フォーミュラ

スーパーGTはエアコン完備。灼熱スーパーフォーミュラは2kgダイエット!?

Written by Tsuyoshi Kawarada
レーシングドライバー・平川 亮がスピードの裏側を語るスポーツコラム 『BEHIND THE SPEED Vol.05』 (毎月公開)。スーパーGT/スーパーフォーミュラ
Ryo Hirakawa
Ryo Hirakawa

灼熱のコクピットと思いきや……?

スーパーGT第5戦富士は、スタート時の気温が33℃、路面温度は50℃をこえる猛暑になりました。さぞ、厳しい環境でレースを戦っていると思いきや、実はマシンの中は涼しいんです。GT500のマシンにはエアコンがついているからです。エアコンのついていないGT300のドライバーの方が、"暑さ"に対してはきついかもしれません。
真夏の富士やタイは、運転しているよりもガレージやグリッドにいる時のほうが暑いほど。特にタイは立っているだけで体力を消耗します。いつもはグリッドにいってチームメイトやエンジニアと話したりしますが、タイでレース後半のスティントを担当する場合はグリッドには行きません。エアコンの効いた部屋でゆっくりして体力を温存しておきます。猛暑のタイではレースクイーンの方たちのほうが体調管理は大変かもしれませんね。
夏場のレースで一番ツラいのは、スタートドライバーを務める時にマシンに乗り込んでレースの開始を待っている時間。10分間ぐらいなのですが、エアコンが入っていない状態のコクピットに座っているだけで、かなりヤバイです。

エアコンを付けない車内は60℃超え

エアコンをつけるとエンジンのパワーがちょっとだけ落ちるらしいのです。ドライバーが体感できるほどではありません。エアコンがないと、車内は60℃ぐらいまで上昇すると言われています。暑くてフラフラになりながら走っているよりは、涼しい中で集中してドライビングしたほうが結果的に速く走れるということですね。
実際、初めてスーパーGTにフル参戦した2015年、タイで開催されたレースの時に前のクルマを抜こうとしてエアコンを消して走ったことがありました。でも、大した効果はありませんでした。前のマシンを抜けなかっただけでなく、暑くて大変な思いをしましたし、それ以降はレース中にエアコンを消すことはないです。
予選の時だけはエアコンをオフにしていますが、3〜4周しか走行しませんし、すごく集中しているので暑さは気になりません。そこは気持ちで乗り切っています。

風がほとんど当たらないフォーミュラ

でも、GTマシンと比べると、フォーミュラカーはとにかく暑い。
そもそもスーパーフォーミュラ(以下SF)は身体にかかる負担が大きいことは、この連載でも何度か書いています。当然、レース中は大量の汗をかきます。さらに身体に風が一切あたりません。ヘルメットに小さな穴が開いていて、多少、風が通りますが、涼しいと感じるほどではないんです。
それでも、よく「コクピットはサウナ状態」と言う人がいますが、それはちょっと盛り過ぎかなって。真夏の風のない日に外で運動しているようなイメージだと思います。
当然、レースでは水分補給がすごく大事になります。僕はレース前にはレッドブル・エナジードリンク、レース中は経口保水液をとるようにしています。SFの場合、かなりアナログですが、ドリンクを事前に凍らせておいて、レース中に溶けたものを飲んでいます。ただフォーミュラカーはコクピットにスペースがないので、300ミリリットルぐらいしか積めません。
それでもレース中は集中しているので、飲まなくても気にならないというか、忘れることもある。それで熱中症になってしまうこともあるので、2周に1回、ストレートで少しだけ飲むように心がけています。

アナログな暑さ対策で挑むSF

SFはエアコンがないので、ポケットに氷を入れて走ることもあります。
前述したようにスペースないフォーミュラでは、どうしても原始的にならざるを得ないんです。氷をポケットに入れておいて、「ああ、冷たいなあ」って小さな歓びを感じています。
SFでは約1時間半のレースが終わると、体重が2㎏ぐらい落ちます。ゴールしたあとは、マシンから降りるのさえめんどくさい。ガレージに戻ってペットボトルで3本、4本と立て続けに飲んで、ようやく落ち着きます。それぐらい体力が消耗し、身体から水分が失われています。
ドライバーができる対策は、暑さに慣れることしかありません。そのために暑い日に屋外でランニングをしたり、サウナに行ったりすることもあります。そうすると身体が暑さに慣れてくるんです。汗はかきますが、そんなに暑さは感じなくなります。

気合いと根性で我慢する時代じゃない

もはや気合と根性で暑さを克服するという時代ではないと思います。日本の夏は年々、暑くなっているように感じますしね。暑さでフラフラになりながらレースをするというのは、本当に危険です。かつて僕が参戦していた世界耐久選手権(WEC)では、レギュレーションで夏場の車内温度は「外気温+7℃以下」と厳密に決まっていました。
F1を頂点とするフォーミュラカーでは難しいかもしれませんが、少なくともスーパーGTなどのツーリングカーの世界では、ドライバーを暑さから守る対策は、どんどん今後も広がっていくと思います。
そういえば、10代の頃は夏にエアコンをつけないで生活したり、車を運転する時にあえて暖房をつけていたこともありました。もちろん今はやっていませんが、効果は絶大でしたね。でも熱中症になってしまうので、良い子は絶対に真似しちゃダメですよ!

(文責:川原田剛)

◆Profile◆
今、日本のレース界でもっとも世界に近いレーシングドライバー、平川 亮。1994年3月7日、広島出身。2017年スーパーGT最年少王者の平川が狙うのは、スーパーフォーミュラとのダブルタイトル。コース上では常にアツくアグレッシブ、だがマシンを降りるとクールで寡黙。25歳の彼が目指す世界の頂点への挑戦から目が離せない。

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