ストックカー

DTMを走って考えた 日本に必要な変化

レーシングドライバー・平川 亮がスピードの裏側を語るスポーツコラム 『BEHIND THE SPEED Vol.07』 (毎月公開)。スーパーGT/スーパーフォーミュラ
Written by Tsuyoshi Kawarada
読み終わるまで:6分公開日:
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平川 亮

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Ryo Hirakawa
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お客さん扱いとなってしまった初遠征

10月4〜6日、ドイツのホッケンハイムで行なわれたDTM(ドイツ・ツーリングカー選手権)の最終戦に日本のスーパーGTの一員として参加してきました。
公式戦ではありましたが、すでにDTMはチャンピオンが決まっていたこともあり、ピリピリした雰囲気ではありませんでした。でもタイトルが確定していなかったとしても、スーパーGT勢は優勝争いには割り込んでこないだろうと思っていたようです。
実際に結果もそうなってしまいました(最高位はジェンソン・バトンの9位)。向こうからしたらお客さん扱いだったと思います。そういう雰囲気が伝わってきて、やっぱり悔しかったです。
事前にあまり情報が来なかったですし、レギュレーションがはっきりしない状況で現地に向かわざるを得ませんでした。それに僕自身もホッケンハイムを走るのは初めて。木曜日に1時間、金曜日に30分の走行があり、それでいきなりレースだったので、慣れる時間も少なかった。出遅れ感は大きかったです。

ここまで違っていたタイヤとマシン

あらためて現地でマシンを走らせてみると、使用するタイヤとクルマが全然違いました。DTMはグリップしないワンメイクタイヤに合わせているクルマで、サスペンションなどの足回りを動かしてグリップを稼いでいます。
スーパーGTはタイヤの開発競争がありますので、各メーカーが開発した専用のハイグリップタイヤに合わせているクルマです。車高を低く、足回りを硬くして動かないようにして空力でグリップを稼いでいます。でも今回のレースで使用したDTM用のグリップのないタイヤだと滑って、すぐ摩耗してしまう。ホッケンハイムはミュー(摩擦係数)が低いこともあるので、その弱点がより出てしまったと思います。
しかも予選では雨まで降ってきました。チームは一生懸命にやってくれているのですが、セットアップを見つけることで精一杯で、ドライバーとして自分の力を出せる環境ではなかった。クルマとタイヤを壊さないように走っていたのが現実で、不本意な結果に終わってしまいました(予選20位、決勝14位)。

参考になったDTMのレースの見せ方

でもDTMとの交流戦はもっとやってほしいと思います。将来的には年間5〜6回ぐらいやるんだったら面白い。年に1回だと、どうしてもお祭りの要素が強くなり、ガチンコ勝負になりませんから。
それに今回の交流戦を通して、ドライビングやセットアップなどに関することはもちろんですが、レースの見せ方、ファンサービス、SNSの活用法など、学ぶべき点がたくさんありました。
特にDTMのレースの盛り上げ方は本当にうまい。例えばセーフティカー明けのリスタートの際は2台が並走して1コーナーに入っていくので、必ず何かが起こり、順位が変わります。お客さんは最後まで飽きないですよね。ドライバーとしてもDTMのスタート方式はシビれます。やっていて面白かったです。
と同時に、スーパーGTの方が明らかに観客動員数は多く、サーキットに華やかな雰囲気があるのも確かでした。世界に誇ることができるレースシリーズであることを改めて実感したので、日本国内はもちろん世界にもスーパーGTというレースを発信していきたいと強く思いました。

純粋に速さを競う勝負にするには?

タイヤメーカーも、ドライはグリップしないけどタレるタイヤ、レインはまったくグリップしないタイヤをわざと持ち込んでいる。しかも決勝ではドライタイヤの内圧を上げることで絶対に性能が落ちてくるようにして、レースを面白くさせています。
その辺りは日本のスーパーフォーミュラ(SF)でも取り入れたらいいと感じました。今のソフトタイヤはあまりに保ちすぎる。ソフトがどれだけタレてしまってもミディアムよりも速いんです。せっかく2種類のタイヤを持ち込んでいるのに戦略の面白さがまったくありません。いかにミディアムを使わないか、あるいはタイミングよく捨てるのかというレースになっています。
ルールなので納得はしていますし、SFはすごくレベルは高いことをやっているとプライドを持っています。でも現行のルールではドライバーの純粋に速さを競う勝負になっていませんし、レースを見ているファンを置き去りにしているような気がしてなりません。
SFはレースの醍醐味であるオーバーテイクも少ない。DTMでは追い抜きを増やすために「DRS(可変リヤウイング)」や、ステアリングのボタンを押してパワーを得るシステム「プッシュ・トゥ・パス」も採用していました。特にDRSはSFにも絶対にあったほうがいい。DTMでも15km/hぐらいの速度差が生まれ、すごく効果的でした。
正直、ドライバーとしては厳しいデバイスですが、観ている観客のみなさんのことを考えると、やっぱり抜きつ抜かれつのバトルがあったほうが面白いと思うのです。もちろんドライバーが頑張ってバトルをするというのが本来のレースです。でも、サーキットによってはバトルがほとんどない現状を考えると、DRSを使うのもアリだと思っています。

日本人としてなめられたくない

11月23日〜24日、今度はDTM勢が日本の富士スピードウェイにやってきて「SUPER GT × DTM特別交流戦」が開催されます。タイヤはホッケンハイムと同様にハンコックのワンメイクタイヤが使用されることになっています。
予選は僕たちスーパーGTのほうが速いかもしれないですが、決勝のタイヤマネージメントに関しては経験値のあるDTM勢が速さを発揮してくる可能性が高い。このままではDTM勢にやられてしまうかもしれないという危機感を持っています。
ホッケンハイムのリベンジをするというよりも、日本人としてなめられたくない、スーパーGTがレベルの低いことをやっていると思われたくない、という気持ちが強いです。
交流戦までにSFとスーパーGTの最終戦があるので忙しいですが、チームとともにDTM勢としっかり勝負できるような状態に持っていきたいと思っています。
(文責:川原田剛)
◆Profile
今、日本のレース界でもっとも世界に近いレーシングドライバー、平川 亮。1994年3月7日、広島出身。2017年スーパーGT最年少王者の平川が狙うのは、スーパーフォーミュラとのダブルタイトル。コース上では常にアツくアグレッシブ、だがマシンを降りるとクールで寡黙。25歳の彼が目指す世界の頂点への挑戦から目が離せない。
◆Information
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