Jarno Opmeer lifts the trophy for Oracle Red Bull Sim Racing at the 2025 F1 Sim Racing World Championship on 27 March, 2025
© Tom Platinum Morley/Red Bull Content Pool
F1

オラクル・レッドブル・レーシング:F1とeスポーツの融合

オラクル・レッドブル・レーシングはF1最強のシミュレーションレーシングチームを用意し、eスポーツで培ったスキルとテクニックをサーキットに活かしている。
Written by Paul Keith
読み終わるまで:9分Published on
オラクル・レッドブル・シム・レーシングは世界最速のシミュレーションレーシングチームだ。F1 Sim Racing World Championship防衛に成功し、4度目の同タイトルを獲得している同チームには、ワールドチャンピオンのヤルノ・オプメール(Jarno Opmeer)とフレデリック・ラスムセン(Frederick Rasumussen)、そしてiRacingワールドチャンピオンのセバスチャン・ジョブ(Sebastian Job)が所属している。
では、オラクル・レッドブル・レーシングは、このシミュレーションレーシングシーンでの成功を現実世界のF1にどのように活かしているのだろうか?
ヤルノ・オプメールとフレデリック・ラスムセン

ヤルノ・オプメールとフレデリック・ラスムセン

© Tom Platinum Morley/Red Bull Content Pool

01

世界最強のシミュレーションレーシングチーム

オラクル・レッドブル・レーシングはF1 Sim Racing World Championship創設時からeスポーツシーンで先頭に立ちながら、新しいファンをF1へ引き込んできた。
オラクル・レッドブル・シム・レーシングは英国・ミルトンキーンズにあるレッドブル・レーシング・ファクトリー内の専用eスポーツアリーナを拠点にレース活動を展開している。

オリジナル缶

レッドブル エナジードリンク

Red Bull Energy Drink
「F1チームがシミュレーションレーシングを始めた頃から、レッドブルはパイオニアであり続けてきました。レッドブルは最高のドライバーを揃えて勝利を目指しています。立ち上げ当初から素晴らしいチームを用意していたレッドブルは、常にシーンをリードしてきました」とジョブは説明している。
オラクル・レッドブル・シム・レーシングの施設はF1 Sim Racing World Championshipの会場としても使用される

オラクル・レッドブル・シム・レーシングの施設はF1 Sim Racing World Championshipの会場としても使用される

© Tom Platinum Morley/Red Bull Content Pool

02

F1の方法論をeスポーツに活用

オラクル・レッドブル・レーシングはF1で採用しているテクノロジーと戦略アプローチをeスポーツにも持ち込んでいるため、オラクル・レッドブル・シム・レーシングはオラクルのクラウドベースのコンピューティングインフラリアルタイムデータダッシュボードラップ分析を使用して、ドライバーたちのパフォーマンスを向上させることができている。
「オラクル・レッドブル・シム・レーシングのために開発したすべてのツールは、F1で得た知見を活用したものです」とオラクル・レッドブル・レーシングのテクニカル・パートナーシップ・エグゼクティブのダン・スミス(Dan Smith)は説明している。
マックス・フェルスタッペン

マックス・フェルスタッペン

© Rob Smalley/Red Bull Content Pool

ワールドチャンピオンに4回輝いているマックス・フェルスタッペンもeスポーツを支持しているF1ドライバーのひとりで、次のように語っている。
「シミュレーションレーシングでの私は現実と同じドライビングをしています。シミュレーションレーシングでは、ステアリング、ブレーキング、スロットルの入力データを見て、改善・修正できる点を確認できるので、それらをレース戦略に活かしていきます。シミュレーションレーシングは現実世界と同じなのです」
「ですので、オフシーズンの自宅でもドライビングを続けることができます。シミュレーションレーシングではGPマシンやプロトタイプマシンを選ぶときもありますが、ドライビングから得られる感覚や興奮は同じです。ここが気に入っていますね」
オラクル・レッドブル・シム・レーシングに対して肯定的なフェルスタッペンは、自分でVerstappen Sim Racingも運営している。Verstappen Sim Racingもトーナメントに参戦している世界トップレベルのシミュレーションレーシングチームで、フェルスタッペンのF1での経験を活かしながらドライバーとチームを育成している。
Quotation
モーションプラットフォームを採用しているので足元でマシンが動いている感覚が得られます。現実世界のマシンと同じように、臀部から様々な情報が伝わってくるのです
セバスチャン・ジョブ
03

