King of the Mountain: Mani Lettenbichler wins the Red Bull Erzbergrodeo.
© Philip Platzer/Red Bull Content Pool
モーターバイク エンデューロ

【Red Bull Erzbergrodeo 2022】結果&ハイライト

オーストリアの鉄鉱石鉱山で開催されたハードエンデューロ最重要イベントはマニュエル・レッテンビヒラーが制した。過酷なレースのハイライトを動画とテキストで振り返る。
Written by Paul Keith
読み終わるまで:8分公開日:
過去2回の【Red Bull Erzbergrodeo / レッドブル・エルツベルクロデオ】を3位・2位でフィニッシュしてきたマニュエル・レッテンビヒラー(ドイツ)が世界で最も過酷なハードエンデューロレースで素晴らしいパフォーマンスを見せ、史上初の父子2代優勝を成し遂げた。
マニュエルの父であるアンドレアス・レッテンビヒラーは同イベントのメインレースである【Red Bull Hare Scramble】で2015年に同時優勝を飾った4人のライダーのひとりで、当時のライダーたちは木々に囲まれた深くウェットな峡谷に設けられた新セクションに行く手を阻まれた。
【Red Bull Erzbergrodeo 2022】のリプレイをチェック!

【メインレース】レッドブル・エルズベルグロデオ

FIMハードエンデューロ世界選手権2022『レッドブル・エルズベルグロデオ』の様子をお届け。世界一過酷なオフロードレースとして名を馳せているレースの全貌を刮目して見よ。

“グリーンヘル(緑の地獄)” との異名が付けられていたそのセクションは、今年になって “モトレックス・ハイウェイ(Motorex Highway)” と名称を変えて復活。その巨大な障害物は、レッテンビヒラーが第22チェックポイントまで積み上げてきた5分のリードをほとんど帳消しにした。
モトレックス・ハイウェイに差しかかる前まで、レッテンビヒラーは【Red Bull Erzbergrodeo】の過酷なコースを難なくクリアしていた。上位ライダーたちがスタートで立ちのぼるダストの中をかき分けて進むのに手間取ったあと、レッテンビヒラーは最初の登坂区間を前にビリー・ボルト(英国)を抑えて首位に立ち、巨大な岩石群が山肌を覆う悪名高きテクニカルセクション “カールズ・ディナー(Carl’s Dinner)” の入口ではミハエル・ウォークナー(オーストリア)に対して5分のリードを築いた。
30分後、レースタイムが2時間を経過すると、レッテンビヒラーがカールズ・ディナーをクリアした一方、ウォークナーは過酷な暑さの中で後退し、マリオ・ローマン(スペイン)、トリスタン・ハート(カナダ)、アルフレッド・ゴメス(スペイン)、ボルトに先行を許す。
父アンドレアスに肩を並べる優勝を飾ったレッテンビヒラー
父アンドレアスに肩を並べる優勝を飾ったレッテンビヒラー
天にも昇る心地ですね。父と僕が揃ってこのレースを制したことはとても大きな意味を持ちます
マニュエル・レッテンビヒラー
その直後に待ち構えていたモトレックス・ハイウェイがレッテンビヒラーのリズムを狂わせた。山中の小川を駆け上がっていた彼は、滑りやすい植物に覆われたほとんど垂直に近い斜面を登る急峻な登坂セクションに直面した。
4回にも渡るアテンプトを経て、レッテンビヒラーは障害物をクリアできるラインを切り拓いたが、彼がセクションの反対側を下る頃には、ローマンがすでに丘の麓まで追いついていた。レッテンビヒラーのラインをそのまま辿ったローマンは最初のアテンプトでモトレックス・ハイウェイをクリアし、レッテンビヒラーの背後に迫る。
「モトレックス・ハイウェイには苦戦しました」とレース後にレッテンビヒラーは振り返り、さらに続けた。
「僕はあのセクションへ最初に到着したライダーでしたし、ラインが存在しませんでした。いくつものラインを試しましたし、数本の丸太をどかしました。これが後続のライダーたちを少し楽にさせてしまいましたね。このあとは余裕がなくなりました」
優勝へ向けて力走するレッテンビヒラー
優勝へ向けて力走するレッテンビヒラー
極めてタフな “ダイナマイト(Dynamite)” セクションではシェルコを駆るローマンがKTMファクトリーのレッテンビヒラーを追う展開となり、フィニッシュまで手に汗握る追走劇のお膳立てが整った。
レッテンビヒラーが新たな登坂に苦労しているように見えた中、ローマンはそこからわずか50ヤード(約45.7m)ほど後方でダイナマイトのスタート地点に到着。しかし、レッテンビヒラーはダイナマイトをクリアし、“レイジー・ヌーン(Lazy Noon)” での最後の登坂に向けてスロットル全開で加速していった。
レーススタートから2時間58分51秒後、レッテンビヒラーはフィニッシュラインを越えて見事に優勝を決めると同時に、前戦セルビアに続きFIMハードエンデューロ世界選手権 2022シーズン2連勝を記録した。
「レイジー・ヌーンをクリアしたときは “なんてヤバいセクションなんだ” と思っていました。ラストスパートはそれほど難しくなく、最高の気分でした。天にも昇る心地ですね。父と僕が揃ってこのレースを制したことはとても大きな意味を持ちます。今後、同じことを成し遂げる父子はそう多くは現れないでしょう」
2022シーズンの開幕戦を術後回復のために欠場したレッテンビヒラーの現在のフィットネスレベルは今シーズンの大きなアドバンテージになっている。
トロフィーを掲げるレッテンビヒラー、ローマン、ハートの3人
トロフィーを掲げるレッテンビヒラー、ローマン、ハートの3人

