佐賀ワキ(藤沢市議会議員)さんに聞く、スケーターは地方自治体にとって悪なのか!?
© Takaki Iwata
スケートボード

『スケーターは地方自治体にとって悪なのか!?』佐賀ワキ(藤沢市議会議員)さんインタビュー

日本有数のパブリックパーク、鵠沼海浜公園スケートパーク建設に一役買った男、佐賀ワキさんにぶつける3つのテーマ。 第1回は『スケーターは地方自治体にとって悪なのか!?』をお届け!
Written by Matsui Tatsuya/ Edited by Hisanori Kato
読み終わるまで:9分Updated on
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・第2回 『スケートパーク建設は地方自治体にとって大きなチャンスか!?』は【こちら
・第3回 『パブリックスケートパークの作り方!』は【こちら
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第1回 【スケーターは地方自治体にとって悪なのか!?】

スケートボードを始めると必ずぶち当たる問題がある。
「スケートボードに乗りたいのに場所がない」
「ストリートをプッシュしているだけで注意される」
スケートボードは悪いものではないはずなのに厄介者扱いされ、練習する場所すらない。気がつけば楽しかったはずのスケートボードが少しずつ遠い存在になってしまった、なんて話は多い。そして誰しもが一度はこう思ったことがあるはずだ。
「思う存分、スケートの練習ができる場所が近所にあればいいのに……」
そこで本企画では、ローカルスケーターに愛される鵠沼海浜公園スケートパーク建設に一役買った男、佐賀ワキ藤沢市議会議員にスケートボードを取り入れた街のあり方についてお聞きしました。
佐賀ワキさんは神奈川県藤沢市の市議会議員を20年以上務める傍ら、藤沢市サーフィン協会会長を兼務し、スケーターであった過去を持つ湘南藤沢エリアの横ノリカルチャーを支える人物。鵠沼海浜公園スケートパークを作り上げた張本人に、スケートと街の理想的な関係スケートパークの作り方行政としての考え方を伺いました。普段なかなか聞くことのない行政サイドからのスケート話は目から鱗の連続でした!
ーー本日は佐賀さんに「スケーターは地方自治体にとって悪なのか!?」というテーマでお話をお聞きしたいと思います。先ずお聞きしたいことがあるのですが、スケーターって地方自治体にとってどのような存在なんでしょう。やっぱり厄介者なんでしょうか。
佐賀ワキ(以下:佐賀)「厄介者の基準が難しいですけど、僕はスケートボードを悪だと感じたことはありませんね。僕自身スケーターだったということもありますが、感情的にはスケートシーンの盛り上がりは非常にウェルカムです。
@鵠沼海浜公園スケートパーク

@鵠沼海浜公園スケートパーク

© Takaki Iwata

街中で滑るなんてけしからんと言う人が増えているようですが、厳密に言えば、絶対に道路、公園でスケートをしてはいけないわけでもないんですよ。きちんと制度やルールを作って利用者がお互いを尊重しあえれば、スケートだって問題はないでしょうね。もちろん公共の場で他人の迷惑になってはいけないというのはスケーターだけの問題ではなく全員が持つべき意識なのは言うまでもありません
ーーきちんとした制度があれば大手を振ってストリートで滑ることもできるのですか!しかし、実際にはストリートスケートに対する苦情が増加していると聞きます。
佐賀「昔はストリートでスケートするのが当たり前でしたよね。僕だってストリートをプッシュして『藤沢駅まで行こう!』とかやってましたよ。当時も多少の苦情はあったんだろうと推測しますけど、そこまで問題視されてはいなかった。それがここ10年で急激に苦情が増えているのは事実です
ーーそれはスケーターの数が増えたことが原因なのでしょうか。
佐賀「それもあるかもしれませんが、誤解を恐れずに言えば世の中の寛大さが失われたような気がします。苦情の増加ってスケートボードに対するものだけじゃないんですよ。例えば、公園の子どもがうるさいとかね。最近はキャッチボールだってできなくなってきている。過度にスケーターに肩入れしているわけではないですが、スケート云々というよりもまず社会全体の寛容さこそ失われているのかなという印象です
佐賀ワキ(藤沢市議会議員)さんに聞く、スケーターは地方自治体にとって悪なのか!?

佐賀ワキ(藤沢市議会議員)さんに聞く、スケーターは地方自治体にとって悪なのか!?

© Takaki Iwata

ーー最近藤沢市の有名スケートスポット、通称セガ前もスケート禁止になってしまいました。
佐賀「あそこだって30年以上前からスケートスポットだったわけですからね。昔を知っている人から見たら、なぜ今になって急に禁止なんだという感じですよね。個人的には非常に残念ですが、行政は市民に向き合わなければならないですから、苦情が寄せられる中でそういう結論に達してしまったのでしょう。迷惑だという人の声がどれほど大きいのかはわかりませんが、今は役所としてそちら側を尊重し始めているんですね。苦情があるものは禁止したいという心理の方向に進んでいる
ーーでは、佐賀さん個人としては禁止はやりすぎだと思いますか。
佐賀「要は、ストリートスケーターはストリートにある難しいセクションを見つけて、攻めて、メイクして、喜びを感じる人種だということに対する理解の問題ですよ。市議の立場上、大っぴらに公言はしないですけど、リニューアルされた藤沢駅の北口なんか上から見るとどうしたって素晴らしいスケートパークにしか見えないじゃないですか。僕にはそんなスケーターたちの気持ちだってよくわかるわけですよ。だからもう少しお互いに歩み寄った結論があったのではないかと思いますね
ーー完全スケート禁止にするより良い結論があるはずだと。
佐賀「それぞれの人が気持ちよく公共の場を楽しむためにお互いの意見を尊重しつつ、迷惑にならないような形で共存していくことができれば最高。それが最高なんだけど、そういう寛大さ、寛容さというものは誰かが決めるものではなくて個人個人のハートの問題だから難しいんです。こればかりは制度化することはできませんから
佐賀ワキ(藤沢市議会議員)さんに聞く、スケーターは地方自治体にとって悪なのか!?

