スケートボード

「チーム・ホッソーイ!!」 しっかり映像にも残ってます。クリスチャン・ホソイの豪快エピソードについて

スケートカルチャーを斜め45度の視点で切り取る(マジメな)コラム。今回は、あのスーパースター、クリスチャン・ホソイが80年代の日本で起こした豪快エピソードについて語る。
Written by SLAPPY BLAST DUDE
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クリスチャン・ホソイ

クリスチャン・ホソイ

© SLAPPY BLAST DUDE

         
プロスケーターのフッテージやコンテスト映像など、これまで世に送り出されてきたスケートビデオは数知れず。自分のフィーリングにハマった内容であれば、観終わるころにはすっかり感化され、ボードを持って外に飛び出すってのが、今も昔も相変わらずのスケーター基本動作の一つ。そういう衝動も、玄関出てから2秒で解き放つことができるのが、スケートボードの素晴らしいところ。しかも無料で。それに加えて最近じゃ、スケートビデオもネット上に山のようにあるから、重ね重ね素晴らしい。
        
「ラジカル・スケボーズ」というビデオはご存知だろうか。80年代後半の日本、第2次スケートブーム真っ只中にリリースされたビデオマガジン。国内のスケートボード情報が希薄だった時代に、ビデオ動画は画期的で、おまけにシリーズものとは嬉しい限り。しかもスケートショップのみならず、書店コンビニでも販売していたというから、当時のブームのデカさが伺える。で、このビデオ、スケート講座のカツ秋山講師に始まり、HOW TOのデモンストレーターや当時のコンテスト出場者、はたまた、CMブレイクで差し込まれるコマーシャルまで、どこを切ってもお宝映像の目白押し。いわば日本のスケートボードシーンを語るうえで欠かすことのできない伝説的ビデオなのである。
        
中でもシリーズ2作目(2作目以降は観たことないですが……)に収録の、88年に来日した「クリスチャン・ホソイ IN JAPAN」は、特に稀代の名フィルムと豪語しておきたい。理由は様々だが、まずは単純にホソイがカッコ良い。この頃のホソイといえば、ロングヘアとJIMMY’Zのウエアを着こなした、ワイルドスタイル。でもって聴いてる音はレゲエみたいな。そんな絶頂期のホソイが池袋パルコ屋上や、大阪アスコットパークを舞台にお得意のハッスルプレイを繰り広げる。たっか~いエアーから、Gターンまで、なにをやっても華のあるノリと滑りとその風貌は、30年の年月が流れた今観ても、スタイリッシュなわけですよ。ファインな女子も大喜び。サイコー!(ハングルーズ)
           
当時、近所の先輩スケーターから「ホソイは年間1億円以上稼ぐスケーターだ」と聞いて、スケーターだけどロックスター並みの稼ぎぶりに流石はホソイと関心したものだった。今となっては1億円以上稼ぐプロスケーターなんてザラにいるというから、オドロキ。モモノキ、ホモキとサスキ。心の底にはロゴウスキ。ナナナナ~、ナナナナ~。
         
ところで、このビデオには、スケートボーダーならば見逃してはならない、黄金のパートが存在する。それは、ツアー中のホソイご一行が新幹線で大阪へ向かうシーン。まず、ホームに佇むホソイ(とホソイのお父さん)は、上半身ハダカという大胆なイデタチ。上半身ハダカOKなのは、せいぜい海の家かプールの売店ぐらいだとタカをくくっていた夏休みのキッズたちに、とびきりのカルチャーショックをお見舞いしてくれた。それでもって、到着した車両に乗り込むやいなや、チーム・ホソイの若手ライダー、サージ・ベンチュラが「チーム・ホッソーイ!!(訳:細井様ご一行のお出ましじゃい!!)」と客室に向かって無邪気にも雄叫びをあげるではないか。わ、若い……。それまで、平静を保っていた客室内が、一瞬にして陽気なアメリカのココナッツフレイバーに包まれていく様が、なんとなく伝わってくる。列車に居合わせた、出張帰りのサラリーマンもこれにはさすがにきょとん顔だが……。とは言え、“ここはデモ会場じゃないぜ” なんて忠告はヤボってもん、どんな場所でもお構いなしに、自分のペースに持ち込む豪快さは、さすがはロックスター、ホソイだぜ!
         
また、抱えたボードをおもむろに網棚に置いやるシーンがあるのだが、それを観て以来、電車の中で網棚にボードを載せるスケーターを見かけては「チーム、ホッソーイ!!」と漏らしたのは私だけじゃないハズ。もはや、網棚にボードを載っける行為そのものが「チーム・ホッソーイ!!」というトリック名として通用していたのかもしれない。あるいは、上半身ハダカなのに平気で電車に乗っちゃう男気トリックを「チーム・ホッソーイ!!」と呼ぶべきか? いやいや、もらったTシャツをその場でカットオフ、あまった生地でマフラー&ヘアバンドにしちゃう見事な手さばきこそ「チーム・ホッソーイ!!」な動きでしょ! そうなってくると新大阪駅を裸足でクルージングしちゃう姿なんて、いかにも「チーム・ホッソーイ!!」な気がしてくるわけで……。そんなホソイのトリッキーなお作法が凝縮された「ラジカル・スケボーズ2」。スケーターなら習得すべきマナーブックとして、後世に語り継がれることだろう。
        
話は変わるが、普段、スケートボードとは全く無縁の仕事をしている私が、先日のこと。仕事相手先で細井(ホソイ)という名字の方に初めてお会いした。 名刺交換の際「初めまして、営業の細井と申します」と言われた瞬間、「キタキタキタキタ!」と高鳴る気持ちを押し殺しながらも、心の中でこう叫んだのは言うまでもない。「チーム、ホッソーイ!!」(ハングルーズ)
          
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