シミュレーターとシミュレーション

レッドブル・レーシングはシミュレーションレーシングで得たスキルと経験をサーキットでのパフォーマンス向上に活かしている。オラクル・レッドブル・シム・レーシングのドライバーたちはF1チームでも重要な役割を担っているのだ。
Verstappen Sim Racingのドライバーとしても活動しているジョブは「レッドブル・レーシングは、自分たちのシミュレーションレーシングドライバーたちをF1チームのシミュレータードライバーとしても起用しようとしています。このような取り組みをしているF1チームは他にいません」と説明している。
ファクトリー内に置かれている最新シミュレーターは、どのF1チームにとってもサーキットでの成功に不可欠な要素となっており、その正確なフィードバックが現実世界のレーシングに応用されている。ジョブが続ける。
「私たちが現在使用しているシミュレーターは素晴らしいですよ。本物をドライブする感覚をこれよりリアルに得ることはできません。本当にドライブしているようです。唯一不足しているのはGフォースですね。モーションプラットフォームを採用しているので足元でマシンが動いている感覚が得られます。現実世界のマシンと同じように、臀部から様々な情報が伝わってくるのです」
セバスチャン・ジョブ

セバスチャン・ジョブ

© Andy Parsons/Red Bull Content Pool

04

AIとシムドライバーから得られる効果

F1チームのストラテジストたちは、Oracle Cloud Infrastructure(OCI)上で数十億回のAIレース戦略シミュレーションを実行し、ドライバーのフェルスタッペンとアイザック・ハジャーが勝利できるチャンスを創出している。
AIは人間の労働量を大幅に削減している。「これまではドライバーたちが何時間もシミュレーションに取り組み、最善のセットアップを見出していました」と語るのはオラクル・レッドブル・シム・レーシングのeスポーツリードを担うジョー・ソルティシック(Joe Soltysik)だ。
「AIはF1ドライバーのために短時間で数百回のシミュレーションを行えます。ドライバーたちのドライビングスタイルを考慮して、対象サーキットにおけるベストセットアップをはじき出しているのです。ドライバーを何人も用意して同時にサーキットを走らせているようなものです。AIによって何百時間も節約できています」
シミュレーションレーシングを楽しむ角田裕毅

シミュレーションレーシングを楽しむ角田裕毅

© Ian Witlen/Red Bull Content Pool

F1チームのストラテジストたちは、レッドブル・シム・レーシングがテストするプログラムを選択しているが、このときにもシミュレーションドライバーたちは重要な役割を与えられており、レース戦略通りのドライビングをしたり、チームのリザーブドライバーを務める角田裕毅のためにシミュレーターをセットアップしたりしている。
さらに、シムレーションドライバーたちをエンジニアが支えており、OCIを活用してストラテジスト、ドライバー、ピットウォールとフィードバックを共有している。
つまり、 F1マシンがガレージから出てサーキットへ向かう前の段階で、レッドブル・シム・レーシングが無数のセットアップやレース戦略、コンディションを試しているため、F1チームは最適なセットアップを見出すまでの時間を大幅に節約できているのだ。
これはレースウィークエンドを通じて行われており、レッドブル・シム・レーシングはトラックサイドに陣取って予選までのプラクティスセッションを通じてテストを繰り返している。
レッドイブル・リンクでのセバスチャン・ジョブ