佐賀ワキ(藤沢市議会議員)さんに聞く、スケーターは地方自治体にとって悪なのか!?

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ーー確かに相互理解を通じて解決策を見出せたら最高ですね。スケーター側にもできることはたくさんありそうです。
佐賀「そうですね。何事もお互いの価値観を理解することから始まりますから。でもスケートボードってその特性上、誤解されやすい部分もあるでしょう。ひどい怪我をすることだってあるし、グラインドすればカーブが削れるっていうのも事実。藤沢駅の北口がリニューアルされて、やっぱり負の部分でタイルが割れたりしちゃうんですよ。修繕しては割れるといういたちごっこ。そういう負の連鎖が良くない方向に働くと禁止という結論が導かれちゃうんです。どうにか解決策を見つけたいと思っています
ーー何か具体的なアイデアがあったりしますか。
佐賀「現時点で実現可能かどうかはまったくわからないんだけれども、逆転の発想で、例えば月1で一部のストリートセクションをスケーターに解放しちゃおうという考えもありだと思います。ちゃんとそういう日を確保するから、それ以外の日にスケートするのは勘弁してくれというアイデア。そうやって状況をコントロールすれば割れたタイルが放置されることも少なくなるかもしれない。通勤通学の利用者なんかも不意に飛んできた板を怖がる必要がなくなるかもしれない。しかもスケーターには思う存分スケートできる日が生まれるという
現在、佐賀さんが愛用するボード。「今はストリートで転んで怪我をして仕事に影響が出たら大変だから、カーバーのボードでサーフスケートを楽しんでます」

現在、佐賀さんが愛用するボード。「今はストリートで転んで怪我をして仕事に影響が出たら大変だから、カーバーのボードでサーフスケートを楽しんでます」

© Takaki Iwata

ーーそれは実現したら夢のような話ですね。
佐賀「駅前広場なので、公共スペースのあり方として一般利用者の人たちも大勢いるという事実は変えられない。だからスケートして良い、悪いという話じゃなくて現実的に考えて危険かどうかという視点も持たないと行政レベルでの話は進まない。当然行政としては、不特定多数の人がいるような場所、時間帯に大々的にスケートをすることは許容できないですよ。他の利用者の立場もあるのでこれはしょうがないことです。しかし、だからといって全面的にスケートを禁止にするっていうのも横暴なやり方でしょう。セガ前みたいな人があまり通らないところだったら、決められたルールの中でスケーターが節度を持って遊ぶ分にはいいと思いますけどね。月1でスケートOKな制度が作れたら、またスポットにスケーターが集まって活気が生まれる。それは地域の活性化にもつながります
最も大事なのは寛大さを持ったまま世間とスケーターが尊重し合うことですよ。数年前に藤沢市スケートボード協会も正式に設立されたので協力し合いながら、その隙間で行政が制度づくりという形でお手伝いできればと思っています
佐賀ワキ(藤沢市議会議員)さんに聞く、スケーターは地方自治体にとって悪なのか!?

佐賀ワキ(藤沢市議会議員)さんに聞く、スケーターは地方自治体にとって悪なのか!?

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◆まとめ◆

これまでストリートスケートをしていて、自分が街から厭われているような気持ちになったことがある人も多いはず。正直、筆者自身「なんでスケートボードばかりを目の敵にするんだよ」と不満も持っていたこともあります。
佐賀さんとの話を通じて、何かとスケーターと衝突しがちな行政にもスケートを禁止せざるを得ない事情があることがよくわかりました。その上で、スケーターは自分たちの活動の意義を主張しなくてはいけないのかもしれません。
気をつけなくてはいけないのは「不満をぶちまけること」と「建設的な議論を行うこと」は異なるということ。スケートができる環境は「与えられるもの」ではなくて、みんなで協力して「作り出すもの」なのでしょう。
※筆者のメモ📝
スケーターと行政の協力、軋轢を調べていたら、大阪府茨木市からこんなニュースが飛び込んできました。スケーターたちの要望によって、市役所前広場でのスケート練習を行政が許可したというニュースです。「夜は22時まで」「音の大きいボックス使用は21時まで」「通行人に気をつけて、スペースは譲り合う」「積極的なゴミ拾い」など、ローカルスケーターの心掛けも素晴らしい!正直、まだ日本はスケートができる環境が少ないと言わざるをえませんが、こういったポジティブな活動が注目され「スケートボードって悪いもんじゃないよ」という意識が広まっていくことを願って止みません!
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第2回は、「スケートパーク建設は地方自治体にとって大きなチャンスか!?」をテーマに引き続き佐賀さんにインタビューをしたいと思います。
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◆Information
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