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© Tasuku Amada
ミュージック

YDIZZYインタビュー『ロウな感じが今のモード。撮影が始まってから生で出てきたヴァースも』

レッドブルがキュレートするマイクリレー《Red Bull RASEN》EP21 参加ラッパーたちのプロファイル ④
Written by Keita Takahashi
読み終わるまで:6分Published on
今回のサイファーを振り返ってみていかがでしたか?
まず話をもらった時点で“やりたいな”と思って即答でした。ビート自体はアドレナリンが出てるいちばんいい状態で聴きたいなと思って、昨日のライブ前に聴いて。できるだけ生に近い状態、フレッシュな状態が自分にとっていいと思うんで。普段のレコーディングでもそういうパターンが多いですね。今回はリアルな言葉を大切にしたかったんです。だからスタイルとしてもより言葉を置くような形ですし。
自分のなかで気に入ってるのは〈青と緑と赤で飛んでいく〉って部分ですかね。レッドブルのカラーも入れ込みながら書いたつもりです。あとはヴァースの最初で"言葉無くした/お前時止まる/声を無くして/痛みとれていく/言葉音になる/このまま街を駆け抜けていくGoing"ってフレーズがあるんですが、それはオレが落ちていた事を歌ってて。そのとき2019年だったかな、声が出なくなって。オレから音楽がなくなったら言葉を伝える手段がなくなるってことだから、歌えないのがなによりつらかった。鼓膜破れるくらい音を聴いたし、深く音楽と向き合った。それから音楽に癒されて、また声を取り戻して歌えるようになった話のことを歌ってて。RASENの撮影が始まってから生で出てきたヴァースだったからつながってよかったです。
Red Bull RASEN EP21

Red Bull RASEN EP21

© Tasuku Amada

現在の日本のヒップホップシーンについてどのように考えていますか?
正直言うと、自分たちの音楽を日本のシーンに合わせて作ってないからわかんないっす。(笑)自分は8年くらいやっているけど、始めた当時よりいまはメディアも多いし、若いラッパーのエナジーも高いなと思ってます。kiLLaのビートメイカーやってるNo Flowerが新しいアーティストを教えてくれたりもしますね、基本メンバーで音楽についてよく話すんですけど、BLAISEはクラシックとかジャズが好きだし、KEPHAは電子音系だったり、自分はRockとかパンクとか、ヒップホップマインドはベースにあるんですけど、それに各々のスタイルが乗っかってる感じなんでkiLLaが求めてるのは唯一無二です。
自分たちがはじめたころはヒップホップのライブでモッシュが起こることがまだなかったんですよ。Joey Bada$$とかA$AP Fergが来日したときにオレらで遊びに行ってモッシュしてたのがきっかけなんじゃないかな。19歳くらいにLAに行ったとき、ヒップホップのクラブでもモッシュは起こってて。で、“なんで日本ではやってないんだろ?”って思って、帰ってきたときに自分たちもし始めたっていう。
Red Bull RASEN EP21

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当時のArjunaと俺はまだラップもしてなくて、バスケしかしてないヤツらって感じだったけど。そこからトラップにのめり込んでいきましたね。自分のなかのトラップって生き方だと思ってて。しかもそのライフスタイルがイルじゃないとダメっていうか。海外のトラップのラッパーはギャングでシリアスな生き方をしてるわけじゃないですか。友達が死んでしまったペインをドラッグやリーンやって保つ、とかね。自分の場合もトラップに入り込みすぎちゃっていろいろあったけど……でも、そうじゃないとリアルなトラップは書けないと思う。たとえばSpaceghostpurrpもトラップに入り込みすぎてイカれちゃったけど、でも彼は結果的に歴史を作ったわけじゃないですか。ただ肯定するわけではないですけど、これがTrapなんです。
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自身の現在のアーティストとしてのモードを自己分析するなら?
例えるとスエット着てるけど新品のAir force 1おろしたてな感じ。自分の中では燃えたぎってるからアクセル全開でいきたいんですけど、間違ったアクセルの踏み方したら事故っちゃう時あるんでRawでいたい。Rockなんでなんでもありだけど、仲間とかファンとか一緒に痛み分けしながら走り切りたいんで次のステップに進むためにも新しい要素にトライしていこうというマインドですね。初心の気持ちというかね。ドリルもそうだし、ジャージーみたいなビートもやろうと思ってます。そこらへんはこれからリリースを控えてる自分の作品を聴いてもらえればと思いますね。かなり自信があります。
Red Bull RASEN EP21

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影響を受けた人物は?
THE BLUE HEARTSとシドですね。小学1年のときにハマって、そこからずっと。辛いことがあっても強くいれたのは確実に彼らのおかげですね。なにがヤバいって、何千回、何万回聴いた曲なのに、聴くたびに新しく聴こえるってところで。で、毎回心がアガってる。ほんとにすごいことですよ。
今後の予定と将来の展望について教えてください。
5月の下旬に『Syndrome Ⅴ』というアルバムがリリースされる予定で。時間がかかっちゃいましたけど、自分としても満足できるものができたかなと。で、立て続けに『Heartbreak EP』という作品も準備していますね。これはけっこうヤバいんじゃないかな。“こんな感じでやってくんのか!”って驚きもあると思う。みんなが知ってる名曲をモチーフにした楽曲も入ってて。
で、もちろんkiLLaの楽曲もリリースしていきますね。4月末に出た“Shibuya Drill”を皮切りに、そこからkiLLaのEPも控えてるし、BLAISEの1stアルバムもセッティングしています。kiLLaに関しては各々がいろんなことを経験して、進むべき道がわかってきてると思う。しかもその道がみんなちがうものだっていうのもおもしろいですよ。個々がその道を極めて、全員がクルーとして集まったときに最強になるっていうのがいいと自分は思ってて。ライブもソロのときよりkiLLaで集まったときのほうが楽しいですもんね、バックステージも含めて。
Red Bull RASEN EP21

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最近は周囲のサポートもたくさんあったおかげで、今年はいい流れが作れるんじゃないかな。そして今後はアメリカへの進出も考えてますね。いろんなアーティストを見てきて、アメリカで非アメリカ圏のアーティストがブチかませるのって30歳がデッドラインなんじゃないかなと思っていて。バイブスとかエナジー的に30歳を超えると現地の若いアーティストにどうしても勝てないもん。だから30歳までの2年は本気出してUSに照準を当てて活動しようと。で、10年後もスタジオで曲を作っていられれば最高ですね、自分としては。
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