4度もWRCチャンピオンに輝いた達人ドライバーをアドレナリン全開の本気モードにさせるにはどうすれば良いのだろうか? セバスチャン・オジェの場合、その方法は簡単だ。当代随一のオフロード最速ドライバーをサーキットに連れ出し、800馬力を誇るF1チャンピオンマシンに乗せて思う存分ドライブさせれば良い。
第8戦終了時点で2017シーズンのWRCドライバーズ選手権首位に立っているオジェは、シーズン中の貴重なオフを利用してレッドブル・リンクを訪ねた。つい先日F1オーストリアGPが開催されたばかりのこのサーキットで、オジェは普段乗り慣れたM-Sport Ford Fiesta WRCからRed Bull Racing RB7へと乗り換えた。RB7は2011シーズンにセバスチャン・ベッテルをドライバーズチャンピオンに導き、また同シーズンのコンストラクターズタイトルも制覇したマシンだ。オジェ曰く「絶対に逃せないチャンス」だった。
Red Bull Filmsが撮影したセバスチャン・オジェのF1マシン初体験をチェック!
「僕は33歳だから、もちろんアイルトン・セナが子供の頃のアイドルだった。自分でフォーミュラカーをドライブするチャンスが来ることをずっと夢見ていた」とオジェは語る。「レーシングドライバーは速いマシンがなければ楽しめない。F1マシンは地上でドライブできる乗り物としては最速だから、当然、全てのレーシングドライバーはF1マシンをいつかドライブしてみたいと夢見ているのさ」
自分でフォーミュラカーをドライブするチャンスが来ることをずっと夢見ていた
今回、オジェにはRB7のドライブ方法を教えてくれるひとりの特別講師がついた。かつてRed Bull Racingに在籍していたF1通算13勝を誇る元F1ドライバー、デビッド・クルサードだ。
「セバスチャンが今回初めてF1マシンをドライブするにあたり、いくつかのチャレンジがあった」とクルサードは語る。「ラリーマシンのコックピットは広いが、F1マシンのコックピットははるかに狭くて厳しい環境だ。4.5GのGフォースがかかると、肉体面での負荷は極めて大きくなる」
RB7は2011シーズンに12勝 / ポールポジション18回 / ファステストラップ10回を記録し、F1史上稀に見る強さでシーズンを席巻したマシンだ。今ではもはや懐かしい自然吸気V8エンジンを搭載したRB7は、現在Red Bull Live Demoチームの元で第二の人生を楽しんでおり、世界中の様々な場所へ赴いてデモランを展開している。RB7は今も現役当時そのままのコンディションに保たれており、F1の頂点を極めた強烈なパフォーマンスは寸分も失われていない。
「F1は全くの別世界だね」とオジェは語る。「緊張よりも興奮の方が勝っていたけど、サーキットをこれほどの速さで走ったのは今回が初めてだったよ!」