ピーナッツバターを塗ったパンは炭水化物とプロテインが豊富なためエクササイズ後に効果的
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ランニング

【全ランナー必読】ランニング前・中・後の栄養補給ガイド

英国人スポーツ栄養士アレクサンドラ・クックが、5kmランナーからフルマラソンランナーまでのあらゆるランナーのパフォーマンス向上に役立つランニング用栄養補給プランを用意してくれた。
Written by Alexandra Cook
読み終わるまで:12分最終更新日:
ランニングのパフォーマンス向上において栄養補給は最後のパズルピースだという共通認識が存在するように思えます。新たなランニングチャレンジへ向けた準備を始める時は、最初は新しいシューズ、次が新しいトレーニングプラン、そして最後がランニング前後の栄養補給プランという順番に落ち着きがちです。
ですが、最初からランニング前後の栄養補給プランについて考えてみるのはどうでしょうか? トレーニングの初日から栄養補給プランを組み入れてみるのはどうでしょう? ランニング前後の栄養補給にほんの少しの変化を加えるだけでも自分のフィーリングとパフォーマンスが高まる可能性があります。
では、どのように栄養補給について考えていけば良いのでしょうか?
栄養補給プランは自分の体格・体重・トレーニング量に合わせる

栄養補給プランは自分の体格・体重・トレーニング量に合わせる

© James Mitchell / Red Bull Content Pool

基本事項

スポーツ栄養学は難解ではありません。健康的でバランスの取れた食事、これからすべてが始まります。また、自分の食事を日記に記録していけば、改善できる部分を特定する助けになるでしょう。食事について最初に自問すべき基本事項は、「毎日3食摂っているか?」、「水分は十分補給できているか?」、「食事からトレーニングまで十分な間隔を開けているか?」の3つです。
食事に関するこれらの基本事項をすべて確認したら、次は現在取り組んでいる、またはこれから取り組もうとしているトレーニングに合わせて栄養補給プランを調整していきましょう。まず、毎回の食事に取り入れるべき炭水化物プロテイン(タンパク質)などの “摂取量” を算出するためには、トレーニングの量、自分の体格・体重を知っておく必要があります。
こちらのガイドラインに従うと、トレーニングランが1時間以内の場合は、1日に体重1kgにつき5~7g炭水化物を摂取する必要があります。5kmか10kmをメインレースにしているならこの量を目安にしていれば問題ありませんが、さらに長いレースに向けてトレーニングしている(トレーニングランが1時間を超える)なら、1日に体重1kgにつき6~10gの炭水化物を摂取する必要があります。
次はプロテイン(タンパク質)です。プロテインは筋肉の修復とリカバリーに必要な栄養素として知られており、こちらのガイドラインに従うと、定期的に運動をしている成人、または常に競技や大会に参加しているアスリートなら、筋肉のリカバリーを促進するために1日で体重1kgにつき1.2~2.0gのプロテインを摂取する必要があります。トレーニング量の増加に合わせてプロテイン摂取量も増やしていきましょう。
1日の目標摂取量の目安を把握したあとは、特定の食事や食料に含まれている炭水化物とプロテインの量を確認していきましょう。目標値に到達するためには毎日 “何” を “どれだけ” 食べれば良いのかが理解できるようになります。最初は多少面倒に感じるかもしれませんが、特定の食事や食料に含まれている量が大まかに把握できれば、栄養補給プランを簡単に策定できるようになります。
重点的に意識するべきはエネルギー量(熱量 / カロリー量)です。走り切るために必要なエネルギー量を摂取する必要があります(毎日摂取すべきカロリー量についてはこちらに掲載されている計算式を使えば簡単に算出できます)。エネルギー量を調整することなくトレーニング量だけを増やしていけば、パフォーマンスが落ちていくばかりか、総合的な健康が悪化する可能性もあります。
トレーニング前のレッドブル・エナジードリンク缶は血糖値上昇に効果的

トレーニング前のレッドブル・エナジードリンク缶は血糖値上昇に効果的

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ランニング / エクササイズ前

正しい栄養補給プランは、正しい食事や食料を用意するだけでは策定できません。正しい時間に摂取する必要があります。これを実現するためには「時間に余裕を持つ」が重要になります。
こちらの研究は、持久系エクササイズの3~4時間前に炭水化物を摂取すれば肝臓と筋肉のグリコーゲン(体内に貯蔵されるブドウ糖 / グルコース)の量が増え、結果的にパフォーマンスが高まることを示しています。
トレーニング前の食事が朝食のような軽いメニューなら、ここまで長い間隔を開けなくても構いません。食事を消化し、身体を動かせるだけのエネルギーを体内に用意できるだけの間隔が開いていればOKです。
エクササイズの45~60分前にカフェインを摂取することもパフォーマンス向上の助けになります
アレクサンドラ・クック(スポーツ栄養士)
そしてその食事メニューには、十分な炭水化物適量のプロテインと脂肪が含まれているべきです。プロテインと脂肪は炭水化物よりも消化に時間がかかるので、エクササイズ前に大量に摂取してしまうと消化しながら走ることになるため、胃腸の調子を崩してしまう可能性があります。ランニング前に最適な食事メニューとしては、新鮮なジャガイモとサラダを添えたフリッタータや、牛乳・ナッツ類・フルーツ類を混ぜた自家製グラノーラなどが挙げられます。
フルーツとミルクを加えたグラノーラはエクササイズ前の朝食に最適

