自慢の仕事車でトラックレースに参戦
世界大会でも馴染みのあるレースのなかに、CMWC開催都市のベロドローム(自転車競技場)で行われるトラックレースがある。普段仕事車としてメッセンジャーが公道で使っている固定ギアを、本来の場所であるバンクで乗って存分にスピードを競い合う。
海外のベロドロームは、整備が整った本格的なレース場から、ローカルな学生用の練習に使われているような古い競技場など様々である。個人的には、少し古臭い、荒れた感じのノスタルジックなベロドロームが好きだったりする。パリでのトラックレースは「ベロドローム・ド・ヴァンセンヌ」という1884年に開場され、パリオリンピックの閉会式や、自転車競技が行われた由緒ある競技場で行われた。
ちなみに、2009年に東京で行われたCMWCでは、京王閣競輪場を借りてレースをした。競輪は日本ならではの競技であり、固定ギアに乗る海外の人達も皆知っている。伝統的な競輪場を走る事に、多くの人がエキサイトしていた。
観客席をぎっしり埋めたメッセンジャー達が、それぞれ楽しんでいる姿を一望できる。この光景が見れるのも、ベロドロームの好きなところ。
メッセンジャーでよくやる儀式『みんなで鼻タバコ』。景気付けみたいな感じらしい。吸う前に、お祈りみたいに一言添えてから皆で一斉に吸うのだが、鼻がスーっとして目が覚める。
メッセンジャースナップ
アーレイキャットで観光
ベロドロームのトラックレースの後は、パリの観光スポットをめぐるアーレイキャットへ。アーレイキャットとは街中でチェックポイントを決めて、タイムを競うストリートレースのことだ。今回は「Burn the Tourist Alleycat」と命名されていた。このレースで全てのコースを回っただけで、ツアーリストは完全燃焼してしまう。そんなレースだ。
アーレイキャットに関わらず、メッセンジャーの海外での移動はほぼ自転車。観光については全くの無計画で、その時の成り行きになる。特にショッピングをして回るような一般的な観光は一切しないが、その土地の空気を感じながら、町中を走り回り、地元のメッセンジャー達と遊ぶのがメッセンジャーなりの観光になる。だが、僕らにとって、それ以上の観光はない。まさに自転車便的観光術だ。
『Burn the Tourist Alleycat』パリの観光スポット8箇所を巡るスピードツアー
まず酒を買いに向かい、最初のチェックポイントでドロップアウトして、あとはレースを観戦するのがSLOW SQUADの定番スタイル。
パリでの時間はこんな風に流れていった。隣には常に仲間がいて、いつもふざけあっている。表には出さないが、心の奥にある充実感を僕はしっかりと噛みしめていた。
■記事協力
最新のバイシクルカルチャー発信する『LOOP MAGAZINE』
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■Profile
Kosuke Aoki
ニューヨークでミクストメディアアート、ノイズバンドの活動を経て、帰国後2007年より東京にてメッセンジャーとなる。同時に東京のメッセンジャーシーンをはじめ、様々なアンダーグラウンドカルチャーの撮影を開始し、フォトグラファーとしてのキャリアをスタート。現在は活動の幅を広げ、世界各地のメッセンジャーやそれにリンクするカルチャーの取材を精力的に続けている。
【Instagram】toydog88




