世界最大のフリーランニングイベントが終了した。4日間に渡り開催された【Red Bull Art of Motion 2022】を振り返っていこう。
01
最終結果
現実とは思えないほど素晴らしかったイベントが終了したとき、頂点に立っていたのはエド・スコットをわずか1ポイント上回った英国の若き才能、トラヴィス・ヴァカークだった。《Spot Challenge》は米国のシドニー・オルソンが勝利し、《Live Challenge》でも女子トップに輝いた。
02
総合トップ5
- トラヴィス・ヴァカーク:15ポイント
- エド・スコット:14ポイント
- エリス・トーホール:11ポイント
- シェイ・ルドルフ:6ポイント
03
女子トップ3
- シドニー・オルソン
- リル・ルエル
- ノア・ディオルジーナ / ミランダ・ティブリング
04
ピープルズ・チョイス(ファン投票)
ディミトリス・“DK”・キルサニディス
05
アスリーツ・チョイス(アスリート投票)
ハーデスト・ヒッター:エリス・トーホール
※最も強烈なパフォーマンスをしたアスリート
ポストマン:ドミニク・ディトマソ
※最大のセンドをしたアスリート
マッドサイエンティスト:ボブ・リース
※最もクリエイティブだったアスリート
アスリート・フェイバリット:トラヴィス・ヴァカーク / リル・ルエル
※アスリートが選んだベストアスリート
モースト・コラボレーティブ:エド・スコット
※最も協働しやすかったアスリート
06
フォーマット
【Red Bull Art of Motion 2022】の新フォーマットには、《Exploration Challenge》、《Spot Challenge》、《Live Challenge》という3種類のチャレンジが用意された。初日は《Exploration Challenge》で、アスリートたちはお互いに協力して島全体を “探索 / Explore” するチャンスを得た。
昨年の女子チャンピオン、ノア・ディオルジーナは開催前に次のようにコメントしていた。「この新フォーマットはとてもクールだと思います。仲間と一緒にトレーニングをして動画を撮影するというのは、私たちが普段からやっていることですし、アスティパレア島は私がトレーニングをしてきた中で最高のロケーションのひとつです」
07
ロケーション
【Red Bull Art of Motion 2022】のロケーション、アスティパレア島は過去に使用されてきた会場を参考にして新しく用意された。これまでの会場よりもルーフギャップの数が増え、高低差が広がり、バラエティがさらに豊かになった。
《Exploration Challenge》では、アスリートたちは1カ所ではなく、島全体を使用することができた。
《Spot Challenge》のロケーションは、会場付近の様々なセットアップの中から選ばれた。幅が変更できるルーフギャップ、滝のようなレッジ、そして急角度の下り坂などがユニークな建築物にフィーチャーされていた。
また、イベントをさらに面白くするために、既存の建築物に複数のフィーチャーが追加され、ルーフギャップバーのセットアップや傾斜のある巨大なウォールのようなこれまで存在しなかったモーメントを生み出すチャンスが提供された。
《Live Challenge》のロケーションは、【Red Bull Art of Motion】史上最もコンパクトで最も複雑なセットアップだった。アイコニックなアスティパレア島の風車の下に位置する広場から下っていくコースには、ウォール、レッジ、ランプがひしめき合っていた。また、無数のルーフギャップとソリッドなバーがクラシックなコンボやビッグトリックのメイクにパーフェクトなチャンスを提供していた。
08
Live Challenge / ライブ・チャレンジ
《Live Challenge》では【Red Bull Art of Motion】史に残るクレイジーなアクションが展開された。この新フォーマットのおかげで、アスリートたちはこれまで以上に自由に自分たちをプッシュすることができた。
まず、スウェーデンのライジングスター、エリス・トーホールがダブルフルからフルアウト・スウィングフルに繋げて全員を驚かせた。
また、フランスのリル・ルエルと米国のシドニー・オルソンの新旧対決では、リルがシグネチャーのダブルコーク、ピンプフリップ、デビルドロップをメイクすると、シドニーが540サイドフリップからハンドスプリング、インワード、そしてピストルバックフルで応戦し、女子トップスコアを叩き出した。
トラヴィス・ヴァカークはコングゲイナーからスタートさせてタイトな裏道へ進む非常にクリーンなラインと、その途中でメイクした非常にテクニカルなコングゲイナーでトップに立った。また、最後にターンボルトキャストバックもメイクした。
ボブ・リースはこの日で最もエキサイティングなモーメントのひとつを作り出した。ルーフギャップでボルテックス・サイドフリップをメイクした彼は、裏道でオーディエンスを越えるキャットリープやツイストイン・バックアウトもメイク。しかし、オーディエンスから最大の賛辞を得たのは、椅子を使用したスイングサイドだった。