フルーツとミルクを加えたグラノーラはエクササイズ前の朝食に最適

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ランニングの1時間前にエネルギーを追加して “エネルギー満タン” でスタートしたい人もいるでしょう。そのような場合は、炭水化物が多く含まれている軽食やドリンクを摂取して血糖値を高めておきましょう。簡単な例を挙げれば、レッドブル・エナジードリンク缶(250ml)には炭水化物が28g含まれていますし、普通サイズのバナナ1本には約27g、シリアルバーには約16gの炭水化物が含まれています。これらすべてはランニング直前の優れた選択肢です。
エクササイズの45~60分前にカフェインを摂取することもパフォーマンス向上の助けになります。多くの人が体重1kgにつき5mgのカフェインを摂取して効果を得ていますが、体重1kgにつき2~3mgのカフェインでも、パフォーマンスが向上することが明らかになっています。簡単な例を挙げると、シングルエスプレッソ、レッドブル・エナジードリンク缶(250ml)、一般的なカフェイン含有エナジージェルにはそれぞれ約80mgのカフェインが含まれています。
血糖値を高めておけば体内の炭水化物を温存できる

血糖値を高めておけば体内の炭水化物を温存できる

© Brian Bielmann / Red Bull Content Pool

ランニング / エクササイズ中

60分のエクササイズで感じる疲労の原因はエネルギー不足にあるということは広く知られています。人体は炭水化物と脂肪をエネルギー源としており、両方を組み合わせて使用していますが、通常は、炭水化物“第一エネルギー源” として使用されています。
人体には、血中にグルコース(ブドウ糖 / 糖分)が少量含まれている他、先述した通り、肝臓と筋肉内に同物質がグリコーゲンとして貯蔵されています。ですが、最大でも90分のエクササイズができる量しか貯蔵できません。ですので、貯蔵されている糖分が底をつき始めると、筋肉と脳が燃料不足になり、疲労およびガス欠状態に陥ってしまいます。長時間のエクササイズで炭水化物を補給し、血糖値を高めておく必要があるのはこれが理由です。
【補給のタイミング】
長距離ランニングでは、体内のグリコーゲン量を多くキープできていれば、それだけエネルギー消費効率を高くキープできます。そして、血糖値を高くキープできていれば、体内に貯蔵されているグリコーゲンをエネルギー源に使用するタイミングを遅らせることができます。これを前提に考えると、できる限り早いタイミングで血糖値を高めるアクションを起こすことが重要だということが理解できます。
エナジージェルやエナジードリンクをエクササイズ開始から60分後に摂取しても、すでに体内のグリコーゲンはかなり減ってしまっているので、早いタイミング(開始約20分後)での摂取がカギになります。この時点でエネルギー不足や疲労を感じている確率は低いですが、早めに自分のエネルギータンクを満タンに戻しておけば、疲労や胃腸の調子などが原因で補給が難しくなる(失敗する)可能性が高まるランニング後半の助けになります。
空腹や渇きを覚えていなくても早いタイミングで補給する

空腹や渇きを覚えていなくても早いタイミングで補給する

© Predrag Vuckovic for Wings for Life World Run

【補給する炭水化物量】
ランニングが1時間以上・高強度(10kmランやハーフマラソンなど)または長時間・中強度(フルマラソンなど)なら、ランニング中の炭水化物の補給は非常に効果的です。こちらの研究は、1時間ごとに炭水化物を30~60g補給すれば、血中のグルコース量を高くキープしてエクササイズのパフォーマンスを向上できることを示しています。
しかし、摂取できる量には上限があり、グルコースのような炭水化物源1種類を人体が1時間で摂取できる最大量は約60gです。しかし、マルトデキストリンフルクトースを混ぜるなど、炭水化物源を複数種類にすることで、1時間の最大摂取量を約90gまで増やせます。
エナジージェルやエナジードリンクをエクササイズ開始から60分後に摂取しても、すでに体内のグリコーゲンはかなり減ってしまっています
アレクサンドラ・クック(スポーツ栄養士)
現実的には、これはかなりの摂取量になるので、自分の身体をこの量に慣らしておかない限り、胃腸の調子を崩してしまう可能性があります。ですが、フルマラソンのような2時間半を超えるランニングをする場合、このような炭水化物源の組み合わせは非常に効果的です。
上記よりも炭水化物含有量が少ない市販のスポーツ栄養補給製品でも胃腸の調子を崩してしまう可能性はゼロではないという意見があることにも触れておくべきでしょう。しかし、希望は残されています。
こちらの研究は、1時間につきたった16gの炭水化物でも、ただの水を補給しているよりもパフォーマンスが14%高まるという結果を示しています。また、ただの水以外を身体がどうしても受け付けない人もいるかと思いますが、炭水化物含有ドリンクで口をすすぐだけ(飲み込まずに吐き出す)だけでもモチベーションを司る神経系に刺激を与えられるという研究結果が出ています。これなら身体を痛めませんので試してみましょう。
パフォーマンスを向上させたいなら丁寧なリカバリーを心掛けたい