感動のフィニッシュ

ライダーたちの大半がまだ “ウォーターパイプ” の最初のチェックポイントに到達しようとしていた中、マリオ・ローマンはレッテンビヒラーから3分遅れでフィニッシュラインを越えて2位でフィニッシュした。
明らかに感極まっていたローマンは、レースウィークの始めに他界した祖父にこのリザルトを捧げた。イスラエルで開催された2022シーズン開幕戦【Minus 400】で優勝を飾っているローマンはタイトル争いに加わっている。
ローマンは選手権のタイトル争いで見逃せない存在
ローマンは選手権のタイトル争いで見逃せない存在
レースを終えたローマンは次のようにコメントした。
「まずまずのスタートを切りましたが、立ちのぼるダストの量が凄まじく、大幅に順位を落としてしまいました。森に入ったあとは冷静を保って自分のペースで走行し、ひとつずつポジションを上げ始めました。2位はこのイベントで僕が得られる最高の順位でした」
このレースは年を追うごとに難易度が増しています。もちろん、今回がこれまでで一番難しかったですね。トラック上にいくつかのサプライズが仕掛けられていたところが最もタフでした。土曜日に自分の足でトラックを歩き、すべてのセクションを把握したつもりでしたが、見落としていたセクションがいくつもありました」
もうひとつのサプライズは、トリスタン・ハートの活躍だった。このカナダ出身のエンデューロクロス・スターは米国のハードエンデューロシリーズで活躍しており、FIMハードエンデューロ世界選手権 2022シーズンも4戦にエントリーしている。ハートは “ダブルフォルト(Double Fault)” でスリップを喫しながらもリカバリーし、素晴らしいパフォーマンスを見せた。
彼はカールズ・ディナーでウェイド・ヤング(南アフリカ)、ボルト、ゴメスをかわして3番手まで順位を上げると、そのまま3位でフィニッシュし、カナダ人ライダー初の【Red Bull Erzbergrodeo】表彰フィニッシュを記録した。
3位表彰台を目指してカールズ・ディナーに挑むトリスタン・ハート
3位表彰台を目指してカールズ・ディナーに挑むトリスタン・ハート

豪華ゲストが参加

北米大陸からやってきて活躍を見せたのはハートだけではなかった。AMAグランドナショナル・クロスカントリー選手権8連覇を誇り、インターナショナル6デイズ・エンデューロでも優勝しているカイラブ・ラッセル(米国)がプロローグで最速タイムを叩き出した。
プロローグでは、過去に優勝を経験しているデビッド・ナイト(英国)とタディ・ブラジシアク(ポーランド)や、初参加となったオーストリアの英雄、元アルペンスキー選手のマルセル・ヒルシャーなど、他にも数多くの豪華ゲストが参加した。
元アルペンスキー選手のマルセル・ヒルシャーは初挑戦ながら目覚ましい成果を残した
元アルペンスキー選手のマルセル・ヒルシャーは初挑戦ながら目覚ましい成果を残した
ヒルシャーは日曜日のメインレースでも “ツェントラム・アム・ベルク(Zentrum am Berg)” や “マシン(Machine)” のビッグクライムを制して終盤の "カールズ・ディナー" でレースを終え、初挑戦ながら驚くべき結果を残した。また、ヤマハ製大排気量700ccアドベンチャーバイクで参戦したポル・トーレス(スペイン)も好パフォーマンスを見せた。
終始痛みに苦しみながらライディングを続けて、疲労困憊だったボルトは4位で完走した。昨シーズンのFIMハードエンデューロ世界選手権チャンピオンは今シーズンも暫定首位タイにつけていたため、右足と左手の怪我を抱えながらもこのレースウィークエンドに出場してタイトル争いの損失を最小限に抑える必要があった。
ボルトはレッテンビヒラーと同じくスタートに手間取って順位を落とし、カールズ・ディナーでは大きな転倒を喫したが、ゴメスやヤングの追い上げに耐え、ジャージもぼろぼろの状態で4位フィニッシュを記録し、貴重なポイントを獲得。選手権暫定首位の座を守った(首位タイはレッテンビヒラー)。
ボルトは苦戦しながらもポイントリーダーの座を守った
ボルトは苦戦しながらもポイントリーダーの座を守った
01

苦難のリカバリーを強いられたトップライダーたち

過去に【Red Bull Erzbergrodeo】で2勝を記録し、現在は自分のチームでガスガス製のマシンを駆るアルフレッド・ゴメスはウォークナーを抑えて5位で完走した。
20歳のオーストリア人ウォークナーは素晴らしい挽回を見せ、【Red Bull Erzbergrodeo】におけるオーストリア人ライダー歴代最高位を記録した。ウォークナーはそのパフォーマンスに相応しい熱狂的な声援を地元の観客から受けながら6位でフィニッシュラインを越え、ここにスターが生まれた。
共に南アフリカを代表する強豪ライダーとして知られるウェイド・ヤングマシュー・グリーンは下位に沈んだ。ヤングはホイールが曲がって手負い状態となったバイクを労わりながら完走した。
グラハム・ジャーヴィス(英国)は選手権首位タイとして今回のレースウィークエンドに臨んだが、彼が駆るハクスバーナ製マシンは、スタートからわずか数百メートルの鉱山底部でのチェイス中にエンジン浸水に見舞われた厳しいスタートから見事に挽回した。1時間以上の遅れを取ったジャーヴィスはレースに復帰するとタイムアップ前にモトレックス・ハイウェイをクリアし、さらに先へ進んだ。
ライダーたちは3週間のブレイクを挟み、イタリアで開催されるFIMハードエンデューロ世界選手権 2022シーズン第4戦【Red Bull Abestone】へ挑むことになる。