レッドイブル・リンクでのセバスチャン・ジョブ

© Getty Images/Red Bull Content Pool

05

レッドブル・ジュニアチームとの連携

フェルスタッペンはかねてからシミュレーションレーシングのファンで、自宅のシミュレーションギアを活用してドライビングスキルを磨いている。
フェルスタッペンの存在は、F1のグリッドにおける世代の移り変わりを表している:ルイス・ハミルトンが子どもだった頃、シミュレーションレーシングは存在していなかった(自分の世代を圧倒したハミルトンは、ラジコンカーで2度のチャンピオンに輝いた)。
しかし、現在は若手ドライバー全員がシミュレーションレーシングをトレーニングルーティンに取り入れている。彼らはシミュレーションレーシングをレースクラフトの微調整とF1サーキットの習熟に活用している。
F1ではサーキット走行とテストの時間が限られているため、ファクトリーのシミュレーターは、ニコラ・ツォロフのような若手ドライバーたちにとってF1マシンとレースに慣れるためのパーフェクトな選択肢となっている。シミュレーターの大きなアドバンテージは、自分やマシンをリスクに晒すことなくリアルな環境で限界をプッシュできるところにある。
ここでもシミュレーションドライバーたちは重要な役割を担っており、ジュニアチームのドライバーたちがファクトリー到着後すぐにシミュレーターを使用できるようにセットアップを担当している。
グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードでRB8をドライブするセバスチャン・ジョブ

グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードでRB8をドライブするセバスチャン・ジョブ

© Getty Images/Red Bull Content Pool

06

フェアな競争を創出

カートレースの1シーズンにかかる費用は一般家庭の予算を大幅に上回る。親は大金と時間を子のために費やす必要があるのだ。しかも、その子がブレイクしたり、スポンサーから興味を持たれたりする保証はまったくない。さらに言えば、スキルを高めるために必要なカートレース施設やハイレベルな競争が自宅付近にない子も少なくない。
しかし今は、シミュレーションレーシングが若い世代がトップへ到達できるルートを提供している。彼らは自分たちのスキルを磨き、ポテンシャルを発揮できる場所を得られているのだ。ジョブが説明する。
「私たちにはカートのトップレベルへ到達するために必要な資金がありません。そのため、コストがかからないシミュレーションレーシングへ進みました。ここで活躍すれば現実世界のモータースポーツに何かしらの形で関われるようになるかもしれないと思ったのです」
その選択は正しく、ジョブはフェルナンド・アロンソのシミュレーションレーシングチームと契約して活動を始めたあとレッドブル・レーシングへ移った。
レッドブル・レーシングはジョブとビジョンを共有しており、現実世界のレーシングマシンのコックピットにも彼を座らせた。ポルシェGT3からスタートした彼は、最終的にはセバスチャン・ベッテルを優勝させたRB8でレッドブル・リンクの周回も経験している。
フェルスタッペンは、スポーツとしてのシミュレーションレーシングの成長にひと役買っているが、彼はシミュレーションレーサーたちをサーキットへ連れ出すことも興味を示している。
「実現は難しいですが、私が今後手がけたいプロジェクトのひとつは、シミュレーションレーシングのドライバーたちにGTマシンか耐久レース用マシンをドライブしてもらうことです。これが実現すればいくつもの可能性の扉を開くことになるでしょう」
▶︎RedBull.comでは世界から発信される記事を毎週更新中! トップページからチェック!

関連コンテンツ

マックス・フェルスタッペン

F1最年少優勝記録を含むいくつもの記録更新を続けながらドライバーズタイトル4連覇を達成したオランダ人ドライバー

オランダオランダ

アイザック・ハジャー

F1 2026シーズンのオラクル・レッドブル・レーシングでRB22のステアリングを握る若きフランス人ドライバー

フランスフランス

Nikola Tsolov

The young Bulgarian racer has been winning titles since he was 10 years old. Now racing in F2, he continues to improve his skills.

ブルガリアブルガリア

角田 裕毅

Oracle Red Bull Racing に所属する日本人F1ドライバー

日本日本