Adel 'Big Bird' Anouche lifts the trophy at Red Bull Kumite at the University of Pretoria's Rembrandt Hall, Pretoria, South Africa on July 2, 2023
© Tyrone Bradley/Red Bull Content Pool
eスポーツ

【Red Bull Kumite 2023】:Big Birdが優勝!

『ストリートファイター6』の世界最強プレイヤーたちが実力を競い合うレッドブル印の格闘ゲームトーナメントが南アフリカ・プレトリアで開催された。結果とハイライトをチェック!
Written by Ryan Collins
読み終わるまで:8分Published on
派手で勢いのある【Red Bull Kumite】ほど格闘ゲームの新時代の始まりにふさわしいトーナメントはない。
カプコンが『ストリートファイター6』をリリースしてからまだ約1ヶ月しか経っていないが、ファンとプロプレイヤーたちはすでに凄まじい勢いでプレイを積み重ねている。その中で、【Red Bull Kumite 2023】に世界を代表するプロプレイヤーたちが集結し、南アフリカ・プレトリアで実力を競い合った。
招待されたプロプレイヤーたちには、『ストリートファイター』シリーズのベテランプレイヤーから近年注目を集めるようになったニューカマー、大舞台で実力証明済みのローカルプレイヤー、さらには複数のタイトルで才能を発揮しているマルチプレイヤーまでが含まれていた。さらに、現地最終予選(Last Chance Qualifier / LCQ)の優勝者がここに加わった。
このように様々な才能がひしめき合っていたこのトーナメントを制したのは、UAE / アルジェリア出身のプレイヤー、Adel “Big Bird” Anoucheだった。すべての対戦が終わった今、南アフリカの激戦を振り返っていこう。
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1日目:現地最終予選

【Red Bull Kumite 2023】の初日は現地最終予選が開催された。現地最終予選の優勝者が2日目のメインイベントの出場権を獲得できる中、トップ8まではローカルプレイヤーの活躍が目立ち、南アフリカ出身のSekwele RamaubeSafraz “Ren” Muhammadがそれぞれ素晴らしいプレイを見せた。
トップ8は彼らの他に【Red Bull Kumite 2023】日本予選優勝者翔(かける)【Red Bull Kumite 2023】英国予選優勝者EndingWalkerなどで構成されており、最終的に翔とEndingWalkerがウィナーズファイナルへ進出。この対戦はJPのトリッキーなテレポートでEndingWalker を翻弄した翔が3-1で勝利し、LCQグランドファイナルへ進出した。
ルーザーズに落ちたEndingWalkerはルーザーズファイナルでローカルプレイヤーのRenに勝利してグランドファイナルの切符を手にし、翔との再戦を実現。グランドファイナルのEndingWalkerはリュウを選択して意表を突き1本目を先取することに成功するが、翔の準備は完全に整っていた。
EndingWalkerのエドモンド本田へのさらなる変更はそれなりに効果的だったが、翔のプレッシャーには耐えられなかった。結局、再戦も翔が勝利し、2日目のメインイベントへ駒を進めることに成功した。
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2日目:メインイベント

メインイベントの1回戦ではそれまで見たことがない迫力の『ストリートファイター6』の対戦が繰り広げられた。シングルエリミネーション方式が採用されていたため、“負ければ終わり” というプレッシャーがプレイヤーたちの集中の邪魔をしていた。
William “Leffen” HjelteときどボンちゃんガチくんBenjamin “Problem X” SimonChrist “Akainu” OnemaRicardo “Mono” RomanLeevy “Oil King” Linなどが出場した1回戦は、すべてのプレイヤーが危険な匂いを放っていた。
『ストリートファイター6』がリリースされた直後で、準備する時間がほとんどなかったため、Big Birdにとって【Red Bull Kumite 2023】はキャリア最大のチャレンジとなった。しかも、1回戦の彼は不運にも長年の友人でトレーニングパートナーでもあるAmjad “AngryBird” Alshalabiと対戦することになった。
Angry Bird vs. Big Bird

Angry Bird vs. Big Bird

© Mpumelelo Macu/Red Bull Content Pool

Angry Birdがケンで攻撃的なプレイを選択すると、Big Birdはマリーザでのパワープレイを選択。お互いの手の内を知り尽くしているため、Big Birdは勝つために新しい戦術を用意しなければならなかった。しかし、手に汗握る展開が続いたあと、最後はライバルから勝利を奪った。
トーナメント終了後、Big Birdは次のように振り返っている。
親友との対戦だったので辛かったですね。ですが、僕たちのどちらかが優勝するというのが僕たちの目標ですので、Angry Birdは自分が負けたことが無駄にならなかったことを喜んでくれています」
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クォーターファイナル