パフォーマンスを向上させたいなら丁寧なリカバリーを心掛けたい

© AzmanJaka / E+ / Getty

ランニング / エクササイズ後

長時間のトレーニングランやレースを終えたあとは何もしないで身体を休ませたくなりますが、正しい栄養補給をすれば、コンディションを速やかに元に戻せる上に、そのような高負荷の運動量に身体を順応させることもできるので、自分をさらに強化することもできます。
ランニング / エクササイズ後の栄養補給は非常に重要な役割を担っています。 “何” を “いつ” 摂取するかがリカバリーの速度と効果を左右します。エクササイズ後は速やかなリカバリーがカギになります。なぜなら、速やかにリカバリーできれば、その分だけ次のトレーニングの負荷・強度を高められるからです。
ランニング / エクササイズ後のリカバリープロセスで重要な栄養素も、炭水化物とプロテインです。どちらも必須ですが、プロテインの方がリカバリーと順応により大きく関わってきます。ランニング直後にプロテインが15~20g含まれている軽食やドリンク(例:牛乳500ml)を摂取し、その後の食事やドリンクにも同量のプロテインを含ませることをルーティン化しましょう。
炭水化物もプロテインと同じくリカバリープロセスに欠かせない重要な栄養素です。負荷・強度が非常に低いランニングやエクササイズでない限り、人体は体内の炭水化物をエネルギー源に使用します。ですので、ランニングやエクササイズを終えたあとは ― 長距離のランニングや長時間のエクササイズのあとは特にですが ― 、体内の炭水化物量はゼロに近くなっています。
次のランニングやエクササイズまでの間隔が24時間以上開いているなら、終了後1時間以内に炭水化物が豊富に含まれている軽食やドリンクを摂取し、その後の食事やドリンクにも同量のプロテインを含ませれば、推奨される炭水化物摂取量をカバーできます(1日に複数回トレーニングをする場合は、リカバリーに充てられる時間が短くなるため、より綿密なプランを用意する必要があります)。
エクササイズ後に向いている軽食としては、バナナとオーツのスムージーが挙げられます(炭水化物約50g・プロテイン約20gが含まれています)。
ピーナッツバターを塗ったパンは炭水化物とプロテインが豊富なためエクササイズ後に効果的

ピーナッツバターを塗ったパンは炭水化物とプロテインが豊富なためエクササイズ後に効果的

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水分補給も非常に重要です。ランニングやエクササイズを終えたあとは尿の色が濃くなる確率が高いですが、水分を積極的に補給して、数時間後に尿の色をクリアに戻すようにしましょう。尿の色が薄くなれば、水分が補給され、体内の水分量が元に戻ったことになります。
長距離のランニングや長時間のエクササイズのあとは体内の炭水化物量がゼロに近くなっています
アレクサンドラ・クック
最後に、ランニング後はフルーツ野菜を忘れずに摂取しておきたいところです。身体を動かすと体内に炎症とストレスが生じるので、抗酸化作用(活性酸素 / フリーラジカルを抑える作用)と抗炎症作用のある食料を摂取して、リカバリープロセスの効率を高めるようにしましょう。
色の濃い野菜やフルーツは抗酸化作用が高いので、このような種類の野菜やフルーツを1日に最低5回は摂取しましょう(回数が多いほどベターです)。フィッシュオイル(魚油)に含まれる良質な脂肪にもハードなランニングやエクササイズで生じる炎症とストレスと軽減する効果があります。
レッドブル・エナジードリンク缶(250ml)には炭水化物が約28g含まれている

レッドブル・エナジードリンク缶(250ml)には炭水化物が約28g含まれている

© Ian Corless / Red Bull Content Pool

ランニング栄養補給ミニヒント集

  • 科学的根拠のある栄養補給ガイドラインが多数存在しますが、自分に合わせてアレンジしましょう。ガイドラインが何を示していようとも、自分の体調と胃腸を優先しましょう。
  • 長距離のトレーニングランで様々な栄養補給アイテムを試し、自分に合っているものを見極めましょう。
  • まずは1時間で炭水化物20~30gを摂取するところから始め、1時間で50~60g摂取できるようになるまで徐々に増やしていきましょう。最初は慣れないかもしれませんが、胃腸は徐々に順応するので時間をかけて増やしていきましょう。
  • スマートウォッチやスマートフォンで20~30分のリピートタイマーをセットし、補給のタイミングを覚えていきましょう。
  • 疲労が蓄積していない早めのタイミングで補給して、炭水化物をスムーズに摂取していきましょう。スタートから数時間経ってしまうと疲労で補給が難しくなります。
  • レース当日は、新しい物や方法を使わないようにしましょう。
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