最後は、英国のベテラン、エド・スコットがシームレスにトリックを繋げたハイレベルなラインが1日を締め括った。ソリッドで高精度なゲイナーからスタートさせた彼は、美しいウェブスターからツカハラに繋げ、ジャイアント・トゥ・トーで締め括った。
09
Spot Challenge / スポット・チャレンジ
《Spot Challenge》は16人のアスリートがひとつのフリーランニングロケーションに集まり、フリーランニングシーンで活躍してきた8人のフルマーたちと組んでそれぞれのスキルを録画するというフォーマットだった。
この日に最も目立ったのは英国のトラヴィス・ヴァカークで、ネクストレベルのムーブを組み合わせたパフォーマンスを披露した。トリックメイクを続けた彼は最後に中央のルーフギャップで美しいコングゲイナーをメイクし、《Spot Challenge》のトップに立った。
ニューカマーのエリス・トーホールもゲームチェンジャーと呼ぶに相応しい素晴らしいムーブを次々と披露してジャッジたちを圧倒し、《Spot Challenge》2位を獲得した。バックアウト・スウィングフル、キャストバックフルからのトリックコンボは、リードジャッジのルーシー・ロンベルグを大いに感心させ、「彼のムーブの精度と強度、難度は私たちに大きくアピールしました」とコメントさせた。
女子は、ツカハラで締め括る強烈なムーブの連続をハイエナジーな動画にまとめた米国のシドニー・オルソンがトップに立った。
男子のトップ5は、米国のシェイ・ルドルフと同じく米国のボブ・リースが3位、4位、そしてオーストリアのシュテファン・ドリンガーが5位で続いた。
10
Exploration Challenge / エクスプロレーション・チャレンジ
初日の《Exploration Challenge》では、アスリートたちが撮影に使用できるパーフェクトなロケーションを探し回った。アスリートたちは協力してお互いのパフォーマンスを撮影し、ラインのスムーズさとトリックのスケール感を競い合った。
昨年の女子チャンピオン、ノア・ディオルジーナは開催前に次のようにコメントしていた。「この新フォーマットはとてもクールだと思います。仲間と一緒にトレーニングをして動画を撮影するというのは、私たちが普段からやっていることですし、ここは私がトレーニングをしてきた中で最高のロケーションのひとつです」
シェイ・ルドルフが風車を取り囲む石段を使って、始まりと終わりに強烈なトリックを用意したラインを披露。ランニングゲイナーからフレア、キャストバックへと高い精度で繋げたセクションが特に高く評価された彼は3位を勝ち取った。
最後は英国人同士で親友でもあるトラヴィス・ヴァカークとエド・スコットが海を見下ろすクラシックなルーフトップでトップ争いを演じた。
島全体を使うフォーマットはアスリートたちにある程度の負荷を与えたようで、怪我を理由に早々に棄権するアスリートが数人確認された。たとえば、日本の鍬崎竜也が足首の怪我、【Red Bull Art of Motion 2021】の覇者クリスチャン・コバレフスキ(ポーランド)が最初のトリックの着地失敗を理由に棄権した。
このような運命のイタズラは続き、オンライン予選を突破して参加していた米国のエイダン・ルドルフもウォームアップ中の怪我で棄権を強いられた。しかし、幸運なことに、彼のすぐ近くにいた双子のきょうだい、シェイ・ルドルフがオンライン予選の2位だったため、繰り上げ出場となった。
どのアスリートもそれぞれユニークなパフォーマンスを披露し、素晴らしい動画を用意したが、最後はルーフギャップでの高精度のビッグフリップからレイアウトパームドロップへ繋げたエド・スコットがトップに立った。尚、全員の動画がピープルズ・チョイスの審査対象となった。
1分
【Red Bull Art of Motion 2022】Exploration Challenge:エド・スコット
また、フランスのリル・ルエルはホテル2階の自室バルコニーからスイミングプールに飛び込むパフォーマンスを披露し、大きな話題(と水しぶき)を生み出した。
11
Live Challenge 出場アスリート
2日間に渡る厳しい戦いを通じて、アスリートたちは人体の限界をプッシュした。そのため、鍬崎竜也、クリスチャン・コバレフスキ、ドミニク・ディトマソを含む一部のアスリートが怪我で棄権となった。最終的に3日目の《Live Challenge》は以下の組み合わせとなった。
ヒート1
- シェイ・ルドルフ
- ミランダ・ティブリング
- エラ・ブシオ
- ボブ・リース
ヒート2
- エリス・トーホール
- ノア・ディオルジーナ
- ディミトリス・“DK”・キルサニディス
ヒート3
- エフゲニー・“アーチー”・アロヤン
- シュテファン・ドリンガー
- リル・ルエル
ヒート4
- シドニー・オルソン
- エド・スコット
- トラヴィス・ヴァカーク
▶︎世界中から発信される記事を毎週更新中! 『新着』記事はこちら>>
関連コンテンツ