Big Birdは次に中国出身のJP使いKuang Zhenと対戦することになった。Zhenは、今年2月に開催されたカプコンカップIXでLCQを勝ち上がり、さらにはEVO 2022王者カワノなどを含むトッププレイヤーたちから次々と勝利を奪ってメインイベントで準優勝を記録したことで大きな話題となったプレイヤーだ。
しかし、プレトリアではBig Birdが上回っていた。ラウンドを重ねるたびにZhenが馴染んでいき、Big Birdが徐々に押し込まれていくように思えたが、0ドットからの逆転などネクストレベルのプレイで粘りを見せたBig Birdがセミファイナルへ駒を進めた。
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セミファイナル

多くのファンにとって、セミファイナルでのBig Birdと翔の対戦は “優勝者を決める対戦” だった。
Big Birdは近年注目を集め続けており、ビッグトーナメントで安定した結果を出している他、長時間の対戦やファンとの交流を展開している配信でも人気を得ているトッププレイヤーだ。しかし、日本予選で並みいるトッププレイヤーたちから勝利を奪って南アフリカ行きの切符を手にしていた翔もBig Birdと同レベルに位置している。
序盤は、翔のJPがマリーザの距離で優位に立っている印象で、マリーザのグラディウスが止められるシーンが散見された。しかし、Big Birdの調子が上がり始めるとすべてが変わり始める。
Big Birdは攻撃の選択肢を入れ替えながら翔のアムネジアに対応していき、翔に対するすべての咎めをアドバンテージとして活かしていった。さらにはダメージを最適化しつつ、ビッグプレイが出せるタイミングを逃さなかった。このようなBig Birdを相手に翔は力が及ばず、1本取るのが精一杯だった。
こうしてマリーザマスターのBig Birdがグランドファイナルに駒を進め、対戦相手が決まるのを待つことになった。
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グランドファイナル

Big Birdのグランドファイナルまでの道のりは平坦ではなかったが、もうひとりのファイナリスト、Christ “Akainu” Onemaの道のりも同じだった。
フランス出身のAkainuはガイルをメインに据えて、LeffenMonoOil Kingとの激戦を乗り越えてグランドファイナルへ駒を進めていたため、Big Birdは勢いに乗るAkainuを相手にしなければならかった。
AkainuとBig Birdはお互いの限界をプッシュした

AkainuとBig Birdはお互いの限界をプッシュした

© Tyrone Bradley/Red Bull Content Pool

2日目最後の対戦は両プレイヤーが限界までプッシュする展開となった。まず、AkainuがいきなりBig BirdからパーフェクトKOでラウンドを奪い、勢いに乗っていることをあらためて示すと、スピードを活かして上手く距離を取ってBig Birdからラウンドを連取し、1-0にする。
しかし、2本目はBig Birdが盛り返す。Big Birdはソニックブームのパターンを読み切るとマリーザのアーマーを活かして距離を詰め、自慢の火力でパワフルにリベンジを決めた。
ここから先は雪だるま式にBig Birdが強さを発揮していく。ラウンド開始直後のドライブインパクトでAkainuにプレッシャーをかけたり、画面端に追い込んでは脱出を狙うAkainuを冷静に仕留めたりと、Akainuの行動のほとんどすべてを読み切ったBig Birdは5本連取に成功し、5-1【Red Bull Kumite 2023】王者となった。
「信じられない気持ちです。現実ではないみたいです。本当に嬉しいですね。【Red Bull Kumite】がアフリカで初めて開催されましたが、僕はアルジェリア出身です。自分の大陸で開催されたトーナメントで優勝できたのは最高ですね」
このように振り返ったBig Birdにとってこの勝利は他の意味も持っている。過去の【Red Bull Kumite】で優勝を逃し続けてきたあと、新時代の始まりと同時にトロフィーを手にしたことは、彼が “基準” になることを意味する。
【Red Bull Kumite 2023】が終わった今、すべての注目がBig Birdに集まっているが、彼の目はEVO 2023を見つめている。今回の彼のパフォーマンスが今後の彼のパフォーマンスを示していたとするなら、EVO 2023での彼は準備がさらに整っているはずだ。Big Birdは次のように続けた。
「次はEVO 2023です。世界最大の格闘ゲームトーナメントですし、今年はほとんどすべてのタイトルで過去最高のエントリー数を記録しています。『ストリートファイター6』だけでも5,500人以上が参加することが見込まれていますので持久力が試されることになりますが、僕たちはプロプレイヤーですので戦う準備は整うと思います」
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