてきた音楽が違うんですよね。フロウが独特だよねって言われるのは沖縄という場所柄もあります。
こういった差異を、自分は基本的にポジティブに捉えていて。ネガティブな問題はたくさんあるけど、それを変換して、伝えて、っていうことがだれかのためになっている実感がある。それは沖縄という場所からパワーをもらっているからなんですよね。
Red Bull RASEN EP20

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現在の日本のヒップホップシーンについてどのように考えていますか?
本当に地域ごとにいろんなスタイルだったりとかクセだったりとかがあって、沖縄らしさ、大阪らしさ、福岡らしさ……本当に何種類もクセがある。クセがあってなんぼのヒップホップだけど、それが群雄割拠でケンカが起きているわけでもなくて、全体としてみたら調和が取れている感じがしますね。ビーフみたいなのも起きているかもしれないけど、本当に深刻な結末になるわけでもないし。いい意味でみんなクセがあるなって思います。ゴリゴリなひとじゃなくてもちゃんと受け入れられるようなシーンになってくれているし、今はいろんな自由なスタイルが出てきてて楽しいです。
自身の現在のアーティストとしてのモードを自己分析するなら?
最近はNFTやe-sportsのプロジェクトもやっていますけど、それは今後ビジネスの世界で、ヒップホップの魂の熱いひとたちが変なふうに使われないように、自分が先に行って未来を理解しておきたい、場所を作っておきたいっていうことを考えていて。本当にカッコいいひとがカッコいいことをできる道を作っておきたくて、いまは突き抜けてやっているんです。
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やっぱりヒップホップって"いま"にフォーカスするカルチャーで、その精神をもったまま、オレは未来を作っていきたいんですよね。人生レベルで。もともと、制限をかけないっていう自分のルールがあるんです。ラップも手法だし、自分が急に演歌をやったとしてもそれは手法のひとつ。表現したいことに合わせて手法は変わって、最終的に伝えたいのが……名前がOZ"world"なんで……自分の世界観なんです。
影響を受けた人物は?
自分が精神的にダメだった時期、Rickie-Gさんに救われたんですよね。オレにとって生き神みたいな感じで。あと、Def Techです。いちばん最初にCDを買ったアーティストだし、いちばん最初にライブに行ったのもDef Techだった。この2組のアーティストに人生を救われました。本当に音楽が人の命を救ってるんですよ。“オレも音楽やってんじゃん。それなら”って、自分の活動とか精神に対しての影響はめっちゃデカいです。
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今後の予定と将来の展望について教えてください。
今年夏前に渾身のアルバムを出します。これまで1stアルバムを出して、次にゼロアルバムを出して、それで今度のが3rdアルバム。3と6と9って数字はオレの人生ですごく大事で、"3"は外せないなって。自分の中で1stアルバムぶりに魂を削って作った作品なので、めちゃくちゃ聴いてほしい。後悔しない音を用意しているんで。
あと、さっき話したような音楽以外のプロジェクトも、ひとによっては“なにしてんの?”って思うかもしれないけど、直接会って話せば絶対納得してもらう説明ができるくらい本気で考えているから、安心して付いてきてほしいなって(笑)。“大丈夫、待っててね”っていう感じで、時間かけて理解してもらおうって思っています。
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