アイスクライミング
スペリオル湖のビッグアイスウォールに挑め!
サーシャ・ディジュリアンとアンジェラ・ヴァンウィミッシュがミシガン州アッパー半島の巨大な氷壁でアイスクライミングに挑んだ!
ミッション
クライマーのサーシャ・ディジュリアンとベテランアイスクライマーのアンジェラ・ヴァンウィミッシュがコンビを組み、ミシガン州アッパー半島のグランド島の氷壁を上空から初登可能なポイントをスカウティングした。
「あそこね」 − ヴァンウィミッシュが眼下の氷柱を指差した。その氷柱はクライミング可能に見えたが、2人はもっと近づいてリスクアセスメントを行う必要があった。そこで2人は氷の上も走れるエアボートを借り、翌日スペリオル湖へ向かった。
2015年に話を戻そう。この年、ディジュリアンはコロラドでアイスクライミングに初挑戦し、たった2週間でギアの使い方を学ぶと、世界で最も高く評価されているアイスクライミングの大会、Ouray Ice Festに出場し、さらにはアイスとロックのミックスルート(グレードM10)に挑んだ。アイスクライミングにおける素晴らしいポテンシャルを披露した彼女だったが、その後数年間はロッククライミングとフリークライミングに専念し、女性クライマーとして初めてマダガスカル島のモラモラの攻略に成功するなど数々の記録を打ち立てていくことになった。
そして2017年、ディジュリアンは遂にコンフォートゾーンの外へ飛び出し、ヴァンウィミッシュと組んで一生に一度のアドベンチャーに繰り出すことにした。アラスカ州とユタ州の数々のアイスウォールで初登を記録してきたヴァンウィミッシュはミシガン州出身のベテランアイスクライマーだが、アイススケート出身だ。ヴァンウィミッシュは、オリンピックも狙えるほどのアイススケーターだったが、アイスクライミングと出会ったあとはスケートシューズをクランポンに履き替え、次から次へと氷壁を攻略していった。
そして2018年1月、2人はミシガン州アッパー半島を訪れることにした。新しいルートが発見できる可能性が高いことと、ウィンタークライミングスポットとして正当な評価を受けていないことがここを選んだ理由だった。
初登なるか
エアボートが岸に近づいていく中、2人は目の前に立つ氷柱でクライミングするかどうかを決めかねていた。
「スカウティングだけに集中していたの」とヴァンウィミッシュが振り返る。「クライミングするかどうかの判断は下さなかったわ」
氷柱の不安定さが最大の懸念材料だった。2人が訪れた時のミシガンは温暖だった。数週間前までは氷点下の冷え込みだったが、気温が急上昇していたのだ。
そして、エアボートが接岸して2人が降りようとしたその瞬間、氷柱が崩れ落ちた。
アッパー半島は高湿・低温のため、アイスクライミングに最適な氷壁を作り出す。その氷壁の多くは、ミューニシング北側のスペリオル湖沿岸かグランド島の東岸、またはイーストチャンネル側に形成される。スペリオル湖はコロラド州のロッキー山脈と同レベルの圧巻の景色をクライマーにもたらしてくれるロケーションなのだ。
現地に向かった2人は(のちに目の当たりにするのだが)あるひとつのことに気付いた。氷柱が今にも崩れそうだったのだ。基本的にスペリオル湖の氷柱には、湖岸の岩と湖の氷がくっついた頑丈な基盤がある。しかし、彼女たちが狙っていた氷柱にはそのような基盤がなかった。また、気温が高かったため、上部の氷が非常に薄かった。
かなり大きな氷が落ちてきたわ。本当に怖かった。間違いが起きればどうなるのかを目の当たりにしたわ
こうして、初登を狙うというアイディアは頓挫し、2人はブルズ・オン・パレード(Bulls on Parade / グレードWI4)やシン・タワー(Thin Tower / グレードWI5)のような、エリア内で良く知られているスポットに挑むことにした(グレードWIはアイスクライミングのグレード。Wは "Water"、Iは "Ice" を意味する)。
プラン変更
アイスクライミングはパーフェクトコンディションが必要になる。氷が長時間溶けない低温が絶対条件だ。よって、アイスクライミングの初登は、スキルと運がパーフェクトに組み合わない限り挑戦できない。アイスクライミングの正しいスキルを身に着けていても、パーフェクトなコンディションの新しいスポットを見つけられるかどうかは運次第だ。
ヴァンウィミッシュは「(アイスクライミングの初登は)チャレンジングな時もあったわ。未登のビッグラインに狙いを定めていても、最終的にはコンディションと適切な状況判断によって、最終的なクライミング内容が大きく変わる時があった」と振り返る。
氷を解かしてしまうような温暖な数日が過ぎると、ようやく気温が下がった。湖の波が激しく岸に打ちつけるほど風が強くて寒いという、実にミシガン州らしいコンディションの中、2人はヴァンウィミッシュが女子初制覇を記録していたエリア内最高難度のスポットのひとつ、HMR(WI5)へ向かった。
ピクチャード・ロックス・ナショナル・レイクショア内に位置し、1980年代中頃にポール・キュンが初登を記録していたこのアイスルートは、スペリオル湖に直接落ち込む崖に形成されている。スノーシューズで9kmをハイクしたディジュリアンとヴァンウィミッシュは、その崖をラペリングしてスペリオル湖まで降りたあと、プロテクションとしてアイススクリューをハンドクランクで打ち込みながら登っていった。
ディジュリアンにとって、今回のクライミングトリップはしばらく眠らせていた自分のアイスクライミングスキルを再発見・再確認するものになった。ディジュリアンのこの挑戦は『Super Ice』としてYouTubeで公開中だが、彼女にとっては女性のメンターがついていたことが大きな意味を持っていたようだ。
「才能を証明した女性が他の女性の才能を引き出していくと思っているの。一緒に取り組むことで障壁を取り除き、女性の能力を示していけるはず。ロッククライミングと同じように、アイスクライミングでもそれを感じることができた」